2009:交差点事故の防止に向けて

死亡事故の5割超が交差点

 東ト協は、2007(平成19)年から3年間で会員の交通事故を半減する目標を立て、現在、会員の絶大な協力を得て活動を推進中だが、この目標達成のためには、交差点死亡事故を減少させることが課題です。
 2008(平成20)年都内の事業用トラック関与の死亡事故(警視庁提供事故データを東ト協で手集計した件数)は41件で、前年に比べ14件減少したものの、このうち交差点死亡事故は26件で、前年に比べ2件増加しました。
 また、会員関与の死亡事故は11件で前年に比べ10件減少し、うち交差点死亡事故も6件で前年に比べ6件減少したが、依然として交差点死亡事故は全死亡事故の5割以上を占めています。そのため今回、東ト協事故防止委員会で、2007・2008年の2年間に都内で発生した事業用トラックが関与した交差点死亡事故48件について、事故の共通点や特徴等を洗い出し、事故防止に役立てるため内容の分析を行ったもの。2008年6月に引き続き2回目となります。

事業用トラック関与死亡事故の傾向

トラックの右左折時の事故発生状況

▼右折時の事故は17件発生し、このうち相手方が最初は見えていたはずの左方からの衝突が11件で約65%と多くを占め、また、右ハンドル車の運転席から確認できる右方からの衝突も5件発生しています。不明が1件となっています。
 ▼左折時の事故は15件発生し、その15件全てが左方からの相手方との衝突によるものです。左折時の事故では、右ハンドル車から死角となる左方からの相手方の衝突が全てを占めており、左折時は、いわゆる左折巻き込み事故が極めて多いと言えます。
 この現象は右折時も同様であり、右折時ではドライバーがハンドルを切った直後には既に視線を進行方向(右方)へ移していると推測され、左方への注視が希薄となり、 車両左側の死角と相まって左方からの衝突事故が多発する要因とも考えられます。

トラックの直進時の事故発生状況

 ▼直進時での事故16件は、相手方が右方からが8件、左方からが8件と同数発生しています。直進時事故16件の相手方の内訳は、歩行者4件、自転車6件、原付・自二が6件となっています。
 直進時事故16件のうち、トラックの信号無視3件および安全確認不十分6件が含まれ、一方、相手方である原付の信号無視1件および一時停止不履行3件が、また、歩行者・自転車の信号無視3件が含まれています。このように、直進時での事故では、トラックまたは相手方のいずれかに信号無視、一時停止不履行あるいは安全確認不十分などの交通違反行為が認められました。
 このことから、トラックは交通法規を必ず遵守することはもちろんですが、仮に信号が青であっても、交差点を通過する際は、交差点は危険地帯と認識し、危険を予測した運転をすることが望まれます。

トラックから見た相手方との衝突事故状況

 ▼トラックから衝突した相手方(歩行者・自転車等)の進行方向の関係を見ると、相手方の左方からの衝突が34件(うち、左折時の衝突が15件、右折時の衝突が11件、直進時の衝突が8件)発生しており、このことは、前述の左方衝突の多発要因にも繋がると考えられます。
 一方、右方からの衝突が13件(うち、右折時の衝突が5件、直進8件)発生していることから、ドライバーの視線は、右折時には左方(横断歩道上)から進行方向(前方)にかけての注視を優先させるため、運転席から相手方の行動が確認しやすい右側(右方の横断歩道上)への注視が不十分になっていることが推測されます。
 また、衝突した48件の相手方のうち、歩行者が17件(うち、トラック側から見て左方衝突が11件、右方衝突が5件、不明1件)、自転車が22件(うち、トラック側から見て左方衝突が17件、右方衝突が5件)発生しているが、両者ともに左方からの衝突が顕著なことから、これらの事故においても、前述の左方衝突の多発要因が関係するものと考えられます。

歩車分離式信号機の設置拡大と交差点横断
歩道の位置を交差点から離して設置を要望

傾向分析から得た交差点での事故防止策

  1. 運転者は交差点では次の点を自ら認識しておくこと。
    ▽トラック運転者が交差点内で見ている(見えている)視野は意外と狭いこと▽歩行者・自転車の進路は必ずしも直進ではないこと▽歩行者・自転車の進行スピードは意外にも速いこと
  2. 右左折時では、横断歩道手前における一時停止による安全確認を徹底すること。
  3. いつでもブレーキを踏めるようブレーキ足乗せを実施すること。
  4. 右左折時とも、特に、左方から進行してくる相手方への注視が希薄にならないよう、 死角の多い左方への注視を繰り返し行うなど一層徹底すること。
     具体的には、右ハンドル車の運転席から死角に当たる車両の左側方に歩行者等の所在の有無や横断しようとする歩行者等の行動を確認するため、横断歩道手前での一時停止を励行し、周囲の安全確認を徹底すること。
  5. 直進時では、トラックは交通法規を厳守することはもちろんだが、仮に信号が青であっても、交差点を通過する際は、交差点は危険地帯と認識し、危険を予測した運転をすること。
  6. 高齢者は想定外の行動をとることがあるので、高齢者の歩行者・自転車を見かけた場合には、防衛運転を徹底すること。
  7. 常に危険予測をして運転する習慣を身につけること。
2009:東京都トラック協会(東ト協)の活動

映像記録型ドライブレコーダー装着で事故半減

──2009年は目標達成の年に

 東京都トラック協会の星野良三会長は、2007(平成19)年1月11日の東ト協新年理事会で「映像記録型ドライブレコーダー(DR)を会員事業者の保有車両の半数に装着することで、会員事業者の交通事故を3年で半減する」との目標を掲げ、交通事故半減に向けて様々な取り組みを進めています。
 そのための有力なツールとして、当初から映像記録型ドライブレコーダー(DR)の装着促進を図り、東ト協としてはDR装着助成を3年間の通年事業(通年予算額7億7,280万円)として実施し、東京都の助成制度等の活用も図ってきています。東京都では、2009(平成21)年度も2008(平成20)年度同様にDR助成を実施します(申請受付窓口は東ト協環境部)。
 目標年となる2009年には、東ト協が提供しているラジオ番組(交通情報)の回数を2月から大幅に増加させ、目標達成のカギともなるドライバーに直接、安全運転・事故防止、目標達成を呼びかけています。

交通事故半減の「目標数値」

 東ト協「交通事故半減の目標数値」は、計画スタート年(2007年)の直近2年間の都内(警視庁管内)会員関与の人身事故件数・死亡事故件数を根拠に設定しています。人身事故は直近の2005・2006年の数値が把握できましたが、死亡事故は2005年の会員関与の件数把握ができないため、2006・2007年の数値を根拠としています。
 その母数となる数値を警視庁の協力を得て把握したところ、人身事故は2005年が1,832件、2006年が1,390件で、死亡事故は2006年が14件、2007年が21件とわかりました。このため、人身事故については2005・2006年の平均1,611件を半減、死亡事故については2006・2007年の平均18件を半減することを「目標数値」にしています。
 なお、東ト協取り組みの直近3か年の、都内の事業用貨物自動車関与の人身事故総件数は2005年が6,429件、2006年が6,130件、2007年が5,605件。死亡事故総件数は2005年が61件、2006年が47件、2007年が55件となっています。

事業者の意地と誇りで目標達成を

 会員事業者の交通事故半減の目標年を迎えた2009年の年頭所感で星野会長は、「ドライブレコーダー(DR)の導入促進を図り、『自分のため』『世のため』『人のため』に交通事故半減の目標を達成して、東京のトラック運送事業者の意地と誇りを大いにアピールしよう」と意欲を示しました。また、東ト協新年理事会でも、2月16日に開催された東ト協事故防止大会でも同様の発言をし、「DR装着促進で事故半減へのさらなる飛躍をしたい」と目標実現を呼びかけました。
 事故半減への有力なツールであるDR装着について東ト協は、会員事業者の車両・8万台の半数4万台に装着する目標を掲げ、普及促進に努めています。
 また、2008年の都内(警視庁管内)における事業用貨物自動車が関与した交通死亡事故は、全体で41件、2007年に比べ14件の減少となりました。41件のうち、東ト協会員関与の事故は11件と、全体の4分の1強(26.8%)です。2007年の東ト協会員事業者関与の死亡事故が21件ですから、2008年は前年に比べ10件、47.6%と半減に近い減少となっています。一方、2008年の非会員関与の死亡事故は30件と前年に比べ4件、11.8%の減少です。星野会長は、「(事故の大幅減少は)会員の皆さんが、いかに事故防止に一生懸命取り組んでいるかという姿の現れ。DR装着効果もその一助になっている」としています。

ラジオで直接ドライバーに呼びかけ

 東ト協は、今年が会員事業者の交通事故半減3か年計画の3年目(最終年)となることから、DR装着をさらに一層進めるとともに、東ト協が提供しているラジオ番組を活用、放送回数を大幅に増やして2009年2月から運転者に直接、事故半減実現への呼びかけを開始しました。「交通事故の半減」を確実なものにするため、目標達成への第一線にいる運転者に「目標達成は運転者の双肩に」「左右の確認とスピードを控えめに」「交差点での右左折時の一時停止と十分な安全確認」などを直接訴えることにしたものです。連日、事故半減を訴えることで、運転者への注意喚起と意識づけを強め、目標達成への実効性を高めるのがねらいです。
 東ト協はこれまで、ドライバーの”重要な情報源”である交通情報を、毎週土曜日と日曜日に各2回、放送していました。それを、月曜日から金曜日まで(昼間)毎日3回、計15回に拡大する一方、これまで各2回放送していた土、日を各1回にして毎週計17回とし、従来の週4回から放送を4倍にしました。
 平日の昼間に放送を拡大したのは、ラジオの場合、時間帯が「午前10時前後」と「午後2時前後」に聴取者が多いというデータがあり、また、警視庁の調査によると事業用貨物自動車の交通事故は昼間時間帯(特に午前10時~正午)に多く発生していることから、その時間帯を中心に放送するものです。
 ラジオ局等のラジオ聴取調査によると、「平日に平均3時間以上仕事で運転するビジネスドライバーの8割近くが、乗車中にラジオを聞いている」とのデータがあり、「ラジオCMを7回以上聴くと、CMの内容を理解し、身に付く」とのCM調査結果を日本民間放送連盟等がまとめています。大手広告代理店の調査によると、東ト協がこれまで週4回放送していた時と比べ、17回と回数を拡大すると、7回以上聴いてもらえる人が2.7倍に増えるという結果が出ています。こうしたことから、営業用トラックの交通事故が多い時間帯の午前10時から正午(警視庁調査)を中心に集中的に放送することで、事故半減への効果を高めることを狙っています。

事故防止活動

 交通事故の防止は東京都トラック協会の最重要課題の1つとして位置づけられています。
 最近の事業用貨物自動車による重大事故は高止まり傾向にあり、交通事故全体の減少傾向に比べ、事業用貨物自動車の減少傾向が緩やかであると指摘され、国土交通省では、事業用貨物自動車の事故減少策をハード・ソフト両面から検討を進めています(11ぺージ「国交省、事業用自動車の事故削減ヘ数値目標検討」参照)。
 東ト協では、事業用貨物自動車の事故多発や社会的影響のある重大事故等の発生があった場合、会員事業者に「事故防止(緊急)対策」のさらなる徹底を要請し、注意を喚起しています。
 2008(平成20)年中には、5月に交差点での事業用貨物自動車関与の死亡事故が多発したため、同月23日に「『交通死亡事故の根絶に向けた事故防止緊急対策』(2007年1月策定)の更なる徹底について」を会員事業者に連絡、事故防止の徹底を求め、6月4日に「事業用貨物自動車の関与する重大交通事故連続発生に伴う対策の強化依頼について」を通知、改めて運転者一人ひとりまで指導徹底するよう要請しています。また、10月10日には「事業用貨物自動車が関与する交通死亡事故の根絶について」を連絡、重大事故が多発傾向となる秋から年末に向けて一層の事故防止活動を求めました。

本部と支部が一体となった事故防止活動

 東ト協は、2008年春の全国交通安全運動期間中の4月10日、本部と支部が連携して交通安全活動を展開しました。2008年度東ト協事業計画で、春秋の交通安全運動の機会を捉えて本部・支部が連携して交通安全活動を展開することを掲げましたが、そのスタートです。
 東ト協各支部では、日常的な街頭指導(交差点での歩行者安全誘導等)活動をはじめ、春秋の全国交通安全運動など、さまざまな機会に地元に密着した形で事故防止活動を行っています。こうした活動を東ト協全体として「社会的に見える形で、より効果的に、社会的にもインパクトを与える」ようにし、東ト協の事故防止活動の社会的理解を進めようというのが、本部・支部連携による事故防止活動のねらいです。そのため、東ト協本部では、参加者全員が統一したスタイルで行えるよう、揃いの帽子やジャンパー、横断旗を用意しています。

交差点の事故分析

 東ト協は2008年5月に事業用貨物自動車関与の死亡事故のうち、交差点での死亡事故が多い点に着目、その分析を行いました。それをもとに、6月に交差点事故を防止するための対策をまとめました。さらに2009年2月の東ト協事故防止大会で、2007・2008年の2年間の事業用貨物自動車が関与した交差点での死亡事故分析をもとに、事故防止策を発表しました(後掲)。

環境問題への対応

 東京都トラック協会は、環境対策を事故防止対策とともに重要な課題としてとらえ、大気汚染問題や地球環境問題などに対応し、低公害車導入支援、PM低減装置やNOx・PM低減装置の装着支援による低公害化促進事業をはじめ「グリーン・エコプロジェクト」を継続推進するなど、さまざまな環境改善施策を展開しています。
 こうした活動で東京都の石原慎太郎知事は、2006(平成18)年1月の東ト協新年交歓会で「東京の空がきれいになった。東ト協の協力のお陰。”神様、仏様、トラック協会様”」と評価、それ以来、「東京の空がきれいになった」とのフレーズを東ト協の会合に出席した場合に使い、東ト協および会員事業者が「身を削いで」環境対策へ努力していることを評価しています。
 東ト協では、これまで自動車NOx・PM法、東京環境確保条例などへの対応を進めてきました。自動車NOx・PM法への対応では、2007(平成19)年度は東ト協独自で新長期規制対応車の導入支援を実施、東京都環境確保条例への対応ではPM減少装置装着支援を行ってきています。こうしたことからNOxやPMへの対応は「峠を越えた」状況となっています。
 また、石原都知事は2009(平成21)年1月の東ト協新年交歓会で、「(東ト協の環境対策の対応で)都民は見えにくいが大きな恩恵に与っている。東ト協が進め、東京都も協力しているドライブレコーダーの装着では、交通事故件数が減少しただけでなく、CO2の削減が非常に進んでいる」としています。

グリーン・エコプロジェクト推進中

 「グリーン・エコプロジェクト」は、東京都トラック協会が2006年度からスタートさせた環境対策事業で、環境面のCSR(企業の社会的責任)を能動的に果たすことで、経営改善を図ろうというものです。NOxやPM対策が「峠を越えた」なかで、地球環境に与える影響が問題となっているCO2削減に、トラック業界として積極的に取り組むものです。手法的には、運転者が走行管理表に燃費を記入するという簡易なものであり、それに基づいてエコドライブ等の指導が行われます。
 「グリーン・エコプロジェクト」の取り組み成果は、燃費向上、CO2など排出ガス削減や交通事故件数の減少として現れています。具体的成果として、燃費向上効果のため使用燃料が削減され、2006年度、2007年度、2008年度(11月まで)の削減累計量は4,513,463・(200・ドラム缶約22,600本分)、それによる削減CO2量は11,825,275CO2/・、杉の木約84万本の植樹に相当──などが現れています。
 全国の業界に先駆けたこの取り組みは評価され、環境省の「平成19年度地球温暖化防止活動環境大臣表彰」の対策活動実践部門で環境大臣表彰を受賞しました。また、環境サミットといわれた洞爺湖サミットに関連して日本損害保険協会等が主催した環境フォーラム「洞爺湖サミットを読み解く~わたしたちにできること」に東ト協からパネリストが参加してグリーン・エコプロジェクトの取り組みを紹介・説明したり、学際的にモビリティ社会の向上に寄与するために研究活動などを行っている国際交通安全学会の学会誌『Review』(33巻4号、2008年12月)に「トラック運送事業者の『エコ安全ドライブ活動』」のタイトルで論文が掲載されるなど各方面から注目され、東ト協への問い合わせもきています。
 「グリーン・エコプロジェクト」には、環境改善、経営改善とともに、集積されたデータが「貴重な財産」となっています。さまざまな条件で、実際に走行している車両(年式、積載量、仕様など多種多様な車両)の燃費データが、大量に集積されるためです。東ト協環境部が積載量を区分指標として分析したところ、それぞれの積載量によって燃費が「ある傾向値」に収斂していく様子が示されました。こうした東ト協だけが保有しているデータに、国(国土交通省)、自動車メーカーや研究者も注目しており、今後、どのように活用していくかが検討されています。

東ト協に東京都から環境局長賞

 東京都トラック協会は、2008年5月19日に開催した通常総会で、東京都の「緑の東京募金」に賛同、100万円を寄付しました。この募金は、都が今後10年間の基本計画である「10年後の東京」において、水と緑の回廊で包まれた、美しいまち東京を復活させ、次世代の子どもたちに緑を引き継ぐために創設されたもので、2010年度までに募金額8億円を目標としています。
 この募金に対して、東京都は7月1日、都庁で「緑の東京募金感謝状贈呈式」を行い、東ト協に環境局長賞を贈りました。

原価計算ソフトでコスト把握

 東京都トラック協会は、2008(平成20)年度の重要テーマとして、再生産可能な適正運賃収受の実現で輸送力の確保を掲げました。そして、荷主団体に働きかける行政等の協力や東ト協による荷主団体や会員事業者の要請に基づく荷主への要望活動などで、運賃交渉環境の整備などを進めてきました。さらに燃料価格の高騰に伴う燃料サーチャージ制の研修会、経営危機突破総決起大会などを実施しました。こうしたことで、トラック運送事業者の厳しい経営環境を荷主に理解してもらい、また、社会的にも業界の窮状理解を進め、運賃問題等でそれなりの成果を上げてきました。2009(平成21)年の年頭理事会で東ト協の星野良三会長は、「今年の大きなテーマは原価計算ソフトを活用して車両1台当たりの生産性向上」とし、原価意識の向上が重要と指摘しています。

燃料サーチャージ制の導入促進

 国土交通省と公正取引委員会は、トラック運送業界が軽油価格高騰に対応するための緊急対策をまとめました(6ぺージ「燃料サーチャージガイドラインを行政通達」参照)。それに対応して東ト協は、2008年4月に「トラック運送業における『適正取引推進』および『燃料サーチャージ制』ガイドラインに関する説明会」を開催。国交省(自動車交通局貨物課)の担当官が、燃料サーチャージの具体的算出方法・導入の具体例や燃料サーチャージ制を導入した場合の届出の必要性等を説明しました。同制度に対する会員事業者の関心は高く、東ト協はその後も同趣旨の説明会を追加開催し、会員の要望に対応しました。

燃料高騰経営危機突破総決起大会を開催

 東ト協はじめ1都7県(神奈川・千葉・埼玉・茨城・群馬・栃木・山梨)で構成する関東トラック協会(会長・星野良三東ト協会長)は2008年8月26日、千代田区永田町の自由民主党本部大ホールで「燃料高騰経営危機突破総決起大会」を開催。会員事業者ら1,400人以上が参加したほか、自民党選出国会議員、都議会議員など130人も参加しました。
 この大会は、燃料価格の急激・異常な高騰による業界の窮状を背景に、事業者の危機感が開催に至らせたものです。大会では、事業者自らが立ち上がり、窮状を打破しようとの決意が表明され、・燃料サーチャージの導入等による適正運賃確保の断固実現・世界一高い高速道路料金の思い切った引き下げ・国民生活に必要なトラック輸送サービスを維持するための燃料税の緊急減税または燃料費の補填・省エネおよび代替エネ等の本格支援と運輸事業振興助成交付金の拡充・マネーゲームによる異常な原油高の抑止と国内燃料の価格監視等の徹底強化──の5スローガン実現を決議しました。
 星野会長はじめ関ト協副会長でもある各県ト協会長は経済産業省、内閣府(経済財政担当相)、財務省、総務省、公正取引委員会、国土交通省を訪れ、要望書を手渡す陳情活動を展開しました。大会参加者1,200人は、日比谷公園まで街頭行動(デモ行進)し、トラック運送業界の厳しい経営環境や危機突破のための燃料サーチャージの実現、高速道路料金の大幅引き下げ、燃料税の緊急減税等の要望を広くアピールしました。
 「総決起大会」は、8月26日当日、全国31か所で一斉に開催されました。同日に全国一斉で大会を開くことはトラック業界として初めての試みでした。
 東京で開催された大会は大規模な大会であり、テレビ、新聞などマスコミが一斉に報道し、社会へのアピールに力を与えました。トラック業界の結束や、業界の置かれている窮状を広く社会に示すことができ、成功の大会だと言えます。そうした評価は、”荷主が大会報道で厳しい状況を感じてくれた””荷主の運賃問題に対する理解が進んだ”などの事業者の声からも窺えます。また、国交省サイドからは、政府の2008年度補正予算で、トラック運送事業への支援策(8ページ「第1次補正予算、トラック燃料高騰対策に42.5億円」参照)導入の契機にもなっているとの評価がなされています。

金融支援策の活用をアピール

 東京都は2008年10月30日、「原材料価格高騰対応等緊急融資」(略称:経営緊急)を発表。原油・原材料価格や仕入価格の高騰で売上げや収益が圧迫されている中小企業等の支援策で、都は翌日にも「東京緊急対策・」を相次いで発表しました。「経営緊急」は、政府が2008年8月29日に発表した緊急対策「安心実現のための緊急総合対策」で、中小企業等への資金繰り支援として盛り込んだ新たな保証制度(原材料価格高騰対応等緊急保証)が10月31日から実施されたことに対応したものです。
 都の「経営緊急」は実施期間が2008年10月31日から2010年3月31日までで、都制度融資の「経営支援融資」に新メニューを設定、都独自の対応で最優遇金利を適用するとともに、信用保証料の大幅軽減を図っています。内容は・一般保証と別枠で最大2億8,000万円(8千万円まで無担保)まで、保証協会による全部保証(100%保証)の融資が受けられる・小規模企業者に対して、都が独自に信用保証料の2分の1を補助──というものです。
 東京都トラック協会は、東京都が実施する「経営緊急」を会員事業者が活用できるよう、内容を紹介した「経営支援特集」を作成、2008年11月10日付機関紙に織り込んでその周知を図りました。

原価計算ソフトの配布・普及

 東ト協の星野良三会長は、2008年12月10日開催の常任理事会・理事会合同会議で、厳しい経営環境の中で「生き残る」ために「原価計算の徹底で1台当たりの生産性向上」が必要と強調し、車両1台当たりの原価を把握する必要があるとして、武田ロジスティクス研究会(代表・武田正治武蔵工業大学名誉教授)が開発した原価計算ソフト「武田式運送原価計算システム・関東圏2009」を全会員事業者に配布、活用してもらうための普及・利用促進活動を進める意向を示しました。
 星野会長は、2009年の新年理事会でも「今年の重要テーマとして、車両1台当たりの生産性向上」を改めて示しました。同ソフトについて開発者の武田氏は、「トラック運送事業者の大半を占める中小事業者の原価意識の改革を通じて、経営改善を図ることが開発目的。毎日の車両別・顧客別収支(黒字か赤字か)を見ることで、経営の実情を具体的な数字で把握し、”大脳に毎日、実情をどうするか、打開策を考え、それを書き込む”ことで経営改善の意識改革を進めていこうというもの。そのため、経営の実情を知るデータを収集するソフトの操作を簡単・短時間で行えるようにした」と説明しています。
 操作は、車両の基本データを入力しておき、日次実績は・当該日時・その日の走行距離・勤務時間・軽油の価格・高速道路利用料金・仕事の運賃(契約料金)──を入力してクリックすれば、当該の仕事が「何円の黒字(または赤字)」と瞬時に弾き出されるものです。
 東ト協では、武田式原価計算ソフトの普及・利用促進を図るため、2009年1月26日から支部での講習会をスタートさせました。

高速道路料金

営業用トラックの割引制度創設求める

 東京都トラック協会は2009(平成21)年2月3日、東日本高速道路(14)、中日本高速道路(14)、首都高速道路(14)に「高速道路料金割引に関する要望について」を提出。3社に営業用トラックの割引制度創設等を求めました。これは、高速道路各社などが発表した「高速道路の有効活用・機能強化に関する計画(案)」(9ぺージ「首都高速に大口割引創設」参照)への意見公募に応じたものです。
 「要望」は、3社に対して「営業用トラックの高速道路通行料金について、営業車割引制度の創設」を要望したほか、各社にそれぞれ対応した要望を行っています。首都高速に対しては・料金割引制度の設定に当たっては、廃止された高額回数券(18.4%)並みの割引・大口・多頻度割引(契約者単位割引)の創設とその充実(NEXCO並みの10%)・お得意様割引(頻度割引)の充実・距離別料金の設定に当たっては、現行料金を上回らない・協同組合の「集金業務集約化協力金」の充実──を要望。東/中日本高速道路には・大口・多頻度割引制度における契約者単位の「1車両あたりの平均利用額3万円超」「利用合計額500万円超」の適用条件の大幅な引き下げ・同上、契約者単位割引(現行10%)のより一層の拡充・「一般有料道路」についても、高速道路と同等の割引制度の適用・昼間時間帯における割引制度の創設とその充実──などを要望しました。

関ト協、首都高速に特別料金制度導入等で要望

 関東トラック協会(会長・星野良三東ト協会長)は2008年7月3日、首都高速道路(14) および国土交通省に、首都高速が導入予定の距離別料金案に対する要望活動を行いました。要望には、関ト協1都7県のトラック協会長全員が参加しました。
 要望では、首都高速に対して、料金案は「実質的値上げで、容認できない」として、・事業用トラックが公共的使命を担っていることを考慮の上、事業用トラックの特別料金制度の導入等により通行料金の大幅引き下げを図られたい・距離別料金制度の導入にあたっては、現行料金を上回ることなく、また、廃止された回数券並み割引(18.4%)の適用を図られたい──と求めました。
 また、国交省には、業界が危機的経営状況にあり、実質的な大幅値上げとなる首都高速道路の距離別料金制度導入は到底容認できないとして理解を求めました。

業界イメージアップで広報活動

 東京都トラック協会、トラック業界の理解を深めてもらいイメージアップを図るため、テレビ、ラジオ等のメディアの活用も含めて広報活動を展開しています。その一環として、直接、都民や地域住民に働きかけているのが「トラックの日」のイベントです。10月9日「トラックの日」を中心に、東ト協各支部が地元に密着したイベントを実施して”暮らしを運ぶ緑ナンバートラック”をアピールしています。本部イベントもその一つです。
 東ト協は、2008(平成20)年10月5日に「トラックの日」本部イベントとして「トラックの日フェスタinラクーア」を、文京区春日の東京ドームシティ「ラクーア」屋外ステージで開催しました。2006(平成18)年から連続3回目の開催で、家族連れやカップルなど9,387人(ラクーア調べ)が来場しました。
 子供(家族)や若い人向けイベントのなかで、トラック業界が社会に無くてはならない物流を担っている役割り、事故防止、環境対策への取り組みなどを理解してもらう企画を盛り込み、全体の流れの中でトラック業界が身近なものであり、生活や産業を支えていることの理解を深め、業界イメージアップを積極的に図っています。

業界テーマソングを制作

 東ト協は、業界の好感度アップのため、明るく・覚えやすい業界テーマソング「風になろう」、イベントソング「On my road(オンマイロード)」を2008年6月に制作、本部・支部のイベントをはじめテレビCM、ラジオCMなどに活用。業界のイメージアップや認知度アップ、社会的地位の向上を図り、魅力ある業界イメージの定着をねらうイメージチェンジ作戦の一環です。
 業界テーマソング「風になろう」(男性ボーカル曲)は、アフリカ音楽のリズムの力強さと、カントリーミュージックのあたたかさを取り入れて、トラック運送業界がめざす”あたたかい世界”を表現。わかりやすいメロディを繰り返す、耳に残りやすい曲となっています。
 イベントソング「On my road」(女性ボーカル曲)は、爽やかで力強いポジティブな曲。トラック運送業界の輝かしい未来をアピールし、希望に溢れる明るいイメージの表現です。
 業界テーマソング・イベントソングは、2007年5月に東ト協広報委員会・広報小委員会の中に「テーマソング検討会」を設置して、検討作業を進めました。

新テレビCMを放映

 東ト協は2008年10月3日から、東京MXテレビで放送しているCMを一新。業界テーマソング「風になろう」を活用したアニメ調のイメージCMに変更しました。「風になろう」の歌詞にあわせて、親近感のある擬人化したトラックが、四季の風景をバックに山を越え、野を走り、笑顔をのせて貨物輸送し、生活を支えるイメージを映し出しています。
 10月5日に開催した「トラックの日」本部イベント会場でも、大型モニターで新CMを放送、アピールしました。

24時間健康相談事業がスタート

 東京都トラック協会は、会員とその事業所に勤務している社員・家族を対象に、2008(平成20)年度の新規福利厚生対策事業として専門スタッフが24時間対応する、東ト協専用ダイヤルによる「こころとからだの健康相談(24時間電話相談)」事業をスタートさせました。
 日頃気になる体調不良・健康障害、さまざまなストレスによる悩み・不安(メンタルヘルス)、薬や治療方針、介護や育児に関する悩み、知りたい医療機関など「心とからだの健康問題」に対して専門家に相談できるものです。相談は匿名ででき、相談内容が知られることはなく、プライバシーは守られています。電話料・相談料は無料。
 東ト協は、会員事業者のための福利厚生対策事業とし、会員事業所従業員・家族の休暇活動、レジャー・レクリエーション活動などのため、2006年度にニュー・グリーンピア津南、ダイワロイヤルズホテルと、2007年度に東京貨物運送健康保険組合(保養所「トーカ熱海」)、東京トラック事業健康保険組合(保養所「保養所あじろ」)と保養所契約を締結しています。

2009:経営環境

国交省と公取委、燃料高騰で緊急措置

 国土交通省と公正取引委員会は2008(平成20)年3月4日、軽油価格高騰に対処するためのトラック運送業に対する緊急措置をまとめました。軽油価格の急激な高騰を放置して適切な運賃転嫁が進まない場合、わが国の物流基盤が維持できなくなるおそれがあるとして、燃料サーチャージ制の導入、独占禁止法・下請法の取締り強化、運賃の健全性の確保、関係者による協働のための枠組み――を示しました。国土交通省と公正取引委員会が連名でこうした対策を打ち出すのは初めてで、とくに、燃料価格の上昇・下落に応じたコストの増減分を別建て運賃として設定する燃料サーチャージ制については、荷主とトラック運送事業者に強く導入を働きかけました。サーチャージ制を導入していない場合には、必要に応じて立入検査を実施し、悪質なダンピングには運賃変更命令の発動も辞さない考えを示し、注目されました。
 国土交通省では、「買いたたき」や不当競争につながるおそれのある取引を防止するため、貨物自動車運送事業法に基づく事業改善命令の運用拡大を行うとともに、公正取引委員会も運賃改定交渉を巡る「買いたたき」など荷主の不当行為に対する監視を強化するなど、独禁法と下請法を厳正に運用する方針を示しました。

燃料サーチャージガイドラインを行政通達

 国土交通省は2008(平成20)年3月14日、トラック運送事業が軽油価格高騰問題に対応するための緊急対策として、「トラック運送業における燃料サーチャージ緊急ガイドライン」と「トラック運送業における下請・荷主適正取引推進ガイドライン」をまとめ、貨物自動車運送事業法に基づく行政通達として発出しました。
 燃料サーチャージ制は、燃料価格の上昇・下落によるコストの増減分を別建て運賃として設定する制度で、航空や海運の運賃では定着していますが、競争の激しいトラックではほとんど導入されていないため、国としての考え方をガイドラインとして示したものです。燃料高騰によるコストアップ分を適正に転嫁することを通じて、中小企業の成長力を底上げすることが狙いです。
 具体的な算出方法は、まず基準となる燃料価格を設定し、改定する場合の価格変動幅を例えば5~10円程度で設定して、燃料価格がその幅の中になった時点であらかじめ決めた上乗せ額を適用します。基準価格は、同省によると2003(平成15)年度の1リットル当たり64円から2004(平成16)年度の70円程度に設定している事例が多いようです。サーチャージ制を導入しない場合には、事情聴取により導入できない理由を確認し、ダンピングや不当な競争を前提としている場合には事業改善命令を発することがあるとしています。
 もう一方のガイドラインである下請・荷主適正取引推進ガイドラインは、荷主や元請事業者による独禁法・下請法上問題となる行為類型を列挙し、求められる取引慣行と望ましい取引実例を細かく示したもので、違法行為の未然防止を図ることが狙いです。

国交省、日本経団連と日商に協力要請

 国土交通省は2008(平成20)年3月21日、日本商工会議所に、同27日には日本経団連に対して、トラック運送取引に燃料サーチャージ制を導入するよう文書で協力要請を行いました。いずれも春田謙国土交通審議官(当時)ら同省幹部が直接出向いて軽油価格高騰で苦しんでいるトラック運送業界の窮状を訴え、サーチャージ制による適正な価格転嫁について理解を求めました。
 要請文書は、燃料サーチャージ制導入への協力要請と適正取引の推進に理解を求めるものの2つで、同省が発出した2つのガイドラインの趣旨に理解を求め、傘下の会員各社への周知を要請しました。
 要請に対し日本商工会議所側からは、サーチャージと適正取引については荷主の協力を得ることが重要、といった意見が出され、2つのガイドラインを傘下会員に周知することを約束しました。
 日本経団連への要請は、同連合会の輸送流通委員会に対して行われ、日本経団連側からは、原材料価格も高騰しているため価格転嫁は経済界全体で考えるべきとの意見のほか、サーチャージ制については、透明性が高く評価できるといった意見が出されました。

社保未加入事業者への処分強化

 国土交通省は2008(平成20)年3月31日、トラック運送事業における社会保険・労働保険未加入対策強化を地方運輸局に通達しました。公正取引委員会との連名で同月4日にまとめた「軽油高騰に対処するための緊急措置」のなかで打ち出していた施策を具体化したものです。社会保険(健康保険、厚生年金)と労働保険(労災保険、雇用保険)について、一部の労働者が未加入の場合は警告を行い、再犯の場合は20日車の車両使用停止処分としています。すべての労働者が未加入の場合は、初犯でも20日車の車両使用停止処分とし、再犯には3倍の60日車の処分を科すこととしており、7月1日から実施されました。このほか、同年4月1日からは、これまでタクシー事業者を対象に行っていた労働基準監督機関との合同監査・監督をトラック事業者にも拡大しました。輸送の安全を確保するため、より効果的な監査を実施することが目的です。

荷主勧告制度を拡充

 国土交通省は2008年4月1日から、これまで過積載に適用を限定していた荷主勧告制度を過労運転と最高速度違反にも適用しました。荷主勧告に至る前に、荷主に対して協力要請書(一般・警告)を発出するもので、過去3年間に1回、警告的な内容の協力要請書を受け、さらに同種の違反で実運送事業者が行政処分や安全確保命令を受けた場合、荷主に対して勧告が行われる仕組みです。

適正取引パートナーシップ会議を開催

 国土交通省は2008(平成20)年5月28日、トラック運送事業への燃料サーチャージ制導入促進や下請け・荷主取引適正化推進に向けて「トラック輸送適正取引推進パートナーシップ会議」を立ち上げました。燃料高騰分の運賃への転嫁をよりスムーズにしていくため、学識経験者、荷主、元請トラック事業者、下請けトラック事業者らトラック輸送に関する関係者が一堂に会して、相互の信頼感を醸成することが目的です。
 委員からは「共通認識を持つことが重要」(日本経団連)、「相互理解が大前提」(日本商工会議所)などといった意見が出され、荷主企業からも「輸送会社の犠牲の上に成り立った経営では健全ではない」「価格は市場が決めるものだが、理屈があるものには応じなければならない」などと理解を示す意見が相次ぎました。
 同様のパートナーシップ会議は、6月以降全国のブロック単位や県単位でも設置され、燃料サーチャージ制の導入が促進されました。東京では、関東地区・東京都トラック輸送適正取引推進パートナーシップ会議が7月28日に開かれました。

新規参入に法令試験

 国土交通省は2008年7月1日から、新規参入事業者に対する法令試験を復活させ、実施しました。1990(平成2)年の規制緩和以降、新規許可申請を行政書士任せにするなど、新規参入事業者の法令遵守意識の欠如が指摘されており、業界内からも参入審査の強化を求める声が強まっていました。このため、許可時の処理方針に「申請者またはその法人の役員は事業の遂行に必要な法令知識を有すること」を追加し、許可申請時に試験を実施することにしました。
 試験はペーパーテストで、本省が定めた公示例によると、出題範囲は貨物自動車運送事業法、道路運送法、道路運送車両法、道路交通法、労働基準法、労働安全衛生法などからで、設問は○×方式および語群選択方式としています。出題数は30問で、試験時間は50分。合格基準は出題数の8割以上正解で、基準に達しない場合は再試験を行うとしています。

全ト協、軽油売り渋りで是正要望

 全日本トラック協会は2008(平成20)年7月3日、軽油の供給状況についての緊急実態調査結果を発表しました。石油販売業者側の供給制限(売り渋り)について実態を把握するために行ったものですが、調査対象となった2,304事業者・協同組合のうち、石油販売業者側から供給制限をするとの連絡を受けた事業者は434社に達し、全体の2割が石油業界から売り渋りを受けている実態が明らかになりました。
 このため全ト協は7月7、8の両日、公正取引委員会と資源エネルギー庁に対して、石油元売り各社に安定供給確保を指導するよう文書で要請しました。文書では、元売り各社は、大手を中心に軽油の輸出を増大させており、これにより国内の需給がタイト化し、さらなる急激な値上げが打ち出されるという悪循環が生じていると指摘。さらに需給タイト化のなかで、インタンク販売での売り渋り行為が広がり、輸送需要への対応に支障を生じるおそれがあるとして、安定供給確保に向けて厳正な指導を求めました。

燃料サーチャージ導入促進へ追加対策

 国土交通省は2008年7月29日、燃料サーチャージ制導入の実態調査結果と導入促進のための追加対策をまとめました。調査結果によると、サーチャージ制の導入率が12%にとどまっていることから、追加対策では、大手物流子会社等に対して文書による協力要請を行うとともに、事情聴取・調査を通じて個別の物流子会社に対する働きかけも行っていく方針を打ち出しました。また、元請トラック事業者や特別積合せ事業者に対しても事情聴取・調査により働きかけを行うほか、協会未加入のトラック事業者に対しても文書等で周知、導入を働きかけるとしています。

経産省、「買いたたき」の具体的内容明示

 経済産業省中小企業庁は2008年8月5日、原油・原材料価格高騰に係る下請中小企業向け追加対策をまとめました。・平日の相談時間の延長及び土曜日の相談の実施・原油・原材料価格高騰時における買いたたきの具体的内容の明示・下請代金法に照らし問題がある可能性があると考えられる親事業者に対する特別事情聴取の実施・原油・原材料価格高騰の影響が強い業種を中心とした親事業者に対する特別立入検査の実施――などで、親事業者に対する特別事情聴取、特別立入検査は8月下旬から実施しました。
 原油高騰時の「買いたたき」については8月29日、買いたたきの具体的内容を明示した大臣通達文書を約600の親事業者および下請事業者団体に発出し、親事業者および下請事業者双方に周知しました。

燃料高騰危機突破へ2万人が一斉行動

 ニューヨーク原油先物価格(WTI)は2008(平成20)年7月11日、過去最高の1バレル147.27ドルをつけ、国内の軽油価格も最高値圏に迫るなか、トラック運送業界は8月26日、全国で約2万人が参加して「燃料高騰による経営危機突破全国一斉行動」を挙行しました。
 従来の業界の総決起行動は、全国から東京に事業者が集結して決起大会を開催し、与党や関係省庁に陳情活動を行うという形が通例でしたが、今回は各地域ごとで同時多発的に行動を起こすことにより、より地方の声をアピールしやすくするとともに、地方の事業者が行動に参加しやすくしました。
 東京では、関東トラック協会(星野良三会長)が自民党本部で総決起大会を開き、約1,500人が参加して燃料サーチャージの導入による適正運賃確保、高速道路料金の引き下げ、燃料税の緊急減税や燃料費の補填などを求める決議を満場一致で採択し、デモ行進も行いました。大会には、来賓として谷垣禎一国土交通相(当時)、二階俊博経済産業相、笹川堯自民党総務会長らも駆けつけました。大会で星野会長は「このままでは実運送事業者が存続できなくなる」などと危機的な状況を訴えました。

首都高の距離別料金導入延期
深夜の高速5割引に

 政府・与党は2008(平成20)年8月29日、経済対策「安心実現のための緊急総合対策」を決定し、この中に原油高騰対策として、高速道路料金の引き下げと、首都高速・阪神高速の距離別料金導入延期が盛り込まれました。高速道路料金の引き下げでは、物流効率化のため、深夜割引(午前0~4時)を4割引から5割引程度に拡充するほか、夜間割引時間帯を拡大する方針が打ち出されました。引き下げのための予算は2008年度当初予算から約1,000億円を投入し、約1年間実施する予定です。
 政府の対策決定を受けて東日本、中日本、西日本、本四連絡の各高速道路会社は9月16日から、平日午後10時~午前0時の夜間時間帯の高速道路料金を一律3割引とする割引サービスを開始しました。10月中旬目途に開始予定だったものを前倒し実施したもので、原油高に苦しむ物流対策としての位置づけです。
 夜間割引はこれまで、東名など3路線に限り社会実験として行われてきましたが、これが全国の高速道路に拡大されました。午前0~4時の深夜割引については、10月14日から、割引率が4割引から5割引に引き上げられました。

第1次補正予算
トラック燃料高騰対策に42.5億円

 政府は2008(平成20)年9月29日、2008年度第1次補正予算案を閣議決定し、国会に提出。国会では10月16日に参院本会議で可決され、成立しました。8月29日に政府・与党が決めた経済対策「安心実現のための緊急総合対策」を実現するための財源を措置したもので、トラック運送事業の燃料高騰対策として、中小トラック事業者構造改善実証実験事業に国費35億円、低公害車普及促進対策に国費6億円、荷主等とのパートナーシップによる構造改善実証実験事業に国費1.5億円の計42.5億円が盛り込まれました。トラック協会による協調補助分を加えると、合計64億円の予算規模となります。
 このうち、中小トラック事業者構造改善実証実験事業では、保有車両数20台以下の小規模事業者が省エネ機器や低燃費車を導入して省エネ効果をあげたり、省エネ運転に取り組むことなどにより、概ね5%以上の省エネ効果がある場合、燃料費や車両代替費など経費の2分1を上限100万円まで補助する制度です。

追加経済対策、高速昼間も3割引に

 政府・与党は2008(平成20)年10月30日、追加経済対策である「生活対策」を決めました。米国発の世界金融危機を受け、実体経済に対する影響を最小限にとどめることが目的で、トラック運送事業関係では、平日昼間の高速道路料金に3割引程度の割引を導入することのほか、貨物運送の中小・小規模企業対策が盛り込まれました。
 高速道路料金については、2010(平成22)年度までの2年間、さらに重点的な引き下げを行うことにしたもので、乗用車については、土日祝日の大都市圏を除く高速道路で、1回当たりの通行料金上限を原則1,000円とする対策を盛り込みました。物流効率化の観点からは、平日の割引がなかった昼間の時間帯に3割引程度の割引を新設する方針が示されました。大都市圏(東京、大阪圏)は除かれますが、これにより全ての時間帯に割引が導入される見通しとなりました。

原油高騰で中小企業向け新保証制度開始

 経済産業省は2008年10月31日から1年半の実施予定で、中小企業向けの新たな保証制度である「原材料価格高騰対応等緊急保証」を開始しました。民間金融機関から融資を受ける際、一般保証とは別枠で、無担保保証で8,000万円、普通保証で2億円までの計2億8,000万円まで信用保証協会の100%保証を受けることができ、トラック運送事業も対象となります。業種指定要件を緩和して、中小企業の3分の2をカバーする545業種を対象(その後618業種に拡大)としたもので、計約6兆円の利用を見込んでいます。

原油下落、軽油価格に反映されず

 2008(平成20)年夏のピークを境に、原油価格は下落を続けましたが、国内の軽油価格は原油の下落ほど下がらず、トラック運送事業者の不満が高まりました。全日本トラック協会の調査によると、原油価格(ドバイ)は、7月11日の1バレル140.15ドルから11月13日には47.6ドルまで66.0%も下落しましたが、国内軽油価格は8月4日の1リットル167.4円から11月13日に127.8円へと23.7%下がったに過ぎません。11月13日の原油価格47ドルは、その3年半前の2005年4月の水準です。全日本トラック協会の中西英一郎会長は、11月18日に開かれた自民党トラック輸送振興議員連盟総会の席上で、「原油は劇的に下落しているが、軽油価格には十分反映されていない」と述べ、原油の下落ペースに対して軽油の下げ足が鈍いことに懸念を表明しました。

トラック支援、総額200億円超に

 政府は2008(平成20)年12月20日、08年度第2次補正予算案を閣議決定し、年明けの2009(平成21)年1月5日、国会に提出しました。追加経済対策「生活対策」を実施するための予算措置で、国会では、2009年1月27日に成立し、財源を措置した関連法案も同年3月4日に衆院で再可決され、成立しました。第2次補正予算には、第1次補正予算で35億円を確保した、中小トラック事業者構造改善実証実験事業に、さらに国費150億円を追加することが盛り込まれており、これにより、トラックの燃料高騰に対する支援策は、国費とトラック協会負担分をあわせて総額200億円を超える予算規模となりました。
 第2次補正予算分の構造改善実証実験事業は、補助対象となる事業者規模が保有車両数30台以下に拡充されたほか、2009年度への繰り越しも認められているため、実質的には2009年度予算として執行されることになる見通しです。
 第2次補正予算にはこのほか、高速道路料金の平日昼間3割引などを2年間実施するための予算5,000億円が盛り込まれました。

首都高速に大口割引創設

 日本高速道路保有・債務返済機構と高速道路会社6社は2009(平成21)年1月16日、追加経済対策などに基づき、高速道路料金引き下げの具体的内容を盛り込んだ「高速道路の有効活用・機能強化に関する計画(案)」をまとめました。
 このうち首都高速道路について、物流事業者向けの大口割引(5%)を新たに設けることが明らかになりました。現行の車両単位割引(お得意様割引、最大12%)に上乗せされるものです。
 旧日本道路公団系の高速道路料金大口・多頻度割引と同様の割引制度で、協同組合や大手事業者などの契約者単位で5%の割引が上乗せされます。「有効活用・機能強化計画」では、2011(平成23)年度以降、上限料金を抑えつつ対距離料金制度を検討するとされ、その際には、段階的な対距離料金、事業者向け割引(大口多頻度)の拡充を検討するとされています。
 機構と6社の意見募集に対して、全日本トラック協会と東京都トラック協会は、首都高速道路の料金割引について、廃止された100回回数券(18.4%割引)並みの割引を求めました。

中小企業承継円滑化法が施行

 中小企業の事業承継を円滑化することをめざした中小企業経営承継円滑化法が2008年(平成20)10月1日から施行されました。遺留分に関する民法の特例、事業承継時の金融支援措置、事業承継税制の基本的枠組みなどを盛り込んだ総合的支援策の基礎となる法律で、遺留分に関する民法の特例規定については2009(平成21)年3月1日から施行されました。
 非上場株式等に係る課税価格の80%に相当する相続税の納税を猶予するほか、相続に伴う株式の分散を未然防止するため、生前贈与した株式を遺留分減殺請求の対象から除外する民法の特例を適用します。さらに、経営者の死亡等に伴い必要となる資金の調達も支援します。

代引き規制に反発、規制は見送りに

 宅配便などで商品の代金を荷主に代わって受領する「代金引換サービス」を巡り、金融庁が金融機関と同様の規制を検討し始めたことに対し、全日本トラック協会と東京路線トラック協会(旧東京路線トラック協議会)が強く反発し、代引きへの規制は見送られることになりました。
 全日本トラック協会は2008(平成20)年12月9日、金融庁に対し、代金引換サービスに対する金融規制に断固反対することなどを内容とする要望書を提出しました。要望書では、「代引きサービスは品代金の代理受領であり、運送行為と不可分の関係にある。金融機関が行う為替取引とは全く異なる」として、消費者の利便性も損なわれることから、日本経済全体に悪影響を及ぼすと指摘しました。
 代引き規制を検討していた、金融審議会金融分科会第二部会は2009(平成21)年1月14日、運送事業者が行う代金引換サービス(代引きサービス)に対する金融規制を見送ることなどを盛り込んだ最終報告書をまとめました。ただ、代引きサービスなどが銀行法に抵触する疑義がないことを意味するものではない、とし、引き続き注視していくべきだとしています。

日雇い派遣禁止で「引越を適用除外に」

 全日本トラック協会は2008(平成20)年12月16日、厚生労働省に対し、労働者派遣法改正案で日雇い派遣が原則禁止される見通しとなっていることに対し、引越業務を適用除外とすることなどを求めた要望書を提出しました。とくに、3月中旬~4月上旬の繁忙期に年間業務量の3分の1が集中する引越輸送では、作業要員の多くを日雇い派遣に頼っており、作業員の確保ができなければ消費者に迷惑をかけ、社会に多大な混乱を招くことから、要望書では、引越業務を日雇い派遣禁止対象外とするか、引越繁忙期には一定期間(1か月以上)派遣禁止対象外期間を設定するよう求めました。
このほか、2008年12月5日に参院本会議で改正労働基準法が可決、成立し、2010(平成22)年4月1日から時間外労働の賃金割増率が引き上げられることになりました。1か月60時間を超える時間外労働については、その超えた時間の割増賃金率を50%以上とすることが義務づけられます。ただし、中小企業に対しては猶予措置が講じられます。

厚労省、トラック事業の運転者休業にも助成

 厚生労働省は2008(平成20)年2月10日、「雇用調整助成金支給要領および中小企業緊急雇用安定助成金支給要領の一部改正等に関する留意事項について」とする通達改正を行い、全国の各労働局に通知しました。
 雇用調整助成金と中小企業緊急雇用安定助成金は、急激な景気の低迷で労働者を休業させた場合、休業手当の5分の4(大企業は3分の2)を助成する制度ですが、製造業を念頭に置いた制度のため、一部の労働者を休業させる一方で、残った労働者に残業をさせると残業時間と休業時間が相殺され、助成対象とならないのが通例でした。
 このため、トラック運転者など通常の勤務形態が長時間の時間外勤務を前提としている運輸業で休業した場合には、・自動車運転者の労働時間等改善基準告示を遵守していること・労使協定(36協定)を締結していること――を条件に、恒常的に時間外労働を行っている労働者として認め、休業時間と残業時間を相殺しないことにしました。
 景気の悪化に伴い、これらの助成金の利用が急増していますが、この通達改正により、残業が多いトラック運送事業にも休業への助成が認められることになりました。

2009:環境改善

事業用貨物車からのCO2排出量減少

 環境省は2008(平成20)年11月12日、2007(平成19)年度の温室効果ガス排出量(速報値)をまとめました。このうち、営業用トラックからのCO2排出量は前年度比1.1%減の4,481万トンとなり、5年ぶりに減少に転じました。自家用トラックの排出量は同3.7%減の4,358万7,000・となり、1994(平成6)年以降13年連続で減少しています。京都議定書の基準年である1990(平成2)年度比で見ると、営業用トラックからの排出量が30.9%増加しているのに対し、自家用トラックは27.8%減少しており、トラック合計では6.5%減少しています。輸送の効率が高い営業用トラックへの自営転換が進んだことが、CO2排出量の減少に寄与していることを表しています。
 2007年度の温室効果ガス総排出量は、原子力発電所の稼働率低下などの影響で前年度比2.3%増の13億7,100万トンとなり、1990年の排出量を8.7%も上回っています。京都議定書では2010(平成22)年度に1990年度比6%削減することを目標としていますが、森林吸収や京都メカニズムによる削減を除いてもなお9.3%の排出削減が必要で、目標達成は厳しい状況です。

中環審専門委、環境税導入へ論点整理

 中央環境審議会のグリーン税制専門委員会(委員長=神野直彦東京大学大学院経済学研究科教授)は2008(平成20)年11月14日、環境税導入に向けた論点整理を行いました。京都議定書の目標達成のため、環境税導入に向けた歩みを進めていくべきだと指摘し、具体的には、炭素含有量に比例して税を課す炭素税がベストだが、揮発油税などの既存エネルギー諸税を炭素税に衣替えしていくべきだと提言しました。
 論点整理ではまた、揮発油税をはじめとする道路特定財源の一般財源化に当たり、地球温暖化対策の観点から、暫定税率を維持すべきだと主張しました。

2009:データ「東京」

平成19年度輸送機関別国内貨物輸送量

平成19年度輸送機関別国内貨物輸送量
平成19年度輸送機関別国内貨物輸送量

東京都内の品目別輸送量(平成18年度)

東京都内の品目別輸送量(平成18年度)

トラック運送事業者数/トラック台数(平成19年度)

事業者数
東京  5,830(9.2%)
全国 63,122
営業用トラック台数(軽除く、東京は運輸支局届出台数)
東京    91,715(8.1%)
全国 1,135,435
普通車(1ナンバー)
東京   134,429(営業用67,332:50.1%) 
全国 2,445,264(営業用911,457:37.3%)
小型車(4ナンバー)
東京   308,144(営業用16,625:5.4%)
全国 4,282,242(営業用77,797:1.8%)
トレーラ
東京     8,036(営業用7,758:96.5%)
全国   155,717(営業用146,181:93.9%)
小型三輪車
東京     117(営業用27:23.1%)
全国   1,071(営業用99:9.2%)
2009:交通安全・事故防止

タンクローリー事故、再発防止を徹底

 2008(平成20)年8月3日、東京・板橋区熊野町の首都高速5号線でタンクローリーの衝突・炎上事故が発生し、長期間にわたる通行止めなどで首都圏の交通に大きな影響を及ぼしました。国土交通省関東地方整備局の試算では、事故に伴う渋滞による経済損失は1日当たり3.1億円で、事故後5日間の経済損失は首都高速、一般道路、高速道路の合計で約16億円にのぼるとしています。
 国土交通省自動車交通局は同年8月8日、事故発生を受けて、危険物運搬車両の事故防止を徹底するよう全日本トラック協会に通達しました。通達では、同種の事故の再発防止を期すため、タンクローリーなど危険物運搬車両の運転者に対する法令遵守、運転時の基本動作の指導など安全運行の徹底について周知徹底を図り、輸送の安全に万全を期すよう指示しました。

国交省、事業用自動車の事故削減へ
数値目標検討

 国土交通省は2008(平成20)年11月25日、事業用自動車に係る総合的安全対策検討委員会(委員長=野尻俊明流通経済大学法学部教授)を設置し、初会合を開きました。交通事故全体の発生件数、死者数が減少するなかで、事業用自動車の事故件数・死者数の減り方が鈍いため、これまでの取組み手法を検証し、より実効性の高い措置を検討することにしたもので、事業用自動車に係る事故削減目標の設定、運輸安全マネジメント制度の浸透方策、事後チェック機能の強化などが検討課題としてあげられました。
 2009(平成21)年3月末を目途にとりまとめを行う予定ですが、同年2月までの検討で、事業用自動車が第1当事者となった事故での死者数を今後10年間で半減し、飲酒運転をゼロとする数値目標を掲げる方向となっています。死者数は、08年の513人を2018(平成30)年に250人とすることを目標とし、中間年の2013(平成25)年に380人とすることをめざします。事故件数削減目標としては、・2018年に3万件(今後10年間で半減)・2018年に4万件(今後10年間で3割減)――との2案が提示されています。
 これらの数値目標を達成するための対策としては、運輸安全マネジメントの評価対象を中小規模事業者に拡大することのほか、いわゆる「処分逃れ」対策の強化やドライブレコーダーの普及・活用方策、アルコールチェッカーを使用した点呼の義務づけ、運行記録計の義務づけ範囲拡大、衝突被害軽減ブレーキの装着義務化などが検討されています。

酒気帯びでも一発で免許取り消しに

 政府は2009(平成21)年1月27日、道路交通法施行令改正案(政令)を閣議決定し、6月1日から施行することを決めました。酒気帯び運転に対する違反点数について、呼気中アルコール濃度が0.25mg/・以上の場合、現行の13点から25点に引き上げ、一発で免許取り消しとするほか、同濃度が0.15mg/・以上0.25mg/・未満の場合も同じく6点から13点に引き上げることにしました。13点は、90日間の免許停止で、事故を伴えば免許取り消しとなります。

2009:道路・交通

道路特定財源暫定税率が失効

 2008(平成20)年1月18日に招集された第169回国会(通常国会)は、ガソリンや軽油に課税されている道路特定財源諸税の暫定税率延長に理解を求める政府・与党と、ガソリン・軽油価格の急騰を背景に暫定税率の廃止を求める民主党が真っ向から対立し、「ガソリン国会」として世間の注目を集めました。
 道路特定財源の暫定税率については、与野党の調整がつかずに4月1日、ついに期限切れを迎えて失効するという異例の事態となりました。石油情報センターの調査によると、4月3日の全国平均軽油店頭価格は3月31日より13.2円安い119.1円となり、トラック運送業界にとっては「恵みの雨」となりました。一方、国土交通省道路局は新年度の道路整備予算執行に当たり、2か月間の「暫定予算」を余儀なくされるなどの影響が出ました。4月1か月間の税収減は、国分が約1,200億円、地方分が約600億円に及びました。
 揮発油税などの暫定税率10年延長を盛り込んだ租税特別措置法改正案、軽油引取税の暫定税率10年延長を盛り込んだ地方税法等改正案は4月30日の衆院本会議で3分の2以上の賛成多数で再可決され、成立。暫定税率は1か月で復活し、5月5日の軽油店頭価格は138.9円となり、4月28日より20.8円も値上がりしました。

一般財源化なら「自動車諸税廃止すべき」

 道路特定財源を巡る国会での論戦をふまえ、福田康夫首相(当時)は2008年3月末に道路特定財源の一般財源化を2009(平成21)年度から行う方針を表明。5月13日の道路整備財源特例法改正案の衆院再可決の際、09年度から一般財源化することを閣議決定しました。
 全日本トラック協会も参画する自動車税制改革フォーラムは5月23日、「道路特定財源の一般財源化は『受益と負担』および『税負担の公平』の原則に反する。一般財源化により課税の根拠がなくなる自動車関係諸税は廃止すべき」とする特別要望書を自民党に提出しました。
 自動車税制改革フォーラムと石油業界2団体は9月17日、新宿区で道路特定財源に関する街頭イベントを開催し、自動車重量税、自動車取得税、燃料税などの税負担軽減を道行く人に訴えました。11月19日には都内で、一般財源化に伴い自動車ユーザーの税負担軽減を求める緊急総決起大会を開催し、自民党本部前から国会までデモ行進を行いました。決起大会では「一般財源化は道路整備目的という課税根拠を喪失し、税負担公平の原則にも反するため、課税根拠なき自動車関係・燃料関係諸税は廃止するなどにより、自動車ユーザーの負担を軽減すべきだ」とする決議を採択しました。

道路特定財源制度は廃止、暫定税率は維持
── 与党税制改正大綱

 与党は2008年12月12日、2009年度税制改正大綱をまとめました。 焦点となっていた道路特定財源については、特定財源制度を廃止する一方で、軽油引取税をはじめとする自動車関係諸税の暫定税率は税制抜本改革時まで原則維持することとされました。税制抜本改革に際して、自動車関係諸税については、「税制の簡素化を図るとともに、厳しい財政事情、環境に与える影響等を踏まえ、税制のあり方と暫定税率を含む税率のあり方を総合的に見直し、負担の軽減を検討する」と明記されました。
 営業用トラック・バスに対する交付金措置も今後の税制抜本改革時までの間延長されることが決まり、地方自治体からの交付額が減額されている問題に対応するため、都道府県に対し満額交付するよう要請するとの一文が加えられました。