時間外労働に罰則付き上限規制
政府は2017(平成29)年3月28日、首相官邸で「働き方改革実現会議」を開き、新たに時間外労働の罰則付き上限規制を設けることなどを盛り込んだ「働き方改革実行計画」を決定しました。それによると、一般産業に適用する上限規制は年間720時間(一般則)とされました。
トラックなど自動車運転業務については現在、規制の適用除外扱いとなっていますが、これを見直し、一般則施行の5年後に年間960時間を上限とする規制が適用されることになりました。この上限規制の導入をはじめとした働き方関連法案が2018(平成30)年の通常国会で成立し、2019年度から施行される予定です。これに伴い、自動車運転業務については、その5年後の2024年度から、上限規制が適用されることになります。このため、トラック運送業界などでは長年の課題である長時間労働の抑制・改善が求められています。
政府が運転者の長時間労働是正へ~働き方改革で関係省庁連絡会議
政府は2017(平成29)年6月29日、「自動車運送事業の働き方改革に関する関係省庁連絡会議」を設置し、首相官邸で初会合を開きました。
「働き方改革実行計画」に基づき、トラックなど自動車運転業務に対しても時間外労働の罰則付き上限規制が導入されることに伴い、その長時間労働の是正に向けた関連制度の見直しや支 援措置を検討するため、設置されたものです。
自動車運転者の労働時間は全職種平均より約1~2割長い長時間労働にあります。特にその時間外労働時間は、従事者の約4割が上限規制である年960時間(月平均80時間)を超え、全職業平均の約3倍にもなります。その一方で、賃金水準は約1~3割低い状況です。こうした自動車運転者の厳しい労働実態を改善し、働き方改革を推進するため、政府全体の課題として必要な施策を検討し、取り組むことにしたものです。
「直ちに取り組む63施策」決定
政府は2017年8月28日、首相官邸で第2回「自動車運送事業の働き方改革に関する関係省庁連絡会議」を開催し、「直ちに取り組む施策」として63施策を決めました。具体的には、トラック運転者の荷待ち時間を削減するためのバース予約受付システムの導入支援をはじめ、荷役時間を短縮する機械荷役への転換促進などです。これら支援施策については、2018(平成30)年度予算に盛り込まれました。
働き方改革で駐車規制も見直しへ
自動車運送業の働き方改革に向けた「直ちに取り組む施策」の一環として、貨物集配中の車両に対する駐車規制を見直す方針が打ち出されました。一律的な駐車取り締まりで円滑な集配業務に支障を来すなど、働き方改革推進の上で阻害要因の一つになっているとの認識からです。
これを受けて警察庁は2018年2月20日、各都道府県警察本部などに対し、貨物集配中のトラックに対する駐車規制について、小規模ビルが密集する市街地や交通量の少ない区間などで、規制を見直すよう通達しました。
通達では、具体的に「貨物の集配に相当な時間を要する集合住宅、中高層オフィスビル等の建物の付近や中低層の小規模ビル等が密集する市街地等の場所」「交通量が少ないなど、交通の安全と円滑に与える影響が小さい場所」については、特に重点的に見直しを検討するよう求めました。あわせて、見直しは可能な限り早期に行うこととし、2020年度末までに実施するよう通達しました。
全ト協が働き方改革へ「アクションプラン」
全日本トラック協会は2018(平成30)年3月 30日、新たに策定した「トラック運送業界の働き方改革の実現に向けたアクションプラン」を国土交通省の石井啓一大臣に提出しました。
政府が2017(平成29)年3月に決定した「働き方改革実行計画」で、自動車運転者についても時間外労働の罰則付き上限規制(年間960時 間)が適用されることに伴い、石井国交大臣が同年9月に関係業界団体に対し、アクションプランを策定するよう要請していたものです。
トラック運送業界では現在、時間外労働・年 間960時間超の運転者が発生する事業者割合が30数%に上りますが、全ト協のアクションプランでは、働き方改革関連法(2019年度施行を想定)の施行後3年目(2021年度)にその割合を 25%、4年目(2022年)に20%、5年目(2023 年)に10%まで減少させ、上限規制が開始される予定の2024年度にはゼロとする数値目標を掲げました。業界として、主体的に働き方改革を推進する姿勢を示したものです。
この数値目標を達成するため、ドライバーの処遇や労働環境、労働条件の改善に取り組み、全産業並みの賃金水準の実現などを目指すことにしています。
具体的には、①労働生産性の向上、②運送事業者の経営改善、③適正取引の推進、④多様な人材の確保・育成-の4つを取り組みの柱として、その実現を目指す方針です。
労働生産性の向上に向けては、荷役のパレット化や荷役アシスト機器の活用、時間管理の徹底などにより、荷待ち時間の削減に取り組みます。また高速道路の利用促進を図るため、国に料金割引の拡充など、利用しやすい環境の整備を要請していくことにしています。
また、運送事業者の経営改善に向けては、経営基盤を強化して経営改善を進め、これによりドライバーの賃金水準を全産業並みまで改善するほか、給与体系の見直しや週休2日制の導入、年次有給休暇の取得促進などに努めていく方針です。
適正取引の推進では、契約の書面化や荷待ち時間の記録、改正「標準貨物自動車運送約款」に準拠した料金体系への転換などを推進します。また、全産業並みの労務費、法定福利費、納税や再投資を前提とした原価計算の実施などを推進し、適正運賃・料金収受に取り組んでいくことにしています。
多様な人材の確保・育成に向けては、省力化機器の導入や手荷役の見直し、女性専用トイレや子育て環境の整備など、幅広い視点で職場環境の改善に取り組むことにしています。また短時間勤務の創出やキャリアアップ制度、インターンシップ制度の導入などを推進する方針です。
国交省が「標準運送約款」改正~運賃・料金の別立て収受を明確化
国土交通省は2017(平成29)年8月4日、改正「標準貨物自動車運送約款」を公布し、同年 11月4日から施行しました。運賃・料金を適正に収受するための環境整備として、標準運送約款を改正し、運送の対価としての「運賃」と、運送以外のサービスの対価である「料金」を別立てで収受すべきことを明確化したものです。
国交省と厚生労働省による「トラック輸送における取引環境・労働時間改善中央協議会」に設置された、「トラック運送業の適正運賃・料金検討会」で適正収受方策を検討し、その検討会報告を踏まえ、標準運送約款を改正したものです。
トラック運賃は「車上受け・車上渡し」が原則ですが、長年の取引慣行により、荷物の積み込みは運送事業者側が無償で行っていたり、荷待ちなどのために長時間の待機を余儀なくされても有償化できないといったことが、問題視されていました。
こうした問題を改善するため、新標準運送約款では運送状の記載事項として「待機時間料」「積込み料」「取卸し料」などを明記し、燃料サーチャージや有料道路利用料などとともに、運賃とは別途に収受する料金であることを明確化しました。また、附帯業務について実態に合わせて整理し、仕分けや検品などとともに「横持ち・縦持ち」「棚入れ」を新たに加えました。
新標準運送約款を使用する場合、新約款を営業所に掲示するほか、運賃・料金の変更届出などを行う必要があります。運賃・料金の変更届出状況(一般・特別積合せ運送事業者)は、2018 (平成30)年6月1日時点で全体の半数弱にとどまっており、国交省では適切に届出手続きを行うよう求めています。
国交省、行政処分基準を強化
国土交通省は2018(平成30)年3月30日、トラック・バス・タクシーの自動車運送事業者に対する「行政処分等の基準」(通達)を改正し、7月1日から施行します。自動車運送事業の働き方改革に向けた「直ちに取り組む施策」の一環として、働き方改革のための環境整備や支援施策とあわせ、長時間労働の抑止策として、行政処分基準の強化が盛り込まれていたものです。
その観点から、特に長時間労働などによる過労運転防止関連の違反に対する処分量定を引き上げ、強化しました。運転者の「乗務時間等の基準」(告示)違反について従来の基準で処分量定を算出するとともに、この告示違反のうち、1か月の拘束時間(293時間以内)や休日労働(2週間に1回まで)の限度違反に関しては、別立ての基準で処分量定を算出し、合算して処分することにしました。
具体的には、拘束時間の限度違反などが確認された場合には初違反でも違反1件で車両の使用停止10日車、2件以上の場合は20日車の処分が加算され、これまでの2~3倍に厳しくなります。例えば、「乗務時間等の基準」違反が6件以上15件以下の場合、これまでは10日車の処分でしたが、改正後は、違反事項のうち拘束時間と休日労働の限度違反が2件以上確認された場合、3倍の30日車の処分となります。
また、健康診断未受診や社会保険(健康保険・厚生年金保険・労災保険・雇用保険)など未加入に対しても、最大で4倍に処分量定が引き上げられます。健康診断の未受診は、疾病・疲労等のおそれのある乗務として、未受診3人以上の場合は40日車の処分となり、これまでの10日車から4倍に引き上げられます。社会保険などの未加入も健診未受診と同様、未加入3人以上の場合は40日車の処分となり、従来の4倍の処分量定となります。
これらの処分強化とあわせて、トラック運送業に関しては処分の仕方を見直し、使用を停止する車両台数の割合が保有台数の最大5割に引き上げられます。事業活動への影響が大きい、「痛み」を伴う処分を行うことにより、違反を抑止することが狙いです。例えば、保有台数 10台の営業所に150日車の車両使用停止処分を行う場合、これまでは2台を75日間停止としていましたが、5台を30日間停止とします。
さらに、トラック運送事業者に対しては、法令遵守の徹底を図るための措置も講じます。適正化事業実施機関の巡回指導の際、①総合評価が著しく悪い事業者、②新規参入後の総合評価が継続して悪い事業者、③健康診断受診や社会保険など加入の基本項目が継続して不適切である事業者に対して、2018年10月から重点的に監査を行う予定です。
政府が自動車運送の働き方改革へ行動計画
政府は2018(平成30)年5月30日、首相官邸で第4回「自動車運送事業の働き方改革に関する関係省庁連絡会議」を開催し、「自動車運送事業の働き方改革の実現に向けた政府行動計画」を策定しました。「『運び方改革』と安全・安心・安定(3A)の職業運転者の実現」とのタイトルで策定したものです。行動計画では、自動車の運転業務に対する時間外労働の罰則付き上限規制(年間960時間以内)の適用に向けて、数値目標と取り組み施策、その工程表などを示しました。
こうした時間外労働の罰則付き上限規制などを導入する、働き方改革関連法案が2018年6月29日、参議院本会議で可決・成立しました。これにより、自動車の運転業務に対する上限規制は一般則(年間720時間以内)施行の5年後、具体的には2024年4月1日から施行される予定です。
政府の行動計画は、この適用開始までの間の取り組みを取りまとめたものです。数値目標としては①2023年度末までのできるだけ早い時期に、全事業者が1か月の拘束時間および休日労働の限度に関する基準を遵守する状態、② 2024年度末までのできるだけ早い時期に、全事業者の全運転者の時間外労働が年間960時間以内となる状態―の実現を掲げました。
具体的な取り組み施策としては、輸送効率の向上に向けて、トラック予約受付システムの導入促進や機械荷役への転換促進などを図るとともに、女性などを含めて働きやすい労働環境の整備や運転者の確保対策などを推進します。さらに、取引環境の適正化に向けて、長時間労働の是正など働き方改革の推進を重視した「ホワイト物流」実現国民運動(仮称)を推進するとともに、改正「標準貨物自動車運送約款」に基づき、運賃と料金の別立て収受を推進することに より、運賃・料金の適正収受を図ることにして います。
また、長時間労働の是正・改善に向けた取り組みを推進するインセンティブ施策として、「ホワイト経営」に取り組む事業者に対する認証制度を創設する予定です。その一方で、2018年7月から施行する「自動車運送事業者に対する行政処分等の基準」改正により、拘束時間の限度違反などに対する処分を強化し、長時間労働の是正を求める方針です。
取引・労働時間改善へパイロット事業
国土交通省と厚生労働省は2017(平成29)年度も引き続き、「トラック輸送における取引環境・労働時間改善協議会」を通じて、長時間労働の改善などに向けたパイロット事業(実証実験)を実施し、2018(平成30)年2月に開催した第8回中央協議会では2017年度に実施したパイロット事業の中間報告を行いました。同年度は47都道府県で54の集団(食料品16、農産物 8、建設資材8、機械製品4、日用品3など)でパイロット事業を行いました。
このパイロット事業は、2016(平成28)年度から2か年にわたって実施してきたもので、その結果などを踏まえて2018年度に「ガイドライン」を策定し、これにより今後、改善に向けた取り組みの横展開を図っていく方針です。国交省ではこれに先立ち、早期の改善に向けた取り組みを促進するため、2018年4月に「プレガイドライン」(2016年度に実施したパイロット事業事例集)を取りまとめました。
プレガイドラインでは、予約受付システムの導入による荷待ち時間の削減をはじめ、パレットの活用などによる荷役時間の削減、発荷主からの入出荷情報などの事前提供による拘束時間の削減、幹線輸送部分と集荷配送部分の分離による拘束時間の削減、出荷に合わせた生産・荷造りなどによる拘束時間の削減、荷主側の施設面の改善による拘束時間の削減、十分なリードタイムの確保による安定した輸送の確保、高速道路の利用による拘束時間の削減―などの体系に分け、具体的な取り組み内容を紹介しています。
荷待ち時間の記録義務付け
国土交通省は2017(平成29)年7月1日、「貨物自動車運送事業輸送安全規則」の一部改正を施行し、トラック運転者の荷待ち時間を記録することを義務付けました。トラック運送事業者と荷主が協力して荷待ち時間の改善に取り組むことを促すとともに、荷待ち時間を生じさせている荷主に改善勧告などを行う際の判断材料とするため、記録を義務付けたものです。
具体的には、荷主都合により待機した場合は乗務記録として、待機場所や到着・出発日時、荷積み・荷降ろし時間などを記載する必要があります。義務付け対象は車両総重量8トン以上または最大積載量5トン以上のトラックとし、運転者ごとに記録することや記録の1年間保存を義務付けました。
国交省と厚生労働省は「トラック輸送における取引環境・労働時間改善協議会」を通じて、長時間労働などの改善に向けたパイロット事業を行っていますが、荷主都合による長時間の荷待ちがトラック運転者の長時間労働の大きな要因の一つになっているからです。
違反行為防止へ荷主勧告制度を改正
国土交通省は、荷主勧告制度の実効性を確保するため同制度の運用を見直し、2017(平成 29)年7月から新制度の運用を開始しました。
荷主勧告制度は、トラック運送事業者の過積載や過労運転などの違反行為に対し行政処分を行う場合に、その違反行為が主として荷主の行為に起因するものと認められる場合、国交大臣が荷主に再発防止を勧告するもので、荷主名を公表することになっています。
しかし、荷主が違反に関与したかどうかの判断基準が不明確なため、これまで勧告の発動実績がありませんでした。また荷主への警告や協力要請に関しても、トラック運送事業者への行政処分が前提となるため、迅速に対応措置を講じられないなど、同制度が十分に機能していないといった問題が指摘されていました。
このため国交省では、荷主が関与したかどうかの判断基準を明確化するとともに、荷主の関与の蓋然性が高いと考えられる違反行為については、事業者に対する行政処分の有無にかかわらず、早期に協力要請を行うよう制度の運用を見直したものです。
荷主への協力要請に関しては、トラック運送事業者への行政処分を前提とせず、長時間の連続運転や1日の拘束時間が長いといった違反情報を得た場合、荷主を特定して早期に協力要請できるようにしました。
トラック運送事業者への行政処分を伴う荷主への措置については、調査の結果、①過労運転の原因が、荷主管理の荷捌き場での恒常的な荷待ち時間の発生によるもので、かつ荷主に対し改善を要請しているにもかかわらず、荷主が応じず改善されていない場合、②過積載の原因が、積み込み直前に荷主から貨物量を増やすよう急に指示され、過積載となることを認識しつつも、荷主から取引解消を示唆されるなど断り切れなかったことによるものである場合―などと判断基準を明確化しました。さらに、3年以内に同じ違反で警告を受けているような場合には、改善勧告を発動できるようにしました。
過積載防止へ荷主対策を強化
国土交通省道路局は2017(平成29)年12月から、過積載車両に対する荷主対策を強化しました。過積載車両の通行は、道路を劣化させるとともに交通事故の原因ともなっていることから、荷主に対してもその責任とコストなどを適切に分担させることが目的です。
当面は直轄国道や高速道路での基地取り締まり時に、道路管理者が過積載を確認し警告書の発出または措置命令を実施した際に、任意で荷主情報を聴取します。また特殊車両通行許可の申請時に、任意で荷主情報を申請書に記載することを求めることにしました。特車申請への荷主情報の記載に関しては、2018(平成30)年1月から約1か月間、まず北海道開発局管内で実施し、その結果などを踏まえて全国の地方整備局に拡大し、2018年度から本格導入していく方針です。
収集した情報については、自動車局や各地方運輸局などに提供し、これを受けて自動車部局は、適正化事業実施機関(トラック協会)の協力などにより荷主を特定します。それにより過積載に加え、過労運転等違反(乗務時間告示違反) にも関連がある共通の荷主を確認した場合には、荷主勧告制度に基づき、荷主に違反の再発防止を求める「協力要請書」を発出します。
標準引越約款を改正
国土交通省は2018(平成30)年1月31日、改正「標準引越運送約款」を公布し、同年6月1 日から施行しました。主な改正内容は、他の輸送サービスと同程度の解約・延期手数料率に引き上げることなどです。これにより引越直前の解約・延期を抑制し、事前に手配した車両やドライバーなどが活用されない事態が少なくなることが期待されています。
具体的には、解約・延期手数料は貸切バスや旅行など他のサービスの例を参考に、①当日の解約・延期はこれまでの「運賃の20%以内」から「運賃及び料金の50%以内」、②前日の解約・延期は同じく「運賃の10%以内」から「運賃及び料金の30%以内」にそれぞれ引き上げ、これまで設定されていなかった③前々日の解 約・延期手数料を「運賃及び料金の20%以内」と規定しました。
また標準約款の適用範囲を拡大し、増加傾向にある単独世帯などを対象とした積み合わせ形態の引越運送にも適用することにしました。ただし、特別積合せ運送事業者が行っている、ロールボックスパレットなど容器単位で価格設定している単身者向け引越サービスについては、標準約款によらない旨を予め告知している場合には適用されません。
引越サービスをめぐっては、①インターネッ トの普及によりウェブ上での一括見積もりによる引越事業者の選択や単身引越の増加への対応など、消費者ニーズや引越事業者が提供するサービス内容が多様化していること、②ドライバー不足などが大きな課題となっていること―といった事業環境の変化などを踏まえ、2015(平成27)年に「標準引越運送約款改正検討会」を設置して見直しを検討し、その検討結果を踏まえて改正したものです。
新物流大綱を閣議決定
政府は2017(平成29)年7月28日、2017年度から2020年度までを計画期間とする、新しい「総合物流施策大綱」を閣議決定しました。これからの物流に対する新しいニーズに応え、わが国の経済成長と国民生活を持続的に支える「強い物流」を実現することを目指し、策定したものです。
新大綱では、①サプライチェーン全体の効率化・価値創造に資するとともに、それ自体が高い付加価値を生み出す物流への変革、②物流の透明化・効率化とそれを通じた働き方改革の実現、③ストック効果発現などインフラの機能強化による効率的な物流の実現、④災害などのリスク・地球環境問題に対応するサステイナブルな物流の構築、⑤新技術(IoT、BD、AIなど)の活用による「物流革命」、⑥人材の確保・育成、物流への理解を深めるための国民への啓発活動など―6つの視点から各種の物流施策を推進する方針です。
サプライチェーン全体の効率化に関しては、 事業者間の連携による取り組みを求め、具体的には、荷物情報を予め受け取ることによる荷受け作業の効率化、共同物流による積載率の向上・モーダルシフトなどを推進します。また物流の透明化については、サービスと対価の明確化やコストの見える化などにより、透明性を高めるための環境整備を進めます。道路や拠点などインフラ面では、それぞれの機能強化とアクセス強化を進めます。また、災害時のラストマイルも含めた支援物資輸送の実現などに取り組む方針です。
大綱に基づき、計画的に具体的な施策を推進するため「総合物流施策推進プログラム」を策定し、PDCA方式により進捗管理を行いながら、着実な推進を図ることにしています。
国交省が「物流生産性革命」推進
国土交通省は、2016(平成28)年を所管事業分野の「生産性革命 元年」と位置付けて推進してきましたが、2018(平成30)年は「生産性革命 深化の年」とし、その実現に向けてこれまでの施策をさらに加速・拡充していく方針です。 具体的には、20のプロジェクトを選定し推進してきましたが、2018年5月にはさらに11のプロジェクトを追加しました。
このうち物流関係では、輸送と荷役の分離を可能にするスワップボデイ・コンテナ車両の採用、荷主と協調したトラック業務改革、大型トラック2台分の輸送が可能なダブル連結トラック導入による省人化、自動運転技術などを活用したトラックの隊列走行の実現などに取り組んでいます。こうした「物流生産性革命」に向けた施策を推進し、物流事業の労働生産性を2割程度向上させることを目標としています。
ダブル連結トラックについては、2016年11 月から新東名高速道路で実証実験を実施し、あわせて特殊車両通行許可の車両長を現行の21メートルから25メートルへ緩和することを検討しています。
またトラックの隊列走行に関しては2018年1 月23~25日の3日間、後続車両有人による実証実験を実施しました。大型トラックメーカー4社が共同開発したCACC(Cooperative Adaptive Cruise Control)を搭載した、世界初の隊列走行の実証実験を行ったものです。実験ではトラック隊列が周辺車両からどのように認識されるか、あるいは隊列が周辺車両の挙動に及ぼす影響などについて確認しました。
このほか、高速道路と民間施設を直結するスマートIC(インターチェンジ)制度を活用した 物流モーダルコネクトの強化、自動審査システムの強化による特車許可審査の迅速化など、特大トラック輸送の機動性強化に向けた施策を進めています。