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2010:経営環境

成長産業へ将来ビジョン検討

 国土交通省は2010(平成22)年3月2日、トラック産業の将来ビジョンに関する検討会を設置し、初会合を開きました。2009年5月に非公式の勉強会を設置して検討を始め、同年10月には検討会に格上げして検討を本格化する予定でしたが、その間の政権交代を踏まえ、新政権の下で仕切り直して改めて本格的に検討することになったものです。地球温暖化問題や少子高齢化・人口減少社会の到来、経済のグローバル化の進展、ITS等科学技術の進歩など、事業を取り巻く環境変化を踏まえ、今後のトラック産業をいかに成長産業として発展させていくのかという観点から、官民の関係者が幅広く議論し、トラック産業のあるべき姿とその道筋を描くことが目的です。
 トラック運送事業を成長産業としていくため、新技術の活用も念頭に、環境対策、安全対策、トラック輸送サービスの高度化・高付加価値化、海外進出、労働力の確保、公平・公正な競争環境の整備などを検討します。トラック運送業界内では、行き過ぎた規制緩和の見直しを求める声が高まっていますが、ビジョンの検討では、公平・公正な競争環境の整備の視点で、社会保険未加入事業者や5台割れ事業者などの問題についても取り上げることになる見通しです。
 検討会では2010年6月を目途に中間整理を行い、将来ビジョンの方向付けを行うとともに、その後の進め方を整理する予定です。その際、必要に応じて、個別テーマに対応したワーキンググループを設け、検討・検証作業を行うことも検討していくことになっています。

暫定税率を実質維持、交付金は継続

 政府は2009(平成21)年12月22日、2010(平成22)年度税制改正大綱を閣議決定しました。焦点となっていたガソリン、軽油などの暫定税率については、地球温暖化対策の観点や急激な税収減を踏まえ、当分の間税率水準を維持することとされました。一方、暫定税率からの衣替えも検討された環境税(地球温暖化対策税)については、2011(平成23)年度実施に向けた成案をうるべくさらに検討を進めるとし、先送りされました。暫定税率の実質維持を受けて、トラック・バス両業界に対する補助金である運輸事業振興助成交付金は従来通り継続されることが決まりました。
 民主党政権下で初めての税制改正作業は、政府税制調査会に審議が一本化され、会議の模様もインターネットで中継されるなど、透明性が高められました。民主党マニフェスト(政権公約)の主要項目である暫定税率については、最後まで決着がもつれ込みましたが、12月21日に鳩山由紀夫首相が税率維持を決断し、「マニフェストに沿えなかったことに関しては、率直にお詫びを申し上げなければならない」と陳謝しました。
 税率を維持せざるを得なかったのは、景気の低迷で税収が37兆円前後まで落ち込み、2009年度は1946(昭和21)年度以来63年ぶりに税収を上回る国債を発行しなければならなくなるという、深刻な財政悪化が最大の理由です。政府税制調査会での議論では、暫定税率は2010年4月から廃止すべきとの意見が大勢を占めていましたが、民主党の小沢一郎幹事長が12月16日に鳩山首相に提出した、予算・税制に関する重要要点で、石油価格の安定を理由に「租税水準を維持」するよう求めたこともあり、制度としての暫定税率は廃止するものの、租税特別措置による同水準の税率を課し、納税者の税負担はこれまでと変わらないという決着となりました。
 これに対し、全日本トラック協会を含む自動車関連21団体で構成する自動車税制改革フォーラムは同年12月24日、「暫定税率の税率水準維持は極めて遺憾」とする声明を発表しました。声明では、「課税根拠が失われている暫定税率を形を変えて維持することは、税収維持のための新税であり、納税者である自動車ユーザーの納得を到底得られるものではない」と強く反発しました。
 一方、民主党の重要要点では、原油の異常高騰時には暫定税率の課税停止措置を講ずるとされていたことから、政府税制調査会は2010年1月18日、ガソリン価格が3か月連続して1リットル当たり160円を超えた場合に1リットル当たり25.1円の課税を停止し、逆に3か月続けて130円を下回った場合に元の税率水準を復活させることを決めました。軽油引取税についてもガソリンの課税停止・復活措置と連動して、1リットル当たり17.1円の課税停止・復活を行うことになりました。

高速道路料金、引き下げから無料化へ

 原油価格が高騰していた2008(平成20)年度以降、政府は数次にわたる経済対策・補正予算により、高速道路料金の引き下げを図りました。自民党政権下の2008年8月29日、「安心実現のための緊急総合対策」を決め、10月から高速道路料金の深夜割引が4割引から5割引に引き上げられたほか、夜間割引時間帯が拡大されました。また、首都高速、阪神高速の距離別料金導入は延期されることになりました。同年9月の米金融危機を受け、10月30日には追加経済対策である「生活対策」が決定され、高速料金については2009(平成21)年3月から平日昼間が3割引とされたほか、休日の地方部で乗用車上限1,000円とする引き下げが行われました。
 乗用車上限1,000円により、休日の渋滞が激化しました。2009年のゴールデンウィークは、10km以上の渋滞が414回、30km以上の渋滞も58回発生するなど前年に比べ倍増し、その結果、荷物の到着遅延など円滑な物流サービスに影響が出ました。このためトラック運送業界では同年6月、乗用車上限1,000円の平日への拡大を見合わせることのほか、渋滞対策やサービスエリア等での駐車スペース確保などを政府に要望しました。こうした要望も踏まえて、政府はお盆時期の高速道路料金について、週前半の平日はトラックを5割引とし、週後半から週末にかけては乗用車上限1,000円を実施するなどすみ分けを図りました。
 2009年8月の衆院選で、高速道路無料化をマニフェスト(政権公約)に掲げた民主党が圧勝し、初めての本格的な政権交代が行われました。新政権の下での2010(平成22)年度予算概算要求で国土交通省は、高速無料化社会実験に6,000億円を要求しましたが、折からの財政難で6分の1の1,000億円に削減され、同省が2010年2月2日に発表した社会実験計画では、無料化区間は首都高速・阪神高速を除く高速道路総延長の約18%に当たる、37路線50区間の計1,626kmにとどまりました。東北、北海道、九州などの地方路線が中心で、関東では中央道大月JCT~須走間41kmなど7路線108kmにとどまりました。政府は6月から2011(平成23)年3月まで実施し、地域経済への効果や渋滞、環境への影響を把握することにしています。一方、有料区間については現行の割引制度を全面的に見直し、新たな「統一料金制度」を導入する予定です。

適正取引へ諸施策

社会保険未加入事業者に行政処分

 国土交通省は2009(平成21)年8月28日、社会保険未加入事業者に対する行政処分制度の運用開始後1年間の行政処分状況をまとめ、発表しました。処分制度が導入された2008(平成22)年7月から2009年6月までに処分を受けた事業者は、車両停止処分が8社、警告処分が79社の計87社となり、2009年3月末時点での集計で44社だったものから3か月間で倍増しました。
 加入が義務付けられている社会保険(健康保険、厚生年金保険)や労働保険(労災保険、雇用保険)に入らず、不当にコストを引き下げて不健全な競争状態となっている点を是正するため、行政処分制度を導入したものです。既存事業者に対しては、まず各地の適正化事業実施機関による巡回指導で未加入を確認して改善指導を行い、3か月以内に改善報告書が提出されない事業者を運輸支局に通報します。これを運輸支局が社会保険事務所などに照会し、処分を行うという仕組みです。
 車両停止処分を受けた8社は、いずれも従業員全部未加入の初回違反で、車両停止20日車の処分が科されました。このうち、社会保険、労働保険ともに未加入だったのは4社でした。警告処分を受けた79社は、従業員の一部未加入の初回違反で、このうち社会保険と労働保険ともに未加入だったのは24社でした。処分を受けた事業者からは「資金がなくて保険に入れなかった。運転手も入りたがらないが、改善するように努力したい」「保険料を負担すると事業経営は厳しくなるが、払わないと処分されるので、きちんと払っていきたい」といった反応がありました。

5台割れ事業者に重点監査

 国土交通省は2009(平成21)年6月、トラック運送事業者の許可基準である最低保有車両数5両を満たさない、いわゆる5両割れ事業者に対し、重点監査を実施しました。これらの事業者については、以前から社会保険未加入や法令知識の不足などの問題が指摘されていたため、実態把握に向けて初めてメスが入れられたものです。1か月間かけて1,018事業者に監査を行った結果、72.8%に当たる741事業者に法令違反が確認されました。法令違反が認められた事業者に対しては、直ちに改善を指示するとともに、行政処分を行いました。
 最低保有車両数規制は、営業所で事業運営、運行管理などを適切に行える組織および管理体制を確保するための事業規模として、5両を新規許可の要件としているものですが、荷主の輸送貨物の減少などにより一時的に5両割れの状態となっている事業者が全国で4千社超存在しており、とくに5両未満となると運行管理者の選任義務がかからなくなるため、運行管理面での法令順守状況が懸念されていました。
 監査結果によると、最も法令違反が多かったのは、点呼関係違反で、監査事業者の43.1%に当たる439社で点呼の実施、記録、改ざん、保存違反があったことがわかりました。次いで多かったのが運転者に対する指導監督違反で、全体の38.8%に当たる395社で違反が確認され、乗務時間等告示違反と健康状態の把握違反も306社(30.1%)で認められました。告示違反では、とくに拘束時間違反と連続運転時間違反が多く見られました。
 乗務等の記録違反は、281社(27.6%)で認められ、記載内容の不備が大半を占めています。また、社会保険等未加入は298社で、監査対象に占める未加入率は29.3%となりました。厚生年金未加入が257社で最も多く、次いで健康保険未加入が253社、雇用保険が155社、労災保険が126社となっています。
 運行管理面でのずさんさが明らかになったことを受け、国土交通省では保有車両数5両未満の営業所であっても運行管理者の選任を義務付けることなどを検討していくこととしています。

公取委が荷主2社に初の警告

 公正取引委員会は2009(平成21)年4月15日、独占禁止法(物流特殊指定)に違反するおそれがある行為を行っていたとして荷主企業2社に対し初めて警告を行いました。また、物流特殊指定違反につながるおそれがある行為を行っていた荷主25社に対しても注意喚起を行いました。公取委は、原油価格が高騰する一方で、これに伴う価格転嫁が困難だった状況を踏まえ、荷主の独禁法違反に対する監視を強化するため、2008(平成20)年2月に荷主と物流事業者の取引調査を専門に行う「物流調査タスクフォース」を設置するとともに、情報収集のために物流事業者2万8,530社に対して書面調査と書面調査により得られた情報に基づく調査を実施し、その結果、荷主2社への勧告と25社への注意喚起となったものです。
 独禁法の物流特殊指定は、真荷主と物流事業者の取引における優越的地位の濫用を効果的に規制するため、2004(平成16)年3月に制定されたもので、荷主に対して買いたたきや代金の減額などの行為を禁じています。
 公取委によると、勧告を受けた建設機械器具賃貸業の企業は、2004年6月から2008年12月まで「協力値引き」などと称して運送事業者に支払うべき代金から一定額を差し引き、あらかじめ定めた運送委託代金の額を引き下げていました。もう1社の壁紙・カーテン等卸売り業の企業は、2007(平成19)年10月から同年12月までの間または同年11月から2008年1月までの間、自社の決算対策のために、運送事業者に支払うべき代金の20%相当額を差し引き、あらかじめ定めた運送委託代金の額を減じていました。

下請法の勧告・警告、トラック運送業が最多

 公正取引委員会は2009(平成21)年5月27日、2008(平成20)年度の下請法運用状況と企業間取引公正化への取り組み内容を発表しました。下請法違反で勧告あるいは警告を行った件数は前年度比7.7%増の2,964件で、業種別では道路貨物運送業が308件と最も多く、全体の10.4%を占めました。次いで多いのが自動車小売業の248件(全体の8.4%)、一般機械器具製造業の167件(同5.6%)などとなっています。
 2008年度の下請法勧告件数は15件で、2004(平成16)年4月の改正下請法施行以降で最多となり、このうち道路貨物運送業は2件となりました。 親事業者の禁止規定を定めた実体規定違反は、道路貨物運送業の場合171件で、このうち7割に当たる121件が支払遅延でした。このほか、減額が21件、買いたたきが10件などとなっています。

トラック運送原価を調査

 国土交通省と全日本トラック協会は2009(平成21)年9月24日、トラック運送原価に関する調査を行うことを決め、関東ブロックの各都県トラック協会に対し協力を要請しました。原油高騰による燃料コストの急増、安全対策、環境対策に関するコスト負担の増加などを踏まえ、実態コストを運賃に反映し、適正運賃の収受につなげていくことが狙いで、同年10月下旬から関東1都7県で計96社を対象に実態を調査しました。調査の結果分析や活用方法などを検討したうえで、2010年度以降全国に調査対象を拡大していく方針です。

トラック事業者数、初の減少

 国土交通省が2009(平成21)年12月15日に発表した2008(平成20)年度末現在の貨物自動車運送事業者数によると、総事業者数が前年度比0.4%減の6万2,892社となり、統計を取り始めた1975(昭和50)年度以来初めて減少しました。2008年秋以降の世界金融危機を受けて、国内の経済情勢も急激に悪化したことが反映されたものと見られています。新規許可等による参入は前年度比16.7%減の1,860社、廃止・合併等による撤退は同25.7%増の2,090社となり、1990(平成2)年の規制緩和以降初めて撤退事業者数が参入事業者数を上回りました。
 トラック運送事業者数は、規制緩和が実施された1990年に4万社だったものが、1997(平成9)年度には5万社に増え、2004(平成16)年度には6万社を突破するなど一貫して増加を続けてきましたが、景気の低迷を受けて、230社とわずかではあるものの、減少に転じたものです。
 業種別に見ると、特別積合せは8社(2.7%)増の300社となり、一般は215社(0.4%)減の5万7,457社、霊柩が27社(0.6%)増の4,424社、特定が50社(6.5%)減の711社となっています。
 規制緩和以降、およそ1.5倍に増えた事業者数ですが、その小規模化も進んでいます。10両以下の事業者数は3万5,519社で、全体に占める割合は、10年前の45.6%から56.5%へと増えています。20両以下の事業者で全体の78.2%を占めています。
 都道府県別に事業者数を見ると、東京が5,815社で最も多く、前年度より15社減、次いで大阪が4,632社で前年度より153社増、北海道が2社減の3,795社、埼玉が44社増の3,565社などとなっています。

少子・高齢化で大型運転者不足へ

 人口減少および少子・高齢化の進展により、将来の運転者不足が懸念されています。国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口」(2006〈平成18〉年12月調査)によると、2005(平成17)年に1億2,777万人だったわが国の総人口は、25年後の2030年には1億1,522万人に減り、50年後の2055年には8,993万人と9,000万人を割り込むと予測されています。15歳から64歳までの生産年齢人口は2005年に8,442万人だったものが2055年には4,595万人へと半減し、逆に65歳以上の人口は2005年の2,576万人から2055年には3,646万人に増える見込みです。
 全日本トラック協会は2009(平成21)年9月、大型免許保有人口の将来予測をまとめました。それによると、大型免許保有者数は、全体では緩やかに増加していくものの、60歳以上を除くと、若年層における人口の減少などを受けて、今後大幅に減少していくことが見込まれています。60歳未満の大型免許保有者数は2008(平成20)年に316.9万人であるのに対し、12年後の2020年には約24%少ない240.1万人となり、さらに22年後の2030年には約44%減の177.2万人に減少すると予測されています。少子・高齢化に加え、免許制度改正や若年層の大型免許離れが背景にあるためと見られています。
 一方、60歳以上の大型免許保有者数は1997年に47.1万人だったものが2008年には139.5万人へと約3倍に拡大しており、その後もこの傾向は継続し、2020年にはさらに倍増して261.1万人、2030年には355.7万人へと大幅に増えていく見込みです。

割増賃金率引き上げ、日雇い派遣禁止も

 法定割増賃金率の引き上げなどを内容とした改正労働基準法が、2008(平成20)年12月5日成立しました。改正法には「1か月の時間外労働時間が60時間を超えた場合の割増賃金率を現行の25%から50%に引き上げる」「5日以内の年次有給休暇を時間単位で取得することが可能」などが盛り込まれており、2010(平成22)年4月に施行されます。ただ、60時間超の場合の割増賃金率引き上げの中小企業への適用については、当分の間猶予されることになっています。
 登録型派遣の原則禁止、日雇い派遣の禁止などを盛り込んだ労働者派遣法改正案が、2010年春の第174通常国会に提出される見込みです。労働者派遣法改正を巡っては、自民党政権下の2008年に政府が法案を提出し、さらに2009(平成21)年には民主・社民・国民新3党が対案を提出していましたが、衆議院解散に伴いいずれも廃案になっていました。政権交代後の新政権下では、改めて労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)で審議が行われ、2009年12月28日に登録型派遣、製造業派遣の原則禁止、日雇い派遣の禁止を内容とする答申が行われました。日雇い派遣については、日々または2か月以内の労働者派遣を禁止することになる見込みです。
 トラック運送業界では、季節による波動性が大きい引越業務で人材の確保が困難になるため、全日本トラック協会では2010(平成22)年3月3日に、繁忙期である3~4月に限定して、引越業務を適用除外とするよう民主党に要望しました。

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