2010:データ「東京」

平成20年度輸送機関別国内貨物輸送量

平成20年度輸送機関別国内貨物輸送量
平成20年度輸送機関別国内貨物輸送量

東京都内の品目別輸送量(平成19年度)

東京都内の品目別輸送量(平成19年度)

トラック運送事業者数/トラック台数(平成20年度)

事業者数
東京  5,815(9.2%)
全国 62,892
営業用トラック台数(軽自動車・小型三輪車除く)
東京    89,255(8.0%)
全国 1,110,818
普通車(1ナンバー)
東京   129,960(営業用65,403:50.3%) 
全国 2,360,203(営業用887,345:37.6%)
小型車(4ナンバー)
東京   292,993(営業用16,255:5.5%)
全国 4,050,987(営業用77,526:1.9%)
トレーラ
東京     7,884(営業用7,597:96.4%)
全国   155,250(営業用145,947:94.0%)
小型三輪車
東京     116(営業用27:23.3%)
全国   1,062(営業用100:9.4%)
2010:経営環境

成長産業へ将来ビジョン検討

 国土交通省は2010(平成22)年3月2日、トラック産業の将来ビジョンに関する検討会を設置し、初会合を開きました。2009年5月に非公式の勉強会を設置して検討を始め、同年10月には検討会に格上げして検討を本格化する予定でしたが、その間の政権交代を踏まえ、新政権の下で仕切り直して改めて本格的に検討することになったものです。地球温暖化問題や少子高齢化・人口減少社会の到来、経済のグローバル化の進展、ITS等科学技術の進歩など、事業を取り巻く環境変化を踏まえ、今後のトラック産業をいかに成長産業として発展させていくのかという観点から、官民の関係者が幅広く議論し、トラック産業のあるべき姿とその道筋を描くことが目的です。
 トラック運送事業を成長産業としていくため、新技術の活用も念頭に、環境対策、安全対策、トラック輸送サービスの高度化・高付加価値化、海外進出、労働力の確保、公平・公正な競争環境の整備などを検討します。トラック運送業界内では、行き過ぎた規制緩和の見直しを求める声が高まっていますが、ビジョンの検討では、公平・公正な競争環境の整備の視点で、社会保険未加入事業者や5台割れ事業者などの問題についても取り上げることになる見通しです。
 検討会では2010年6月を目途に中間整理を行い、将来ビジョンの方向付けを行うとともに、その後の進め方を整理する予定です。その際、必要に応じて、個別テーマに対応したワーキンググループを設け、検討・検証作業を行うことも検討していくことになっています。

暫定税率を実質維持、交付金は継続

 政府は2009(平成21)年12月22日、2010(平成22)年度税制改正大綱を閣議決定しました。焦点となっていたガソリン、軽油などの暫定税率については、地球温暖化対策の観点や急激な税収減を踏まえ、当分の間税率水準を維持することとされました。一方、暫定税率からの衣替えも検討された環境税(地球温暖化対策税)については、2011(平成23)年度実施に向けた成案をうるべくさらに検討を進めるとし、先送りされました。暫定税率の実質維持を受けて、トラック・バス両業界に対する補助金である運輸事業振興助成交付金は従来通り継続されることが決まりました。
 民主党政権下で初めての税制改正作業は、政府税制調査会に審議が一本化され、会議の模様もインターネットで中継されるなど、透明性が高められました。民主党マニフェスト(政権公約)の主要項目である暫定税率については、最後まで決着がもつれ込みましたが、12月21日に鳩山由紀夫首相が税率維持を決断し、「マニフェストに沿えなかったことに関しては、率直にお詫びを申し上げなければならない」と陳謝しました。
 税率を維持せざるを得なかったのは、景気の低迷で税収が37兆円前後まで落ち込み、2009年度は1946(昭和21)年度以来63年ぶりに税収を上回る国債を発行しなければならなくなるという、深刻な財政悪化が最大の理由です。政府税制調査会での議論では、暫定税率は2010年4月から廃止すべきとの意見が大勢を占めていましたが、民主党の小沢一郎幹事長が12月16日に鳩山首相に提出した、予算・税制に関する重要要点で、石油価格の安定を理由に「租税水準を維持」するよう求めたこともあり、制度としての暫定税率は廃止するものの、租税特別措置による同水準の税率を課し、納税者の税負担はこれまでと変わらないという決着となりました。
 これに対し、全日本トラック協会を含む自動車関連21団体で構成する自動車税制改革フォーラムは同年12月24日、「暫定税率の税率水準維持は極めて遺憾」とする声明を発表しました。声明では、「課税根拠が失われている暫定税率を形を変えて維持することは、税収維持のための新税であり、納税者である自動車ユーザーの納得を到底得られるものではない」と強く反発しました。
 一方、民主党の重要要点では、原油の異常高騰時には暫定税率の課税停止措置を講ずるとされていたことから、政府税制調査会は2010年1月18日、ガソリン価格が3か月連続して1リットル当たり160円を超えた場合に1リットル当たり25.1円の課税を停止し、逆に3か月続けて130円を下回った場合に元の税率水準を復活させることを決めました。軽油引取税についてもガソリンの課税停止・復活措置と連動して、1リットル当たり17.1円の課税停止・復活を行うことになりました。

高速道路料金、引き下げから無料化へ

 原油価格が高騰していた2008(平成20)年度以降、政府は数次にわたる経済対策・補正予算により、高速道路料金の引き下げを図りました。自民党政権下の2008年8月29日、「安心実現のための緊急総合対策」を決め、10月から高速道路料金の深夜割引が4割引から5割引に引き上げられたほか、夜間割引時間帯が拡大されました。また、首都高速、阪神高速の距離別料金導入は延期されることになりました。同年9月の米金融危機を受け、10月30日には追加経済対策である「生活対策」が決定され、高速料金については2009(平成21)年3月から平日昼間が3割引とされたほか、休日の地方部で乗用車上限1,000円とする引き下げが行われました。
 乗用車上限1,000円により、休日の渋滞が激化しました。2009年のゴールデンウィークは、10km以上の渋滞が414回、30km以上の渋滞も58回発生するなど前年に比べ倍増し、その結果、荷物の到着遅延など円滑な物流サービスに影響が出ました。このためトラック運送業界では同年6月、乗用車上限1,000円の平日への拡大を見合わせることのほか、渋滞対策やサービスエリア等での駐車スペース確保などを政府に要望しました。こうした要望も踏まえて、政府はお盆時期の高速道路料金について、週前半の平日はトラックを5割引とし、週後半から週末にかけては乗用車上限1,000円を実施するなどすみ分けを図りました。
 2009年8月の衆院選で、高速道路無料化をマニフェスト(政権公約)に掲げた民主党が圧勝し、初めての本格的な政権交代が行われました。新政権の下での2010(平成22)年度予算概算要求で国土交通省は、高速無料化社会実験に6,000億円を要求しましたが、折からの財政難で6分の1の1,000億円に削減され、同省が2010年2月2日に発表した社会実験計画では、無料化区間は首都高速・阪神高速を除く高速道路総延長の約18%に当たる、37路線50区間の計1,626kmにとどまりました。東北、北海道、九州などの地方路線が中心で、関東では中央道大月JCT~須走間41kmなど7路線108kmにとどまりました。政府は6月から2011(平成23)年3月まで実施し、地域経済への効果や渋滞、環境への影響を把握することにしています。一方、有料区間については現行の割引制度を全面的に見直し、新たな「統一料金制度」を導入する予定です。

適正取引へ諸施策

社会保険未加入事業者に行政処分

 国土交通省は2009(平成21)年8月28日、社会保険未加入事業者に対する行政処分制度の運用開始後1年間の行政処分状況をまとめ、発表しました。処分制度が導入された2008(平成22)年7月から2009年6月までに処分を受けた事業者は、車両停止処分が8社、警告処分が79社の計87社となり、2009年3月末時点での集計で44社だったものから3か月間で倍増しました。
 加入が義務付けられている社会保険(健康保険、厚生年金保険)や労働保険(労災保険、雇用保険)に入らず、不当にコストを引き下げて不健全な競争状態となっている点を是正するため、行政処分制度を導入したものです。既存事業者に対しては、まず各地の適正化事業実施機関による巡回指導で未加入を確認して改善指導を行い、3か月以内に改善報告書が提出されない事業者を運輸支局に通報します。これを運輸支局が社会保険事務所などに照会し、処分を行うという仕組みです。
 車両停止処分を受けた8社は、いずれも従業員全部未加入の初回違反で、車両停止20日車の処分が科されました。このうち、社会保険、労働保険ともに未加入だったのは4社でした。警告処分を受けた79社は、従業員の一部未加入の初回違反で、このうち社会保険と労働保険ともに未加入だったのは24社でした。処分を受けた事業者からは「資金がなくて保険に入れなかった。運転手も入りたがらないが、改善するように努力したい」「保険料を負担すると事業経営は厳しくなるが、払わないと処分されるので、きちんと払っていきたい」といった反応がありました。

5台割れ事業者に重点監査

 国土交通省は2009(平成21)年6月、トラック運送事業者の許可基準である最低保有車両数5両を満たさない、いわゆる5両割れ事業者に対し、重点監査を実施しました。これらの事業者については、以前から社会保険未加入や法令知識の不足などの問題が指摘されていたため、実態把握に向けて初めてメスが入れられたものです。1か月間かけて1,018事業者に監査を行った結果、72.8%に当たる741事業者に法令違反が確認されました。法令違反が認められた事業者に対しては、直ちに改善を指示するとともに、行政処分を行いました。
 最低保有車両数規制は、営業所で事業運営、運行管理などを適切に行える組織および管理体制を確保するための事業規模として、5両を新規許可の要件としているものですが、荷主の輸送貨物の減少などにより一時的に5両割れの状態となっている事業者が全国で4千社超存在しており、とくに5両未満となると運行管理者の選任義務がかからなくなるため、運行管理面での法令順守状況が懸念されていました。
 監査結果によると、最も法令違反が多かったのは、点呼関係違反で、監査事業者の43.1%に当たる439社で点呼の実施、記録、改ざん、保存違反があったことがわかりました。次いで多かったのが運転者に対する指導監督違反で、全体の38.8%に当たる395社で違反が確認され、乗務時間等告示違反と健康状態の把握違反も306社(30.1%)で認められました。告示違反では、とくに拘束時間違反と連続運転時間違反が多く見られました。
 乗務等の記録違反は、281社(27.6%)で認められ、記載内容の不備が大半を占めています。また、社会保険等未加入は298社で、監査対象に占める未加入率は29.3%となりました。厚生年金未加入が257社で最も多く、次いで健康保険未加入が253社、雇用保険が155社、労災保険が126社となっています。
 運行管理面でのずさんさが明らかになったことを受け、国土交通省では保有車両数5両未満の営業所であっても運行管理者の選任を義務付けることなどを検討していくこととしています。

公取委が荷主2社に初の警告

 公正取引委員会は2009(平成21)年4月15日、独占禁止法(物流特殊指定)に違反するおそれがある行為を行っていたとして荷主企業2社に対し初めて警告を行いました。また、物流特殊指定違反につながるおそれがある行為を行っていた荷主25社に対しても注意喚起を行いました。公取委は、原油価格が高騰する一方で、これに伴う価格転嫁が困難だった状況を踏まえ、荷主の独禁法違反に対する監視を強化するため、2008(平成20)年2月に荷主と物流事業者の取引調査を専門に行う「物流調査タスクフォース」を設置するとともに、情報収集のために物流事業者2万8,530社に対して書面調査と書面調査により得られた情報に基づく調査を実施し、その結果、荷主2社への勧告と25社への注意喚起となったものです。
 独禁法の物流特殊指定は、真荷主と物流事業者の取引における優越的地位の濫用を効果的に規制するため、2004(平成16)年3月に制定されたもので、荷主に対して買いたたきや代金の減額などの行為を禁じています。
 公取委によると、勧告を受けた建設機械器具賃貸業の企業は、2004年6月から2008年12月まで「協力値引き」などと称して運送事業者に支払うべき代金から一定額を差し引き、あらかじめ定めた運送委託代金の額を引き下げていました。もう1社の壁紙・カーテン等卸売り業の企業は、2007(平成19)年10月から同年12月までの間または同年11月から2008年1月までの間、自社の決算対策のために、運送事業者に支払うべき代金の20%相当額を差し引き、あらかじめ定めた運送委託代金の額を減じていました。

下請法の勧告・警告、トラック運送業が最多

 公正取引委員会は2009(平成21)年5月27日、2008(平成20)年度の下請法運用状況と企業間取引公正化への取り組み内容を発表しました。下請法違反で勧告あるいは警告を行った件数は前年度比7.7%増の2,964件で、業種別では道路貨物運送業が308件と最も多く、全体の10.4%を占めました。次いで多いのが自動車小売業の248件(全体の8.4%)、一般機械器具製造業の167件(同5.6%)などとなっています。
 2008年度の下請法勧告件数は15件で、2004(平成16)年4月の改正下請法施行以降で最多となり、このうち道路貨物運送業は2件となりました。 親事業者の禁止規定を定めた実体規定違反は、道路貨物運送業の場合171件で、このうち7割に当たる121件が支払遅延でした。このほか、減額が21件、買いたたきが10件などとなっています。

トラック運送原価を調査

 国土交通省と全日本トラック協会は2009(平成21)年9月24日、トラック運送原価に関する調査を行うことを決め、関東ブロックの各都県トラック協会に対し協力を要請しました。原油高騰による燃料コストの急増、安全対策、環境対策に関するコスト負担の増加などを踏まえ、実態コストを運賃に反映し、適正運賃の収受につなげていくことが狙いで、同年10月下旬から関東1都7県で計96社を対象に実態を調査しました。調査の結果分析や活用方法などを検討したうえで、2010年度以降全国に調査対象を拡大していく方針です。

トラック事業者数、初の減少

 国土交通省が2009(平成21)年12月15日に発表した2008(平成20)年度末現在の貨物自動車運送事業者数によると、総事業者数が前年度比0.4%減の6万2,892社となり、統計を取り始めた1975(昭和50)年度以来初めて減少しました。2008年秋以降の世界金融危機を受けて、国内の経済情勢も急激に悪化したことが反映されたものと見られています。新規許可等による参入は前年度比16.7%減の1,860社、廃止・合併等による撤退は同25.7%増の2,090社となり、1990(平成2)年の規制緩和以降初めて撤退事業者数が参入事業者数を上回りました。
 トラック運送事業者数は、規制緩和が実施された1990年に4万社だったものが、1997(平成9)年度には5万社に増え、2004(平成16)年度には6万社を突破するなど一貫して増加を続けてきましたが、景気の低迷を受けて、230社とわずかではあるものの、減少に転じたものです。
 業種別に見ると、特別積合せは8社(2.7%)増の300社となり、一般は215社(0.4%)減の5万7,457社、霊柩が27社(0.6%)増の4,424社、特定が50社(6.5%)減の711社となっています。
 規制緩和以降、およそ1.5倍に増えた事業者数ですが、その小規模化も進んでいます。10両以下の事業者数は3万5,519社で、全体に占める割合は、10年前の45.6%から56.5%へと増えています。20両以下の事業者で全体の78.2%を占めています。
 都道府県別に事業者数を見ると、東京が5,815社で最も多く、前年度より15社減、次いで大阪が4,632社で前年度より153社増、北海道が2社減の3,795社、埼玉が44社増の3,565社などとなっています。

少子・高齢化で大型運転者不足へ

 人口減少および少子・高齢化の進展により、将来の運転者不足が懸念されています。国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口」(2006〈平成18〉年12月調査)によると、2005(平成17)年に1億2,777万人だったわが国の総人口は、25年後の2030年には1億1,522万人に減り、50年後の2055年には8,993万人と9,000万人を割り込むと予測されています。15歳から64歳までの生産年齢人口は2005年に8,442万人だったものが2055年には4,595万人へと半減し、逆に65歳以上の人口は2005年の2,576万人から2055年には3,646万人に増える見込みです。
 全日本トラック協会は2009(平成21)年9月、大型免許保有人口の将来予測をまとめました。それによると、大型免許保有者数は、全体では緩やかに増加していくものの、60歳以上を除くと、若年層における人口の減少などを受けて、今後大幅に減少していくことが見込まれています。60歳未満の大型免許保有者数は2008(平成20)年に316.9万人であるのに対し、12年後の2020年には約24%少ない240.1万人となり、さらに22年後の2030年には約44%減の177.2万人に減少すると予測されています。少子・高齢化に加え、免許制度改正や若年層の大型免許離れが背景にあるためと見られています。
 一方、60歳以上の大型免許保有者数は1997年に47.1万人だったものが2008年には139.5万人へと約3倍に拡大しており、その後もこの傾向は継続し、2020年にはさらに倍増して261.1万人、2030年には355.7万人へと大幅に増えていく見込みです。

割増賃金率引き上げ、日雇い派遣禁止も

 法定割増賃金率の引き上げなどを内容とした改正労働基準法が、2008(平成20)年12月5日成立しました。改正法には「1か月の時間外労働時間が60時間を超えた場合の割増賃金率を現行の25%から50%に引き上げる」「5日以内の年次有給休暇を時間単位で取得することが可能」などが盛り込まれており、2010(平成22)年4月に施行されます。ただ、60時間超の場合の割増賃金率引き上げの中小企業への適用については、当分の間猶予されることになっています。
 登録型派遣の原則禁止、日雇い派遣の禁止などを盛り込んだ労働者派遣法改正案が、2010年春の第174通常国会に提出される見込みです。労働者派遣法改正を巡っては、自民党政権下の2008年に政府が法案を提出し、さらに2009(平成21)年には民主・社民・国民新3党が対案を提出していましたが、衆議院解散に伴いいずれも廃案になっていました。政権交代後の新政権下では、改めて労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)で審議が行われ、2009年12月28日に登録型派遣、製造業派遣の原則禁止、日雇い派遣の禁止を内容とする答申が行われました。日雇い派遣については、日々または2か月以内の労働者派遣を禁止することになる見込みです。
 トラック運送業界では、季節による波動性が大きい引越業務で人材の確保が困難になるため、全日本トラック協会では2010(平成22)年3月3日に、繁忙期である3~4月に限定して、引越業務を適用除外とするよう民主党に要望しました。

2010:交通安全・事故防止

事業用自動車の事故半減へ総合安全プラン2009

 国土交通省は2009(平成21)年3月27日、「事業用自動車総合安全プラン2009」をまとめ、発表しました。今後10年間を「事故削減のための集中期間」と位置づけ、10年後の死者数と人身事故件数を半減させる数値目標を初めて掲げた点が特徴です。トラック、バス、タクシーの事業用自動車の交通事故による死者数を2008(平成20)年の513人から10年後の2018年に250人(中間年の2013年には380人)へと半減させるほか、人身事故件数を同じく5万6,295件から3万件(2013年に4万3,000件)へと減らすことが目標で、飲酒運転については「ゼロ」が数値目標です。
 目標達成のために当面講ずべき施策として、安全体質の確立、コンプライアンスの徹底、飲酒運転の根絶、IT・新技術の活用、道路交通環境の改善といった課題ごとにおよそ50項目からなる具体策をあげ、実施時期も明示しました。安全体質確立では、これまで大手事業者に限られていた安全マネジメントの評価対象を中小規模事業者にも拡大するほか、コンプライアンスの徹底では、社会保険関係法令を含む法令違反に対する行政処分の強化を打ち出しました。飲酒運転根絶では、点呼時のアルコール検知器使用義務付けを明記し、IT・新技術では、ASV技術やドライブレコーダー・デジタル式運行記録計の普及促進をあげています。

行政処分基準を強化

 国土交通省は2009(平成21)年10月1日から、トラック運送事業など自動車運送事業の行政処分基準を強化しました。飲酒運転等に対する処分日車数を初違反の場合で従来の80日車から100日車へ、再違反の場合は240日車から300日車へといずれも1.25倍に強化したほか、社会保険等未加入に対しては、一部未加入の初違反であっても10日車の車両停止処分(従来は警告処分)とするとともに、一部未加入、全部未加入ともに処分量定を1.5倍に厳しくしました。このほか、最低賃金法違反(事業の健全な発展を阻害する競争行為)を新たに処分対象とし、初違反で10~30日車、再違反で30~90日車の車両停止処分としたほか、運転者に対する指導監督記録作成保存義務違反に対する処分基準も創設しました。 このほか、海上コンテナの横転・落下事故が多発したことから、コンテナ落下防止措置未実施に対する処分を初違反でも20日車の車両停止とするほか、再違反は3倍に強化。処分逃れ対策として、処分前に車両を他の営業所に移動したり、他社に事業譲渡した場合でも追跡して行政処分を行えるようにしました。
 これらの処分強化に対しては、パブリックコメントに寄せられた意見で、「悪質違反の処分は、現行量定で十分効果は発揮されている」「社会保険等未加入による処分は間違っている」といった異論もありました。

運転者の事故歴把握を義務付け

 国土交通省は2009(平成21)年10月1日、運転者に対する指導監督指針(告示)を改正し、新たに雇い入れた運転者の過去の事故歴を把握することを事業者に義務付けました。事故歴は、自動車安全運転センターが交付する無事故・無違反証明書や運転記録証明書等により把握し、事故を起こしていた場合には、特別な指導と適性診断を受けさせる必要があります。事故歴は過去3年間に遡って把握し、事業用自動車によるものに限らないとしています。また、貨物自動車運送事業輸送安全規則(省令)を改正し、運転者に対する指導監督を実施した際には、その内容の記録と保存(3年間)を義務付けました。
 同時に改正した自動車事故報告規則(省令)では、速報すべき事故として、▽転覆、転落、火災を起こし、又は鉄道車両と衝突したもの▽2人以上の死者を生じたもの▽5人以上の重傷者を生じたもの▽自動車に積載された危険物が大量漏えいしたもの??を追加しました。

アルコール検知器を義務付け

 国土交通省は2010(平成22)年1月22日、自動車運送事業者に対してアルコール検知器を使用した運転者の点呼実施を義務付けることを内容とした貨物自動車運送事業輸送安全規則(省令)改正案をまとめ、意見募集を開始しました。出庫、帰庫時の点呼で、運転者の酒気帯びの有無について、運転者からの報告に加え、目視やアルコール検知器の使用により確認し、その内容を記録することも義務付けるという内容です。運転者が出先にいるなど対面以外の方法で点呼を行う場合も、運転者にアルコール検知器を携帯させて酒気帯びの有無を確認し、記録することを義務付けます。事業者は、営業所ごとに検知器を備え、常時有効に保持することが求められます。同省では2010年3月に省令を公布し、1年間の周知期間を経て2011(平成23)年3月に施行する予定です。
 事業用自動車の飲酒運転取締り件数は、2008(平成20)年に287件発生するなど依然として憂慮すべき状況ですが、点呼者の判断によるため、酒気を帯びた運転者の乗務を止められなかった事案が発生しています。このため、事業用自動車総合安全プラン2009でアルコール検知器の義務付けが打ち出されていました。
 アルコール検知器を使用しないと点呼不十分として事業者は行政処分の対象となり、警告~車両停止20日車程度の処分が科され、飲酒とわかっていて乗務させた場合には、初回違反でも100日車の車両停止処分と運行管理者資格者証の返納命令が科されます。

トラック版安全プラン2009を策定

 全日本トラック協会は2009(平成21)年11月5日、「トラック事業における総合安全プラン2009」を策定しました。国の「事業用自動車総合安全プラン2009」に対応するため、営業用トラックについての事故削減数値目標を定め、その達成のために取り組むべき対策をまとめたものです。国の計画が10年後の死者数と人身事故件数半減をめざしていることを受けて、トラック版の安全プランでも2008年に450人だった死者数を2018年までに220人以下とし、2008年に2万8,838件だった人身事故件数を2018年までに1万5,000件とすることをめざします。飲酒運転はゼロが目標です。
 目標達成に向けた対策としては、安全マネジメント講習会の実施による運輸安全マネジメントの普及と浸透のほか、スピードリミッターに特化した不正改造排除活動を継続的に実施し、点呼時のアルコール検知器使用義務付けを徹底するとしています。新技術の活用では、ドライブレコーダーやデジタルタコグラフなどEMS関連機器の普及促進のため、継続的に導入助成制度を実施するとしています。

2010:環境改善

営業用トラックのCO2削減目標達成へ

 全日本トラック協会は2009(平成21)年12月9日、営業用トラックのCO2排出量削減目標を定めた環境自主行動計画の目標達成度を発表しました。トラックの輸送量は経済情勢により大きく変化し、それに伴うCO2排出量の絶対数も変化するため、目標値は業界の努力の及ぶ範囲である排出量原単位(輸送トンキロ当たりの燃料消費量)で設定しています。目標は、2008(平成20)年度~2012(平成24)年度の平均値で1996(平成8)年度比30%削減をめざすものですが、2008年度の実績値で28%削減しており、今後も引き続きエコドライブや低公害車導入などの諸対策を確実に進めることにより、2010(平成22)年度に目標を達成する見込みです。
 全日本トラック協会は従来から、エコドライブ推進マニュアル、省エネ運転マニュアルなどの作成やEMS機器等に対する助成などを通じてエコドライブを推進し、各都道府県トラック協会でもエコドライブ講習会を開催するなど、積極的に普及促進を図っていますが、2009年度からは環境対策の柱の1つとして位置づけ、事業者の目につくわかりやすい活動として展開しています。具体的には、環境省などが毎年実施している「エコドライブコンテスト」を後援し、多くの事業者が参加できるよう周知を図っているほか、国のエコドライブ推進月間と合わせ、毎年11月を「エコドライブ推進強化月間」と定め、啓発活動を強化しています。
 低公害車導入に向けては、全日本トラック協会と都道府県トラック協会が毎年度助成を行っており、2008年度末の累計助成台数はCNG車1万3,980台、ハイブリッド車7,065台の合計2万1,045台に達しています。鳩山内閣は、2020年の温室効果ガス排出量を1990年比で25%削減することを提案しており、トラック運送業界も今後さらに地球温暖化対策への取り組みを求められることになりそうです。

自営転換でトラック全体のCO2排出量13%減

 環境省は2009(平成21)年11月11日、2008年度の温室効果ガス排出量(速報値)を発表しました。金融危機を背景とした年度後半の急激な景気後退により、産業部門をはじめとする各部門のエネルギー需要が減少したため、総排出量は前年度比6.2%減の12億8,600万トンとなりました。京都議定書の基準年(1990〈平成2〉年)と比べると1.9%上回っています。 部門別にCO2排出量を見ると、工場などの産業部門が前年度比10.4%減の4億2,000万トン(90年比13.0%減)と大幅に減少し、運輸部門は前年度比4.1%減の2億3,600万トン(同8.5%増)となっています。事務所などの業務その他部門は前年度比4.0%減の2億3,200万トン(同41.3%増)、家庭部門は前年度比4.6%減(同34.7%増)などとなっています。
 運輸部門のうち、トラック(自家用、営業用合計)からの排出量は、貨物輸送量の減少により、前年度比4.3%減の8,200万トンとなり、1990年比では13.3%減となりました。1990年比では、自家用トラックからの排出量が減少する一方で、営業用トラックからの排出量が増えていますが、これは自家用トラックから営業用トラックへの転換(自営転換)が進んでいるためで、より輸送効率の高い営業用への転換が進むことで、トラック全体の排出量は大きく減少しています。

2010:東京都トラック協会(東ト協)の活動

東ト協 事故半減目標を達成

 東京都トラック協会(星野良三会長)は、「2009(平成21)年に会員事業者の交通死亡事故を半減する」という目標を計画通り達成しました。
 この目標は、2007(平成19)年の新年理事会で星野会長が映像記録型ドライブレコーダー(DR)を会員保有車両の半数に装着し、交通事故を大幅に減少させ都民生活を守るとして「3年間で会員事業者の交通死亡事故を半減する『事故半減3か年計画』」を掲げたのがスタートでした。東ト協が設定した数値目標は、計画スタート年である2007年の直近2年間における都内(警視庁管内)で発生した東ト協会員関与事故(第1当事者)の平均とし、死亡事故については警視庁の協力で把握した2006年の14件および2007年の21件の平均18件の半数に設定しました。
 東ト協の調べによると2009年の都内(警視庁管内)における会員関与(第1当事者)の交通死亡事故は6件で、目標として設定した9件を3件下回って目標達成したものです。星野会長は、目標達成に対して、2010(平成22)年の年頭所感や新年理事会で「会員事業者全員のご努力によりまして目標を達成することができました。改めて、東京都トラック協会全会員事業者の皆様に厚く御礼を申し上げたい」と感謝の意を表しました。

DR理解・装着促進から交差点事故防止、ドライバーへの呼びかけ

 東ト協が進めた「事故半減3か年計画」を概観すると、当初はDRに対する会員の認知度アップ・理解の深化から装着促進を図ることに力点が置かれました。そのためDR機器説明会・展示会を本部・支部で開催するとともに、星野会長が先頭にたってさまざまな機会を捉えてはDR効果のPRに努めました。同時に装着促進のため、東ト協はDR装着助成制度を創設し、また東京都に支援策を要望し、支援を実現しました。こうしたことから、DRに対する理解が深まるとともに、装着効果を会員が実感するようにもなりDR装着が進みました。半減計画最終年の2009年には、東ト協会員保有車両約8万台の半数に近づく3万5千台にDRが装着されているとみられています。
 星野会長は2010年の新年理事会あいさつで「走行中の追突を原因とする死亡事故が発生しなかったのはDRの効果と考えられる」との見方を示しています。DR装着効果を星野会長は、「ドライバー自身が安全運転していると思っていても、自分自身では気がつかないうちに『ヒヤリ・ハット』(危険挙動)を生じるような運転行動をしていることがある。それをDRで運転者自身が見ることで『習慣的で無意識的な悪い運転行動』を確認し、直すことができる。それで『ヒヤリ・ハット』を無くし、事故の要因を少なくすることができる」と説明しています。
 東ト協は、DR装着促進を図るとともに、営業用トラック関与の死亡事故が発生した場合、すぐに「トラック事故速報」を作成、その情報を支部を通じて会員事業者に送付し、注意を喚起するなど、事故防止への取り組みも同時に進めました。「トラック事故速報」は、警視庁の協力で作成するもので、事故の「日時・発生場所・事故概要・事故状況」を図解説明しており、事故防止に役立ててもらうのがねらいです。このほか、営業用トラック関与の事故が多発した場合は、緊急事故防止対策を要請するなど、機会を捉えては会員事業者に事故防止の取り組み徹底を要請してきました。
 次のステップは、交差点での事故防止対策の推進です。東ト協では都内での営業用トラック関与の死亡事故が交差点で多発していることに着目。その傾向分析を基に事故防止策を策定し、「交差点は危険地帯」と強くアピールするとともに、会員事業者に事故防止策を周知しました。各支部でも恒例の事故防止講習会などに加え緊急事故防止講習会等を開催し、交差点事故防止などを会員事業者やドライバーに繰り返しアピールしました。
 警視庁も交差点事故防止を大きなテーマとしてクローズアップさせ、東ト協に交差点事故防止への協力を要請しました。東ト協では、会員事業者・ドライバーに、歩行者や自転車などへの注意喚起の目的で作成した「青だけど車はわたしを見てるかな」ステッカーを、必ず運転前に見えるようドアノブ上部等への貼付を改めて要請しました。 さらに東ト協では、交差点右左折時などに最徐行や一時停止の必要性をドライバーに認識してもらうとともに、運転行動を後続車に理解してもらい追突事故を防止するために「一時停止告知ステッカー」を作成、トラックへの貼付運動を2009年から開始しました。
 「一時停止告知ステッカー」には、「私は右左折時に 横断歩道手前で 安全確認のために 一時停止します」との文言が書かれ、(1)交差点事故防止には一時停止が必要なことを運転者に再認識してもらう(2)安全運転することを後続車等に表明して、右左折時の安全確認を一層徹底することで巻き込み事故や追突事故防止を図る──のが目的です。
 最終段階では、2009年2月から東ト協が提供しているラジオ番組を利用して直接ドライバーに交差点での事故防止を呼びかけました。そのため放送回数を大幅に増やし、「目標達成は運転者の双肩」にかかっているとして、事故半減目標達成のための第一線にいるドライバーに自覚を深めてもらい、同時に「交差点での右左折時の一時停止と十分な安全確認」等を直接呼びかけました。

事故防止努力が成果に

 東ト協が2007(平成19)年にスタートした「事故半減3か年計画」に基づく事故防止の取り組みの結果、2008(平成20)年には都内で発生した会員関与の交通死亡事故が11件(第1当事者)と2007年の21件(1当区分不可)に比べ48%減少する成果となりました。営業用トラック全体の死亡事故を見てみると、2007年は55件、そのうち東ト協会員関与は21件。2008年が全体では41件、このうち東ト協会員関与が11件となっています。 07年から08年では、東ト協会員以外の営業用トラック関与の死亡事故は、34件から30件へと4件(12%)減少しましたが、東ト協会員関与では21件から11件へと、10件(48%)の大幅減少となっています。
 2009(平成21)年の都内で発生した死亡事故を見ると、営業用トラック全体では40件で、そのうち東ト協会員関与は11件ですが、第1当事者となった死亡事故は6件です。東ト協会員(1当)の事故は08年の11件に比べ5件(45.5%)の減少となっています。東ト協会員以外の営業用トラック関与の死亡事故は29件ですから、08年に比べ1件(3.3%)減となっています。東ト協の事故防止への努力が数字で示されました。

都内における事業用貨物自動車関与の死亡事故発生状況
〈会員の死亡事故半減三カ年計画(平成19年~平成21年)〉

              項目
死 亡 事 故 件 数
総件数 うち会員関与一当
2007(平成19) 55 21(一当区分不可)
2008(平成20) 41 11
2009(平成21) 40
死亡事故半減目標件数
(※注2)

(注)

  1. 本表は、警視庁より情報提供して頂いている死亡事故データを東ト協が「トラック事故速報」の方法で会員に通知している件数を手集計したものである。
  2. 東ト協の平成19年を初年として、3年間で都内における会員の死亡事故件数を半減する計画は、平成18年(14件)と平成19年(21件)の2年間の平均死亡事故件数18件を半減することを目標とした。

本部・支部が幹線道路で事故防止の輪

 東京都トラック協会は、2008(平成20)年度から全国交通安全運動において本部と支部が連携して交通安全活動を展開、2009(平成21)年度も、春・秋の全国交通安全運動期間中に実施しました。
 春の全国交通安全運動では、4月10日に20支部が各警察署の協力を得て都内51か所で、交通安全、飲酒運転撲滅、交差点での巻き込み事故防止のための確認や自転車・二輪車の事故防止を呼びかけました。
 秋の全国交通安全運動期間中の9月30日に行われた本部・支部連携の活動では、環状七号線と湾岸道路を中心に、同道路に面した関係支部が通勤・通学時間帯をメーンに主要交差点計17か所をはじめ43交差点で横断旗を使用して歩行者や自転車への安全誘導を行い、交通安全を呼びかけるノベルティやチラシを配布して事故防止を呼びかけました。環七通り・湾岸道路の主要交差点を〝事故防止活動の輪〟で結び、一周することで東ト協の事故防止活動を社会的にアピールし、活動への理解を深めてもらおうというものです。
 本部・支部の連携は、東ト協各支部が地元で日常的に実施している事故防止活動とともに、東ト協全体として事故防止活動を展開することで、東ト協事故防止活動の〝見える化〟を図り、社会的にインパクトを強くし、より効果的に交通安全・事故防止への啓発効果を高めようというものです。

関ト協、首都高速での事故防止策を提言

 関東トラック協会(会長・星野良三東京都トラック協会長)は2010(平成22)年2月17日、「首都高速道路における交通事故防止方策検討調査結果」を発表しました。首都高速道路で発生した大型貨物車重大事故の発生状況と構造を把握・整理するとともに、発生原因を人・車両・道路構造から分析し、それぞれの面から事故防止方策を役割分担を含めて提言したものです。「人の面からの対策」では(1)トレーラ・トラクタ特性に関する安全教育の早急な実施(2)過労運転の防止(3)確実な点呼体制の確立(4)緊締装置(ツイストロック)の4点ロックの確実な実施、「道の面からの対策」として(1)「首都高速道路における事故多発地点危険マップ(仮称)」の作成、有効活用(2)道路設備の改良(3)「安全速度の設定」や制限速度の見直し、「車の面からの対策」では(1)ASV技術「カーブ進入危険速度抑制支援システム」の早期開発(2)タイヤの空気圧と温度のモニタリングが可能なシステムの導入促進、車輪の脱落防止、「車と道の面からの対策」では(1)高機能デジタルタコメーター等の開発、普及(2)ITS技術を活用した安全運転支援システムの開発──の11事項について、業界で実施するとともに、行政や自動車メーカー、道路会社に対して要望、連携を求めたものです。

業界が率先して事故防止への取り組みを

 関ト協は2008(平成20)年8月、2009(平成21)年2月に、首都高速道路で大型貨物自動車による重大事故が頻発したことを受け、首都高速道路における事故防止方策検討会(座長=結城幸彦東京都トラック協会副会長・事故防止委員長)を設置、2009年4月17日に初会合を開きました。メンバーは、1都7県のトラック協会、関東運輸局、道路管理者(首都高速道路(株))、大型トラックメーカー(4社)の委員の他、警視庁および全日本トラック協会がオブザーバーとして参加しました。
 トラックの交通事故は、一度発生すると大きな影響を与えることが多く、しかも首都高速道路で社会的に影響を与えた大きな事故が多発したため、業界が率先して事故防止に取り組まねばならないとして検討会を立ち上げたものです。 その後、首都高速道路視察、1都7県の大型貨物自動車(トレーラ)のドライバーを対象としたアンケート調査(479人が回答)等を実施し、4回の会合を経て2010年2月1日に最終報告書案をとりまとめて発表に至りました。

首都高で横転事故が多発

 関東トラック協会による首都高速での事故防止方策検討の背景には、2008(平成20)年からの大型車の横転事故多発があります。同年4月21日(20トン積載のトラクタ・トレーラが、速度オーバーのため右カーブで横転)▽5月22日(19.2トン積載のトラクタ・トレーラが右カーブを曲がりきれず横転)▽7月29日(1.1トン積載のトラックが、運転操作を誤り中央分離帯に衝突・横転)▽8月3日(ガソリン・軽油積載のトラクタ・トレーラが右カーブを曲がりきれず横転・炎上)▽10月6日(500キログラム積載のトラックが、落下物回避のため右に急ハンドルを切ったため、右側壁に衝突)▽2009(平成21)年2月14日(21トン積載のトラクタ・トレーラが左カーブで曲がりきれず横転)▽3月25日(産業廃棄物積載のトラックが、左カーブを曲がりきれず反対車線に飛び出し横転)──などで、特に8月3日に発生した横転・炎上事故は長期間にわたって高速道路の一部が閉鎖されました。
 こうした首都高速での事故多発を受け、東京運輸支局は2009年3月26日付で東京都トラック協会に「首都高速道路におけるトラックの横転事故の防止について」を連絡し、会員事業者が横転事故防止策を徹底するよう周知を求めました。

緊急経営実態調査を実施

 東京都トラック協会(星野良三会長)は、2009(平成21)年2月に会員事業者の中から無作為に抽出した1千社を対象に「緊急経営実態調査」を実施しました。2月6日から2月13日までに調査票を発送し、2月23日到着分の362社(車両数合計1万1,388台、1社平均約32台)からの回答を集計したものです。
 星野会長は調査直後の3月3日に記者会見して調査内容を発表、同時に国土交通省、東京都、東京都議会、都議会自由民主党を訪問して調査結果を説明するとともに、調査結果を踏まえた要望活動を行いました。
 星野会長は、「これほど書いてくるということは、本当に切実な状況だということ」と、調査結果から〝にじみ出る〟本当に大変だという会員の声を聞いてほしいと訴えました。また、業界からは〝紳士的(おとなしい)〟と評されている東ト協ですが、今回の調査には「本音が出ている」として注目され、話題となりました。
 要望活動では、「廃業・縮小」などの危機感を抱えながら輸送サービスを担っている事業者の「生の声」をそのまま示し、「事業存廃の岐路に直面する非常事態下」にあるトラック運送業界の実情を訴え、国土交通省に(1)最低運賃・標準運賃の設定等規制緩和の見直し(2)輸送秩序の確立(3)高速道路料金の引き下げ(4)軽油価格の引き下げ(5)融資制度の充実(6)駐車問題への対応──を、東京都、東京都議会、東京都議会自民党には融資制度の充実、高速道路料金の大幅な引き下げ、駐車問題への対応──を求めました。

事業者の切迫感が迫る

 この調査の目的について星野会長は、「米国の金融危機に端を発した〝百年に一度の経済危機〟のため、会員事業者から『協会はもっと頑張ってほしい』との声があり、それに応えるためには、会員の経営実態や実情を把握する必要がある」ためと説明。「調査には、特に各社で当面している実情や問題を掘り下げて書いてくれた。本当に大変だということが実感できる」と厳しい実情が浮かび上がっていると強調しました。さらに「東京の事業者は、どちらかというとおとなしい。それがこれほど書いてくるということは、本当に切実な状況だということだ。会員の声を加工しないでそのまま読んでもらうようにした」と、切迫感を受け止めてほしいと求めました。
 世界金融危機は、2007(平成19)年の米国でサブプライムローン問題を切っ掛けとした住宅バブルの崩壊や多方面での資産価値の暴落が起こり、2008(平成20)年9月15日には米国の有名な投資会社であるリーマン・ブラザーズの倒産を契機に世界的な金融危機へと波及し、日本でも日経平均株価が暴落するなど景気が悪化しました。

事業者の6割が赤字

 東ト協の「緊急経営実態調査」によると、運送事業の収支状況は、(1)黒字13.8%(2)ほぼ均衡25.1%(3)赤字59.1%──と6割の事業者が赤字です。特に赤字は10台以下62.9%、11~20台68.9%、21~50台56.0%、50~100台52.9%と、小規模・中間層が厳しい状況となっています。 輸送量と運送収入(売上高)を2009年度上半期(直近)と前年度上半期(前年同期)と比べると、輸送量が(1)増加14.9%(2)減少76.8%、運送収入が(1)増加14.4%(2)減少79.8%──と輸送量と運送収入がパラレルな傾向を示しています。この傾向は車両規模で差はみられません。
 運送原価の把握は、(1)全車両把握44.5%(2)一部車両把握37.6%(3)していない12.4%(4)無回答5.5%──と把握している事業が多いことがわかります。
 経営上最も重要と考える問題(上位3位を回答の複数回答)では、(1)受注量減少(2)採算性悪化(3)受注単価低下(4)取引先減少(5)輸送コスト上昇(6)資金繰り悪化(7)借入金増加(8)乗務員高齢化(9)資金調達難──などとなっています。また、今後の運送事業の方向性について、(1)現状を維持したい56.1%(2)拡大したい17.4%(3)縮小したい12.7%(4)廃業なども考える9.1%──などで、2割強の事業者が展望を見い出せない様子が窺えます。

本音で実情理解を

 会員事業者の意見(原文通り)を紹介すると  ▽受注の減少に対応し、車両の削減・コスト削減を実行すること。これが出来なければ早晩破綻する▽長い間この事業をやって来ましたが、今日のような不況に直面したのは初めてです。今はただ景気の回復を願うばかり、我慢してやるしかないです▽最低運賃制度のようなものを決め、それを下回っている荷主に罰則を与えるか、それを守らない運送事業者に罰則を与えるなどしない限り、運賃は上がらないと思われる▽政府の中小企業に対しての仕組みが悪い。銀行に対して資金に対してもっと円満に融資できるように ──など162社が、(1)コストの削減・見直しで対応(2)燃料代、高速料金の値下げ(3)融資制度などの充実(4)営業力を強化し、受注量を増やしたい(5)軽油引取税の廃止等、国、政治がしっかりした対策を(6)最低運賃制など、規制緩和の見直し(7)我慢して、何とか現状を維持(8)適正運賃収受が不可欠(9)資金調達・資金繰りに苦労(10)景気回復に期待(11)運転者教育が大事(12)駐車問題への対応(13)不正事業者の根絶(14)雇用安定助成金──の14事項(東ト協が内容整理)に169の意見を寄せています。

東ト協の「公正な競争維持と適正なコストを」要望に

 東京運輸支局が対応 東京都トラック協会は、2009(平成21)年2月27日付で東京運輸支局に「地方自治体等におけるトラック輸送に係る運送契約について」を要望、自治体が発注するトラック輸送について、「正直者がバカを見ないよう」にコンプライアンスや届出運賃を考慮し、東京の事業者を利用するよう求めました。
 これに対して東京運輸支局は2月27日付で東京都知事に、「トラック運送業者との運送契約について(お願い)」を発出。トラック運送事業者と運送契約を締結する」にあたっては、「地域の運送事業者の健全な発達を図る上でも社会保険未加入等の不適正な事業者との契約は避けていただくとともに、輸送の安全に係るコスト等に見合った適正な運送取引」への理解と協力を求めました。同支局では、都内の全区市町村にも同様の要請をしました。

正直者がバカを見ない入札を

 東ト協の「要望」では、多くの運送事業者が事業存廃の危機的状況に追い込まれている中、コンプライアンスを無視した事業者や利用運送を前提として度を超した値引きを行って契約する者など、公平性を欠くいわゆる「正直者がバカをみる」状況が顕在化しているとし、地方自治体等が発注するトラック輸送契約の一般競争入札においては「届出運賃・料金の範囲」を逸脱した値引きにより契約・受注している事業者が常態化していると指摘。
 そのため、各地方自治体等のトラック輸送の入札にあたっては、(1)社会保険等への加入状況等、コンプライアンス徹底事業者を条件とすること(2)貨物自動車運送事業法第26条(事業改善命令)に抵触しない平成2年届出運賃の上下20%の範囲内、かつ、各貨物自動車運送事業者が届出している運賃・料金の上下10%の範囲内で応札させるとともに、入札者には届出済みの運賃料金表を添付させることとし、落札はこの範囲内での決定となるようにすること(3)東京都を使用の本拠地とする車両で運行することを条件とすること──を留意した予定単価の設定、契約などを行うよう各自治体の長に働きかけることを要望したものです。

東ト協、国の支援策利用促進で体勢整備

 東京都トラック協会は、国土交通省が実施する中小トラック事業者の省エネへの取り組み支援(助成)策の説明会を開催、会員事業者に同支援策を〝経営資源〟の一環として積極的に活用するよう呼びかけました。この支援策は景気の後退で厳しい経営環境の中、燃料価格の高騰対策として省エネへの取り組みを支援するもので、支援対象の拡大が図られながら実施されました。
 2008(平成20)年度第1次補正予算で「中小トラック事業者構造改善実証実験事業(省エネ補助)」が2008年11月4日から11月28日までを申請受付期間として実施されました。この事業は、保有車両5台以上20台以下のトラック運送事業者を対象に、省エネ運転の実施等の取り組みで概ね5%の省エネ効果を上げた事業に、実証実験期間中の経費の2分の1(上限100万円)を補助するものです。対象となる事業者は保有台数枠の他、総費用に占める燃料費の割合が概ね20%で、社会保険等に加入していることも必要です。
 補助対象となる取り組みは、省エネ運転の実施、配送経路の見直し、共同輸配送の実施、デジタコやドライブレコーダーなど省エネ機器の導入、講習会の開催・参加など省エネ実験に必要な経費で、実験対象期間は12月15日から2009年2月15日まででした。
 その後、2008年度第2次補正予算成立(2009年1月27日)を受けて、「中小トラック事業者構造改善支援事業」が開始されました。この事業は、第1次補正予算で実施された事業と同様の内容ですが、補助申請対象者を、保有車両5台以上30台以下(前回は20台以下)に拡充しました。この事業はさらに3回目の申請受付では、対象事業者を保有車両5台以上と上限を無くすとともに、燃料費が総経費の5%以上として要件緩和を図りました。 東ト協は、この中小事業構造改善事業に対し、第1次補正予算での実施では2008年11月18日、第2次補正での実施では2009年4月16日、6月12・17・19日に関東運輸局の担当官による説明会を開催し、会員事業者への事業浸透を図り、同時に申請受付・相談窓口を増設し、申請・相談時間を延長、さらに土・日・祝日にも対応しました。 こうしたことから、3回の合計で東ト協会員から1,037社・9億9,880万8千円の申請額を受付、国交省から1,033社に8億8,509万7千円の補助金が認められました。なお、全国で申請したのは約1万588社です。

東ト協、経営支援で説明会・相談会開催

 東京都トラック協会は、急速な景気悪化で資金繰りに支障が生じるなど中小企業を取り巻く経営環境が一段と厳しさを増したため「融資及び緊急保証制度に関する説明会・相談会」を2009(平成21)年5月25日に開催。会員事業者から、諸制度に対する説明等の要望に応えたもので、経営支援の一環です。  説明会では、国および東京都のセーフティネット保証(緊急保証制度)の内容、融資手続き・融資借換えの一本化──などについての具体的説明を、東京都や東京信用保証協会等からの担当者が行い、その後「個別相談」が行われました。

下請取引適正化共同宣言を初の合同会議で採択

 東京都、主要業種団体協議会、下請取引適正化推進員協議会の3者は2009(平成21)年6月25日に初の合同会議を開催し、「下請取引の適正化に向けた共同宣言」を採択。中小企業の経営基盤の安定・強化を図り、東京の産業力のさらなる成長を後押しするため、3者が協力していくことを宣言しました。主要業種団体協議会は、日本産業機械工業会、日本食品機械工業会など12団体で、「推進員協議会」は東京都トラック協会、日本ソフトウエア産業会など10団体で構成しています。

政権交代後初の関ト協事業者大会

 東京都トラック協会が担当幹事協会として2009(平成21)年9月9日に開催した第54回関東トラック協会事業者大会は、8月の総選挙の結果、自民党から民主党へ政権交代後の初めての大会となりました。星野良三関ト協会長(東京都トラック協会長)は、「政権交代と政治情勢が変化するため業界が一致団結し、しっかりとした理念と信念で物事に当たることが最重要。経済産業と国民生活のため1都7県の事業者が団結して適時適切な運動を展開しよう」と呼びかけ、そのためには政府の具体的な取り組みを注視する必要があるとしました。同時に、こうした情勢変化の時代でもトラック運送事業運営上、最重要なのは「輸送の安全確保」として事故防止の取り組みを求めました。

東ト協、高速料金で「大口・多頻度割引継続」を要望

 東京都トラック協会(星野良三会長)は2010(平成22)年2月23日、東京都トラック運送事業協同組合連合会(植田昌宏会長)と連名で、民主党副幹事長(幹事長室国土交通省担当)の阿久津幸彦衆議院議員に、高速道路料金見直しに関して「大口・多頻度割引制度」の継続などを求める「高速道路料金割引制度に関する要望」を行いました。 高速道路料金の割引制度について、既存の制度を見直し「上限料金制度に一本化する」方向で国土交通省が検討しているといわれ、その場合、現行の時間帯割引、大口・多頻度割引等からなる割引制度が廃止され、中小零細のトラック事業者にとって、現行割引後料金の値上げになるばかりでなく、高速道路利用の必須条件であるETCコーポレートカードでの利用が困難となり、高速道路利用から排除されるに等しいものとなってしまうと「危機感」を表明し、要望したものです。 要望事項は、(1)高速道路料金割引制度の見直しにあたっては、現行割引後料金を上回らないこと(2)トラック運送事業協同組合によるETCコーポレートカード契約に対する「大口・多頻度割引制度」を継続されたい(3)営業用トラックの割引制度の創設を図られたい──の3事項です。
 なお、要望では大口・多頻度割引制度下でトラック運送事業協同組合が果たしている役割として▽料金の請求事務代行▽料金の一括払い(債権回収保全機能=毎月の利用額を高速道路会社に一括代行納付)▽料金の支払い保証(債権回収リスク管理機能)▽事業者・運転者研修の実施▽高速道路の利用促進──などを挙げ、さらに都内のトラック運送事業協同組合利用状況を示して、新たな料金均一化制度になった場合、現行に比べ大幅な値上げになるとのシミュレーションも添付しています。

新型インフルエンザ対策本部を設置

 東京都トラック協会(星野良三会長)は、2009(平成21)年秋以降に流行が懸念されていた新型インフルエンザ(H1N1型)に対応するため、7月23日の理事会で星野会長を本部長とする「新型インフルエンザ対策本部」設置を決め、即日スタートさせ東ト協の体勢を整えました。新型インフルエンザは、ほとんどの人が基礎免疫を持っていないことからウイルスに感染しやすく、流行が起こりやすいものです。そのため感染者が出た場合、事業運営に大きな影響が懸念されました。中小企業庁でも早くからリーフレット「新型インフルエンザとBCP(事業継続計画)」でインフルエンザ流行が物流の中断を招く可能性を指摘し、大流行に備えて経営への影響を最小限に止めるためBCP策定を求め、同庁のホームページには「中小企業BCP策定用指針」を掲載しました。
 新型インフルエンザは、2009(平成21)年にメキシコで発生した豚由来のインフルエンザで、WHO(世界保健機関)が2009年6月に世界的な流行を宣言しました。日本では8月に厚生労働大臣が「本格的な流行がすでに始まっている」として、予防を呼びかけました。新型インフルエンザ(H1N1型)は弱毒型ですが、その心配を増幅させたのは、その前に発生した強毒型鳥インフルエンザ流行につながるのではと心配されていたからです。東ト協では、対策本部設置前の6月に、新型インフルエンザ対策を会員事業者に求めるとともに、協会本部に消毒用アルコールなどを設置したり、各種情報を会員に提供するなどの対応を進めてきました。また、9月には▽感染予防のための手洗いとうがいの励行▽咳エチケット▽職場の清掃・消毒▽感染したと思ったらどうするか──などを呼びかける事業場掲示用ポスター「新型インフルエンザ感染防止対策のポイント」を全会員事業者に送付したり、10月には従業員家族のため家庭用のパンフレット「新型インフルエンザ対策用パンフレット(家庭用保存版)」を全会員事業者に配布しました。また、研修用に利用してもらうためDVD「強毒性新型インフルエンザの脅威」「新型インフルエンザ対策」を10月中旬に各支部に配備しました。

グリーン・エコプロジェクトが世界に発信される

 東京都トラック協会が2006(平成18)年度からスタートさせた「グリーン・エコプロジェクト(GEP)」が、2009(平成21)年12月にデンマークの首都・コペンハーゲンで開催されたCOP15(国連気候変動枠組条約第15回締約国会議)の「車社会おける持続可能な環境対策会議」において、国土交通省から日本業界における先駆的事例の取り組みとして紹介されました。同プロジェクトは、2007(平成19)年度に環境大臣賞を受賞し、2009年度には東京都環境賞・知事賞を受賞しています。 GEPは、東ト協が全国に先駆けて実施している独自の省エネ・地球温暖化防止対策事業です。燃費データベースの構築を柱に、参加事業者へエコドライブ活動を推進し、燃費向上・交通事故低減・グリーン経営認証取得・改正省エネ法対応──など、環境対策に必要な事業をサポートするものです。スタートから4年間で470社1万500台の車両が参加し、その成果(2009年10月末現在)は、参加車両の累積削減燃料が647万6,974?(ドラム缶換算で約3万2,385本に相当)、CO2削減効果が1,697万kg/CO2(スギの木約121万本の植樹に相当)です。また、交通事故についても40.6%削減しています。

自動車運送事業の監査方針、行政処分基準等の改正に意見提出

 東京都トラック協会は2009(平成21)年9月16日、国土交通省の「自動車運送事業の監査方針、行政処分基準等の改正について」の意見公募(パブリックコメント)(9頁参照)に応じて、(1)運送事業に対する行政処分強化は関係法令違反減少に効果があること(2)処分基準強化の妥当性には、データに基づく合理的かつ透明性のある説明が必要であること(3)行き過ぎた規制緩和の状況解消を優先すべきこと──などの意見を提出しました。東ト協は意見で、▽これまでの行政処分強化による関係法令違反減少の効果の検証▽今回の基準強化による効果についての客観的な説明▽処分の妥当性について項目ごとの合理的で透明性のある説明▽処分強化だけでは事故のない車社会作りは不可能▽参入規制の見直しや標準運賃等の設定など環境整備を優先すべき ──などを指摘しています。(提出意見は『資料:東ト協が「自動車運送事業の監査方針、行政処分基準等の改正」に対して提出した意見』参照)

アルコール検知器導入義務化で意見提出

 東京都トラック協会は、2010(平成22)年2月19日、国土交通省がアルコール検知器導入義務付けのために検討している「貨物自動車運送事業輸送安全規則の一部を改正する省令並びに関係通達の改正」に対して、「飲酒運転に対するこれまで行われてきた一連の行政処分強化の効果や浸透状況の成果検証を優先すべきで、改正は時期尚早」との意見など、導入義務付けに対する全体的な意見と改正条項についての具体面からの意見を提出しました。これはパブリックコメント(意見公募)に応じたもの。 東ト協は、飲酒運転に対する行政処分は2005(平成17)年以降強化されており、2009(平成21)年10月施行の監査方針と処分強化(35頁参照 同案に対して東ト協が提出した意見は上記掲載)で「飲酒運転違反をした事業者にとっては事業存続が困難となる極めて厳しい処分基準」となったと指摘。行政処分強化の効果や浸透状況の観察期間をおき、その成果検証を優先すべきであり、「今回の点呼時にアルコール検知器の使用義務付けに伴う検知器の備付け義務規定は、特に経営危機にある中小事業者に大きな経済的負担」を伴い、改正は時期尚早、据え置くことを求めました。 また、アルコール検知器の使用義務付けの場合には、危機的経営状況にある貨物自動車運送事業者に対して、検知体制整備支援のため「事前にアルコール検知器購入補助制度を設けるべき」としています。
 具体面からは、検知の仕方や記録、対応方法、検知器の精度・機能等検知器自体の問題、携帯するアルコール検知器としてどのような機器を想定しているのか等、改正条項について問題点や疑問点を指摘しています。

2010:資料:東ト協が「自動車運送事業の監査方針、行政処分基準等の改正」に対して提出した意見

1.改正について の全体的な意見

  1. 貨物自動車運送事業に係る行政処分については、平成17年以降毎年処分の強化が図られてきている。特に、飲酒運転等悪質違反には厳罰な基準が設けられ、その執行から着実に結果も現れてきている。現在の処分量定でも十分過ぎるほどであり、また、各事業者はコンプライアンスを徹底すべく必死に頑張っているところで、これへの対応に各事業者は疲弊してきている。
  2. 事故削減のための処分基準の強化については、前述のように基準の強化・改正が行われ公表されてきた経緯があるが、処分基準の強化による事故の削減や事業法関係法令違反の減少に対する検証がされておらず、やみくもに基準日車数の強化が行われている。ついては、基準強化による効果について客観的なデータを示されるとともに、今回の強化の妥当性について項目毎に説明し、精神主義からデータ主義に基づく合理的かつ透明性のあるものとすべきであり、このような度重なる基準の強化は、行政の裁量を逸脱したものではないか。
  3. 処分基準の強化のみでは何の根本的解決になっていない。重要なことは運送事業者による無理な運行をせざるを得ない荷主の優越性等の運送業を取り巻く背後要因を除去するような大幅な強化方策が先決である。また、飲酒運転の下命容認などの事故は言語道断であるが、基本的にトラック運送事業者は事故防止に積極的に努めてきており、事故根絶は目標ではあるが、処分の強化だけでは事故のない車社会をつくることは不可能である。特に、昨今、トラック運送事業者はドライブレコーダーの導入によって、走行中の事故は極めて減少してきてその効果を出してきているが、依然として交差点内の事故が減少していない。
  4. これらについては、事業者の運転者教育のみでの撲滅は限界があり、いわんや行政処分の強化をもって事故の撲滅を図っていこうとすることにも無理がある。現在、警察庁や警視庁が推進する歩車分離式信号機の設置を優先すべきである。

  5. 監査端緒と関係のない(薄い)規則違反事項については、違反点数の付与されていない事業者(営業所)やGマーク取得事業者(営業所)に限り、執行猶予等のインセンティブ基準を設けていただきたい。
  6. トラック運送事業は基本的に荷主との運送関係からなりたっており、一定の処分あけに直ちに契約を確保できないこと等から、現行の処分でも十分効果は発揮されている。
  7. 特措法の適用を受けるタクシー事業とトラック事業は参入・運賃関係等、その規制内容は全く違っており、トラック関係については、現在進めるトラックの将来ビジョンの取り纏め時に必要に応じて見直すべきである。
  8. 行政処分にあたっては、福祉施設への派遣や里山づくり等ボランティア活動(社会貢献活動)を評価する処分制度を創設することも検討してはどうか。
  9. 通達の中身が大変分かりづらい。通達1本で分かり易く解説して頂きたい。別に定めるところによる等のぐるぐる廻しはやめて欲しい。(処分をされる事業者(素人)にも分かり易く説いて欲しい。無理に難しくしているとしか思えない)。

2.具体的な意見

  1. 監査方針
    • 第1当死亡事故を引き起こした事業者への巡回監査の実施について
       第1当か2当かは軽々に運輸局や事業者が勝手に判断できない。併せて、仮に、警察関係が1当としても事故にはその複雑な状況もあって、現状は警察関係が1当と判断したものについて道路交通法第108条の34に基づき通報されて監査となっている。なぜ現状のままではダメなのか、いたずらに監査権を乱用すべきではない。
    • 行政処分逃れのための監査の実施について
       事業の譲渡・譲受はトラック法でも規定されており、やみくもに監査を行って、事業者間の経済的取引を妨げることは問題である。処分後の車両等の移動は、経営者の自由裁量の範囲であって、将来的な処分逃れ対策の抑止と考えてのこととてもやり過ぎではないか。
       なお、トラック運送事業は、冷蔵冷凍車等、特殊な車両を必要とした運送も多く、仮に事業停止や事業廃止になった場合、荷主企業やエンドユーザーに与える影響も大きいことにも配慮すべきである。
    • 現実の問題として、処分後において運輸支局で追いかけきれるのか疑問、たまたま見つかったからということでは不公平ではないか。
    • また、監査で一部譲受かどうか判断することにしているが、一部譲受として判断され、かつ違反も見つかった場合、引き継いだ点数と当該監査により見つかった違反に伴う点数の合算点数によっては事業停止或いは事業取消もありうるということか。仮にそうだとすると、処分前・後ともやり過ぎではないか。そもそも処分逃れについては、現行でも種々規定が設けられており、監査から処分に至る処理期間の短縮によってその効果は十分発揮されることから、監査によって確認する必要はなく、現行の規定を確実に執行することと処理期間の短縮で対応すべきである。
  2. 30日車未満を警告とする措置の廃止について
    • 日報の記載漏れ等軽微な事項を積み重ねた30日車未満を警告とする措置は、法令遵守状況によって処分にメリハリを付けるための措置として運用され、また、警告処分はフォローアップ監査の対象となっており、事業者への指導には十分その効果を発揮してきている。軽微な事項による処分は恣意的な監査にも結びつき易く、公平性・透明性の確保の観点からも現状どおりとすべきである。
    • なお、どうしても廃止しなければならない客観的理由があるとするならば、Gマーク取得の推進の観点から取得事業者へのインセンティブとして、また、適正化機関による巡回指導結果がAからCまでの事業者へのインセンティブとして残して欲しい。
  3. 悪質違反の処分量定についても、1.に記述した通り
    • トラック関係においては、現行量定で十分その効果は発揮されていることから、改正の必要性はないのではないか。なお、トラックには、180日車以上や270日車以上等の事業停止処分事項が設けられており、従来から旅客事業に比べ強化されている。
  4. 社会保険等未加入の処分強化について 処分を強化しても、関係機関からの回答がなければ違反事項から外すことになっており、現状はこのようなケースもそれなりにあると聞いているが、不公平ではないか。現状をしっかり改善した後、ステップアップすべきである。

3.その他

第一当事者事故惹起者等事業者に対する運輸安全 マネジメント評価の実施について

事務連絡

会員事業者各位

(社)東京都トラック協会 専務理事

このたび、国土交通省においては「事業用自動車総合安全プラン2009」を踏まえ、事業用自動車の輸送の安全の向上を図るため、

自動車運送事業者に係わる運輸安全マネジメント評価(以下、「マネジメント評価」という。)を、

安全管理規定作成義務付け外事業者(300両未満事業者)についても実施することとし、通達が発出された。

当面、公共性が高い又は安全性のレベルが低いと認められる次の事業者から優先的に実施することとしている。

貨物自動車運送事業者関係では

○ 実施時期
上記対象事業者については、当該事業者を監査実施機関に呼び出し実施するフォローアップ監査後に、マネジメント評価が実施される。

○ 評価対象
行政処分後におけるフォローアップ監査の結果、改善が確認できた事業者に限る。

○ 実施場所
フォローアップ監査を実施する関東運輸局、東京運輸支局の会議室で実施。

○ 施行日
平成22年3月19日から。

※ 参考
「自動車運送事業者における運輸安全マネジメント等の実施について」
(平成21年10月16日付け国官運安第156号、国自安第88号、国自旅第163号、国自貨第95号)

問い合わせ

適正化事業部(3359-4138)まで