業界の懸案が実現
トラック、バス両業界に対する補助金である運輸事業振興助成交付金を法制化することを内容とした運輸事業振興助成法(運輸事業の振興の助成に関する法律)が、2011(平成23)年8月24日の参議院本会議で賛成多数により可決され、成立しました。トラック運送業界にとって、長年の懸案が実現したもので、新法は同年9月30日に施行されました。
交付金の法制化は、2010(平成22)年の事業仕分けや大阪の交付金廃止問題などを踏まえて、2011年度税制改正大綱にその方針が明記され、議員立法により法案が国会に提出されました。東日本大震災の発生で、一時は法案提出も危ぶまれましたが、被災地の復旧・復興財源確保の一環として、ガソリン・軽油高騰時に旧暫定税率相当分を引き下げるトリガー条項の凍結が決まったことを契機に法制化の動きが活発化しました。民主党が原案をまとめて自民党や公明党との協議が行われ、8月11日に衆議院総務委員長提案として衆議院本会議に法案が提出され、可決された後、参議院へ送られ、同月23日の総務委員会、24日の本会議で可決されたものです。
国会審議では、法制化により基準額通りの額が交付されるようになるのかという点が最大の焦点となりました。当時の片山善博総務大臣は「おそらく変化はあるだろう。一片の通達だったものが、努力義務とはいえ、国会で制定した法律に規定されるので、重みがある」と答弁し、交付額を減額する自治体の態度に変化があるとの見通しを示しました。
9月30日の法施行に当たり、総務省は大臣名による通知を都道府県知事に対して発出し、法律の趣旨を理解したうえで適切に対応するよう求めました。国土交通省も自動車局長名による通達・通知を、各運輸局と全日本トラック協会などに発出し、交付金の運用について従来以上に透明性や適切性を確保するよう求めました。
制度の確実性、透明性高まる
交付金法制化の意義は、これまで通達に依拠していた制度が法律に定められた制度となることで、制度の確実性、透明性が高まることにあります。片山善博総務大臣(当時)は2011(平成23)年8月23日の参議院総務委員会での答弁で「制度創設当時は通達に一定の効力があったが、2000(平成12)年4月からの地方分権一括推進法施行により通達行政が廃止され、交付金はその根拠を失った。その時点で通達に代わる何らかの手当が必要だったが、それがされずにそのまま来ていた」と交付金問題の本質を解説しました。
その交付金が法律に基づく制度となったことで、今後は適切な交付が期待されます。政府は9月26日、運輸事業振興助成法の政省令を公布。政令では、運輸事業振興助成交付金の使途を定め、省令では交付額の算定式を定めました。いずれも従来は、旧自治省事務次官通達で定められていたものを、法律に基づく政省令に定め直したものです。このうち省令の施行規則は、総務省と国土交通省の共管によるもので、トラック、バス両業界合わせた交付総額が約200億円となるよう定めました。