「準中型運転免許」創設へ
~総重量3.5~7.5トン、18歳で取得可能
警察庁は2014(平成26)年7月10日、「貨物自動車に係る運転免許制度の在り方に関する報告書」をまとめ、発表しました。運転免許制度と自動車の実態との間にギャップが生じているため、同庁は2013(平成25)年9月に有識者検討会を設置して検討を行い、取りまとめたものです。
報告書では、貨物自動車が大部分を占める車両総重量3.5トン以上7.5トン未満の自動車の運転について、貨物自動車を用いた教習・試験を行う新たな免許区分「準中型自動車」免許を導入し、18歳で取得可能とする案をベースに、さらなる総合的な安全対策を検討することが適当と提言しました(図)。総合的な安全対策は、初心運転者に対する安全対策の充実、貨物自動車運送事業法体系の中での運転者研修や教育の強化、事故防止や被害軽減のための貨物自動車の装備の拡充、運行管理・支援システムの充実などです。
全日本トラック協会は2014年10月22日、警察庁に対して要望を提出し、報告書の提言を評価する一方、新たな免許を取得するための教習時間について、免許取得者の負担軽減に配慮するよう求めるとともに、施行までの期間について、中型免許創設時の3年間に比べて1年程度前倒しするよう求めました。
国交省・全ト協が安全対策
国土交通省と全ト協は2014年12月11日、貨物自動車の総合安全対策に関する中間整理を行いました。中間整理では、初任運転者や一般運転者教育の充実について、必要な制度改正を行うとし、初任運転者教育については、全ト協がカリキュラムの作成や実施体制の整備などを検討することにしました。また、各都道府県の事業用貨物自動車1万台当たりの死亡事故件数データをもとに、死亡事故率の低い地域の対策を水平展開するとともに、全国統一の目標(死亡事故率・1万台当たり2.0件以下)を定め、さらに対策を強化する方針を示しました。
道交法改正法案が可決・成立
政府は2015(平成27)年3月10日、「準中型自動車」免許(車両総重量3.5トン以上7.5トン未満)の創設を盛り込んだ道路交通法改正法案を閣議決定し、国会に提出しました。改正法案は同年4月17日に参議院本会議で可決された後、6月11日に衆議院本会議で可決・成立しました。施行は公布から2年以内で、2017(平成29)年6月頃までに施行される予定です。
準中型免許の受験資格は18歳以上で、安全性を担保する観点から、教習・試験は貨物自動車を用いて行います。普通免許を経ずに準中型免許を取得することが想定されるため、取得後1年間は初心運転者標章(初心者マーク)の標示を義務付けました。また、取得後1年以内に違反行為を行い、一定基準に達した場合には再試験を行うほか、過労運転などの違反行為で人身事故を起こした場合には、免許の仮停止の対象になります。
初任運転者教育の強化へ
国土交通省は2014(平成26)年12月16日、「自動車運送事業に係る交通事故対策検討会」を設置し、初会合を開きました。道路交通法改正により、準中型運転免許が18歳で取得可能となることに伴い、車両総重量5.0トン以上7.5トン未満については、免許取得可能な年齢が現在の20歳から18歳に2歳引き下げられることになるため、運転者教育の強化を検討することにしたものです。
これまでの検討結果によると、事業用のトラック運転者に対する指導・監督指針(告示)を改正し、初任運転者と一般運転者で分かれている指導項目を共通化するとともに、現行の11項目以外に「交通事故統計を用いた教育」「緊急時の状況を評価する能力向上」「貨物の特性を理解した運転」「適切な安全装置の使用方法」を追加する方針です。
また現行の指針のうち、事業者による教育が徹底されていない事項として運転姿勢の基本、車両管理や労働時間に関する規定、事業者に対する行政処分、過積載に対する罰則および措置、荷主などの禁止事項などについても、明文化する方針です。
さらに、現行の指針で努力義務となっている「指差し呼称および安全呼称」「適性診断結果に基づく運転者の運転行動の特性自覚」を新たに義務規定とする方向です。指導に当たっては、実際にトラック(実車)を運転させ、添乗などにより運転方法を指導するとともに、貨物の積み込みや積み付けについても実技指導を行い、技能を修得させる方針です。準中型免許が施行される2017(平成29)年までに告示を改正・施行する予定です。
国交省懇談会が健全化・活性化策
国土交通省は2014(平成26)年7月4日、「トラック産業の健全化・活性化に向けた有識者懇談会」を開き、今後の対応策について取りまとめました。健全化策では燃料サーチャージや取引書面化の普及、多層構造の適正化について実態調査を行い、その結果を踏まえて対策を検討することにしました。また、全日本トラック協会が要望していた、新規事業者の事業開始時のチェックの厳格化についても検討していくことにしました。
一方、トラック産業の活性化策の内容は労働力の確保対策が中心で、業界イメージの改善やキャリアアッププランの提示、若年層へのアピールの強化、女性の活用促進などについて、具体的なタイムスケジュールを示したロードマップを提示しました。この中で女性トラック運転者を「トラガール」と命名し、同省ホームページに「トラガールサイト」を立ち上げるなど、女性の活用を強く打ち出し、2020(平成32)年までに女性トラック運転者数の倍増を目指す目標を掲げました。
なお、2014年9月9日には業界の女性トラック運転者「トラガール」2人が、全ト協の星野良三会長らに伴われて、安倍晋三首相を表敬訪問し、激励を受けました。
労働力確保へ女性・若者の就業促進
国土交通省自動車局は2014(平成26)年7月7日、「自動車運送事業等における労働力確保対策」をまとめました。自動車運送事業は中高年層の男性労働力に依存しており、将来的に深刻な労働力不足が懸念されるため、不規則・長時間・力仕事といった業界実態を抜本的に改革し、女性や若者の就業を促す必要があると指摘しました。
具体的には、女性や若者への戦略的なリクルートなど採用から定着まで一貫した取り組みを進めるとともに、中継輸送の導入や女性向け短時間勤務の導入など「働き方」を変える抜本的な取り組み、さらに、非効率な商慣行の是正など労働生産性を向上させる輸送効率化への取り組みを進める方針を示しました。
これらの取り組みについて、国が先進事例を収集して事業者への普及を図るとともに、「働き方」の改革については事業モデルの構築を支援する方針です。制度面では運行管理制度、運転者スキルの「見える化」などについて検討する方針を掲げています。
物流業界を退職自衛官の受け皿に
国土交通省物流部門は2015(平成27)年3月20日、「物流問題調査検討会」を開き、「物流分野における労働力不足対策アクションプラン」をまとめました。これは2015年度から2017(平成29)年度までの3か年を計画期間とし、特に労働力不足が顕著なトラック運転者などを重点分野として、労働力確保のために官民が講ずべき46項目の施策を総合的に取りまとめたものです。
新規就業の促進と定着率向上の観点から、トラック運転者の賃金などの待遇改善に向けて運賃・料金の適正収受を促進するほか、労働負荷を軽減するため、荷役および手待ち時間に係る商慣行の見直し、中継輸送の導入などを挙げています。
また人材確保方策の一環として、退職自衛官の再就職円滑化に向けた取り組みを新たな施策として盛り込みました。退職自衛官の再就職について、事業者団体が事業者の求人票を取りまとめ、自衛隊地方協力本部などに一括して提出できる枠組みを創設したものです。国交省と防衛省は3月20日付でこの旨、日本物流団体連合会と全日本トラック協会に文書で通知し、トラック運送業界が先行して運用を開始しました。自衛官は、大型免許や自動車整備士などの免許・資格を有する技能人材が多く、即戦力として期待されそうです。
一方、物流の効率化・省力化は、労働力不足が深刻化する中、少ない人数でより多くの貨物を輸送しようという取り組みです。鉄道や海運といった大量輸送機関へのモーダルシフトを促進するとともに、トラックの共同輸配送や国際海上コンテナのラウンドユースの促進など、オペレーションの効率化を図っていくことにしています。
新規参入時の事前チェック強化
国土交通省は2015(平成27)年3月9日、トラック運送事業の「新規参入時における事前チェックの強化」を内容とする通達を改正し、公布しました。施行は同年6月1日からです。
トラック運送事業の新規許可は書類審査だけで行われ、施設や車両、運行管理体制などが事業計画通りか否かの確認が不十分なため、許可条件に適合しないまま事業開始するケースが見られ、輸送の安全確保を阻害する一因となっていたからです。このため全日本トラック協会は2014(平成26)年5月、国交省に対して地方運輸局などによる現地確認を行い、新規許可時の手続き厳格化などを要望していました。
通達改正により、運輸開始時において確実に運行管理や車両管理が行えるよう、その運輸開始前に運行管理者や整備管理者の選任届を提出させることにしました。また、これらの選任届や選任運転者の運転免許証の写し、社会保険などに加入した人数が分かる書類を添付書類として提出させることにしました。さらに、これまで運輸開始から6か月以内に実施していた適正化指導員による新規事業者に対する特別巡回指導を、運輸開始の届け出後1か月以降3か月以内に実施時期を前倒して行うようにしました。
運送契約の書面化、7割が「必要」
国土交通省は2014(平成26)年4月1日、貨物自動車運送事業輸送安全規則(省令)を改正し、トラック運送事業者に対し、荷主と協力して適正な取引を確保することを努力義務と定めました。同時に「トラック運送業における書面化推進ガイドライン」を定め、運送契約に際して、附帯業務や運賃・料金などの重要事項を荷主などとの間で、書面により共有することをルール化しました。
全日本トラック協会が2015(平成27)年2月にまとめた書面化に関するアンケート調査結果によると、72%の事業者が書面化は必要と答え、その効果として「収受する運賃が明確になった」(56%)、「附帯業務内容が明確になった」(41%)などが挙げられました。
一方、書面化が困難な項目としては、多い順に①運賃・燃料サーチャージ、②有料道路利用料・附帯業務料・車両留置料等、③附帯業務内容、④運送日時――などです。
長時間労働改善へ割増賃金率引き上げ
労働政策審議会は2015(平成27)年2月13日、「今後の労働時間法制等の在り方について」の建議をまとめ、厚生労働大臣に提出しました。月60時間超の時間外労働に対する法定割増賃金率50%以上について、2019(平成31)年4月から中小企業に対しても適用することを明記しました。また長時間労働者比率が高い業種を中心に、関係行政や業界団体などが連携し、長時間労働の抑制に向けた環境整備を進めることが適当と提言しました。
これを受けて厚生労働省は同年4月3日、労働基準法改正法案を国会に提出し、長時間労働者比率が高いトラック運送事業の長時間労働抑制に乗り出す方針を示しました。荷主都合による手待ち時間など、運送事業者の取り組み努力だけでは長時間労働を改善することが困難な実態があることから、国として労働時間短縮に向けた諸対策を進めることにしたものです。
具体的には、中央と各都道府県に厚労省や国土交通省など関係行政と荷主業界、トラック運送業界などで構成する協議会を設置して、長時間労働の抑制・改善に取り組む方針です。これに伴い同年5月20日、第1回「トラック輸送における取引環境・労働時間改善中央協議会」が開催されました。協議会では、運転者の労働実態調査を行い、この結果を踏まえて、阻害要因などを整理して改善策を検討し、パイロット事業を行うとともに「長時間労働改善ガイドライン」を策定する方針です。パイロット事業は、各都道府県で各2件、全国で計100件程度実施する計画です。
軸重制限を緩和、悪質違反は即告発
国土交通省は2014(平成26)年5月9日、「道路の老朽化対策に向けた大型車両の通行の適正化方針」をまとめ、全日本トラック協会に対して協力を要請しました。
国交省道路局によると、重量を違法に超過した大型車両の割合は全体のわずか0.3%ですが、道路橋劣化への影響が大きく、その約9割をこれら大型車両が引き起こしています。このため同局では車両の大型化に対応した許可基準を見直し、適正な利用者に対する許可手続きを簡素化する一方で、悪質な違反者に対しては厳罰化することにしました。
2015(平成27)年3月31日に関係省令を改正し、国際海上コンテナセミトレーラを対象にしていた駆動軸重制限の緩和(10トン→11.5トン)を、バン型などのセミトレーラ(2軸トラクタに限る)全てについても適用・統一し、積載量を6トン(30%)増やせるようにしました。あわせて、45フィートコンテナの輸送が可能な車両の範囲を拡大するため、バン型などのセミトレーラの車両長制限を緩和しました。また、許可までの期間を短縮しました。
一方、同年1月に関係通達を改正し、違反者に対する指導・取り締まりを強化しました。違反常習者を告発し、特に基準の2倍以上の重量超過など悪質な違反者に対しては、現地取り締まりで違反を確認した場合、即時に告発することにしました。さらに自動車局と連携し、違反通行を行ったトラック運送事業者に対しては、貨物自動車運送事業法に基づく行政処分を行います。