ダブル連結トラックが本格導入
国土交通省は「生産性革命プロジェクト」の一環として、2016(平成28)年から1台で2台分の輸送が可能なダブル連結トラックの実証実験を行い、その実現に取り組んできましたが、2019(平成31)年1月に特殊車両通行許可基準を緩和し、これによりダブル連結トラックを本格導入させました。
特車許可の長さの上限について、これまでの21メートルから一定の条件を満たす場合に25メートルに緩和したものです。一定の条件とは、 新東名高速道路区間(海老名~豊田東)を主な経路とする運行で、ETC2.0を装着していることや、通行に当たっては車線逸脱警報装置など車両安全技術に関する16の装置を装備していること、さらに運転者が大型自動車免許を5年以上かつけん引免許を5年以上保有していること、2時間以上の訓練を受講していることなどです。ただし、最低12時間の訓練を行い、直近3年間に無事故・無違反の優良な運転者に対しては、要件を大型免許3年以上かつけん引免許1年以上に緩和しています。
ダブル連結トラックは、全国物流ネットワーク協会の会員であるヤマト運輸・西濃運輸・日本通運・日本郵便の4社が2019年3月から、関東~関西間の幹線共同輸送で運行を開始し、物流総合効率化法に基づく取り組みに認定されました。国交省は、ダブル連結トラックの利用促進に向けて今後、高速道路サービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)での優先駐車マスの整備を進めるとともに、物流事業者のニーズを踏まえ対象路線の拡充を図る方針です。
なお、ダブル連結トラックの許可基準改正にあわせ、自動車運搬用セミトレーラ(キャリア・カー)の連結全長の上限を18メートルに緩和しました。積載する自動車のはみ出し長さが1メートル以内であれば認められます。生産性向上 や働き方改革の推進に向けた施策の一環として規制が緩和されたものです。
国交省・経産省、トラック隊列走行実証実験
トラックを電子連結技術(車車間通信CACC)により一体制御し、数台のトラックが隊列車群を構成して走行するトラック隊列走行について、国土交通省と経済産業省は公道実証実験を行い、その実現に取り組んでいます。2018(平 成30)年1月から2月にかけて実施したのに続き、同年12月から2019(平成31)年1月にかけて、新東名高速道路などを中心に公道実証を行いました。今後、2021(令和3)年度をめどに高速道路での後続車有人隊列走行を、2022(令和4)年度以降に後続車無人隊列走行の商業化を目指しています。
隊列走行のための技術には、自車位置情報 (RTKなど)、車車間通信(加減速情報の相互通信)、後続車後方映像転送および側方安全確認通知(5G技術による大容量画像転送)、電子ブレーキ、制御ECUの二重化、保安ブレーキ、サイバーセキュリティの規格化などが必要となり、公道実証により、これら技術の確認を行いました。
一方、国交省と経産省による「自動走行ビジネス検討会」は、その商業化のあり方について、 ①トラック企業が自社のトラックだけで隊列を形成、②隊列走行運行管理サービス事業者が各トラック企業の保有するトラックをマッチング して隊列を形成、③隊列運行管理サービス事業者が保有する専用トラックで隊列を形成し、各トラック企業の荷物を運ぶ─の3つの形態が考えられるとして、それぞれのビジネスモデルの具体化に向けて検討を進めています。
また国交省の「新しい物流システムに対応した高速道路インフラの活用に関する検討会」は、2019(平成31)年1月に開催した会合で、高速道路上に専用レーンを設け、専用隊列形成エリアを設置し、厚木インターチェンジ(IC)~名神瀬田東IC間約400キロメートルにおいて、午後10時から午前6時までを運用時間帯として100隊列の運行を行うことを提示しました。今後、本格的な検討が進められる見通しです。
スワップボディ車普及へガイドライン
国土交通省は2019(平成31)年3月、「スワップボディコンテナ車両利活用促進に向けたガイドライン」を策定しました。スワップボディ車は車体(キャリア)と荷台(コンテナ)をエアサスペンションだけで切り離すことができるもので、輸送と荷役作業を分離することが可能となり、働き方改革の推進に効果があることから、その導入・普及に向けてガイドラインを策定したものです。
スワップボディ車は、20年ほど前に鉄道コンテナと相互利用できるとして一時注目されましたが、特定メーカーのキャリアとコンテナの間でしか脱着できなかったことから、普及に至りませんでした。このためガイドラインでは、コンテナのフロア寸法や緊締装置、支持脚、車体能力(諸元)などの標準的な仕様を整理し提示しました。例えば、キャリアとコンテナをつなぐ緊締装置はツイストロックを用い、コンテナには4か所の下隅金具を装備し、金具の取付間隔は20フィートコンテナの規格と同様にするなど、詳細に定めています。
スワップボディ車は、拠点間輸送や中継輸送での活用が期待されています。拠点間輸送の場合、ドライバーは荷役作業を行わず、労働時間を大幅に短縮できます。一方、物流センター側はトラッ クの到着前に荷役作業を行うことができ、柔軟に人員を配置することが可能になります。
現在、国内メーカーは1社だけですが、国交省のガイドライン策定検討会には8社が参加しており、2019年度から導入補助制度が設けられたことから、製造の再開を検討するメーカーの登場が期待されています。