政府が物流DX推進政策
物流デジタルトランスフォーメーション(DX)に関しては、国土交通省や経済産業省などが設置した「2020年代の総合物流施策大綱に関する有識者検討会」が「機械化・デジタル化を通じて物流のこれまでのあり方を変革すること」と定義し、「既存のオペレーションの改善、物流システムの規格化を通じた物流産業のビジネスモデル革新を目指す」としました。
定義にある「機械化の取り組み」としては、点呼支援機器などを活用した運行管理の高度化、幹線輸送でのトラック隊列走行、ラストワンマイルでの自動配送ロボット、庫内作業におけるピッキングロボット、無人搬送車、無人フォークリフト導入などを挙げており、2021(令和3)年に導入補助制度を創設し、促進する方針です。
「デジタル化の取り組み」では、手続きの電子化(運送状の電子化や特殊車両通行許可手続きの迅速化など)や配車管理のデジタル化、ビッグデータを活用した最適走行ルートの検索・自動作成、荷物とトラック・倉庫のマッチング、車両動態管理システムとトラック予約システムの導入支援、スマート物流サービス(物流・商流データ基盤)や港湾関連データ連携基盤の構築、港頭でのAI(人工知能)を活用したオペレーションの効率化(AIターミナルの形成)などを推進する方針です。
≫国交省が運行管理高度化へ検討会
国土交通省はIT点呼(遠隔点呼)の対象拡大や自動点呼(ロボット点呼)導入などに向け、2021(令和3)年3月に「運行管理高度化検討会」を設置し、2021年度末までにIT点呼の認定要件や自動点呼の性能要件について検討や実証実験を行い、それらの要件案をまとめる予定です。
IT点呼の拡大などは運行管理者の負担を軽減することに加え、交通事故の要因の一つに運行管理の不徹底が挙げられていることから、点呼を確実に実施することが狙いです。
現在、IT点呼は安全性優良事業所(Gマーク)を取得している事業所に限定して認められていますが、安全性を担保できる高度な機器の使用を条件に対象を拡大する方針です。2021年4月から実証実験に着手しており、9月末までに中間とりまとめを行う予定です。
自動点呼に関しては、始業時点呼では運行実施の可否を総合的に判断する必要があるため、まず終業時点呼支援機器を対象とし、その後に始業時点呼の際に満たすべき要件を検討する方針です。
IT点呼や自動点呼において、最も難しい問題は運転者の健康状態の把握であり、体温・血圧・脈拍の測定、運転者からの申告による睡眠時間に加え、顔色・声色などから総合的にどう判断できるかが課題として挙げられています。
ダブル連結トラックの運行拡大
国土交通省は、1台で通常の大型トラック2台分の輸送が可能なダブル連結トラックの運行拡大を図るため、2019(平成31)年1月に特殊車両通行許可基準を緩和し、まず新東名高速道路・海老名JCT(ジャンクション)~豊田東JCT間で走行を認め、同年8月には東北自動車道から九州自動車道まで全国を縦断する形で運行可能なルートを拡大しました。これにより、導入する事業者が徐々に拡大しています。
中日本高速道路(NEXCO中日本)では、高速のSA(サービスエリア)やPA(パーキングエリア)に順次、最大車長25メートルのダブル連結トラックに対応した駐車スペースを整備しています。また運転者が運行計画通り休憩ができるようにするため、2021(令和3)年4月から、新東名高速・浜松いなさIC(インターチェンジ)路外駐車場および東名高速・足柄SA上り線で、ETC2.0を活用した駐車予約システムの実証実験を開始しました。
トラック隊列走行 ~後続車無人運行に成功
経済産業省と国土交通省は、トラックの隊列走行について、2016(平成28)年度から後続車有人システムによる公道実証実験を行ってきましたが、2021(令和3)年2月に新東名高速道路・浜松SA~遠州森町PA間で行った公道実証実験により、初めて後続車無人走行を実現しました。
実証実験では、3台の大型トラックが時速80キロメートル、車間距離約9メートルの車群を組んで走行し、先頭車の走行軌跡を自動追従し、車間距離を常に5~10メートル以内に制御するなどの要件で実施したものです。
ただ、実用化に当たっては割り込みや停止した後の対応、後続車の自律走行などの課題が残されており、今後、自動運転レベル4(特定条件下での完全自動運転)を検討する新たなプロジェクトを立ち上げ、その中に無人隊列走行を組み込むことにしています。2023(令和5)年度までに事業者の受容性(コスト面の検討)や運行管理システムを確立した上で、民間による車両システムの開発を行い、2025(令和7)~2026(令和8)年度以降に、隊列走行を含む自動運転トラック(レベル4)商業化の実現を目指す計画です。
中継輸送の推進で働き方改革
トラック運転者の長時間労働を抑制し、不足状態を解消する施策として、一つの運行行程を複数人で分担する中継輸送の活用が期待されています。そこで、トラック運送事業者による中継輸送への取り組みを促進するため、国土交通省は2020(令和2)年、「中継輸送の取組事例集」をまとめました。
具体的には、中継拠点にガソリンスタンドを活用した事例や25メートルダブル連結トラックを中継輸送に組み合わせた事例、複数の事業者が連携したスワップボディコンテナを用いた中継輸送、荷姿のパレット化とパレットラウンドユースによりドライバー荷役を削減させた事例などを収録し紹介しています。