●事業用トラック事故が減少傾向
2019(令和元)年中に発生した営業用トラック第一当事者の交通事故死者数は245人、交通事故件数は1万1,629件で、いずれも減少傾向を辿っています。全日本トラック協会は「トラック事業における総合安全プラン2020」において、目標として交通事故死者数200人以下、人身事故件数は1万2,500件以下を掲げていますが、人身事故件数は目標を1年前倒しで達成したものの、死者数についてはまだ目標よりかなり多い状況にあり、さらなる取り組み強化が求められています。
全ト協ではこうした目標に加え、車両1万台当たりの死亡事故件数を全国平均で「1.5件以下」とすることを全国共有の目標に設定しています。死亡事故は2015(平成27)年以降、年々減少傾向にありますが、2019年は1万台当たり 1.82件で、まだ目標より多い状況です。
●ポスト「安全プラン2020」検討開始
国土交通省は2019(令和元)年11月、「自動車運送事業に係る交通事故対策検討会」を設置し、次期「事業用自動車総合安全プラン」の策定を視野に、飲酒運転対策やICT活用、高齢運転者対策を特定テーマに選定して検討を行いました。2020(令和2)年で現行の総合安全プランが終了することから、その検討結果を次期安全プランの総合的安全対策検討委員会に引き継ぐ予定です。なお、次期安全プランは、政府の交通安全基本計画に合わせて2024(令和6)年までの5か年計画として策定する予定です。
●国交省が脳・大血管疾患対策ガイドライン
国土交通省は2019(令和元)年7月、心臓疾患対策を進めるために知っておくべき内容や取り組む際の手順を示した「自動車運送事業者における心臓疾患・大血管疾患対策ガイドライン」を策定しました。前年の脳血管疾患対策ガイド ラインに続き策定したものです。これにより、主な健康起因事故(心臓疾患、脳疾患、大動脈瘤およびかい離)の対策ガイドラインが整備されました。
同ガイドラインでは、医療機関へ受診を促す目安は最大血圧140mmHg以上、最小血圧90mmHg以上、肥満はBMI35.0以上とし、また、スクリーニング(予備)検査の自主的な受診を推奨する目安としては、50歳以上でメタボリックシンドローム該当者と判定された場合などとしています。
●国交省、事故防止対策で支援事業
国土交通省は2020(令和2)年度も引き続き、先進技術を利用してドライバーの安全運転を支援するASV(先進安全自動車)機器をはじめ、事故防止対策のための各種安全対策装置の導入支援を実施しています。
具体的には、車両総重量3.5トン以上8トン未満の事業用トラックに衝突被害軽減ブレーキを導入した場合、装置取得価格の2分の1を補助。加えて、後方視野が常時確保できる後方視野確認支援装置、および事業用トラックの左側にカメラを装着する側方視野確認支援装置(車両総重量7.5トン以上)の導入に対して取得価格の2分の1を補助します。
このほか、呼気吹き込み式アルコールインターロック装置や、IT機器を活用して遠隔地で行う点呼に使用する携帯型アルコール検知機、脳・心臓疾患発症の要因となる高血圧予防のための高機能な血圧計導入に対してそれぞれ補助し、 睡眠時無呼吸症候群(SAS)スクリーニング検査受診に対する助成なども実施しています。
●道交法改正で大型免許など受験資格緩和
大型・中型自動車免許などの受験資格の緩和や、いわゆる「あおり運転」(妨害運転)に対する罰則創設、高齢運転者対策の強化などを盛り込んだ、道路交通法の一部改正が2020(令和2)年6月10日公布されました。
運転免許の受験資格は、自動車運送事業におけるドライバー不足の実情などを踏まえ緩和されるもので、これまで大型免許および第二種免許の受験資格は21歳以上かつ普通免許等保有3年以上でしたが、受験資格の特例に関する規定を整備し、中型免許を含めて年齢19歳以上、かつ普通免許等保有1年以上に緩和することにしました。改正法公布後、2年以内に施行されます。
あおり運転(妨害運転)に関しては近年、こうした行為が相次ぎ、重大な交通事故も発生し、社会問題化していることから、その定義を明確化し罰則を創設したものです。運行妨害目的で一定の違反(車間距離不保持、急ブレーキ禁止 違反)をした場合、懲役3年または罰金50万円以下、著しい危険(高速道路での停車など)を生じさせた場合は懲役5年または罰金100万円以下が科せられ、免許取消処分の対象になります。こうした「あおり運転」に関する規定は6月30日に施行されました。
あわせて、自動車運転死傷行為処罰法の一部改正が6月12日公布され、7月2日施行されました。これにより、あおり運転で死傷事故を起こした場合、危険運転致死傷罪の対象となり、厳しい処罰が科されることになりました。
●国交省、異常気象時「輸送の目安」通達
近年、台風や豪雨など異常気象が目立っていますが、異常気象により、輸送の安全を確保することが困難な状況下で荷主に輸送を強要され、トラックの横転事故などが発生しています。こうした問題に対処するため、国土交通省は2020(令和2)年2月、異常気象時における「輸送のあり方の目安」を定め、通達しました。
安全確保のための措置を講じる必要がある状況としては、1時間に20ミリメートル以上の降雨(ワイパーを早くしても見づらい)、1秒間に10メートル以上の暴風雨(吹き流しが水平になり、高速運転時は横風に流される感覚を受ける)、および大雪注意報発表時です。さらに、輸送の中止を検討するべき必要がある状況としては、1時間に30ミリメートル以上の降雨(車輪と路面の間に水膜が生じブレーキが効かなくなるハイドロプレーニング現象が発生)、1秒間に20メートル以上の暴風雨(通常の速度での運転が困難)、および視界が20メートル以下の濃霧・風雪時の場合などです。
国交省は安全確保が困難な状況で輸送を強要された場合、ただちに通報することを求めるとともに、運送契約書で事前に異常気象時の対応について定めておくよう促しています。
●LEVOが低炭素ディーゼル車導入補助
環境省の2020(令和2)年度「二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金」により、執行団体の環境優良車普及機構(LEVO)は引き続き、「低炭素型ディーゼルトラック等普及加速化事業」および「社会変革と物流脱炭素化を同時実現する先進技術導入促進事業」を実施しています。
低炭素型ディーゼルトラックは、2015(平成27)年度重量車燃費基準を5%または10%以上達成した車両(大・中・小型車)に対し、補助金を交付するものです(廃車の有無により、補助金の基準額は異なる)。大型天然ガストラックも2019(令和元)年度から補助対象に追加されました。
先進技術導入促進事業は自立型ゼロエネルギー倉庫、過疎地域などにおける無人航空機を活用した物流の実用化などに対して補助するものです。
●重量車の燃費基準が強化
重量車(車両総重量3.5トン超)の新たな燃費基準が2019(平成31)年3月に策定されました。国土交通省および経済産業省が設置した燃費規制に関する有識者会議において、取りまとめられたものです。新基準は2025(令和7)年度を目標年度とするもので、これにより、トラックの燃費基準は1リットル当たり7.63キロメートルとなり、2015(平成27)年度基準と比べて13.4%強化されることになります。