東ト協、会員関与の死亡事故さらに減少
東京都トラック協会は、最重要課題として交通事故防止に取り組んでいます。2009(平成21)年には「事故半減3か年計画」を達成し、目標に掲げた会員事業者関与(第1当事者)の交通死亡事故半減を達成しました。引き続き事故防止対策を強化・拡充し徹底に努めた結果、2010(平成22)年には会員第1当の死亡事故がさらに減少しました。
2010年中の都内(警視庁管内)における事業用貨物自動車による死亡事故件数(死者数)は39件で、このうち会員関与のものは10件でそれぞれ前年に比べ1件の減少。さらに会員関与のうち第1当の死亡事故は4件で2件減少しました。「事故半減3か年計画」では会員第1当の死亡事故を9件(2006年と2007年の平均値18件の半分)以下に減らすことを目標に取り組み、2009年には会員第1当の死亡事故が6件と目標を達成したわけですが、2010年はさらにこの目標の半分以下まで減少したことになります。
東ト協では事故半減目標の達成に向けて、安全運転指導に活用できるドライブレコーダー(DR)の装着促進をはじめ具体的に事故防止に役立つ諸対策を推進してきました。DRについては独自の助成措置などにより普及促進を図り、既に2009年度までに会員事業者の保有車両の概ね半数に当たる約3万5,000台に装着されました。
さらに交差点における死亡事故がとりわけ多いことから、事故状況や要因を分析して具体的な防止対策を策定し、交差点での一時停止の励行運動などに取り組んでいます。また警視庁の協力を得て「トラック事故速報」を作成し、全会員に事故の発生場所や状況について情報提供するなど継続的に注意喚起を図るようにしています。
石原都知事から事故防止で感謝状
全国的には残念ながら、2010(平成22)年は減少傾向にあった事業用貨物自動車による交通死亡事故が前年より増加しました(10頁参照)。このため厚生労働省が8月3日、続いて9月6日に全日本トラック協会を通じて交通事故を中心とした労働災害防止対策の徹底を要請。さらに国土交通省も10月29日に全ト協を通じて事故防止の徹底を求める要請を出しました。
こうした中で東ト協では星野良三会長が2010年1月の新年理事会、さらに5月25日開催の通常総会あいさつで「環境問題への対応」や「適正運賃の収受」とともに「飲酒運転の根絶等、さらなる事故防止の徹底」を引き続き協会が取り組むべき3大テーマとして掲げ「さらにブラッシュアップしていく」と強調し、事故防止に努めてきました。
こうした取り組み努力が成果となって表れ、引き続き交通死亡事故が減少したもので、2011(平成23)年1月13日開催の東京トラック関係6団体による新年交歓会では、DR装着により交通死亡事故の防止に貢献したとして東京都の石原慎太郎知事から星野会長に感謝状が贈られ、表彰を受けました。
本部&支部一斉街頭活動を展開
東ト協では事故防止の徹底に向けてさまざまな取り組みを行っており、モデル支部指定による事故防止活動の展開や毎年2月には会員事業者の取り組み機運を盛り上げることを目的に事故防止大会を開催しているほか、春と秋の全国交通安全運動においては期間中に「統一実施日」を設定し、本部と各支部が連携して一斉に街頭指導活動を行っています。
各支部では以前から安全運転の励行や事故防止を呼びかける街頭指導活動を実施してきていますが、さらに効果的で社会的にも広くアピールできるインパクトの強い取り組みとする狙いから、2008(平成20)年度から「統一実施日」を設定して行っているものです。
2010年の春の全国交通安全運動では4月7日を「統一実施日」に設定し、18支部が参加して一斉に街頭活動を展開しました。この日を中心に期間中に25支部全体で延べ161か所で街頭活動を行い、チラシやノベルティを配布して安全運転の励行や飲酒運転の撲滅を呼びかけるとともに、交差点での歩行者や自転車の安全誘導などを行いました。同様に、秋の全国交通安全運動では9月28日を「統一実施日」とし、この日を中心に期間中に延べ162か所で交通安全の啓蒙活動を展開しました。
スケアードストレイト方式で安全教育
東ト協各支部では、支部単位で事故防止大会や講習会などを行うとともに、地域の交通安全教室にも協力していますが、最近、効果的な手法として事故の恐ろしさを疑似体験してもらうスケアードストレイト方式による安全教育・指導を行うケースが多くなっています。スケアードとは怖がるの意味で、事故などの恐怖を実感・直視させることで未然防止する教育手法です。
実施方法は、各支部地元の小・中学校の要請による「安全教室」や、交通安全運動イベントの一環などさまざまですが、地元の警察署、開催学校のPTA、交通安全協会、高齢者への参加を呼びかけたりと地域住民等の多数の関係者の協力で実施されています。多くの場合、プロのスタントマンチームによる「事故再現」で、自転車の違反・危険走行の怖さや事故に遭う機会の多いこと、交差点などにおける自動車の内輪差や死角が多いことなどを実感してもらい、事故の恐ろしさを疑似体験してもらっています。
スケアードストレイト方式による「交通安全教室」は、地元の学校からの要請によるほか、会員事業者が地域住民への安全活動の一環として行っているケースもあります。
〈会員の死亡事故半減三カ年計画(平成19年~平成21年)〉
項目 年 |
死 亡 事 故 件 数 | |
総件数 | うち会員関与一当 | |
2007(平成19) | 55 | 21(一当区分不可) |
2008(平成20) | 41 | 11 |
2009(平成21) | 40 | 6 |
死亡事故半減目標件数 (※注2) |
- | 9 |
2010(平成22)年 | 39 | 4 |
(注)
- 本表は、警視庁より情報提供して頂いている死亡事故データを東ト協が「トラック事故速報」の方法で会員に通知している件数を手集計したものである。
- 東ト協の平成19年を初年として、3年間で都内における会員の死亡事故件数を半減する計画は、平成18年(14件)と平成19年(21件)の2年間の平均死亡事故件数18件を半減することを目標とした。
交差点事故の要因分析・防止対策を推進
東京都内における事業用トラック関与の交通死亡事故の半数が交差点で発生していることから、東京都トラック協会の事故防止委員会は、交差点事故の傾向や要因を分析し、一時停止の励行など事故防止対策の徹底に取り組んでいます。交差点事故を撲滅できれば、死亡事故をさらに大きく減らすことが可能になるからです。
既に2008(平成20)年に交差点事故の傾向分析と防止対策をまとめていますが、2010(平成22)年4月には過去3年間の事故データを踏まえて「都内における事業用トラックが関与した交差点死亡事故の傾向と分析結果」をまとめました。2007(平成19)年~2009(平成21)年の3年間に都内で起きた事業用トラック関与の死亡事故は136件で、その半数に当たる68件が交差点で発生しています。このうち自動車同士の衝突事故を除く66件について分析し、防止対策を提言したものです。
分析結果によると、左折事故が20件、右折事故が27件、直進事故が19件と右折事故が最も多く、事故原因はトラック側の安全不確認など安全運転義務違反が大半を占めています。とりわけ運転席から見て死角が多い左方からの歩行者や自転車との衝突が圧倒的に多く、左方からの衝突事故が49件と右方の事故(16件)の3倍強にもなります。
このため交差点における事故防止対策として、(1)歩行者や自転車は必ずしも直進してくるわけではなく見落とす恐れがあるなど交差点は危険地帯であると十分認識し、とりわけ左方から進行してくる歩行者や自転車などに注意を要すること(2)右左折時に認知ミス(ヒューマン・エラー)を防ぐための有効な方策として「指差し呼称」や「喚呼」による安全確認を実行すること(3)右左折時に横断歩道手前での一時停止の励行と安全確認を徹底すること──などを提言し、その徹底に取り組んでいるところです。
こうした提言に基づき、東ト協では既に歩行者や自転車などに対する注意喚起を目的に「青だけど 車はわたしを 見てるかな」の文言の入ったステッカーを作成し、ドアノブ上部などに貼付して、運転前に必ず再確認する取り組みを行っています。さらに、交差点での一時停止の励行や後続車にその旨告知することを目的に「私は右左折時に 横断歩道手前で 安全確認のために 一時停止します」とのステッカーを作成し、車両に貼付して徹底する運動を引き続き推進しています。
関ト協、首都高速における事故防止方策提言
安全走行の支援ガイド(事故マップ)も作成
関東トラック協会(会長・星野良三東京都トラック協会会長)は2010(平成22)年2月に「首都高速道路における交通事故防止方策検討調査結果」をまとめ、人・車両・道路構造の各面から総合的にそれぞれの役割分担に応じて11項目の事故防止方策を提言しました。
首都高速道路においては2008(平成20)年~2009(平成21)年に大型トラックによる重大事故が相次いで発生し、特に2008年8月に起きたトレーラの横転・炎上事故では、一部区間が長期間にわたり閉鎖され、社会的にも大きな問題になりました。関ト協ではこうした事態を重く受け止め、2009年4月に1都7県のトラック協会や関東運輸局、道路管理者(首都高速道路㈱)、大型トラックメーカーで構成する検討会(座長・結城幸彦東ト協副会長、事故防止委員長)を設置し、講ずべき対策を検討し取りまとめたものです。
人の面からの対策としては、(1)トレーラ・トラクタの特性に関する安全教育の早急な実施や過労運転の防止(2)確実な点呼体制の確立(3)緊締装置(ツイストロック)の4点ロックの確実な実施(4)車両の面ではASV技術「カーブ進入危険速度制御支援システム」の早期開発(5)タイヤ空気圧と温度のモニタリング可能なシステムの導入促進、道路構造に関しては、(1)事故多発地点マップの作成と活用(2)安全速度の設定や制限速度見直し(3)高機能デジタルタコメーターなどの開発・普及(4)ITS技術を活用した安全運転支援システムの開発などを提言しました。
この提言に基づき、事故が多い危険箇所に関しては「首都高を安全に走るための支援ガイド 見やすい事故発生地点マップ」を作成しました。これは走行時に注意が必要な事故多発地点10か所と大型車横転事故発生地点12か所について、詳細な走行環境や事故発生状況と注意事項などをまとめたものです。
海コン専門部会が安全運行キャンペーン
海上コンテナ輸送用トレーラによる事故が相次ぎ、政府は2010(平成22)年3月には「国際海陸一貫運送コンテナの自動車運送の安全確保に関する法律案」(国会審議の事情などで廃案に)を提出しましたが、こうした中で東京都トラック協会の海上コンテナ専門部会は関東運輸局・東京運輸支局との共催で、8月10日に品川コンテナターミナルで「海上コンテナセミトレーラの安全運行に係るキャンペーン」を実施しました。
キャンペーンでは、海コン専門部会が作成した「緊締装置4点ロック完全実施 東京地区コンテナターミナル対応マニュアル」(改訂版)を運転者に配布し、4点ロックの確実な実施の徹底や安全運行を呼びかけました。
アルコール検知器の導入助成・展示会
国土交通省は「事業用自動車総合安全プラン2009」の目標の1つに掲げる飲酒運転撲滅のため、2011(平成23)年4月1日から貨物自動車運送事業者に対して、点呼時におけるアルコール検知器による酒気帯びの有無の確認と、その記録を義務付けることにしました。これに対応して東京都トラック協会は、2010(平成22)年度の単年度事業として、アルコール検知器の導入助成制度を創設しました。
この助成制度は、アルコール検知器の購入価格またはリース料金総額(消費税を除く)が1器1万円以上のものに対して1事業者3万円まで助成するもので、予算額としては9,000万円を計上。ハンディ型や記録型、遠隔地検査管理型、アルコール・インターロック型の各検知器を対象に2010年8月から助成申請の受付を行いました。
さらに、同年12月開催の東ト協第4回常任理事会・理事会合同会議で導入実態などを踏まえて助成制度を見直し、助成制度の拡充を図りました。購入価格またはリース料金総額(消費税を除く)が1器6万円を超える場合、1事業者5万円を上限に1器分のみを対象にその2分の1(100円単位の端数切り捨て)を助成する制度を追加して設けたもの。当初の助成制度で申請済みの場合も、遡及適用し選択利用できるようにしました。
あわせて会員事業者の導入機種の選定などに役立ててもらうため、2月に開催した事故防止大会の会場ロビーでアルコール検知器を展示。さらに、当初の助成制度の申請受付開始に先立って7月27日、東京都トラック総合会館で展示説明会を開催しました。この展示説明会にはメーカー8社が出展し、会員事業者300人以上が来場しました。助成制度とあわせて展示説明会などで導入機種に関する情報提供を行い、会員事業者が義務化に円滑に対応できるように努めました。
検知器義務化、処分基準改正で意見提出
国土交通省はアルコール検知器の義務化のため、2010(平成20)年4月28日に貨物自動車運送事業輸送安全規則などを一部改正、同年12月15日に義務化違反に関する行政処分基準などを改正しましたが、東ト協ではこれら改正案に対するパブリックコメント(意見公募)で業界の実情などを踏まえて意見提出しました。
東ト協は2月19日、アルコール検知器義務化のための輸送安全規則の一部改正案に関して意見提出し、既に2009(平成21)年10月施行の監査方針と行政処分の強化により「飲酒運転違反をした事業者にとっては事業存続が困難となる極めて厳しい処分基準」になっていると指摘し、まずは処分強化の効果などの検証を優先すべきであり、義務化は「時期尚早」と訴えました。また、義務化する場合には検知体制の整備支援のため、事前に導入補助制度を設けるべきなどと主張しました。
検知器義務化違反に関する行政処分基準に関しては10月28日に意見提出し、備え義務違反の初違反で車両停止60日車の行政処分は他の処分項目に比べて「極めて厳し過ぎる」と訴え、さらに備え付け義務は新設規定であり激変緩和措置を講ずることや、当面は口頭警告あるいは警告処分が妥当などと主張しました。また、検知器の常時有効保持義務違反に関しては、機器の精度が不安定な状況において、初違反で20日車の処分を行うのは問題であり、口頭警告が妥当と主張し、警告以上の処分を行うのであれば国が機器指定を行うべきと訴えました。
グリーン・エコプロジェクト、さらに参加促進
東京都トラック協会は重要課題として環境対策を積極的に推進し、低公害車導入やNOx・PM低減装置の装着支援など各種対策を実施していますが、なかでも最重点事業として「グリーン・エコプロジェクト」を引き続き強力に推進しました。
このプロジェクトは2006(平成18)年から実施しているもので、運転者自身が燃費管理を行うことで燃費意識を高め、エコドライブ(省エネ運転)を推進し燃費改善を図る取り組みです。大きな狙いは、燃費改善にとどまらず、取り組みを通じて「環境CSR(企業の社会的責任)」を遂行し、経営改善を図ることにあります。
運転者が「走行管理表」に燃費を記入し管理するという簡便な取り組みですが、燃費改善効果は大きく、2009(平成21)年度までの4年間平均で燃費は6.23%向上し、これによりCO2排出量を約2,195万キログラム削減した計算(スギの木約157万本の植樹に相当)になります。
あわせてエコドライブの推進は安全運転の励行にもつながるため、交通事故が約40%も減少し、事故防止の面でも大きな成果を上げています。東ト協では「事故半減3か年計画」の目標を達成しましたが、ドライブレコーダーの装着・活用とともに、グリーン・エコプロジェクトの取り組みが目標達成のうえで大きな原動力となりました。
東ト協ではグリーン・エコプロジェクトの取り組みをさらに推進する狙いから、参加事業者の中でも大きな成果を上げている事業者を対象にトップランナー表彰を行っています。
関東運輸局長表彰、物流連表彰を受賞
グリーン・エコプロジェクトは、簡便な取り組みで大きな成果を上げているだけに、国内外から注目され高い評価を受けています。2010(平成22)年度には、この取り組みにより東ト協は関東運輸局長表彰(環境保全部門)を、さらに日本物流団体連合会の第11回物流環境大賞で物流環境啓蒙賞を受賞しました。既にこのエコプロジェクトは、2007(平成19)年度に環境大臣賞、2009(平成21)年度に東京都環境賞知事賞を受賞しており、新たな栄誉となりました。
アジアEST地域フォーラムで発表
グリーン・エコプロジェクトの成果は海外にも紹介され、東ト協は2010(平成22)年8月にタイ・バンコクで開催された第5回アジアEST地域フォーラム(アジア地域における環境的に持続可能な交通の実現を目指した政府ハイレベル政策対話会合)で、日本における物流事業者の環境対策の取り組みとして発表しました。
東ト協は講演で、走行管理表で燃費管理するという「紙と鉛筆」による簡便な手法で、しかも燃費改善に加えて交通事故防止に大きな効果を上げていることなどを説明し、協力を求める意向を示す国際機関もあるなど大きな反響がありました。
これに先立って2009(平成21)年12月にデンマーク・コペンハーゲンで開催されたCOP15(国連気候変動枠組条約第15回締約国会議)の「車社会における持続可能な環境対策会議」において、国土交通省が日本の運送業界における先駆的な取り組み事例として紹介していますが、改めて高い評価と関心を集めました。
東ト協、ポスト新長期適合車に導入補助
東京都トラック協会は従来から低公害車導入促進補助事業としてCNG車やハイブリッド車の導入を支援していますが、2010(平成22)年度においては新たに対象車種にポスト新長期規制適合車を追加し、10月25日から補助申請の受付を行いました。
対象は車両総重量3.5トン以上のポスト新長期規制適合のディーゼルトラックで、2011(平成23)年3月15日までに都内で車両登録したもの。補助額は中型(4トンクラス)10万円、大型(8トン超クラス)18万円。2010年9月の環境委員会で補助対象に加えることを決め、2010年度の低公害車導入促進補助予算の枠内で実施することにしたものです。
政府は10月26日に閣議決定した2010年度補正予算で、新たに2015(平成27)年燃費基準を達成し、かつポスト新長期規制適合のディーゼルトラック・バス導入に対する補助制度を創設し、CNGやハイブリッドトラックなど従来からの低公害車導入補助と合わせて77億円の予算を計上しました。こうした国の動きに合わせて、東ト協としていち早く対応することにしたものです。
なお、国のポスト新長期規制適合トラックへの補助額は3.5トンクラスが10万円、8トンクラスが25万円、12トンクラスが60万円で、補正予算による緊急経済対策が閣議決定された2010年10月8日にさかのぼって適用。
適正運賃の収受に向け原価管理徹底へ
~運送原価計算ソフト活用へ全支部で研修会~
東京都トラック協会は2010(平成22)年度において、安全・環境への対応とともに重点事業の3大テーマの1つとして原価意識の浸透・徹底による「適正運賃の収受」の推進を掲げ、これに向けた取り組みを進めました。
東ト協は2009(平成21)年度に「武田式運送原価計算システム」のソフトを会員事業者に配布し活用を促していましたが、その一層の普及活用を図るため、全支部でこの原価計算ソフトに関するセミナーを開催しました。セミナーは2010年7月30日に渋谷支部と世田谷支部が合同で開催したのを皮切りに11月上旬にかけて22回実施され470人が参加しました。
これにより会員事業者の関心も高まり、追加開催やさらなる高度活用のためのセミナー開催の要望が寄せられたことから、2011(平成23)年2月1日に入門コース、2日に応用コースのセミナーをそれぞれ開催し、この原価計算ソフトの普及活用に努めました。
適正運賃の収受に向けては、これまでも再生産可能な運賃の収受をはじめ、適正取引の推進について荷主業界団体に理解と協力を要請するなど対応に努めてきています。しかし、東ト協で実施している経営分析結果や東京都トラック運送事業協同組合連合会(植田昌宏会長)の運賃動向調査などに見られるように、経営環境は依然厳しく、運賃水準も事業者が希望するものとはかけ離れた水準にあるのが実情です。
こうした中で経営改善を図り健全経営を維持していくためには、まず運送の効率化を推進し、1台当たりの生産性を上げていくとともに、運賃についても適正な運送原価に基づいて運賃交渉を行い、適正収受に努める必要があります。このためには事業者自身が原価意識を高め、原価管理を徹底していく必要があります。
そこで東ト協では、適正運賃の収受に向けた対応として原価計算ソフトの普及活用に重点的に取り組んでいるものです。既に事故防止では「事故半減3か年計画」目標を達成し、また環境問題への対応でもグリーン・エコプロジェクト事業で大きな成果を上げていることから、星野良三会長は2011年1月の新年理事会あいさつで「原価計算による再生産可能な運賃の収受を最大テーマとし、一に原価計算、二に原価計算、三に原価計算の意気込みで臨む」と語り、2011年度の最優先テーマとして取り組む方針を強調しました。
東ト協経営分析、深刻な実態が浮き彫りに
東京都トラック協会は2010(平成22)年11月に2009(平成21)年度決算を対象にした「経営分析調査」結果をまとめ発表しました。それによると、会員事業者の経営状況は営業赤字の企業が5割以上を占め「走れば走るほど赤字」状態という厳しい実態が浮き彫りになり、運送原価(コスト)に見合った適正運賃の収受が極めて重要な課題となっています。東ト協の経営分析調査は前年度から実施しているものです。
2009年度決算の経営分析(239社を対象)によると、本業の一般貨物自動車運送事業で営業黒字の企業割合は46%で前年度より8ポイント、経常黒字の割合は55%で12ポイント増えていますが、1社平均売上高は1億8,496万6,000円で前年度に比べ2割減少し、本業の営業利益率はマイナス0.7%と前年度に続き営業赤字です。
日車当たりの営業損益は営業収益3万7,939円に対して営業費用3万8,221円とマイナス282円で赤字幅が拡大しています。走行1キロ当たりの営業損益もマイナス2円と赤字状態が続いており、特に車両10台以下はマイナス14円、11~20台がマイナス3円と小規模事業者ほど赤字幅が大きく、「実運送事業」は危機的状況にあると言えます。このため運送原価に見合った適正運賃の収受が大きな課題となっています。
厳しい状況は、東京都トラック運送事業協同組合連合会が実施している「運賃動向に関するアンケート調査」結果でも収受運賃が依然厳しい水準にあることでも裏付けられています。
同連合会の2010年7月末時点を対象とした第13回運賃動向調査結果によると、現行の収受運賃は希望する運賃に比べて「低い」が45.4%と最も多く、「少し低い」「極めて低い」を含め「低い」とする事業者が9割を超えており、希望する水準とはほど遠い状況にあります。希望する運賃水準は、現行収受運賃に対してアップ率「10~15%未満」が37.0%と最も多く、次いで「5~10%未満」が31.5%です。
東ト協ダンプ専門部会、緑ナンバー優先使用を要請
東京都トラック協会のダンプ専門部会は輸送秩序の確保のため、「緑ナンバーダンプの優先使用とその指導徹底」について2010(平成22)年10月6日に関東地方整備局に、同月13日に東京都に対して要請しました。ダンプ専門部会がこうした要請を行ったのは初めてです。
総理府通達で「土砂等の運搬が運送契約によって行われるときは、運送許可を受けた者の車両に限って使用するよう」指導が行われています。しかし依然、白ナンバーによる営業類似行為が後を絶たず輸送秩序が乱れていることなどから、公共工事において「安全対策にしっかり取り組んでいる安心・安全な営業用緑ナンバーダンプの優先的使用並びに(工事発注当局や元請建設会社等に対して)指導の徹底」を要請したものです。
中型免許問題で普通免許範囲の見直しを要望
中型運転免許の創設など改正運転免許制度が2007(平成19)年6月に施行されましたが、制度改正で普通免許の範囲が狭められたことに伴い積載量2トンクラスでも普通免許で運転できないものが多く、一方で中型免許は取得資格が引き上げられたことにより、若年層の運転者採用が制約される問題が生じています。
このため東京都トラック協会輸送委員会は、2010(平成22)年7月12日に開催した委員会で改正免許制度をめぐる問題について協議し、免許区分の見直しを要望する方針を決定。また、東ト協は輸送委員会のメンバーを中心に「中型免許問題検討委員会」を9月22日に設置して検討を進めました。その後、2010年11月30日付で全日本トラック協会(中西英一郎会長)に対して要望書「普通自動車免許に係る要件緩和について(お願い)─中型自動車免許制度関係の要件緩和─」を提出し、警察庁はじめ関係行政機関などに対して普通免許の要件緩和を働きかけるように要望しました。
要望内容は(1)普通免許の要件を緩和し車両総重量7トン未満・最大積載量3.5トン未満まで引き上げること(2)減少傾向にある中型・大型免許を取得できる教習所の増設などです。全ト協への要望については、大都市圏では東京と同様に積載量2トンクラスの車両が多く影響が大きいと見られることから、大阪府や愛知県各トラック協会にも伝え連携した対応を要請しました。
都内の営業用トラックを総重量別に見ると、普通免許範囲の5トン未満は約3万1,000台(2010年9月末現在)で全体の約3割ですが、これを超える5トン以上6トン未満が約1万6,000台、6トン以上7トン未満が約9,500台、合計で約2万5,500台と約24%を占めています。また、このうち最大積載量が3トンを超え3.5トン未満のものが約7,000台、3割弱あります。こうした実態を踏まえて普通免許範囲の引き上げを要望したものです。
なお全ト協は東ト協などからの要望を踏まえつつ、2011(平成23)年2月1日付で「普通自動車免許に係る要件緩和に関する要望書─中型自動車免許制度関係の要件見直し─」を警察庁に提出、普通免許の範囲を車両総重量6.5トン未満まで引き上げるように要望しました。
若年運転者確保の「阻害要因」に
運転免許制度の改正により、普通免許の範囲は総重量5トン未満・最大積載量3トン未満に狭められ、これに代わるかたちで総重量5トン以上11トン未満・最大積載量3トン以上6.5トン未満を範囲とする中型免許が新設されたわけですが、その取得資格は年齢20歳以上・経験2年以上に引き上げられました。
しかし、最近では積載量2トンクラスでも総重量が5トンを超える車両が多いのが実態です。特に低公害車のCNG車やハイブリッド車は燃料タンクやバッテリーが重量化し、また荷役作業負担の軽減のため、パワーゲートやクレーンなど省力化機器を装備した車両はそれだけ架装重量が重くなり、これに伴って総重量が5トンを超え普通免許では運転できなくなりました。これら車両を運転するには中型免許が必要ですが、取得資格の引き上げにより、20歳以上にならないと取得できません。
このため、若年運転者を新規採用しても直ちに運転業務に従事できない、もしくは乗務できる車両が極めて限定されるなどの問題が生じています。近年、若年層に「車離れ」の傾向が見られますが、この中で免許制度上の制約も加わり、今後ますます若年運転者の確保が難しくなる恐れが強まっています。
こうした免許制度改正をめぐる問題については、国土交通省の「トラック産業の将来ビジョン検討会」の中間整理でも、中型免許の区分や取得年齢の引き上げなどが若年運転者確保の「阻害要因として顕在化しつつあるとの指摘がなされた」と言及しています。
「中型」無資格運転防止で対応策
~注意喚起ステッカー&キーホルダー作成~
免許制度改正後の新普通免許を取得した者が総重量5トンを超える車両を運転すれば無資格(無免許)運転になります。特に積載量2トンクラスでは、車体形状が同じでも総重量が5トンを超える場合が多いため、注意を要します。このため東ト協事故防止委員会では、運行管理者や運転者に注意喚起し、中型免許が必要な車両であることを示すステッカーやキーホルダーを作成しました。
免許区分の変更に対する認識不足や思い違いなどによる無資格運転違反を未然防止するためで、事故防止委員会では、中型免許問題を所管する輸送委員会と協議のうえで作成することにしたものです。新普通免許で総重量5トンを超える車両を運転させた場合、事業者も無資格運転の下命容認として行政処分の対象となる可能性があるからです。
既に中型免許範囲の誤認などにより無免許運転違反となったケースも出ており、佐賀県警察本部は2010(平成22)年3月に「中型免許制度の再確認および管理の徹底について」全日本トラック協会を通じて各都道府県トラック協会に要請し、注意を呼びかけています。
違法駐車対策で要望、規制緩和区間が拡大
東京都トラック協会は、営業用トラックに対する駐車規制の見直し・緩和をさらに進めてもらうため、2010(平成22)年3月19日に警視庁に「違法駐車対策に関する要望」、また3月30日には東京都に「駐車対策に関するお願い」を提出し、配慮を要請しました。
具体的には、警視庁に対して(1)集配中の営業用トラックの駐車禁止規制除外措置の拡大(2)荷捌き可能なパーキング・メーターの整備・拡充(3)駐車許可・許可証発行の要件緩和などを要望しました。また東京都に対しては(1)商店街など地域の集配用トラックの駐車場所確保の必要性に対する周知(2)荷捌き用施設の整備などを要望し、対応を求めました。
警視庁や東京都は、これまでの東ト協などの要望を受けて対応しつつありますが、会員事業者に対するアンケート調査結果よると、10分以内の短時間でも取り締まりを受ける場合が多いなど「トラック運送事業者は今なお荷捌き場所の確保など駐車対策に苦慮している」状況にあり、円滑な集荷・配達の遂行のうえで大きな問題になっていることから、改めて駐車規制の緩和などを要望したものです。この結果、10月に新たに規制緩和区間が拡大されました。
新たに10区間で駐車規制の緩和措置
警視庁は荷捌き車両に配慮した駐車規制の緩和措置として2010(平成22)年10月22日から、新たに外堀通り(都道、千代田区飯田橋4丁目~新宿区神楽河岸1)など10区間で駐車規制を緩和しました。警視庁はこれまでも築地市場や日本橋問屋街など13区間で段階的に規制緩和してきましたが、これにより合わせて23区間で駐車規制の緩和が実施されたことになります。
2010年度の東京都議会第1回定例会において、警視総監が駐車規制見直しに関する質問に対して、荷捌きなどの需要が多く緩和の必要性が高いと思われる約40区間について緩和の可否を調査中である旨答弁し、道路状況や駐車需要などに応じてきめ細かな配慮のもと緩和していくとしていました。10区間の規制緩和もこれに基づくもので、今後さらに緩和区間が増える見込みです。
高速料金制度の見直しで相次ぎ要望
大口多頻度割引継続や営業用特別割引を
高速料金制度の見直しに関して、国土交通省は2010(平成22)年4月9日に上限料金制の導入と大口多頻度割引など既存割引制度の廃止を発表しました。しかしトラック運送業界はじめ各方面からの反対が強く、また首相交代などの政局とも絡んで実施に至らず、年末には再見直しにより12月24日に「高速道路の料金割引に関する基本方針」が新たに示されました。こうした高速料金制度の見直しの動きを踏まえ、東京都トラック協会は東京都トラック運送事業協同組合連合会と連携し要望活動を展開しました。
上限制などの見直し案の正式発表に先立って2010年2月23日、東ト協は東ト協連と連名で当時の民主党副幹事長(幹事長室国土交通省担当)の阿久津幸彦衆議院議員に要望書を提出し、(1)割引制度見直しに当たっては現行割引後料金を上回らないこと(2)事業協同組合のETCコーポレートカード契約による大口多頻度割引制度の継続(3)営業用トラックの特別割引制度の創設──の3項目を要望しました。
既存割引が廃止され上限料金制に一本化された場合、実質的に現行より値上げになるばかりでなく、中小零細のトラック運送事業者はETCコーポレートカードの利用が困難になるため、事実上「高速道路利用から排除されるに等しい」と訴えました。
さらに、首都高速における平日昼間割引(ピーク時3%割引、オフピーク時10%割引)の4月からの廃止が発表されたことから、東ト協と東ト協連は急遽3月24日に民主党の阿久津衆議院議員に要望を行い、(1)平日昼間割引および平日夜間割引、日曜・祝日割引の継続と、さらなる割引率の引き上げ検討(2)既に廃止された高額回数券並みの割引率(18.4%)の確保などを求めました。
首都高速「距離制」料金に強く反対
国土交通省は4月に発表した高速料金制度の見直しで、首都高速・阪神高速道路の料金制度について「現行の料金圏を撤廃し対距離制を基本とする上限料金制」を導入するとしていましたが、かねて距離別料金の導入に反対していた関東トラック協会と東ト協は6月18日、東京都の石原慎太郎知事および東京都議会の自民党・民主党・公明党を訪れ、その見直しなどを要望しました。
具体的には(1)営業用トラックが担う公共的使命に配慮し特別料金制度の導入(2)距離別料金制度の導入に当たっては現行料金を上回らないこと(3)廃止された平日昼間割引の復活実施などを求めました。特に距離別料金については、大半の営業用トラックが料金ベースで約20%の負担増になるなど実質的に大幅な値上げになる根拠を示し、「多頻度利用者であるトラック運送業界としては到底容認できない」と導入反対を強く訴えました。
さらに、東ト協と東ト協連は10月29日に中日本高速・東日本高速・首都高速の各高速道路会社に連名で要望書を提出し、これまで訴えてきた大口多頻度割引の継続や距離別料金の見直しなどを改めて求めました。
国土交通省は、2010(平成22)年12月24日に高速道路の料金割引に関する基本方針、2011(平成23)年2月16日にこれに基づく当面の新たな料金割引について発表。一般高速(NEXCO)においてトラックなど中型車以上は上限制を導入せず、現行の大口多頻度割引などを継続。一方、首都・阪神高速では2012(平成24)年から距離制が導入されますが、導入に際しては物流事業者向け割引の拡充措置などが講じられることになっています。
首都高速道路の料金割引で意見
東京都トラック協会は2011(平成23年)2月28日、「高速道路の当面に新たな料金割引に関する計画(案)」に対する意見公募(パブリックコメント)に対応し、「首都高速道路の料金割引について」との意見を提出しました。
意見は次のとおりです。
- 距離別料金制の導入にあたっては、現行料金を上回らないこと。
- 距離別料金制の導入による料金圏の撤廃に賛成します。
- 距離別料金制のキロ分布については、トラックの利用が、1走行当たり平均24㎞(普通車21㎞、大型車26㎞)であるところから、現状の利用実態を踏まえ、この平均走行キロの部分は、現行料金と同額にしていただく対応を図られたい。
- 事業用トラックの公共的役割を配慮の上、大口・多頻度割引の充実を図られたい。
- 契約者単位割引を、現行の5%から、10%への充実。
- 車両単位割引を、現行の最大の5万円超12%を、3万円超20%に充実。
- 5契約者に対する「集金事務集約化協力金」の復活・実施。
- 通行量の少ない夜間の活用を含め、現行の平日・土曜の夜間割引(20%)の継続。
意見公募した「当面の新たな料金割引に関する計画(案)」は、国土交通省が2011年2月16日に発表した「高速道路の当面の新たな料金割引について」(8頁「高速料金、トラックの値上げ回避」参照)に基づくもの。日本高速道路保有・債務返済機構、東/中/西日本高速道路、首都高速道路、阪神高速道路、本州四国連絡高速道路が2月25日から3月4日まで実施しました。
業界イメージ向上へ対外広報活動を強化
東京都トラック協会は業界が担う公共的使命や役割を広くアピールし、社会的地位の向上やイメージアップに努めていますが、広報委員会では特に対外広報活動の強化に取り組んでおり、「トラックの日」(10月9日)などを中心に積極的に広報活動を展開しました。
2010(平成22)年の「トラックの日」に際しては、一般紙にカラー広告を掲載し「都民の暮らしを運ぶ緑ナンバー」などとして業界の役割をアピールし、直前の10月3日から9日までJR渋谷駅前スクランブル交差点の前に設置されている3基の屋外大型ビジョンで東ト協テレビCMを放映。あわせて東京MXテレビやTBSラジオの東ト協提供番組内で「トラックの日」をPRするCMを流しました。
また協会各支部では地元のイベントなどに参画するかたちでさまざまな活動を行っていますが、本部イベントとして10月2、3日には江東区の「アーバンドックららぽーと豊洲」で開催された「BO-SAI 2010 in 豊洲 EXPO」に協賛し東ト協ブースを出展。東ト協の役割や安全・環境対策、緊急輸送体制などを紹介するパネル展示を行ったほか、オリジナル缶バッチや新鮮保存バッグなどをプレゼントしました。