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2017:経営環境

運転者不足に伴う人件費増が経営圧迫

 全日本トラック協会は2017(平成29)年3月23日、平成27年度決算版「経営分析報告書」をまとめ、発表しました。
 対象期間の2014(平成26)年10月~2016(平成28)年8月における軽油価格は、平均82.6円で、前年比20.9円下落しました。これにより燃料油脂費が減少し、営業利益率を押し上げる効果がありました。2013(平成25)年度にマイナス2.3%だった貨物運送事業の営業利益率は、2015(平成27)年度にはマイナス0.3%まで改善し、経常利益率も燃料価格の下落により改善しました。
 一方、必要な運転者を円滑に確保できないため、賃金水準の引き上げや時間外労働の拡大による時間外給与の増加などにより、運転者の人件費が増加し、営業利益を圧迫する要因となっています。また実働率が悪化傾向にある上、傭車利用の際の運賃・料金単価の上昇などにより傭車費比率が増加し、利益率の押し下げ要因となっています。燃料価格の下落は増益効果をもたらしましたが、運転者不足によるコストアップにより、営業利益の回復は限定的なものとなっています。
 全ト協では、「軽油ローリー価格が1リットル当たり100円を超えるようになると、極めて深刻な影響がある」としています。

高校新卒者など採用促進へ~全ト協、インターンシップ導入を支援

 全日本トラック協会は2016(平成28)年4月、就職希望の高校生など学生にトラック運送業に対する認識や理解を深めてもらうため、「インターンシップ導入促進支援事業」を開始しました。全ト協ホームページにインターンシップのウェブサイトを設け、就業体験を受け入れ可能な事業者が登録し、サイトを通じて高校以上の教育機関から、3日間以上のインターンシップを受け入れた中小事業者に対して助成する制度です。
 あわせて同年6月には、就職を控えた学生などにトラック業界の魅力や仕事内容を紹介するパンフレット「TRY! TRUCK!! TRANSPORT!!!」を作成しました。
 全ト協ではさらに、若年労働者の確保の一環として、準中型自動車免許の取得費用と5トン限定解除の費用についても助成しています。

トラック事業者数が4年連続で減少

 国土交通省は2016(平成28)年11月30日、2015(平成27)年度末の貨物自動車運送事業者数をまとめ、発表しました。それによると、霊柩事業を含めた総事業者数は前年度比0.74%減の6万2,176社(者)で、4年連続で減少しました。一方、営業用トラックの車両台数は、同1.1%増の137万3,776台で、4年連続で増加しています。
 規制緩和以降、事業者数は増加の一途を辿り、2007(平成19)年度末に6万3,122社まで増えました。これをピークにその後は増減を繰り返し、最近4年間は減少傾向にあります。新規許可などによる増加数は、2004(平成16)年が2,542社でしたが、2015年度は1,167社にとどまりました。一方で廃止・合併などによる減少が年間1,000社を超えるようになり、2015年度は1,628社に増えています。
 業種別に見ると、特別積み合わせ事業者は6社増の286社、一般事業者が495社減の5万6,722社、霊柩は48社増の4,705社で、特定は20社減の463社となっています。
 車両数規模別では、10台以下の事業者は前年度比519社減の3万4,819社となり、全体に占める割合も前年度の56.4%から56.0%に減少しました。10台以下の事業者数はここ数年、減少傾向にあり、事業の小規模化に歯止めがかかりつつあるようです。

高速料金最大50%割引が延長

 政府は2016(平成28)年8月24日、2016年度第2次補正予算案を閣議決定し、高速道路料金の大口・多頻度割引最大50%割引が、2018(平成30)年3月末まで延長されることになりました。最大割引率40%を50%に拡充するための予算として、105億円が計上されたものです。
 2016年度分の予算では256億円が計上され、ETC2.0車載器利用者に限定して割引を拡充することになりましたが、車載器メーカーの供給体制が整ったのが同年4月頃にずれ込んだため、トラックへの普及が想定より遅れ、同年度分の予算が余剰する見通しとなったことから、余剰分を翌年度に繰り越すことになったものです。

従来型ETCへの割引拡充を延長

 一方、従来型のETC車載器利用者に対する割引拡充措置は、2016年4月以降も半年間程度、適用を延長する措置が講じられました。この措置について、全日本トラック協会や日本貨物運送協同組合連合会などがさらに延長を要望し、これを受けて高速道路(NEXCO)各社は12月末まで3か月間、割引拡充措置を延長しました。
 ETC2.0車載器の普及促進に向けて、NEXCO各社は2016年度、業務用車両を対象に購入助成キャンペーンを実施し、1台当たり1万円を助成しました。あわせて全ト協でも1台当たり4,000円の助成措置を実施し、また事業協同組合でも助成するなど、業界を挙げてETC2.0車載器の普及促進に取り組みました。

首都圏の高速料金が新体系に

 首都圏における高速道路料金が2016(平成28)年4月1日から、新たな料金体系に移行しました。圏央道より内側の路線について、料金水準を高速道路大都市近郊区間の水準に統一し、車種区分も5車種区分に統一しました。割高な首都圏中央連絡自動車道西側区間や横浜横須賀道路の料金を引き下げる一方、割安な第三京浜や京葉道路などの料金を引き上げました。首都高速の上限料金は、大型車の場合で1,850円から2,040円に引き上げられました。
 圏央道については、ETC2.0車載器搭載車をさらに約2割引にするほか、大口・多頻度割引の対象に追加しました。首都高速の大口・多頻度割引は2026(平成38)年3月までの10年間、最大30%割引を継続し、中央環状線の内側を通行しないETC車は最大35%まで割引率を拡充しました。
 首都高速の都心環状線への流入については、外郭環状道路を迂回しても外環利用分を全額割引とし、当面は首都高速の上限料金以内を維持することにしました。首都高速による都心通過時の料金は、対距離制を適用すると長距離利用の料金が大幅な引き上げとなるため、新たな上限料金を設定しました。また、東名高速から常磐自動車道方面などへと広域に移動する場合、都心の首都高速経由の方が割安になる点を是正し、圏央道などが不利にならないようにしました。

近畿圏でも6月から新料金に

 国土交通省は2017(平成29)年3月31日、近畿圏における新たな高速道路料金について、高速道路各社に事業許可を行いました。一部の路線を除いて、6月3日から新料金体系に移行しました。
 1年前に導入された首都圏の料金と同様に、料金水準を高速道路の大都市近郊区間を基本とする対距離制を導入し、車種区分を5車種区分に統一しました。大幅引き上げとなる阪神高速の中型車と特大車に対しては激変緩和措置を導入し、2021(平成33)年度まで中型車の車種間比率(普通車=1.0)を「1.07」(本来は1.2)、特大車は「2.14」(同2.75)とします。また、首都高速と同様に下限料金が引き下げられ、上限料金が引き上げられました。

中小企業等経営強化法が施行

 中小企業等経営強化法が2016(平成28)年7月1日に施行され、国土交通省は所管するトラック運送業など4分野の経営強化(生産性向上)に向けた取り組みの、事業分野別指針を策定しました。この指針に基づき、経営力向上計画を策定して認定を受けると、機械・装置の固定資産税軽減や低利融資、債務保証などの支援措置を受けることができます。
 貨物自動車運送事業分野の指針では、荷待ち時間の負担を強いられることによる労働時間の長時間化、多頻度・小口化による運送効率の低下などに対応するため、①運転者の平均労働時間②積載効率③実車率④実働率―のいずれかを3年間で2%以上改善することを要件としています。
 これらを達成するための方策として、荷待ち時間の削減などに向けた荷主などとの取引環境の改善、事業の共同化やITの利活用による輸送の効率化、事業活動に有用な知識または技能を有する人材の育成などを行う必要があります。

自賠責保険料、9年ぶりの引き下げ

 金融庁は2017(平成29)年4月1日、自動車損害賠償責任保険料を9年ぶりに引き下げました。全車種平均の引き下げ率は6.9%で、このうち営業用貨物自動車は、1年契約の場合で積載量2トン超が20.8%の引き下げ、同2トン以下が19.5%の引き下げとなりました。
 自家用乗用車の保険料(2年契約)は2万5,830円で2,010円の引き下げにとどまりますが、営業用貨物自動車は損害率が低いため、普通貨物車の1年契約の場合、2トン超は3万9,540円で1万360円、2トン以下は2万7,900円で6,750円、また小型貨物車は2万4,290円で5,630円それぞれ引き下げられました。

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