死亡事故の5割超が交差点
東ト協は、2007(平成19)年から3年間で会員の交通事故を半減する目標を立て、現在、会員の絶大な協力を得て活動を推進中だが、この目標達成のためには、交差点死亡事故を減少させることが課題です。
2008(平成20)年都内の事業用トラック関与の死亡事故(警視庁提供事故データを東ト協で手集計した件数)は41件で、前年に比べ14件減少したものの、このうち交差点死亡事故は26件で、前年に比べ2件増加しました。
また、会員関与の死亡事故は11件で前年に比べ10件減少し、うち交差点死亡事故も6件で前年に比べ6件減少したが、依然として交差点死亡事故は全死亡事故の5割以上を占めています。そのため今回、東ト協事故防止委員会で、2007・2008年の2年間に都内で発生した事業用トラックが関与した交差点死亡事故48件について、事故の共通点や特徴等を洗い出し、事故防止に役立てるため内容の分析を行ったもの。2008年6月に引き続き2回目となります。
事業用トラック関与死亡事故の傾向
トラックの右左折時の事故発生状況
▼右折時の事故は17件発生し、このうち相手方が最初は見えていたはずの左方からの衝突が11件で約65%と多くを占め、また、右ハンドル車の運転席から確認できる右方からの衝突も5件発生しています。不明が1件となっています。
▼左折時の事故は15件発生し、その15件全てが左方からの相手方との衝突によるものです。左折時の事故では、右ハンドル車から死角となる左方からの相手方の衝突が全てを占めており、左折時は、いわゆる左折巻き込み事故が極めて多いと言えます。
この現象は右折時も同様であり、右折時ではドライバーがハンドルを切った直後には既に視線を進行方向(右方)へ移していると推測され、左方への注視が希薄となり、 車両左側の死角と相まって左方からの衝突事故が多発する要因とも考えられます。
トラックの直進時の事故発生状況
▼直進時での事故16件は、相手方が右方からが8件、左方からが8件と同数発生しています。直進時事故16件の相手方の内訳は、歩行者4件、自転車6件、原付・自二が6件となっています。
直進時事故16件のうち、トラックの信号無視3件および安全確認不十分6件が含まれ、一方、相手方である原付の信号無視1件および一時停止不履行3件が、また、歩行者・自転車の信号無視3件が含まれています。このように、直進時での事故では、トラックまたは相手方のいずれかに信号無視、一時停止不履行あるいは安全確認不十分などの交通違反行為が認められました。
このことから、トラックは交通法規を必ず遵守することはもちろんですが、仮に信号が青であっても、交差点を通過する際は、交差点は危険地帯と認識し、危険を予測した運転をすることが望まれます。
トラックから見た相手方との衝突事故状況
▼トラックから衝突した相手方(歩行者・自転車等)の進行方向の関係を見ると、相手方の左方からの衝突が34件(うち、左折時の衝突が15件、右折時の衝突が11件、直進時の衝突が8件)発生しており、このことは、前述の左方衝突の多発要因にも繋がると考えられます。
一方、右方からの衝突が13件(うち、右折時の衝突が5件、直進8件)発生していることから、ドライバーの視線は、右折時には左方(横断歩道上)から進行方向(前方)にかけての注視を優先させるため、運転席から相手方の行動が確認しやすい右側(右方の横断歩道上)への注視が不十分になっていることが推測されます。
また、衝突した48件の相手方のうち、歩行者が17件(うち、トラック側から見て左方衝突が11件、右方衝突が5件、不明1件)、自転車が22件(うち、トラック側から見て左方衝突が17件、右方衝突が5件)発生しているが、両者ともに左方からの衝突が顕著なことから、これらの事故においても、前述の左方衝突の多発要因が関係するものと考えられます。
歩車分離式信号機の設置拡大と交差点横断
歩道の位置を交差点から離して設置を要望
- 歩車分離式信号機の設置拡大
交差点事故は、青信号でも、交差点内で横断中の歩行者や自転車利用者と車両が交錯するために起きることから、これらが交錯しないように交通整理をしている歩車分離式信号機に変えることが事故の未然防止に有効であり、歩行者等の安全を最優先している歩車分離式信号機の設置拡大を関係先に要望します。 - 交差点横断歩道の位置を交差点から離して設置
トラックの右左折時の巻き込み事故を防止するため、トラックの右左折時の視界が確保できるよう、交差点の横断歩道の位置を交差点から離して設置することを関係先に要望します。 - 以上2点の要望のように、交差点事故を未然に防止するためには、トラックと歩行者・自転車がよりよい関係を築くための交通環境を整備することが極めて重要です。
傾向分析から得た交差点での事故防止策
- 運転者は交差点では次の点を自ら認識しておくこと。
▽トラック運転者が交差点内で見ている(見えている)視野は意外と狭いこと▽歩行者・自転車の進路は必ずしも直進ではないこと▽歩行者・自転車の進行スピードは意外にも速いこと - 右左折時では、横断歩道手前における一時停止による安全確認を徹底すること。
- いつでもブレーキを踏めるようブレーキ足乗せを実施すること。
- 右左折時とも、特に、左方から進行してくる相手方への注視が希薄にならないよう、 死角の多い左方への注視を繰り返し行うなど一層徹底すること。
具体的には、右ハンドル車の運転席から死角に当たる車両の左側方に歩行者等の所在の有無や横断しようとする歩行者等の行動を確認するため、横断歩道手前での一時停止を励行し、周囲の安全確認を徹底すること。 - 直進時では、トラックは交通法規を厳守することはもちろんだが、仮に信号が青であっても、交差点を通過する際は、交差点は危険地帯と認識し、危険を予測した運転をすること。
- 高齢者は想定外の行動をとることがあるので、高齢者の歩行者・自転車を見かけた場合には、防衛運転を徹底すること。
- 常に危険予測をして運転する習慣を身につけること。