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2012:東日本大震災発生

トラック、緊急輸送に活躍

 2011(平成23)年3月11日、東北地方を中心にマグニチュード9.0というわが国での観測史上最大の地震が発生し、津波による被害と併せて死者・行方不明者約2万人におよぶ未曽有の大災害となりました。トラック運送業界では発災直後に全日本トラック協会と47都道府県トラック協会が緊急災害対策本部を設置し、救援物資の緊急輸送に奔走しました。
 緊急輸送は当初、国の災害対策本部から国土交通省を経由して全日本トラック協会が車両を手配する政府ルートが中心となり、その後各自治体間の協定に基づく都道府県ルートへと移行していきました。トラック運送業界からは、政府ルートで1,925台(5月9日集計)、都道府県ルートで8,702台(6月30日集計)の合計1万627台が被災地へと出動し、阪神・淡路大震災時の6,808台を超える過去最大規模の緊急輸送を展開しました。
 輸送される品目も発災直後は食料品、飲料水、毛布などが中心でしたが、その後下着、靴下、発電機、ストーブ、簡易トイレ、紙おむつ、生理用品、トイレットペーパー、ゴミ袋、軍手、ラジオ、ブルーシート、線量測定器など多岐にわたりました。
 全国から続々と被災地に救援物資が届けられる一方で、被災地の集積拠点に物資が滞留し、肝心の被災者まで届かないという事態も発生しました。このため国土交通省では、荷捌きや配送のノウハウを持つ民間のトラック運送事業者をはじめとする物流事業者を「物流専門家」として派遣し、その後避難所などまでの物資輸送が円滑化しました。

燃料不足が深刻化

 東日本大震災により、全国の製油所27か所のうち6か所が被災して稼働を停止し、国内の原油精製能力の約3割が停止するという事態に追い込まれました。特に東北6県では日本海側を除くほとんどの油槽所が被災し、被災地ではガソリンスタンドに長蛇の列ができました。東京など関東地域でも買いだめが起き、閉店するガソリンスタンドが相次いだため、救援物資輸送にも支障を来すことになりました。
 このため東京都トラック協会や全日本トラック協会は3月14日、国の備蓄を取り崩して営業用トラックや緊急輸送車両に優先的に供給するよう経済産業省などに要請。同日夜には、当時の海江田万里経済産業相が民間備蓄70日分のうち、3日分に当たる126万キロリットルを取り崩す考えを表明しました。
 経済産業省はガソリンスタンド業界に対し、緊急輸送車両に優先的に給油するよう文書で要請するとともに、3月17日には被災地と関東圏でのガソリン・軽油の緊急供給確保と輸送力強化の抜本対策を発表しました。対策は、被災していない西日本からタンクローリー300台を投入するとともに、西日本の製油所の稼働率を上げ、増産分を東北に転送してガソリン・軽油の供給を緊急に確保するというものでした。また、被災地周辺と関東圏に約200か所の「拠点SS」を指定し、物資輸送のトラックや緊急車両などに優先給油を開始しました。

大震災で様々な特例措置

 国土交通省は2011(平成23)年4月5日、岩手、宮城、福島、茨城の被災4県に支援物資を輸送するトラック事業者に対し、レンタカーの使用を認めることを決めました。東日本大震災により、被災地でトラック輸送力不足が予想されたためです。また、青森、栃木、千葉、新潟、長野各県でも災害救助法が適用された市町村に営業所を持つ事業者に対しては、認可や届出など事前に必要な手続きを、同年6月末までは事後でも受け付ける措置をとりました。
 ただ、津波被害が甚大な地域や福島第一原子力発電所事故の被災事業者は事業計画の変更認可や届出手続きが困難なため、6月21日にさらなる緩和措置を発表しました。岩手、宮城、福島各県に営業所を有する被災事業者で、事業再開の見通しが立たない場合、6月末までに事業廃止届または休止届を提出し、提出後仮営業所で事業を再開する場合は、再開届と同時に申立書を提出すれば2011年内までの事業実施を認めました。
 国土交通省は2011年4月21日、大震災の影響で自動車メーカーによる新車供給が停滞しているため、自動車NOx・PM法の猶予期間を特例的に延期すると発表しました。車種規制の猶予期限が切れた対策地域内のディーゼルトラック、バスであっても、車検証の有効期間満了日が同年3月11日~9月30日までの車両については、継続車検を1回だけ受けることができる措置です。さらに同省は7月6日、中小型トラック、バスに対するポスト新長期規制の適用を、当初予定の9月1日から1か月延期すると発表しました。
 国土交通省は2011年9月13日、東北地域の復旧・復興需要の増大に対応するため、営業用トラック運転者の労働時間基準に特例措置を設け、1年間限定で施行しました。労働時間基準では、144時間(6日間)以内に一度、所属営業所に戻る必要がありますが、被災地域での輸送業務を中断しなければならないため、点呼の実施体制や睡眠施設、駐車スペースなどが確保されている臨時の被災地拠点を所属営業所と見なし、所属営業所まで戻らなくても済むようにしました。
 このほか同省では、被災自動車の自動車重量税還付、被災代替自動車の自動車重量税、自動車取得税、自動車税等の非課税措置など税制上の特例や被災地自動車の車検証の有効期限延長、被災自動車の抹消登録申請等の特例などを実施し、諸手続きの相談などを行う「移動自動車相談所」を避難所等に開設しました。

災害時の緊急物資輸送見直し

 国土交通省は2011(平成23)年9月22日、災害時の緊急物資輸送のあり方を見直すため、「支援物資物流システムの基本的な考え方に関するアドバイザリー会議」を設置し、初会合を開きました。県などの物資集積所に救援物資が滞留して避難所へなかなか届かないといった東日本大震災での教訓を踏まえ、改善策を検討することになったもので、同会議が12月2日にまとめた報告書では、早期の段階から民間の物流事業者や団体が、輸送だけでなく支援物資の物流全体に参画し、その能力を最大限発揮できるようにすべきだと提言しました。
 各自治体に対して協定内容の見直しを促し、今後発生が想定される首都直下や東海、東南海・南海といった地震災害に備えることが狙いで、これらの災害が予測される全国4地域で協議会を立ち上げ、民間の施設やノウハウを活用した災害に強い物流システムの構築に着手しました。
 東日本大震災では、支援物資の発注単位なども関係者間で徹底されていなかったため、報告書は、必要な情報項目や単位を整理して発注様式を統一することで、情報のやりとりを円滑にする必要があると指摘しました。
 報告書はまた、関係者間の役割分担を明確にするため、日頃から訓練を行うなど事前の備えを徹底すべきだとしたほか、県単位の物資1次集積所について、物流事業者の能力を最大限に発揮できるようにするため、倉庫やトラック事業者の荷捌き施設など、民間施設の活用も促しました。
 2011年11月21日に成立した2011年度第3次補正予算には、民間物流事業者の施設に対し非常用発電設備と衛星携帯電話など、非常用通信設備を整備するための補助金4億3,800万円が盛り込まれました。トラック運送事業者など民間物流事業者の物流施設を、あらかじめ救援物資の1次集積拠点として決めておき、早い段階からノウハウを持つ物流事業者が参画することで、災害時の物流を円滑にすることが狙いです。4地域に設置した協議会で、民間物資拠点の選定を行うことになり、2012(平成24)年3月8、9日にそれぞれ開催した4地域の協議会で取りまとめが行われ、合計で395か所をリストアップしました。

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