燃料下落も収益改善は限定的
~労働力不足で人件費が増加
全日本トラック協会の2014(平成26)年度決算版「経営分析報告書」によると、燃料価格下落によるコスト削減効果はあったものの、人材不足による人件費アップや傭車利用の拡大などにより、営業損益の改善は限定的なものになりました。
2014年度は、4月からの消費税増税による反動減により、輸送量は減少ないし横ばいに転じました。1社平均売上高(兼業分を含む全売上高)は2億192万4,000円と、前年度に比べて0.9%の減収となりました。このうち貨物運送事業収入(1社平均)も2億79万5,000円と、前年度比0.8%減少し、売上高、貨物運送事業収入ともにわずかながら減少に転じました。
売上高営業利益率は▲(マイナス)1.0%と8年連続の営業赤字となり、貨物運送事業の営業収益営業利益率も▲0.9%と引き続き赤字ですが、前年度の▲2.3%より赤字幅は縮小しました。燃料価格の下落効果により、すべての事業規模で営業赤字が縮小しましたが、人材不足で必要な運転者数を確保するのが難しくなっており、賃金水準の引き上げや時間外給与の増加などにより、人件費が増加し営業利益を圧迫しています。
国交省、運賃値下げ要請の把握へ
国土交通省は2016(平成28)年3月4日、全日本トラック協会に対して、燃料価格下落を理由とした運賃の値下げ要請があった場合は、各地方運輸局などの「適正取引相談窓口」に報告するよう求める文書を発出しました。
燃料価格の下落により、一部の事業者では荷主や元請け事業者から運賃の値下げを要求されるケースが生じているとの情報があるためです。文書では、多くのトラック事業者はこれまでの燃料高騰に伴うコスト増加を運賃に転嫁できておらず、このため最近の燃料価格下落でも運賃を引き下げることが困難なケースもあると想定されるとし、値下げ要請の実態を的確に把握した上で、必要に応じて対策を講じていくことにしています。
運賃の上昇圧力に「一服感」
全日本トラック協会と日本貨物運送協同組合連合会が毎月まとめている、求荷求車情報ネットワークWebKITの成約運賃指数/2010(平成22)年4月を100とした指数によると、2013(平成25)年3月の指数は126と、消費税増税前の駆け込み需要によりピークとなり、その後も前年同月を上回る水準が続いていました。しかし、2015(平成27)年10月以降は前年同月を下回ることが多くなり、スポット運賃の上昇圧力にも一服感が出ています。
全ト協の「トラック運送業界の景況感調査」(四半期ごと)によると、2016(平成28)年1~3月期の一般貨物の運賃・料金水準の判断指標は、前期比3.4ポイント悪化の▲(マイナス)3.0とマイナスに転じました。4~6月期の見通しも▲7.6とさらに水準を下げる見込みです。ちなみに、消費税増税前の駆け込み需要があった2014(平成26)年1~3月期の判断指標は、前期比8ポイント上昇のプラス19でした。
自動車税・環境性能課税が導入へ
与党は2015(平成27)年12月16日、2016(平成28)年度税制改正大綱を決定しました。自動車の車体課税については、中・重量車の自動車税グリーン化特例を現行制度のまま1年間延長し、消費税10%への増税にあわせて自動車取得税を廃止する一方、自動車税に環境性能割を上乗せ課税することが決まりました。
自動車税の環境性能割は、自動車取得税の廃止に伴う代替財源として、自動車の取得初年度の自動車税に上乗せするものです。事業用トラックについては、現行の自動車取得税と同様に営自格差を設け、2%を上限に燃費基準などの達成度に応じて0~1%の軽減税率を適用します。現行の自動車取得税のエコカー減税と比べて、事業用トラックの税負担額は約70億円から約50億円へ20億円程度軽減される見込みです。
しかし、2017(平成29)年4月に予定されていた消費税10%への増税は、2019(平成31)年10月まで2年半、再延期されることになったため、自動車取得税の廃止と自動車税への環境性能割上乗せ課税も、同様に延期される見通しです。
高速5割引、ETC2.0対象に1年延長
政府は2015(平成27)年度補正予算で、物流コスト安定化などのための高速道路料金割引の臨時措置に256億円を計上し、大口・多頻度割引最大50%割引が1年間延長されました。最大50%割引はETC2.0利用者に限定されるため、高速道路(NEXCO)各社が約200億円弱を負担し、従来のETC利用者に対して一定期間の経過措置を実施することになりました。
大口・多頻度割引の最大割引率は原則40%ですが、最大割引率50%への拡充措置のため、2014(平成26)と2015年度の2年間、補正予算により毎年約500億円が計上されていました。ただ、2016(平成28)年度はETC2.0利用者に限定したため、およそ半額の予算計上となったものです。
高速3社、ETC2.0に1万円助成
東日本・中日本・西日本高速道路(NEXCO)の3社は2016(平成28)年3月25日、ETCコーポレートカードを利用する業務用車両を対象に、ETC2.0車載器購入助成を行うと発表しました。2015(平成27)年12月18日以降に、新たに車載器を購入しセットアップ・取り付けたものが対象で、先着45万台に1台当たり1万円を助成します。助成期間は2017(平成29)年3月末までです(対象台数に達した時点で終了)。
ETCコーポレートカードは車両とカードが固定されているため、ETC2.0車載器の管理番号をETCコーポレートカード取扱窓口に届け出る必要があります。車載器管理番号を元に、NEXCO3社の助成キャンペーン事務局が車両を確認し、2016年6月より、カード契約者に順次、助成手続きを書面で案内しています。
全ト協、ETC2.0に4,000円助成
全日本トラック協会は2016年4月7日、ETC2.0車載器の普及を促進するため、車載器1台当たり4,000円を助成すると発表しました。対象となるのはETCコーポレートカードを利用し、2015年12月18日以降、新たにETC2.0車載器を購入して事業用貨物自動車に導入した各都道府県トラック協会の会員事業者です。NEXCOによるETC2.0車載器購入助成を受けた車載器も対象ですが、国土交通省の「ETC2.0車両運行管理支援サービス」の社会実験に参加し、購入支援を受けた車載器については、全ト協助成の対象外となります。
首都圏の高速料金、新体系に移行
東日本・中日本高速道路(NEXCO)各社と首都高速道路は2016(平成28)年4月1日から、首都圏の高速道路で新たな料金体系に移行しました。首都圏中央連絡自動車道より内側の路線については、用地取得費をはじめ整備の経緯の違いなどにより、料金水準が異なっていましたが、現行の高速道路大都市近郊区間の水準(1キロメートル当たり36.6円)に統一し、車種区分も5区分に統一しました。また起終点間の最短距離を基本に料金を決め、圏央道経由の料金が都心経由の料金を上回らないようにしました。
圏央道利用が不利にならないように割高な圏央道西側区間の料金水準を引き下げるとともに、ETC2.0搭載車はさらに2割引にし、大口・多頻度割引の対象道路としました。都心に向かう際、外郭環状道路を使って迂回した場合には、外環利用分を全額割引く(現行の上限料金以内を維持)ほか、都心通過については、走行距離に応じた料金に変更しました。
首都高速では、従来の2車種区分から5車種区分に変更されたことに伴い、激変緩和措置として2020(平成32)年度まで中型車の車種間比率を1.07(本来は1.2)、特大車は2.14(同2.75)に抑えることにしました。料金水準についてはより厳密な対距離制料金に移行し、上限料金が普通車で930円から1,300円に、大型車で1,850円から2,040円へと引き上げられる一方、下限料金は普通車で510円から300円に引き下げられました。また、首都高速の大口・多頻度割引は今後10年間、最大30%割引を継続するとともに、中央環状線の内側を通行しないETC車については最大割引率を35%に拡充しました。
下請中小企業の取引条件改善へ
政府は2015(平成27)年12月21日、「下請等中小企業の取引条件改善に関する関係府省等連絡会議」を設置し、首相官邸で初会合を開きました。中小・小規模事業者が賃上げしやすい環境を整備するため、下請けなどの中小企業の取引実態を把握し、取引条件の改善策を検討することが目的です。
国土交通省が2016(平成28)年4月に公表した実態調査結果によると、待機料金については83.6%の事業者が収受できていないと答え、附帯作業費は58.5%、高速料金は43.3%の事業者が収受できていないと回答しています。いずれについても、料金の支払いについて「元請け・荷主に交渉していない」事業者が4割以上もありました。
適正運賃・料金の収受については、25%の事業者が「100%収受できている」と答え、収受できている事業者の6割は取引先に値上げ交渉を行っていました。一方で一部、適正運賃を収受できていないとの回答が75%と多く、その理由として「元請けが手数料を取り過ぎ」が5割、「荷主等から不利益を被るおそれがあり、交渉ができない」との回答も4割を超えています。
書面化している事業者ほど、荷役料金を収受できている割合が高い状況ですが、「書面化ができていない取引がある」との回答が76.4%と多くを占め、6割が書面化の要請を行っていないことが分かりました。
これらの調査結果を踏まえ、同省では取引条件改善に向けた今後の課題として、荷主や元請けと交渉し、書面化を要請することが重要と指摘し、交渉しても不利益を被らない環境や、書面化を導入できる環境整備に取り組む必要があるとしています。
トラック事業者数、3年連続で減少
国土交通省が公表した2014(平成26)年度末時点の貨物自動車運送事業者数によると、事業者総数は前年度比0.4%減の6万2,637社で3年連続で減少しました。新規許可などによる増加は前年度比13.3%減の951社で、廃止・合併等による減少は同8.1%増の1,219社となり、差し引きで268社減少しました。一方、2014年度末の車両数は135万8,228台で同6,479台、0.5%増加しました。
車両数規模別に事業者数を見ると、10台以下の事業者は同1.3%減少の3万5,338社となり、全体に占める割合も前年度の56.9%から56.4%に低下するなど、小規模化に歯止めがかかりつつあります。
都道府県別に見ると、事業者数が最も多い東京が37社減の5,696社、次いで大阪が4社減の4,631社、北海道が80社減の3,697社、埼玉が14社増の3,697社、愛知が29社減の2,894社などとなっています。