1.改正について の全体的な意見
- 貨物自動車運送事業に係る行政処分については、平成17年以降毎年処分の強化が図られてきている。特に、飲酒運転等悪質違反には厳罰な基準が設けられ、その執行から着実に結果も現れてきている。現在の処分量定でも十分過ぎるほどであり、また、各事業者はコンプライアンスを徹底すべく必死に頑張っているところで、これへの対応に各事業者は疲弊してきている。
- 事故削減のための処分基準の強化については、前述のように基準の強化・改正が行われ公表されてきた経緯があるが、処分基準の強化による事故の削減や事業法関係法令違反の減少に対する検証がされておらず、やみくもに基準日車数の強化が行われている。ついては、基準強化による効果について客観的なデータを示されるとともに、今回の強化の妥当性について項目毎に説明し、精神主義からデータ主義に基づく合理的かつ透明性のあるものとすべきであり、このような度重なる基準の強化は、行政の裁量を逸脱したものではないか。
- 処分基準の強化のみでは何の根本的解決になっていない。重要なことは運送事業者による無理な運行をせざるを得ない荷主の優越性等の運送業を取り巻く背後要因を除去するような大幅な強化方策が先決である。また、飲酒運転の下命容認などの事故は言語道断であるが、基本的にトラック運送事業者は事故防止に積極的に努めてきており、事故根絶は目標ではあるが、処分の強化だけでは事故のない車社会をつくることは不可能である。特に、昨今、トラック運送事業者はドライブレコーダーの導入によって、走行中の事故は極めて減少してきてその効果を出してきているが、依然として交差点内の事故が減少していない。
- 監査端緒と関係のない(薄い)規則違反事項については、違反点数の付与されていない事業者(営業所)やGマーク取得事業者(営業所)に限り、執行猶予等のインセンティブ基準を設けていただきたい。
- トラック運送事業は基本的に荷主との運送関係からなりたっており、一定の処分あけに直ちに契約を確保できないこと等から、現行の処分でも十分効果は発揮されている。
- 特措法の適用を受けるタクシー事業とトラック事業は参入・運賃関係等、その規制内容は全く違っており、トラック関係については、現在進めるトラックの将来ビジョンの取り纏め時に必要に応じて見直すべきである。
- 行政処分にあたっては、福祉施設への派遣や里山づくり等ボランティア活動(社会貢献活動)を評価する処分制度を創設することも検討してはどうか。
- 通達の中身が大変分かりづらい。通達1本で分かり易く解説して頂きたい。別に定めるところによる等のぐるぐる廻しはやめて欲しい。(処分をされる事業者(素人)にも分かり易く説いて欲しい。無理に難しくしているとしか思えない)。
これらについては、事業者の運転者教育のみでの撲滅は限界があり、いわんや行政処分の強化をもって事故の撲滅を図っていこうとすることにも無理がある。現在、警察庁や警視庁が推進する歩車分離式信号機の設置を優先すべきである。
2.具体的な意見
- 監査方針
- 第1当死亡事故を引き起こした事業者への巡回監査の実施について
第1当か2当かは軽々に運輸局や事業者が勝手に判断できない。併せて、仮に、警察関係が1当としても事故にはその複雑な状況もあって、現状は警察関係が1当と判断したものについて道路交通法第108条の34に基づき通報されて監査となっている。なぜ現状のままではダメなのか、いたずらに監査権を乱用すべきではない。 - 行政処分逃れのための監査の実施について
事業の譲渡・譲受はトラック法でも規定されており、やみくもに監査を行って、事業者間の経済的取引を妨げることは問題である。処分後の車両等の移動は、経営者の自由裁量の範囲であって、将来的な処分逃れ対策の抑止と考えてのこととてもやり過ぎではないか。
なお、トラック運送事業は、冷蔵冷凍車等、特殊な車両を必要とした運送も多く、仮に事業停止や事業廃止になった場合、荷主企業やエンドユーザーに与える影響も大きいことにも配慮すべきである。 - 現実の問題として、処分後において運輸支局で追いかけきれるのか疑問、たまたま見つかったからということでは不公平ではないか。
- また、監査で一部譲受かどうか判断することにしているが、一部譲受として判断され、かつ違反も見つかった場合、引き継いだ点数と当該監査により見つかった違反に伴う点数の合算点数によっては事業停止或いは事業取消もありうるということか。仮にそうだとすると、処分前・後ともやり過ぎではないか。そもそも処分逃れについては、現行でも種々規定が設けられており、監査から処分に至る処理期間の短縮によってその効果は十分発揮されることから、監査によって確認する必要はなく、現行の規定を確実に執行することと処理期間の短縮で対応すべきである。
- 第1当死亡事故を引き起こした事業者への巡回監査の実施について
- 30日車未満を警告とする措置の廃止について
- 日報の記載漏れ等軽微な事項を積み重ねた30日車未満を警告とする措置は、法令遵守状況によって処分にメリハリを付けるための措置として運用され、また、警告処分はフォローアップ監査の対象となっており、事業者への指導には十分その効果を発揮してきている。軽微な事項による処分は恣意的な監査にも結びつき易く、公平性・透明性の確保の観点からも現状どおりとすべきである。
- なお、どうしても廃止しなければならない客観的理由があるとするならば、Gマーク取得の推進の観点から取得事業者へのインセンティブとして、また、適正化機関による巡回指導結果がAからCまでの事業者へのインセンティブとして残して欲しい。
- 悪質違反の処分量定についても、1.に記述した通り
- トラック関係においては、現行量定で十分その効果は発揮されていることから、改正の必要性はないのではないか。なお、トラックには、180日車以上や270日車以上等の事業停止処分事項が設けられており、従来から旅客事業に比べ強化されている。
- 社会保険等未加入の処分強化について 処分を強化しても、関係機関からの回答がなければ違反事項から外すことになっており、現状はこのようなケースもそれなりにあると聞いているが、不公平ではないか。現状をしっかり改善した後、ステップアップすべきである。
3.その他
- トラック協会会員事業者は、交通安全のためのボランティア活動を始め、365日、毎日通学児童のための横断時の旗振り等、様々な活動をしてきている。これら活動に対する処分時の評価や軽微な事案に係るGマーク取得事業者へのインセンティブの付与等、血の通った行政が必要である。
- 現在、6万3千社にも及ぶトラック運送事業の現状は、競争関係が激化しており、適正運賃の収受もままならない状況にあって、安全確保のためのコストも確保できていない現状がある。このような行き過ぎた規制緩和の状況を解消していくことを優先すべきで、参入規制の見直しや標準運賃等の設定等、先ず環境整備をすべきである。