トラック死亡事故10年ぶり増加
警察庁がまとめた2010(平成22)年中の第1当事者別死亡事故件数によると、事業用貨物車の死亡事故件数は前年比1.8%増の400件となり、2000(平成12)年以来10年ぶりに増加に転じました。ただ、2000年の事故件数759件と比べると、47%減とほぼ半減しています。
2010年の死亡事故件数を車種別に見ると、大型貨物車が4.1%増の205件、中型貨物車が5.7%増の149件、普通貨物車が17.9%減の23件、軽貨物車が14.8%減の23件となっており、中型と大型の事故が増えています。これらの内数であるトレーラーの死亡事故は19.4%減の25件となっています。
トラックの死亡事故が増加傾向にあることから、国土交通省は2010年11月1日、年末繁忙期を迎えるにあたり、全日本トラック協会に対して事故防止対策を一層徹底するよう通達しました。同省が8月末現在の重大事故について分析したところ、①横断歩道通行中の歩行者を轢いた事故57件(前年同期比46%増)②道路を走行中の自転車と衝突した事故96件(同22%増)③高速道路上での追突事故50件(同16%増)──といった事故が顕著であるため、とくにこれらの事故に対して重点的に防止対策を実施するよう求めました。
アルコール検知器の設置・使用を義務付け
国土交通省は2011(平成23)年4月1日から、トラック運送事業など自動車運送事業者に対し、アルコール検知器の設置と検知器を使用した点呼の実施を義務付けます。同省が2009(平成21)年3月にまとめた「事業用自動車総合安全プラン2009」に基づき、事業用自動車の飲酒運転ゼロの目標を達成することが目的です。
自動車運送事業者は、点呼時にアルコール検知器を用いてアルコール(飲酒)の有無を確認することが義務付けられ、営業所ごとにアルコール検知器を設置し、常時有効に保持しなければならないとされています。電話による点呼の場合は、運転者にアルコール検知器を携行させ、検知結果を報告させなければなりません。
飲酒運転に対する行政処分は、2009年10月に強化され、初違反でも100日車の車両使用停止処分、再違反は300日車の処分となります。事業所が飲酒運転を下命容認するような悪質なケースでは即時14日間の事業停止処分が科されることになります。アルコール検知器の設置義務違反も初違反で60日車、再違反なら180日車の車両停止処分が行われることになりました。
全日本トラック協会や東京都トラック協会では、アルコール検知器の設置義務違反に対する行政処分が初違反でも60日車と厳しいことについて「他の項目に比べても非常に重い」として激変緩和措置や当面は警告処分にとどめるなど弾力的な運用をすべきと申し入れていました。
酒気帯び運転処分強化で免許取り消しが急増
警察庁が2010(平成22)年7月15日にまとめた改正道交法施行後1年間の結果によると、酒気帯び運転に対する行政処分が強化されたことに伴い、運転免許取り消し処分件数が急増していることがわかりました。改正法が施行される前の2008(平成20)年6月から2009(平成21)年5月まで1年間の取り消し処分件数が3万721件だったのに対し、施行後の2009年6月から2010年5月までの取り消し処分件数は4万1,179件となり、1万458件、率にして34%増加しました。
改正法では、酒気帯び運転のうち、呼気1リットル中0.15ミリグラム以上0.25ミリグラム未満の違反点数を6点から13点に、呼気1リットル中0.25ミリグラム以上の点数を13点から25点に引き上げたほか、運転殺傷や危険運転致死傷、酒酔い運転、ひき逃げなど悪質な違反を行った場合に再度運転免許を取得できるようになるまでの「欠格期間」を最長5年から10年に延長しました。
この結果、欠格期間2年の免許取り消し件数が施行前1年間の7,539件から施行後1年間には1万9,946件へと2.6倍に激増しました。呼気1リットル中0.25ミリグラム以上の酒気帯び運転に対する処分が免許停止処分から免許取り消し処分になったことなどが原因です。また、新設された欠格期間6年~10年の取り消し処分件数は472件となり、違反別ではひき逃げ(救護義務違反)が383件と全体の8割を占めました。
海コン法案が廃案、全ト協部会は早期成立要望
2010(平成22)年12月3日の臨時国会閉幕で、政府が提出していた「国際海陸一貫運送コンテナの自動車運送の安全確保に関する法律案」が継続審議扱いとならず、廃案となることが決まりました。海上コンテナを輸送するトレーラーの横転事故が後を絶たないことから、荷主、運送事業者などに対し、コンテナ情報を運転者まで伝達することを義務付けるほか、片荷などの不適切状態にある輸入コンテナの発見・是正のための措置の実施を受荷主等をはじめとする関係者に義務付けることが主な内容で、2010年3月5日に閣議決定され、国会に提出されていました。当時の前原誠司国土交通大臣が新法制定に強い意欲を示していたことが、法案提出の原動力となっていました。
国土交通省は2011(平成23)年1月18日、通常国会への提出予定法案を発表しましたが、海コン安全運送法案については提出予定法案には入れられず、提出を検討中とされています。
こうした法案の扱いについて、全日本トラック協会の海上コンテナ部会は2011年1月25日、民主党に対し同法案の早期成立を要望しました。海コン部会の要望書は、法案が廃案となったことについて「残念を通り越して深い失望の念を禁じ得ない」と不満を表明し、通常国会での成立に最大限の努力を求めました。