「準中型免許」が創設~初任運転者の指導・監督を強化
道路交通法の一部改正により、自動車運転免許制度の改正が2017(平成29)年3月12日に施行され、新たな免許区分として「準中型自動車免許」(免許範囲・車両総重量3.5トン以上7.5トン未満など)が創設されました。高等学校の新卒者など、年齢18歳以上で取得可能なトラック運転の「基礎的免許」として創設されたもので、これにあわせて国土交通省は、トラック運送事業の運転者に対する指導・監督指針(告示)を改正し、施行しました。
準中型免許は普通免許を経ずに取得可能であるため、特に初任運転者に対する教育・指導を強化しました。初任運転者に対しては従来、座学6時間以上の特別な指導を行うことを義務付けていましたが、座学と積み付けなどの実技指導を含めて15時間以上行うことに加え、新たに実車による安全運転指導を20時間以上実施することとし、合計で35時間以上行うことを義務付けました。
国交省が「事業用自動車安全プラン2020」
国土交通省は2017(平成29)年6月、2020年までの4年間を対象とした「事業用自動車総合安全プラン2020」を策定しました。従来の「事業用自動車総合安全プラン2009」を見直して策定したもので、さらなる交通事故防止を目指す方針を掲げました。
新たな目標としては、2020年までに死者数を235人以下、人身事故件数を2万3,100件 以下、飲酒運転をゼロとすることを目標に掲げました。このうち、トラック運送事業における目標は、死者数200人以下、事故件数は1万2,500件以下、飲酒運転ゼロとし、一層の事故防止に取り組むことにしました。
国交省の新たな安全プランを踏まえ、全日本トラック協会は2017年9月、「トラック事業における総合安全プラン2020」を策定しました。 国交省が新たに掲げた事故防止目標を達成するため策定したものです。新たな数値目標としては「事業用トラックを第一当事者とする死亡事故件数を車籍別で車両台数1万台当たり1.5件 以下とする」こととし、各都道府県トラック協会の共有目標としました。
この新たな目標達成に向けて、事業用トラック重点事故対策マニュアルに基づいた各種セミナーの開催と受講促進を図っていくとともに、飲酒運転撲滅運動を推進し、さらにドライブレコーダーやデジタルタコグラフなど安全管理機器について、より積極的な導入促進を図っていく方針です。
事業用トラック死亡事故が増加
警察庁の交通事故統計によると、2017(平成29)年に発生した事業用貨物自動車(トラック)第一当事者の死亡事故件数(軽貨物車を除く)は、270件で前年比12件(4.7%)多くなり、増加に転じました。全日本トラック協会が策定した「トラック事業における総合安全プラン2020」の目標達成に向けて、一層の事故防止への取り組みが求められています。
車種別にみると、最も多い大型車が153件で 同3件(2.0%)増加しました。加えて、中型車が76件、準中型車が34件、普通車が7件で、これら3車種合計で117件と同9件(8.3%)増加しました。月別の推移をみると、主に下半期に前年より多く発生しました。
2017年は、軽貨物車やバス・タクシーを含めた事業用自動車全体の死亡事故件数が343 件で同7件(2.1%)多く、5年ぶりの増加となりました。新たな安全プランを策定した中で、 事業用自動車の死亡事故が増加に転じたことから、国土交通省は2018(平成30)年2月、全ト協などに対し、事業用自動車の事故防止の徹底を求めました。
安全マネジメント、対象拡大
国土交通省は、自動車輸送分野における安全管理の取り組みを強化するため、2018(平成 30)年4月に「貨物自動車運送事業輸送安全規則」などの一部改正を施行し、運輸安全マネジメント制度の対象事業者を拡大しました。同制度の対象事業者は従来、事業計画上の保有車両 300台以上でしたが、同200台以上に対象を広げたものです。
これにより、新たに対象となった事業者は、同制度に基づく安全管理規程の設定・届出、および安全統括管理者の選任届出が義務付けられ ました。新たに対象となった事業者に対しては、経過措置が設けられ、施行後3か月以内に安全管理規定の届出などを行うこととされました。
居眠り運転防止へ安全規則改正
国土交通省は2018(平成30)年6月1日、貨物自動車運送事業輸送安全規制などの一部改正を施行し、睡眠不足状態での乗務禁止などを明確化しました。睡眠不足に起因する、居眠り運転などによる交通事故防止を徹底するためです。
具体的には、①事業者が乗務員を乗務させてはならない事由などに睡眠不足を追加、②事業者が乗務員の乗務前などに行う点呼で報告を求め、確認すべき事項として睡眠不足により安全な運転をすることができないおそれの有無を追加、③運転者が遵守すべき事項として、睡眠不足により安全な運転をすることができないなどのおそれがあるときは、その旨を事業者に申し出ることを追加―の3点です。また、安全規則の解釈・運用通達の改正により、点呼時の記録事項として睡眠不足の状況を追加しました。
警察庁、高速の最高速度110km規制を試行
警察庁は2017(平成29)年11月から、新東名高速道路の新静岡~森掛川インターチェンジ間で、最高速度規制を時速100キロメートルから 110キロメートルに引き上げる試行を行いました。引き続き同年12月から、東北縦貫自動車道の盛岡南~花巻南間で試行を実施しました。
引き上げに伴う交通事故や、実勢速度の変化などを分析した上で、試行区間における規制速度を時速120キロメートルへ引き上げることなどについて検討するためです。ただし、車両総 重量8トン超の大型車の規制速度は従来通り、時速80キロメートルのままです。
なお、この最高速度引き上げ試行は、2016 (平成28)年3月に出された「高規格の高速道路における速度規制の見直しに関する提言」を受けて実施したものです。
「省エネ法」改正~対象荷主を拡大
「エネルギーの使用の合理化に関する法律」(省エネ法)の一部改正が2018(平成30)年6月13 日、公布されました。政府が2015(平成27)年に策定した、長期エネルギー需給見通し(エネルギーミックス)の実現に向けて改正したものです。
主な改正内容はまず、企業間の連携した省エネの取り組みを促進するため、これまで企業単位だった省エネ量の報告について、企業間で分配して報告できるようにしました。連携して共同輸配送などを行った場合が対象です。
さらに、貨物輸送分野の省エネを推進するため、同法の対象荷主の定義を見直しました。具体的には、貨物の所有権を問わず、契約などで輸送の方法を決定する企業を荷主と定義し、これにより、いわゆるネット通販事業者なども同法の対象とします。あわせて荷受け側の企業を「準荷主」と位置付け、努力規定として貨物輸送の省エネ推進への協力を求めることにしました。
重量車に新たな燃費基準
経済産業省と国土交通省は2017(平成29)年12月、トラック・バスなど重量車の燃費基準を引き上げる方針を打ち出しました。さらに省エネを推進するため、2025年を目標年度とする新たな燃費基準を設定するもので、重量車全体では現行基準より13.5%引き上げ、このうちトラックなどは14.5%強化します。2018年に新たな燃費基準を告示する予定です。