明けましておめでとうございます。会員事業者の皆様をはじめ、関係各位には、平素から格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。令和6年の新春を迎え、謹んでご挨拶を申し上げます。
まずは、元日に発生した石川県能登地方を震源とする地震と、翌2日に起こった羽田空港における旅客機と海上保安庁の航空機との衝突事故で被害に遭われた皆様に心よりお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方々に謹んで哀悼の意を表します。
さて、昨年は、ロシアによるウクライナ軍事侵攻をはじめ、イスラエルとハマスの戦闘、スーダンやミャンマーでの武力衝突など、世界各地で深刻な問題が相次ぎ、現在もその状況が続いています。国内では、防衛力強化に必要な財源の確保を目的とした法人税、所得税、たばこ税の増税議論やインボイス制度の導入、ふるさと納税のルール変更など、税に関する話題に国民の関心が集まる中、政治とカネの問題も後を絶たず、政治不信が広がりました。
一方、将棋界では史上初となる8大タイトル独占を達成した棋士が誕生、野球界では侍ジャパンがWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で3回目の優勝を果たしたほか、日本人選手が大リーグでホームラン王のタイトルを獲得し、シーズンMVP(最優秀選手)を2回受賞するなど、国中が歓喜に沸いた明るい話題もありました。
新型コロナウイルス感染症は、昨年5月に感染症法上の位置づけが5類とされたことで経済活動が活発になりましたが、輸送需要は思ったほど回復せず、さらに燃料価格の高騰と高止まりによって、中小運送事業者の経営は現在も大変厳しい状況が続いております。
こうした中、本年4月からは、自動車運転業務の年間時間外労働時間が960時間に制限されることにより、このまま何の対策も講じなければ、2024年度に輸送能力が約14%不足して物流危機に直面する、いわゆる「2024年問題」が懸念されています。
この「2024年問題」に対し、国は、昨年6月に「物流革新に向けた政策パッケージ」を策定し、様々な取り組みを実施しているところです。
また、昨年9月には、岸田総理大臣が私の会社を視察され、その際、「2024年問題」に関して、総理と率直に意見交換を行いました。総理は、物流の実態に直接触れ、政策パッケージをスピード感を持って実行するとともに、緊急的に取り組むべき施策を急いで取りまとめることを表明され、昨年10月に「物流革新緊急パッケージ」を策定されました。
「物流革新緊急パッケージ」における「商慣行の見直し」では、昨年7月に創設された「トラックGメン」によって荷主・元請事業者に対する監視体制を強化し、11月・12月を「集中監視月間」として、「働きかけ」「要請」「勧告・公表」を集中的に実施したほか、荷待ち・荷役の対価などの加算による「標準的な運賃」の引き上げを図ることとしました。
東ト協では、昨年8月以降、「トラックGメン」による荷主情報の収集を会員事業者へ周知し、長時間の荷待ち、契約に基づかない付帯業務、コンプライアンスの確保に影響を及ぼす輸送(非合理な到着時間の設定、重量違反等となるような輸送依頼、燃料費等のコスト増加に係る運賃・料金等の不当な据え置き)などの違反原因行為をしている疑いのある荷主についての情報提供を呼びかけておりますので、是非、情報の提供をお願いいたします。
昨年末には、「標準的な運賃・標準運送約款の見直しに向けた検討会」の提言が公表され、①荷主等への適正な転嫁、②多重下請構造の是正等、③多様な運賃・料金の設定等の提言が取りまとめられました。これにより、本年1月以降、「標準的な運賃」については運輸審議会の諮問を、「標準運送約款」についてはパブリックコメントを経て、それぞれ改正される予定となっております。
政府や行政がかつてなかったほど、トラック運送業界をバックアップする施策を打ち出しております。これは、トラック運送事業が生活と経済のライフラインとして、都民生活や産業活動の維持と発展に欠くことのできないものだからに他ありません。新型コロナウイルス感染症によって私たちの生活様式や国内外の産業構造が大きく変化した今、トラック運送事業の存在価値と重要性はより一層高まっています。2024年は始まりで、「2024年問題」はまだまだ続きます。一方、トラック運送業界は多くの課題に直面しております。
そこで、東ト協では、令和4年に「燃料価格高騰対策本部」を設置するとともに、昨年5月に「燃料価格高騰に関する自動車運送業界からの要望書」を東京都知事に一昨年と同様に提出し、燃料費負担の軽減に資する補助制度を要請したところ、その成果として、東京都において「東京都運輸事業者向け燃料費高騰緊急対策事業支援金」の交付が実施されました。
「標準的な運賃」に関しては、引き続き会員事業者による届け出と積極的な活用を促進し、適正な運賃・料金が収受できる取引環境の整備を図るとともに、燃料価格の高騰によるコストの上昇分を別建ての運賃として設定する燃料サーチャージ制の導入を支援し、荷主に対して理解と協力を求めてまいります。
喫緊の課題である時間外労働規制や改正改善基準告示についても、引き続き周知を行うとともに、長時間労働の是正や取引環境の改善など、トラックドライバーの勤務実態の把握と労働時間の厳格な管理を進めつつ、事業者による働きやすい職場づくりを全面的にバックアップする体制を構築してまいります。
昨年は、経済活動が戻りつつあったことも影響してか、警視庁管内における事業用貨物自動車が関与した死亡事故は、残念ながら総件数が大幅に増加してしまいましたが、会員事業者が関与した事故件数と会員事業者が第一当事者となった事故件数は、一昨年よりやや減少しました。本年も交通事故防止の徹底を図るとともに、春・秋の全国交通安全運動など、交通安全等に係るイベントを通じて広報啓発に取り組み、貨物輸送の安全のための施策を継続して実施してまいります。
こうした中、全日本トラック協会が主催する「全国トラックドライバー・コンテスト」において、東ト協の代表選手が昨年の大会で総合得点第1位となり、10年ぶりに内閣総理大臣賞を獲得しました。これは、東ト協の会員事業者に所属するトラックドライバーが、「都民に信頼されるプロドライバー」として日々研鑽を積み、高度な運転技能を習得したことによるものであり、大きな喜びでありました。
昨年、東ト協では、「トラックフェスタTOKYO2023」を9月17日(日)に代々木公園で開催したところ、1万3千人を超える来場者がありました。協賛をいただきました企業・団体並びに会員事業者の皆様に改めて感謝いたしますとともに、本年もトラック運送業界のPRなどを目的に「トラックフェスタ」を開催いたしますので、引き続きご協力をお願い申し上げます。また、戦略的な広報活動の一環として、各種媒体等を積極的に活用し、トラックドライバーの働き方改革と持続的な物流の実現に向けた「2024年問題等PR」を実施し、荷主や一般消費者の理解促進を図ってまいります。
その他、東ト協では、政府が進める「2050年カーボンニュートラル宣言」やSDGs、東京都による「ゼロエミッション東京」の実現といった環境問題を事故防止と並ぶ最重要事項と位置付けております。昨年は、東ト協が推進する環境保護対策である「グリーン・エコプロジェクト」による継続的なエコドライブの実践の積み上げがCO2排出量削減効果をもたらす取り組みとして評価され、「第2回クルマ・社会・パートナーシップ大賞」において、東ト協として初となるSDGs貢献賞を受賞しました。東ト協では、これを機に、環境保護により一層貢献し、地球にやさしいトラック輸送を目指してまいります。
トラック運送業界には、人材不足、原油価格高騰、環境対策、駐車問題など、多くの山積する課題があります。「物流を止めない」ためには、物流の最前線で働くトラックドライバーの労働環境の改善と社会的地位の向上を図り、安全で安心なトラック輸送を実現することが不可欠です。本年も、物流の第一線でトラック輸送に携わっておられる会員事業者の皆様と、それぞれの地域の特性に応じた多様な活動を通じて協会の円滑な運営を支える支部と、協会のかじ取りを担う本部が三位一体となり、関係行政機関や関係団体と緊密に連携しながら、都民生活と産業活動を支える公共輸送機関としての使命を果たしてまいります。そして、長時間労働の改善、労働力不足の解消、事故防止の徹底、標準的な運賃の推進を東ト協の事業活動における最重点事項とし、諸課題の一刻も早い解決に向けて取り組んでまいります。
結びに、会員事業者の皆様におかれましては、トラック運送業界の更なる発展と協会運営の円滑化のため、「会員重視の協会」「会員のための協会」の実現に更なるご支援を賜りますとともに、本年の皆々様のご事業のご隆盛とご健勝及びご多幸を心よりお祈り申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。
令和6年 元旦
一般社団法人 東京都トラック協会
会長 浅井 隆