事業用トラックの死亡事故が減少
警察庁の交通事故統計によると、2018(平成30)年における事業用貨物自動車が第1当事者となった死亡事故件数(軽貨物車を含む)は266 件(前年比8.3%減)で、ここ10年間で最も少なくなりました。
事業用貨物車による死亡事故件数は2017(平成29)年に5年ぶりで増加しましたが、ここ10年間の推移をみるとおおむね減少傾向にあります。2018年の死亡事故を車種別にみると、大型車は143件、中型・準中型・普通車は110件で、10年前の2008(平成20)年に比べて大型車は39.1%、中型・準中型・普通車は36.8%それぞれ減少しています。
全日本トラック協会は、2017年9月に「トラック事業における総合安全プラン2020」を策定し、2020(令和2)年に事業用貨物車による交通事故死者数を200人以下とする目標を掲げました。このため、荷主などとの連携強化、追突・ 交差点事故防止など重点事故対策マニュアルの活用、ドライブレコーダーやデジタルタコグラフなど安全管理機器の積極的な導入、飲酒運転撲滅運動の推進などに取り組んでいます。
目標年次の2020年まで残すところ2年ですが、現状ではその達成は容易ではない状況です。このため国土交通省自動車局安全政策課では、今後さらに業界全体で事故防止対策の推進に努め、目標達成に取り組むよう求めています。
国交省、睡眠状態の確認を義務化
国土交通省は2018(平成30)年6月から、点呼時の報告・確認および記録事項として、「酒気帯びの有無」「疾病」「疲労」に加え、「睡眠不足」を追加し、睡眠状態の確認を義務付けました。運転者の睡眠時間の確保に対する意識を高め、睡眠不足に起因する交通事故を防止するためです。
具体的には、事業者が乗務員を乗務させてはならない事由として「睡眠不足」を追加するとともに、運転者が遵守すべき事項として、睡眠不足により安全な運転をすることができないおそれがあるときは申し出なければならないこととしました。これに伴い、点呼の際には乗務員に報告を求め、睡眠不足かどうかを確認する必要があります。
点呼の記録事項にも「睡眠不足の状況」を追加し、運転者に対して指導・監督を行う際にも、睡眠不足が交通事故を引き起こすおそれがあることを説明し理解させる必要があります。
このため「自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う一般的な指導及び監督の実施マニュアル」を改正するとともに、睡眠不足対策の強化に関するQ&Aを作成しました。Q&Aによると、どの程度の睡眠時間が必要かは個人差がありますが、「6時間未満の場合、7時間と比べて居眠り運転の頻度が高い研究結果が示されている」として、事業者や運行管理者は「乗務前点呼時に、運転者の顔色、仕草、話し方も含めて普段の様子と違うところがないかを総合的に確認することが重要」としています。
警察庁・国交省、チェーン規制実施
警察庁と国土交通省は2018(平成30)年12月、大雪時にチェーンを取り付けていない車両を通行止めにする標識を新設しました。同年2月に福井県で発生した37年ぶりの大雪により、 国道8号線で約1,500台の自動車が立ち往生す る事態が発生したことを契機として実施されることになったものです。国交省は「冬期道路交通確保対策検討委員会」を設置して対策を検討し、大雪時の道路交通を確保するにはチェーン規制を強化すべきとの提言を受け、実施することになったものです。
チェーン標識規制の対象は勾配の大きい峠部で、これまでに大規模な立ち往生などが発生した13区間が選定されました。その内訳は高速道路7区間、直轄国道6区間で、中央自動車道・須玉インターチェンジ(IC)~長坂IC間9 キロメートル、飯田山本IC~園原IC間10キロメートル、山中湖(山梨県)~須走(静岡県)間9キロメートルなどが含まれています。
また大雪が予想される2~3日前から、通行止め実施の可能性がある旨の事前広報を行い、広域迂回や物流車両の運行計画見直しなどについて、利用者に周知することにしています。
省エネ法改正~対象荷主の範囲を拡大
「エネルギーの使用の合理化に関する法律」の一部改正(改正省エネ法)が2018(平成30)年12月1日から、施行されました。主な改正内容は、認定管理統括事業者制度の創設、対象荷主の拡大および準荷主の新設です。
認定管理統括事業者制度は、特定荷主や特定輸送事業者が企業連携による取り組みを行い、その結果として生じた省エネ量を分配・報告できるようにしたものです。荷主企業の場合、持株会社が代表して報告が行える制度ですが、輸送事業者の場合は「認定管理統括貨客輸送事業者」として、企業連携により共同輸配送などに取り組み、温室効果ガス排出削減につなげた場合に省エネ量を分配できるようにしました。
また、これまで荷主の定義として「貨物の所有者」と規定していましたが、対象荷主について「貨物の所有権を問わず、契約で輸送方法を決定する者」に変更し、これに伴いネット小売事業者も対象荷主とし、共同配送や積載率向上、輸送量の平準化を促すことにしました。
加えて、新たな対象として準荷主の規定を新設し、到着日時や場所を指示できる、いわゆる 「着荷主」を同法の対象としました。これにより、納品先での待機時間の減少など、省エネへの協力を求めることができるようにしました。
なお、省エネ法では、貨物輸送量が年間3,000万トンキロ以上委託している荷主を特定荷主、トラックを200台以上保有している輸送事業者を特定輸送事業者として、温室効果ガス排出量の算定・報告を義務付けています(特定荷主は約800社、特定輸送事業者は約400社)。
経産省・国交省、重量車の燃費基準設定
経済産業省と国土交通省は、2025(令和7)年度を目標とする重量車の新たな燃費基準を策定し、2019(平成31)年3月に公布・施行しました。新たな燃費基準は、トラック・トレーラの平均で1㍑当たり7.63キロメートル。これまでの2015(平成27)年度燃費基準と比較して約13.4%の基準強化になります。このうちトラックは8.13キロメートルで同14.5%、トラクタは2.94キロメートルで同3.7%強化されました。
2016(平成28)年排出ガス規制への対応に伴い、燃費は1~3%改善されましたが、AT車の導入により1~7%悪化しており、今後、トラックメーカーはエンジン系と駆動系の両面から、改善に取り組むことにしています。