運賃問題への対応
東京都トラック協会の星野良三会長は、2008(平成20)年1月11日の東ト協新年理事会で、今年の重点目標として・再生産可能な適正運賃収受の実現で輸送力の確保・交通事故半減を図るため映像記録型ドライブレコーダー装着促進を図る──を昨年に引き続き掲げるとともに、今年は社会保険(健康保険・厚生年金)未加入問題にも取り組む姿勢を示しました。
適正運賃収受については、・国土交通省、経済産業省、公正取引委員会、東京労働局など行政側が、荷主側に原油高騰などで厳しい経営環境のトラック業界に対する理解要請や公正な取引の確保を求めるなど、運賃交渉環境整備の後押しをしている・原油高騰に対する社会の理解が進み、価格転嫁もやむを得ないとの認識が広がっている──とし、運賃交渉の環境整備が整った今こそ「会社が大変厳しい状況にある時、社長が頑張らなければいけない。社長として一番の勝負所。自分への強い激励を含めて社長の真価を発揮するとき」と、社長・経営トップの自覚を促しています。
星野会長は、再生産可能な運賃収受ができなければ安定した安全な輸送サービスはできず、社会的に大きな支障を生じる心配があり、また将来に向けた人材や輸送力確保が憂慮されるとの懸念を示しています。再生産可能な運賃収受は、軽油価格の急激な高騰や安全・環境等でのコスト増など、自助努力で吸収できない厳しい経営環境の中で輸送サービスを維持していくために必要な当面の問題であるとともに、将来、少子高齢化が進み労働力人口の減少を迎えるなか、トラック運送業界が魅力ある業界として次代に輸送力を確保するために人材を確保する原資です。
適正取引バックアップのため資料を送付
東京都トラック協会は2008(平成20)年2月8日付で全会員事業者に「軽油価格高騰下における政府の取組に関する資料」を「社長親展 必ずご覧ください」と朱書きした封筒に入れて送付しました。送付した資料は4種類で、会員事業者が荷主と運賃交渉する場合の一助となる政府の各種資料で、資料のそれぞれについて主要なポイントを注記しています。
送付したのは、(1)十分な協議をしないで、一方的に運賃を据え置くと(下請法や独禁法で禁止されている)”買いたたき”に該当のおそれありと指摘・警告している国土交通大臣・経済産業大臣連名の『軽油価格高騰下における下請・荷主適正取引の推進のための緊急協力要請について』(07年12月12日付)(2)下請代金支払遅延等防止法での禁止行為を行った親事業者には、速やかに行為を止めさせるなど同法の厳正な適用や、同法を担当取締役から窓口担当者まで会社全体に周知し、担当取締役等責任者にこれらの指導・監督に当たらせるなど適切な措置を強く要請する経済産業大臣・公正取引委員会委員長連名の『下請取引の適正化について』(07年11月27日付)(3)トラック運転者の長時間労働改善には、荷主側の改善基準告示(自動車運転者の労働時間等の改善のための告示)に関する理解・協力が必要であり、そのため発注条件等で協力を求めた東京労働局長名の『道路貨物運送業における労働条件の改善のための協力要請について』(06年11月17日付)──の行政側資料3点と、全日本トラック協会会長・東京都トラック協会会長連名による『荷主の皆様へ』の1点。『荷主の皆様へ』は、荷主団体に提出し、トラック業界の窮状理解を求め、安全・安心な輸送サービスの維持確保のため公正取引の確保が必要と訴えたもの。この文書を会員事業者が個別荷主と運賃交渉する際に資料として利用できるようにしたものです。
また、東ト協は、会員事業者に運賃コストの把握を会員事業者に呼びかけ、各種研修会を開催し、輸送コスト把握のためのサポートも行っています。これは、東京都トラック運送事業協同組合連合会がまとめた「運賃動向に関するアンケート調査」(調査対象日=07年7月31日、07年10月26日発表)で、自社の輸送コストの把握に基づいて荷主と交渉した事業者の値上げ成功率が高いことがわかっているからです。
映像記録型ドライブレコーダー(DR)装着で事故半減へ
東京都トラック協会の星野良三会長は、2007(平成19)年1月11日の東ト協新年理事会で「映像記録型ドライブレコーダー(DR)を会員事業者の保有車両約10万台の半数である5万台に装着することで、会員事業者の交通事故を3年で半減する」との目標を掲げました。星野会長自身が経営する会社でDRを装着し、事故を大幅に減少させた実績がその背景にあり、「DRは交通事故防止の革命。装着すれば確実に事故は減少する。さらに燃費も改善される」と強調しています。
東ト協新年理事会後に開催された東京トラック業界新年交歓会に来賓として出席した東京都の石原慎太郎知事は「ドライブレコーダー装着で事故が減り、燃費が良くなることで環境も良くなるという。これほど有り難いことはない。東京都としてもドライブレコーダー装着に大いに協力し、与党とも相談して必ず財政的な援助をしなければならないと思う」と、東ト協のDR装着に財政的援助を行う意向を示しました。
DRは事故防止の革命
星野会長は、”自社でのドライブレコーダー(DR)装着により大幅に事故が減少した”という実績を背景に、さまざまな機会を捉えてDR装着による事故削減・事故防止効果を説明、「ドライブレコーダーは事故防止の革命」と評価し、DR装着促進を進めています。
星野会長は「ドライバー自身が、安全運転していると思っていても、気がつかないうちに『ヒヤリハット(危険挙動)』を生じるような運転行動をしていることを、DRの映像を見ながら確認でき、『習慣的で無意識的な悪い運転行動を直す』ことができる」ことでヒヤリハットを少なくし、事故減少の要因となると指摘しています。事故の土台となっているヒヤリハットを無くすことが、事故の芽を摘むことになり、DRはそのための有力な手段となるわけです。
DR映像によってドライバーの意識が変わり、ヒヤリハットを無くす運転、つまり「急のつかない運転=急加速・急ハンドル・急ブレーキをしない運転」をするようになりますが、これはエコドライブと同様の運転行動にもつながり、そのため燃費向上効果を生じ、燃料経費削減と経営にも寄与しています。
さらにトラックが関与した事故の場合、「トラック側に非がある」との先入観があります。だれも見ていないような場所ではなおさらです。こうしたとき、「事故時の状況を映像で”説明”するのがDRの映像です。事故時の責任が何処にあるのか、社員がうまく状況を説明できなくても、DRの映像が証人となることでドライバーに安心感を与えるなど、ドライバーを守るという役割も重視されています。
DRの支援体制整備
東京都トラック協会は、2007(平成19)年度事業の重点事項に「ドライブレコーダー(DR)の装着を図り交通事故の半減を目指す」「ドライブレコーダー装着による省エネの推進」を盛り込みました。
全会員事業者を対象に、(1)車載器1台2万円で、1事業者20台まで(2)解析ソフトは1営業所1セット2万円──とし07年度は車載器助成対象台数1万1千台、解析ソフト助成対象営業所1,200営業所、予算額2億4,400万円──を計画しました。そして装着対象機器選定を行い、07年6月27日から助成申請受付を開始しました。この時点ですでにDR装着している事業者が不利にならないよう、07年4月1日以降に装着したDRについては19年度助成事業の対象として救済策を講じました。
東ト協、DR助成を拡大・強化で装着促進
東ト協では、DR装着促進を一層図るため、助成規模の拡大と東ト協本部事務局に装着促進のためのプロジェクトチーム(PT)を設置し、促進策の検討や実施を進めることとしました。
助成規模の拡大は07(平成19)年12月13日の常任理事会・理事会合同会議で決定しました。助成額を(1)車載器について1台5万円、1事業者30台まで(2)解析ソフト1セット5万円──と車載器および解析ソフトについては従来の2.5倍、助成台数については従来の1.5倍と大幅に規模を拡大、事業者の負担軽減を図りました。また、すでに東ト協の助成を利用している事業者が不利にならないよう、規模拡大を07年4月1日に遡って適用することにしました。
さらにDR助成については単年度事業とせず、07年度から09年度にかけての「通年事業」とし、その間に助成申請額が3年間の予算総額7億7,280万円に達した場合に助成申請を締め切ることとしました。
東京都がDR補助をスタート
東京都は2007(平成19)年11月8日、エコドライブ支援機器としての「映像記録型ドライブレコーダー(DR)」の装着助成実施を決めました。申請受付は東京都トラック協会環境部が窓口となって、同日から受付をスタートしました。
助成措置には、補助対象事業者を総保有車両(都内車籍)50台以下の中小事業者に限定し、(1)DRを装着する車両は都内車籍であり、東京都環境確保条例(都民の健康と安全を確保する環境に関する条例)で規定するディーゼル車排出ガス規制に適合していること(2)車載器等の導入により得られる諸データの活用を含め、運行管理者等によるドライバーへの継続的な教育訓練・指導等の体制が構築されていて、定期的な指導等の実施状況およびドライバーが自ら給油量等を記録し、それを集計・分析できるデータベースを構築しているという取り組み実績などを東京都に明示できること(3)機器導入前後について、機器を装着した車両の走行内容等を東京都へ報告が可能であること──という条件がつけられています。
「諸データの活用や取り組み等実績明示や報告可能」条件について、東ト協の会員事業者は、東ト協が2006(平成18)年度から実施している「グリーン・エコプロジェクト」(別掲)に参加していることでクリアできることになっています。
助成内容は、(1)補助率は車載器および解析ソフトの対象機器購入費の2分の1。補助限度額は車載器20万円、解析ソフト30万円(2)1事業者に対する補助台数は、車載器20台、解析ソフト1台──となっており、補助については業界では「期待以上」との声が聞かれました。
2007(平成19)年末には、DRの装着に対する東ト協および東京都の支援制度が整ったため、星野会長は「DR装着促進で、2008(平成20)年を会員事業者の交通事故半減への実行の年」としています。
事故防止活動
東京都トラック協会は事故防止活動を事業活動の重点施策として活動していますが、星野良三会長は2008(平成20)年の新年理事会で、あらためて事故防止を今年の重点目標に据えるとともに、「”ドライブレコーダーの装着で、3年間で会員事業者の事故を半減する”目標に向けて今年は実行の年」と位置づけています(別掲)。
トラック事故速報を送付
東ト協は2007(平成19)年に入り、1月17日までに営業用貨物車が関与する事故が7件と多発したため、1月18日から”我々トラック業界は交通事故による犠牲者を1名たりとも出さない!”との決意で「交通死亡事故の根絶に向けた事故防止緊急対策」を実施するよう会員事業者に要請しました。これとともに警視庁交通部の情報提供協力で、都内で発生した貨物車が関与した死亡事故について、「日時・発生場所・事故概要・事故状況の図解を入れたトラック事故速報」を作成して各支部を通じて会員事業者に送付し、事故防止活動に役立ててもらうとともに、機会を捉えては事故防止への取り組みを促しています。
「トラック事故速報」については、東ト協が開催している事故防止大会(08年2月15日に12回目の大会を開催)で、来賓として出席した警視庁交通部が「営業用貨物車関与の死亡事故が発生した場合、すぐにその情報を提供できるよう協力したい」と情報提供での協力を示しています。
東ト協は、春・秋の全国交通安全運動をはじめ、さまざまな機会に交通事故防止のための活動を実施しています。地元とも結びつきの強い支部や会員事業者は、日常的に横断歩道などでの歩行者誘導、交通安全教室の開催など、地元密着型の事故防止活動を続けています。東ト協では、本部、支部などが行う事故防止活動が有機的に連携したものとはなっていないとの反省もあり、協会全体が事故防止活動を進めていることを広く社会にアピールし、安全意識の高まりにも貢献できる方法を検討しています。
環境問題への対応
東京都トラック協会は、環境対策を事故防止対策とともに重要な課題としてとらえ、大気汚染問題や地球環境問題などに対応し、低公害車導入支援、PM低減装置やNOx・PM低減装置の装着支援による低公害化促進事業をはじめ、さまざまな環境改善施策を展開しています。
東京の空がきれいになった──画期的な成果
東ト協では、これまで自動車NOx・PM法、東京環境確保条例などへの対応を進めてきました。自動車NOx・PM法への対応では、2007(平成19)年度は東ト協独自で新長期規制対応車の導入支援を実施、東京都環境確保条例への対応ではPM減少装置装着支援を行ってきています。こうしたことからNOxやPMへの対応は「峠を越えた」状況となっています。
東京都の石原慎太郎知事は、2006(平成18)年1月の東ト協新年交歓会で「東京の空がきれいになった。東ト協の協力のお陰。”神様、仏様、トラック協会様”」と東ト協の努力に感謝の意を示しました。08年の新年交歓会でも同様のフレーズを使い、「皆さんが身を削いで(環境対策に)協力した成果。画期的なことと思う。こうした心意気というものを政府が頑張って日本全体に示してもらいたい。子孫のために範を示した」と環境対策に”身を削いで”努力したことを高く評価しています。”東京の空がきれいになった”──東京都環境局のデータ「平成18年度大気汚染状況の測定結果」(07年8月17日環境局発表) もそれを証明しています。
グリーン・エコプロジェクト展開中
「グリーン・エコプロジェクト」は、東京都トラック協会が2006(平成18)年度からスタートさせた環境対策事業で、環境面のCSR(企業の社会的責任)を能動的に果たすことで、経営改善を図ろうというものです。NOxやPM対策が「峠を越えた」なかで、地球環境に与える影響が問題となっているCO2削減に、トラック業界として積極的に取り組むものです。全国の業界に先駆けたこの取り組みが評価され、環境省の平成19年度地球温暖化防止活動の対策活動実践部門で環境大臣表彰を受賞しました。また、各方面からも注目され、東ト協への問い合わせもきています。
「グリーン・エコプロジェクト」には、環境改善、経営改善とともに、集積されたデータの活用が「副産物」として浮上してきています。さまざまな条件で実際に走行している車両(年式、積載量、仕様など多種多様な車両)の燃費データが大量に集積されるためです。東ト協環境部が積載量を区分指標として分析したところ、それぞれの積載量によって燃費が「ある傾向値」に収斂していく様子が示されました。こうした東ト協だけが保有しているデータに、自動車メーカーや研究者も注目しており、今後、どのように活用していくかが検討されています。
業界イメージアップに一役の本部イベント
東京都トラック協会は、2007(平成19)年10月8日に「トラックの日」本部イベント「トラックの日 フェスタinラクーア」を、文京区春日の東京ドームシティ「ラクーア」屋外ステージで開催しました。06(平成18)年に引き続きの開催で、当日は雨天という悪条件のなか、家族連れやカップルなど4,223人(ラクーア調べ)が来場しました。本部イベントの事前告知では、TBS、ニッポン放送、文化放送のラジオ3局でのスポットCM、JR・地下鉄13駅でのポスターの掲示、JR山手線の窓上広告、毎日新聞、読売新聞での事前告知とマス媒体を活用。子供に人気のキャラクターショーや人気手品師の出演など、”人を呼べる企画”に寄せて、トラック業界が自然に耳に入ったり、目に見えたりするよう幅広くアピール。”当日は雨天との天気予報”が出ていたため、開催日前から東ト協本部にはイベント開催の問い合わせが相次ぐほどのPR効果を上げた。
子供(家族)や若い人向け中心のイベントのなかで、トラック業界が社会に無くてはならない物流を担っている役割、事故防止、環境対策への取り組みなどを理解してもらう企画を盛り込み、全体の流れの中でトラック業界が身近なものであり、生活や産業を支えていることの理解と業界イメージアップを積極的に図っています。 東ト協は、トラック業界の理解を深めてもらいイメージアップを図るため、メディアを活用して広報活動を展開しています。「トラックの日」のイベントでは、「10月9日のトラック日」を中心に東ト協各支部が地元に密着したイベントを実施して”暮らしを運ぶ緑ナンバートラック”をアピールしていますし、本部イベントもその一環です。
中越沖地震で緊急救援物資輸送を実施
東京都トラック協会は、災害時など緊急時での生活を支える「ライフライン」を守るため緊急救援物資輸送を行い、社会的責任を果たしています。そのため東ト協本部や各支部では自治体と協定を締結し、救援物資輸送の要請に応えています。
2007(平成19)年7月16日午前10時13分ごろ発生した新潟県上中越沖を震源とする「新潟県中越沖地震」(マグニチュード6.8)で、新潟県柏崎市等で大きな被害が発生しました。そのため東ト協本部や各支部は各自治体の要請で、救援物資輸送を行いました。
東ト協本部は、東京都からの要請で7月30日、10・車1台、4・車3台の計4台のトラックに約5千枚のブルーシートを積載し、柏崎市中浜に設置された救援物資受け入れ先の「柏崎市救援物資配送センター」に緊急輸送し、柏崎市に引き渡しました。
また、▽東ト協板橋支部(板橋区・16日15時)は2・車2台▽東ト協多摩支部(東村山市・17日10時)は2・車2台▽東ト協深川支部(江東区・17日昼)は2・車1台▽東ト協台東支部(台東区・17日18時20分)は3・車1台▽東ト協文京支部(文京区・18日)は2・車1台▽東ト協墨田支部(墨田区・18日)は2・車1台▽東ト協大田支部(大田区・21日11時)は2・車1台──に救援物資(毛布・ブルーシート・簡易トイレ・テント・飲料水・ウェットティッシュ・トイレットペーパー・紙おむつ・生理用品・ガスコンロ・ガスボンベ等)を積載し、柏崎市や刈羽村へ輸送しました(カッコ内は要請自治体・時刻)。