2008:道路・交通

道路特定財源、ねじれ国会で与野党対立

 参議院での与野党逆転というねじれ国会で、道路特定財源問題が最大の焦点となっています。政府は2008(平成20)年1月23日の臨時閣議で、道路特定財源(国税)の暫定税率10年延長を盛り込んだ租税特別措置法改正案を含む税制関連法案を決定し、国会に提出。同時に、一般財源化を可能とする措置や、高速道路料金引き下げのための措置などを盛り込んだ道路整備費財源等特例法改正案も閣議決定し、提出しました。軽油引取税など道路特定財源地方税の暫定税率延長を盛り込んだ地方税法等改正案は同月25日に提出されました。
 財源特例法改正案では、従来揮発油税と石油ガス税の税収を全額道路整備に充当しなければならないとされていたものを、税収が道路整備費を上回る場合には毎年度の予算で一般財源化できるように改めました。
 参院での第1党である野党民主党は、暫定税率の撤廃と道路特定財源の全額一般財源化を主張し、「生活第一・ガソリン値下げ国会」と位置づけて対決姿勢を強めています。国会審議では、暫定税率のほか、総額59兆円に上る道路中期計画の妥当性、道路特定財源の使途のあり方、さらなる一般財源化などが審議の焦点となっています。 与党が安定多数を握る衆議院では、2月29日に予算案と税制関連法案が与党の単独採決により可決され、衆院を通過しました。一方民主党も同月同日、道路特定財源の一般財源化と暫定税率の廃止を柱とする道路特定財源制度改革関連3法案を参議院に提出しました。法案審議の舞台は野党が過半数を占める参議院に移りましたが、3月末の暫定税率期限切れをにらみ、法案修正も視野に与野党の攻防が続くと見られています。

首都高が長距離料金大幅値上げ案

 首都高速道路会社は2007(平成19)年9月20日、08(平成20)年10月から実施する予定の距離別料金の素案を発表しました。ネットワークの拡充に伴い、利用距離のばらつきが拡大するなかで、利用者負担の公平化を図るために現在の一律料金を改め、短距離利用を安く、長距離利用を高くする料金案です。
 ただ、首都高会社の素案では、東京線の場合、大型車(現行1,200円)の下限を800円、上限を2,400円としており、長距離利用は現行の1.7倍もの大幅な値上げとなります。利用距離が3.0㎞未満は800円、3.0㎞以上は距離に応じて100円刻みで高くなり、10㎞以上19㎞未満は現状と同じ1,400円、19㎞以上は再び距離に応じて100円刻みで上昇し、32.5㎞以上は上限価格である2,400円となります。
 同様の料金案は、阪神高速道路会社も発表し、長距離利用が多いトラック運送業界が猛反発しました。
 東京都トラック協会の調査では、首都高東京線で利用距離19㎞以上のトラックの通行台数は全体の約7割を占め、これらがすべて値上げとなる計算です。値下げとなるのは全体の1割で、現行料金と負担が変わらないのが2割。
 このため全日本トラック協会は9月28日、「長距離利用者にとっては実質的かつ大幅な値上げにほかならず、高速道路の利用促進にも逆行する」との意見書をまとめ、首都高速および阪神高速の両道路会社に提出しました。
 国土交通省では、道路特定財源の一部を投入して上限額を引き下げる考えを示しています。

首都圏環状道路整備が進む

 国土交通省と中日本高速道路会社、東日本高速道路会社が整備を進めていた圏央道の八王子ジャンクション~あきる野インターチェンジ間9.6㎞が2007(平成19)年6月23日、開通しました。東京西側で初めて放射の高速道路間(中央道~関越道)が接続されました。
 首都高速道路会社が建設を進めている首都高速中央環状線のうち、4号新宿線と5号池袋線をむすぶ延長6.7km区間(山手トンネル)が、07年12月22日に開通しました。この開通により、4号新宿線(中央道方面)と5号池袋線(美女木・大宮方面)・川口線(東北道方面)・6号三郷線(常磐道方面)が中央環状線で接続され、都心環状線を通らなくても放射線相互の利用が可能になりました。
 東日本高速道路会社が建設を進めてきた北関東自動車道の3県3区間合計延長32.4kmが08(平成20)年3月8日から4月12日にかけて開通。群馬県、栃木県、茨城県の3県で各1区間が開通するもので、総延長約150㎞の北関東自動車道の約7割が完成することになります。
 整備が進む首都圏の環状道路ですが、通行料金が割高なため、東京都をはじめとする首都圏の1都3県は07年7月24日、圏央道や東京湾アクアラインの料金引き下げを求める提言を国土交通省に提出しています。

駐車規制の見直し進まず

 2006(平成18)年6月に施行された改正道交法により、駐車違反の取締りが強化され、とくに都市部では駐車スペースが不十分なため、荷物の積み卸しなどで駐停車を余儀なくされる営業用トラックにも大きな影響が及びました。
 警察庁は07年(平成19)2月6日、全国の各都道府県警に対し、駐車規制の運用見直しについての通達を発出しました。このなかで、貨物の積み卸しや集配のため、貨物自動車の駐車が不可欠な道路では、一定の条件下で駐車規制から除外するなど、物流の必要性に配意した駐車規制の見直しに努めるよう促しました。
 全日本トラック協会の調査によると、2007年12月7日現在、47都道府県中14道県で物流に配慮した何らかの駐車規制見直しが行われていますが、東京では通達を受けての見直しはとくに行われていません。
 警察庁が07年6月14日にまとめた、駐車違反取締り強化後1年間の施行状況によると、放置駐車違反取締件数は254万5,868件となり、このうち放置違反金納付により使用者責任を問われたものが62.7%に当たる159万7,280件、反則金納付による運転者責任が22.9%の58万3,486件となりました。これら以外は手続き中で、車検拒否や滞納処分の対象となる督促済が27万4,272件、督促準備中が9万830件となっています。

2008:交通安全・事故防止のために

飲酒運転の罰則強化

飲酒運転の厳罰化を主な内容とする改正刑法と改正道交法が2007(平成19)年の通常国会で成立し、改正刑法は6月12日、改正道交法は9月19日から施行されました。改正道交法では、飲酒運転に対する罰則が強化され、改正刑法では自動車運転過失致死傷罪が創設されました。両法の罰則強化が相まって厳罰化を図るもので、道交法と刑法の併合罪では、酒酔い運転で死傷事故を起こした場合には現行の懲役7年6か月以下から同10年6か月以下に、酒気帯びで死傷事故の場合は同6年以下から同10年以下へと引き上げられます。また、飲酒運転でひき逃げ事故を起こした場合には、15年以下の懲役又は300万円以下の罰金へと大幅に厳罰化されました。
改正道交法では、酒酔い運転が5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に、酒気帯び運転が3年以下の懲役又は50万円以下の罰金へとほぼ2倍に引き上げられました。飲酒運転の周辺者に対する制裁も強化され、車両の提供、酒類の提供、要求・依頼しての同乗行為を禁止し、厳罰化しました。
改正刑法による自動車運転過失致死傷罪は、故意犯である危険運転致死傷罪(懲役20年以下)と、過失犯である業務上過失致死傷罪(同5年以下)との刑の差を埋めるために創設されたもので、「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役もしくは禁固または100万円以下の罰金に処する」と規定されました。

政府、常習飲酒運転者対策決める

政府は2007(平成19)年12月26日、常習飲酒運転者対策推進会議を開き、「常習飲酒運転者対策の推進について」を決定しました。常習飲酒者やアルコール依存症対策を中心とした対策をまとめたもので、自動車運送事業者等についても、各業界団体が作成する飲酒運転防止対策マニュアルの適時適切な見直しと実施の徹底を要請するとともに、運行管理者講習実施機関に対し、アルコール依存症専門家の知見等を踏まえた講習の見直しなど一層の充実を図るよう要請するとしています。
また、運転者全員にアルコール検知器で検知を行っている運送事業者の現状(バス87%、タクシー64%、トラック53%)を踏まえ、事業者へのアルコール検知器の普及と適正な活用をさらに要請するとしています。

アルコール・インターロック装置の活用方策検討へ

政府の「常習飲酒運転者対策」では、運転者が酒気を帯びているとエンジンをかけられなくする、アルコール・インターロック装置の活用方策についての検討が盛り込まれました。国土交通省が警察庁、法務省、経済産業省などの協力を得てとりまとめた技術指針案を踏まえ、内閣府が2008(平成20)年度から装置の活用方策について多角的に検討する総合的な常習飲酒運転者対策の調査を実施することになりました。
国土交通省がまとめた技術指針案では、呼気吹き込み式のアルコール・インターロック装置について、任意装着を前提とした要件を示し、常習者対策として活用する場合の追加的要件を特定しました。欧米で実用化されている呼気吹き込み式装置には、毎回強い呼気を吹き込む手間がかかったり、マウスピースを交換する必要があるなどの点でユーザー受容性の課題があるほか、なりすまし防止が困難という課題もあります。
このため国交省の最終報告では、事業用ドライバー対策として、運行管理者がインターロックをかけられるようにするため、顔画像とアルコール検知器を遠隔モニターする運行管理システムと、遠隔操作でエンジンをロックできる装置を併せて使用するアイディアなどを提示しています。

国交省が安全運行パートーナーシップ・ガイドライン

国土交通省は2007(平成19)年5月28日、トラック運送事業における「安全運行パートナーシップ・ガイドライン」をまとめました。荷主・元請け事業者と実運送事業者が協働して取り組む具体的な安全対策と、その協働体制の確立に関するガイドラインを作成したもので、荷主や元請けに対し、実運送事業者が安全な運行を確保できないような運行依頼は行わないよう求め、そのような場合は到着時間を見直すなど、関係者が協力して安全運行を確保することなどを求めています。
ガイドラインでは、急な貨物量の増加があった場合には、過積載とならないよう車両を手配し、出発時間の遅延が見込まれる場合には、到着時間を変更したり、運行ルートを変更するよう求めています。到着時間に遅延が見込まれる場合には、到着時間の再設定やルート変更などを行うこととし、遅延に対するペナルティは一律に付与するのではなく、遅れた理由などを分析して柔軟に対応するよう求めています。
これら改善措置では、荷主・元請けと実運送の双方が安全運行パートナーシップ・ルールとしてルール化し、形骸化させないための継続的な取り組みを行うよう求めています。

運行管理者資格者証返納命令基準を強化

国土交通省は2007(平成19)年7月1日から、運行管理者資格者証の返納命令発令基準を強化しました。運転者の過労運転や飲酒運転など、悪質違反を容認していた場合には、直ちに返納命令を発令するよう強化したもので、安全規制強化の一環です。
返納命令は従来、処分日車数が「80日車」以上で、かつ個別要件を満たす場合に発令されていましたが、▽運転者が過労、飲酒、薬物等使用、無免許、大型等無資格運転、過積載、最高速度違反を犯し、これを資格者が容認していた場合▽資格者が事業用自動車で飲酒、薬物等使用、無免許、無資格運転、ひき逃げを行った場合▽運転者に対する点呼を代務者任せでまったく実施していない場合――などには、直ちに返納命令を発令できるように改正。
「まったく実施していない」とは、「病気等による特段の理由がないにもかかわらず、1か月間点呼簿上点呼が実施されていないことが確認できた場合」などと定められています。

2008:経営環境

原油高で燃料高騰続く

 2007(平成19)年から08(平成20)年にかけて、原油価格が再び高騰し、国内燃料価格も急騰、トラック運送業界は大きな打撃を受けました。全日本トラック協会の中西英一郎会長は07年11月、経済産業大臣と国土交通大臣に対して業界の窮状を訴え、これを受けて冬柴鐵三国土交通大臣は同年12月、岡村正日本商工会議所会頭にトラック運賃の転嫁について協力を要請しました。
 国土交通省では、軽油高騰分の運賃への転嫁に向けた施策として、経済界に緊急協力要請を行い、運賃を据え置いた場合は「買いたたき」に該当するおそれがあると警告。さらに下請・荷主適正取引推進ガイドラインづくりを進め、当初想定していなかった社会保険未加入事業者への行政処分導入、新規参入事業者への社保加入義務づけや法令試験の実施といった貨物自動車運送事業法に基づく施策を検討し始めました。公正取引委員会との連名による緊急措置では、燃料サーチャージ制の導入を荷主とトラック事業者に強く求め、公取委も運賃値上げ交渉に際しての荷主の独禁法違反行為に対する監視の目を強めています。

全ト協、原油高騰で国交相らに要望

 米原油先物相場のWTI価格は、2007(平成19)年1月に1バレル54ドル程度だったものが、7月には74ドルへと上昇、11月には94ドルと100ドルに迫り、年明けの08(平成20)年1月2日、ついに100ドルの大台を突破。原油価格の高騰に伴い、国内軽油価格も騰勢を強め、トラック事業者の主な調達価格であるローリー価格は07年11月に1リットル当たり100円を突破しました。
 中西英一郎全日本トラック協会会長は07年11月9日、甘利明経済産業大臣に、同月14日には冬柴鐵三国土交通大臣に会い、軽油高騰に苦しむ業界の窮状を訴えるとともに、軽油引取税暫定税率7.8円の撤廃など諸税の負担軽減、燃料高騰に対応した公正な価格転嫁実現のための環境整備などを要望しました。これに対し冬柴国土交通大臣は「荷主にも適切なコスト分担をしてもらう必要がある」と答え、自らが経済界代表と会って運賃転嫁への理解を求めていく考えを示しました。

国交相、経済界に運賃転嫁への協力要請

 トラック運送業界の要請を受けて冬柴国土交通大臣は2007(平成19)年12月18日、岡村正日本商工会議所会頭を訪ね、原油価格高騰に伴うコストアップ分のトラック運賃への転嫁について、直接理解と協力を求めました。岡村会頭は業界の窮状に理解を示すとともに「十分に趣旨の徹底を図る」と加盟各社にも周知していくことを約束。日本経団連に対してはこれに先立つ同月12日、春田謙国土交通審議官が緊急協力要請に出向き、地方運輸局でも運輸局長や運輸支局長らが手分けして各地の経済団体に働きかけを行いました。

運賃据え置きなら「買いたたき」に

 国土交通省が日本経団連、日本商工会議所など経済界に提出した緊急協力要請文書(国土交通大臣、経済産業大臣の連名)では、コスト計算等に基づき、荷主、元請、下請が十分に協議して運賃を決定するよう求め、優越的地位にある荷主や元請が、運賃値上げ要求に応じず、一方的に価格を据え置く場合は、独禁法や下請法で禁じる「買いたたき」に該当する恐れがある、と注意を促しています。文書は公正取引委員会とも協議したもので、どのような行為が「買いたたき」に該当するのか、独禁法も含めて具体的な解釈を示したことは初めて。
 要請文書ではさらに、望ましい取引形態として、全日本トラック協会が2006(平成18)年2月にガイドラインを策定した燃料サーチャージ制度の導入を例示し、あらかじめ算定手法などについても合意しておくことが適切だとしています。

国土交通省、下請・荷主適正取引ガイドライン策定に着手

 国土交通省は2007(平成19)年11月21日、下請適正取引等推進ガイドライン検討委員会(委員長=野尻俊明流通経済大学学長)を設置し、荷主と元請け、元請けと下請けの取引を適正にするためのガイドライン づくりに着手しました。下請法、独禁法に照らして、適切で望ましい取引形態とその具体的事例を提示することで、関係者間の理解と信頼を共有化することが目的。当初は、経済成長力底上げのための施策として位置づけられていましたが、07年夏以降の原油価格再騰で、現在は、原油高騰対策の1メニューとされています。
 望ましい取引実例の普及促進に向けた取り組みとして、燃料サーチャージ制の導入促進、運賃の適正水準の確保、安全運行パートナーシップの普及促進をあげ、問題となる取引の防止に向けた取り組みとしては、事業者からの相談体制の充実、スポット取引に係る書面交付の促進、安全運行を阻害する行為の防止をあげています。
 さらに、適正な競争環境確保に向けた取り組みとしては、法令違反等により適正競争を阻害する事業者に対する措置、コンプライアンス推進に向けた措置などを検討中で、08(平成20)年3月にガイドラインとしてまとめる予定です。

政府が原油高騰緊急対策

 政府は2007(平成19)年12月25日、首相官邸で原油高騰・下請中小企業に関する緊急対策関係閣僚会議を開き、原油高騰の打撃が大きい中小企業への対策や運送業など業種別対策の具体案を決めました。07年度補正予算と08(平成20)年度予算を合わせて2,150億円以上の予算規模で原油高騰対策を進めるもので、会議に出席した福田康夫首相は「急激な原油高騰は、国民生活や中小企業の経営を直撃している。対策が真に実効あるものとなるよう取り組むように」と関係閣僚に指示しました。
 このうち運送業対策としては、安定的な物流コストの確保等を図るため、高速道路の通行料金について、現在3割引となっている深夜割引(午前0~4時)を4割引に拡充する方針を示し、そのための予算として、07年度補正予算で67億3,000万円、08年度予算で235億円の合計302億3,000万円を計上しました。
 業種横断的な中小企業対策としては、(1)資金繰り支援・金融円滑化(2)窓口・相談体制の整備(3)原油等の価格上昇分の転嫁に関する周知徹底(4)下請代金法・独占禁止法の厳格な運用等──の4つが柱で、下請事業者の駆け込み寺的な「下請適正取引推進センター」を全国に整備するため、来年度予算で4億6,000万円を計上しています。

高速道路深夜割引を拡充

 国土交通省は2008(平成20)年2月15日から、高速道路の深夜割引(午前0~4時:3割引)を4割引に拡充しました。ETCシステムにより、東日本、中日本、西日本各高速道路会社が管理する高速道路の割引対象路線を走行する車両が対象で、原油高騰に伴う緊急対策として、1年間実施される予定です。最大3割引の大口・多頻度割引と併用すると最大6割引、マイレージ割引との併用では最大で5割引となります。

燃料サーチャージ制導入、強く求める

 国土交通省と公正取引委員会は2008(平成20)年3月4日、軽油価格高騰に対処するためのトラック運送業に対する緊急措置をまとめました。適切な運賃転嫁が進まないと我が国の物流基盤が維持できなくなるとして、燃料サーチャージ制について政府が緊急ガイドラインを作成するほか、荷主とトラック事業者に強く導入を働きかけるとしています。具体的には、サーチャージ制を導入していない事業者に対して事情聴取・調査を行い、必要に応じて事業法に基づく立入検査を実施するとしています。
 公正取引委員会も、運賃改定交渉を巡る不当行為を含めて、荷主の独禁法違反行為に対する監視を強化する方針。物流事業者3万社を対象とした特別調査を3月中に開始するほか、物流分野の取引を専門に調査する「物流調査タスクフォース」を2月20日付で設置、荷主と元請け間の取引、下請取引の不当行為に対する調査を効率的かつ効果的に実施することにしています。
 運賃の健全性確保策としては、「買いたたき」や不当競争につながるおそれがある取引の防止を図るため、国土交通省が事業法による事業改善命令の運用拡大を行うとしています。また「正直者が損をしない」健全な競争環境を整備するため、社会保険未加入事業者や最低車両台数割れの減車に対する処分強化と併せて、最低車両台数の適正規模についても検証するとしています。

国交省がドライバー確保策検討

 国土交通省はトラックドライバーを安定的に確保するための方策に関する検討委員会(委員長=齊藤実神奈川大学教授)を設置して、トラック運送業界の労働力不足対策を検討しています。2007(平成19)年12月4日に開かれた第3回会合では、トラックドライバーの資格制度と悪質ドライバーの排除方策が議論されました。
 資格制度としては、事業用トラック専用運転免許(仮称=第3種免許)の創設、事業用トラックドライバーのランク付け(JAF認定のA級ライセンスのイメージ)などが提示されており、委員の間からは資格制度創設に前向きな意見がある一方、より現実的な制度とすべきとする意見も出されています。
 一方、悪質ドライバー排除方策としては、事故を起こした運転者やアルコールチェックで複数回チェックされた運転者について、常時選任運転者からの除外などが議論されましたが、委員からは事故履歴などを活用した業界全体での排除策を求める意見が目立ちました。
 08(平成20)年2月15日の第4回会合では、「2015年度のトラックドライバー需給予測」が提示されました。営業用トラックの輸送量が05年度比で0.7%増加すると仮定し、2015年度の必要ドライバー数を88万3,338人と試算。他産業との賃金格差が06年の水準にとどまると仮定すると、供給数は74万2,190人となり、差し引き14万1,148人が不足するとしています。

中型免許がスタート

 改正道路交通法のうち、運転免許制度に関する部分が2007(平成19)年6月2日に施行され、中型運転免許が創設されました。車両総重量5トン以上11トン未満、最大積載量3トン以上6.5トン未満の自動車を運転できる免許で、普通免許と大型免許の中間に位置づけられます。従来の普通免許保有者は、既得権として車両総重量8トンまでの自動車を運転できる限定中型免許とみなされ、限定解除には、中型免許の技能審査に合格するか、教習所で5時間以上の技能教習を受け、技能審査の例に準じた審査に合格する必要があります。
 中型免許の創設に伴い、従来より一回り大きいトラックでの技能教習が必要となった新大型免許に対応できる教習所が激減するなどの影響が広がっています。労基法改正案は継続審議に政府は2007(平成19)年の通常国会に、労働基準法改正案、労働契約法案、最低賃金法改正案のいわゆる「労働3法案」を提出しました。与野党対決法案ということもあり継続審議となりましたが、労働契約法と改正最賃法については与野党で修正のうえ11月28日に成立し、労働契約法は08(平成20)年3月から、改正最賃法は同年7月に施行される予定です。労働契約法は、労働契約に関する基本事項を明確化することで個別労使関係の安定化に資することが目的です。改正最賃法では、産業別最賃の名称を「特定最低賃金」に変更したうえで、最賃法上の罰則を廃止する一方、すべての都道府県に地域別最賃の決定を義務づけ、違反時の罰金上限を2万円から50万円に引き上げました。3法のうち、労働基準法改正案だけは07年の臨時国会でも継続審議となり、08年の通常国会では衆議院厚生労働委員会に付託されています。労働基準法改正案では、現在25%とされている時間外労働の割増賃金率を、月間80時間を超える部分については50%に引き上げることを盛り込んでいます。時間外労働の割増賃金率の引き上げについて、全日本トラック協会では、トラック運送事業を適用除外とするよう要望しています。

2008:環境改善

改正自動車NOx・PM法が施行

 改正自動車NOx・PM法が2008(平成20)年1月1日に施行されました。大都市圏の大気汚染は、自動車NOx・PM法に基づくトラック運送事業者らの新車への代替努力もあって改善傾向にありますが、なお環境基準を達成していない局地的な汚染を改善するために法改正が行われ、対策地域外からの流入車対策が新たに追加されたものです。
 国土交通、環境両省では、基準適合車である流入車の判別をしやすくするため、施行に併せてステッカー制度を導入しました。同年1月25日に閣議決定された総量削減基本方針では、対策地域外からの流入車を使用する事業者に対し、基準適合車を優先的に配車するよう求め、適合車にはステッカーを利用して分かりやすく表示するよう求めています。
 改正法に基づく流入車対策では、現行対策地域の周辺地域から、指定された局地(交差点)にディーゼル車を一定頻度以上乗り入れる保有台数30台以上の事業者に、新たに排出抑制計画の提出が義務づけられ、流入車両に基準適合車の使用を求められることになります。
 今後、各都道府県知事が具体的な局地の指定申請を環境省に行い、環境省が交通量を調査したうえで、流入車対策を適用する周辺地域を指定します。周辺地域としては、現行対策地域に隣接する最大13府県が指定される可能性があります。規制対象となる車両の局地への運行頻度は、年間300回以上とされており、事業者の運行回数を1年間かけて算定するため、実質的な対策の開始は、早くても09(平成21)年春頃になると見込まれています。
 基準適合車へのステッカー貼付も義務づけではなく、任意となっていることなどから、東京都をはじめとする首都圏の8都県市は「実効性の面で不十分と言わざるを得ない」として、さらなる法改正も求めています。

大阪府が流入車規制

 大阪府は2009(平成21)年1月1日から、生活環境の保全等に関する府条例に基づくディーゼルトラック・バスの流入車規制を開始します。大阪市等37市町を規制地域とし、規制地域を発着地とする運行に対して、国の自動車NOx・PM法排出基準適合車の使用を義務づけるものです。府内で30台以上を保有する貨物・旅客自動車運送事業者および資本金3億円超の第1種貨物利用運送事業者、資本金3億円超(府内の建物延べ面積が1万㎡超または敷地面積3万㎡超の事業所を有するもの)で、継続的に物品を運送させる荷主には、毎年度の知事への報告を義務づけ、港湾・空港・貨物駅・自動車ターミナル・卸売市場などの施設管理者にも適合車の使用を周知するよう求めています。
 非適合車両に対しては適合車使用命令をかけ、命令違反に対しては50万円以下の罰金を科します。適合車ステッカーを貼付していない車両に対しても表示命令を出し、命令違反には30万円以下の罰金を科します。荷主に対しても、運送事業者に適合車の使用を求めていない場合には勧告を行い、確認・記録をしていないものには改善命令を発し、命令違反の場合は20万円以下の罰金を科すことにしています。
 条例のうち、ステッカー関係部分は08(平成20)年4月から施行され、6月頃からステッカーの交付を開始する予定です。

ポスト新長期規制、2009年10月開始

 国土交通省は2007(平成19)年10月15日、09(平成21)年に実施するディーゼル車のポスト新長期規制の規制値など、細目を定めた告示案をまとめました。新車のNOx規制値を現行より40~65%低減、PM規制値を同じく53~64%低減するほか、規制の適用開始時期を新型車については09年10月1日からと正式に定めました。
 自動車NOx・PM法の目標である「2010(平成22)年度までに環境基準概ね達成」を確実なものとするための規制強化で、使用過程時のPM規制値も強化するとともに、新車時のディーゼル黒煙規制を廃止することにしています。
 継続生産車と輸入車に対する規制適用開始は、10年9月1日とされており、中量車(車両総重量1.7トン超3.5トン未満)のうち同2.5トン以下のもの、重量車(同3.5トン超)うち同12トン以下のものについては、新型車が10年10月1日から、継続生産車・輸入車が11 (平成23)年9月1日からの適用となります。 このほか、新車のPM規制値強化に伴い、より精度の高い新たな測定方法に見直すことにしています。

トラックのCO2排出量90年度比で4.2%減

 環境省が2007(平成19)年11月5日に発表した2006(平成18)年度の温室効果ガス排出量速報値によると、運輸部門のCO2排出量は前年度比0.9%減の2億5,400万トンと、5年連続で減少し、目標達成まであと400万トンに迫りました。06年度の減少は、これまで増加の一途をたどっていたマイカーからの排出量が減少したためですが、京都議定書の基準年(1990年)との比較では17.0%増えています。営業用と自家用合わせたトラックからの排出量は、前年度比0.1%減の9,060万トンと微減にとどまりましたが、90年と比べると4.2%減少しており、営自転換が運輸部門のCO2排出量の減少に寄与しています。
 我が国全体の06年度の温室効果ガス排出量は、運輸部門のほか、業務その他部門、家庭部門などからの排出量も減少したため、CO2換算で前年度比1.3%減の13億4,100万トンとなりましたが、1990年との比較では6.4%増加しており、「90年比6%削減」という京都議定書の目標達成のためには、森林吸収分などを除いてもなお7%の排出削減が必要な情勢です。
 06年度のトラックからの排出量を営自別に見ると、営業用トラックは前年度比1.5%増の4,510万トン、自家用が同1.6%減の4,550万トンです。1990年度との比較で見ると、営業用トラックの排出量は32%増加していますが、自家用トラックは25%減少しており、自家用から営業用への転換が進んでいることが見て取れます。

トラック業界はCO2削減目標上積み

 社会資本整備審議会環境部会・交通政策審議会交通体系分科会環境部会の合同会議が2007(平成19)年9月13日開かれ、運輸業界の各団体が定めている環境自主行動計画のフォローアップが行われました。全28団体のうち、全日本トラック協会は、CO2排出原単位で当初の目標値である10%削減をすでに達成しているため、目標値を従来より約20%引き上げて、2008~2012年度の平均値を1996年度比30%削減する目標へと変更しました。今後の輸送トンキロの伸びとエコドライブ、低公害車普及、輸送の効率化などの対策効果を推計し、上方修正したものです。
 目標を上積みしたのは全日本トラック協会をはじめとする6団体で、合同会議のフォローアップ結果は「これらの団体がより高い目標を掲げ、積極的な取り組みを行ったことは高く評価できる」としています。
 なお、08(平成20)年2月14日に開かれた合同会議では、2006年度の削減実績が報告され、このうち全日本トラック協会の2006年度排出原単位(トンキロ当たりのCO2排出量)は1996年度比で26.4%削減しており、目標達成が可能と判断される団体に分類されています。

省エネ法、対荷主データ交換で指針

 経済産業、国土交通両省は2007(平成19)年6月25日、省エネ法で新たに規制対象となる特定荷主(年間貨物輸送委託量3,000万トンキロ以上、2007年6月現在804社)と、輸送事業者間のエネルギー使用量データ交換に関するガイドラインを策定しました。不特定多数の荷主が不特定多数の輸送事業者に個別の形式でデータ提供を依頼すると、輸送事業者側が対応困難となる恐れがあるため、輸送事業者から荷主へのデータ提供方法の参考として、データ交換フォームを示したものです。
 ガイドラインでは、このデータ交換フォームの活用に当たり、荷主が輸送事業者を管理するための手段として用いることや、荷主としての責任を輸送事業者に転嫁するための手段として用いることは、厳に慎むようクギを刺しています。
 データ交換フォームは、燃料法、燃費法、トンキロ法というエネルギー消費量算定方法ごとに3種類あり、燃料法では、ガソリン車、ディーゼル車(軽油)別に車種区分ごとの燃料使用量を記載し、燃費法では最大積載量区分ごとの平均燃費を記載します。トンキロ法では、最大積載量区分ごとの輸送量(トンキロ)と積載率を記載します。
 国土交通省では、特定荷主804社を対象に、物流効率化方策の紹介などの支援を行う考えで、荷主の実情を把握し、グリーン物流パートナーシップ事業の枠組みも含めてツールを紹介するほか、産業カテゴリー別の研修会開催など、きめ細かい支援策を検討しています。

2008:データ「東京」

平成18年度輸送機関別国内貨物輸送量

平成18年度輸送機関別国内貨物輸送量
平成18年度輸送機関別国内貨物輸送量

東京都内の品目別輸送量(平成17年度)

東京都内の品目別輸送量(平成17年度)

トラック運送事業者数/トラック台数(平成18年度)

事業者数
東京  5,822(9.3%)
全国 62,567
営業用トラック台数(軽除く、東京は運輸支局届出台数)
東京    92,251(8.2%)
全国 1,131,825
普通車(1ナンバー)
東京   135,270(営業用67,893:50.2%) 
全国 2,463,607(営業用912,142:37.0%)
小型車(4ナンバー)
東京   314,715(営業用16,673:5.3%)
全国 4,397,362(営業用76,987:1.8%)
トレーラ
東京     7,961(営業用7,685:96.5%)
全国   152,215(営業用142,696:93.7%)
小型三輪車
東京     117(営業用27:23.1%)
全国   1,074(営業用98:9.1%)
2008:東京都トラック協会(東ト協)の活動

運賃問題への対応

 東京都トラック協会の星野良三会長は、2008(平成20)年1月11日の東ト協新年理事会で、今年の重点目標として・再生産可能な適正運賃収受の実現で輸送力の確保・交通事故半減を図るため映像記録型ドライブレコーダー装着促進を図る──を昨年に引き続き掲げるとともに、今年は社会保険(健康保険・厚生年金)未加入問題にも取り組む姿勢を示しました。
 適正運賃収受については、・国土交通省、経済産業省、公正取引委員会、東京労働局など行政側が、荷主側に原油高騰などで厳しい経営環境のトラック業界に対する理解要請や公正な取引の確保を求めるなど、運賃交渉環境整備の後押しをしている・原油高騰に対する社会の理解が進み、価格転嫁もやむを得ないとの認識が広がっている──とし、運賃交渉の環境整備が整った今こそ「会社が大変厳しい状況にある時、社長が頑張らなければいけない。社長として一番の勝負所。自分への強い激励を含めて社長の真価を発揮するとき」と、社長・経営トップの自覚を促しています。
 星野会長は、再生産可能な運賃収受ができなければ安定した安全な輸送サービスはできず、社会的に大きな支障を生じる心配があり、また将来に向けた人材や輸送力確保が憂慮されるとの懸念を示しています。再生産可能な運賃収受は、軽油価格の急激な高騰や安全・環境等でのコスト増など、自助努力で吸収できない厳しい経営環境の中で輸送サービスを維持していくために必要な当面の問題であるとともに、将来、少子高齢化が進み労働力人口の減少を迎えるなか、トラック運送業界が魅力ある業界として次代に輸送力を確保するために人材を確保する原資です。

適正取引バックアップのため資料を送付

 東京都トラック協会は2008(平成20)年2月8日付で全会員事業者に「軽油価格高騰下における政府の取組に関する資料」を「社長親展 必ずご覧ください」と朱書きした封筒に入れて送付しました。送付した資料は4種類で、会員事業者が荷主と運賃交渉する場合の一助となる政府の各種資料で、資料のそれぞれについて主要なポイントを注記しています。
 送付したのは、(1)十分な協議をしないで、一方的に運賃を据え置くと(下請法や独禁法で禁止されている)”買いたたき”に該当のおそれありと指摘・警告している国土交通大臣・経済産業大臣連名の『軽油価格高騰下における下請・荷主適正取引の推進のための緊急協力要請について』(07年12月12日付)(2)下請代金支払遅延等防止法での禁止行為を行った親事業者には、速やかに行為を止めさせるなど同法の厳正な適用や、同法を担当取締役から窓口担当者まで会社全体に周知し、担当取締役等責任者にこれらの指導・監督に当たらせるなど適切な措置を強く要請する経済産業大臣・公正取引委員会委員長連名の『下請取引の適正化について』(07年11月27日付)(3)トラック運転者の長時間労働改善には、荷主側の改善基準告示(自動車運転者の労働時間等の改善のための告示)に関する理解・協力が必要であり、そのため発注条件等で協力を求めた東京労働局長名の『道路貨物運送業における労働条件の改善のための協力要請について』(06年11月17日付)──の行政側資料3点と、全日本トラック協会会長・東京都トラック協会会長連名による『荷主の皆様へ』の1点。『荷主の皆様へ』は、荷主団体に提出し、トラック業界の窮状理解を求め、安全・安心な輸送サービスの維持確保のため公正取引の確保が必要と訴えたもの。この文書を会員事業者が個別荷主と運賃交渉する際に資料として利用できるようにしたものです。
 また、東ト協は、会員事業者に運賃コストの把握を会員事業者に呼びかけ、各種研修会を開催し、輸送コスト把握のためのサポートも行っています。これは、東京都トラック運送事業協同組合連合会がまとめた「運賃動向に関するアンケート調査」(調査対象日=07年7月31日、07年10月26日発表)で、自社の輸送コストの把握に基づいて荷主と交渉した事業者の値上げ成功率が高いことがわかっているからです。

映像記録型ドライブレコーダー(DR)装着で事故半減へ

 東京都トラック協会の星野良三会長は、2007(平成19)年1月11日の東ト協新年理事会で「映像記録型ドライブレコーダー(DR)を会員事業者の保有車両約10万台の半数である5万台に装着することで、会員事業者の交通事故を3年で半減する」との目標を掲げました。星野会長自身が経営する会社でDRを装着し、事故を大幅に減少させた実績がその背景にあり、「DRは交通事故防止の革命。装着すれば確実に事故は減少する。さらに燃費も改善される」と強調しています。
 東ト協新年理事会後に開催された東京トラック業界新年交歓会に来賓として出席した東京都の石原慎太郎知事は「ドライブレコーダー装着で事故が減り、燃費が良くなることで環境も良くなるという。これほど有り難いことはない。東京都としてもドライブレコーダー装着に大いに協力し、与党とも相談して必ず財政的な援助をしなければならないと思う」と、東ト協のDR装着に財政的援助を行う意向を示しました。

DRは事故防止の革命

 星野会長は、”自社でのドライブレコーダー(DR)装着により大幅に事故が減少した”という実績を背景に、さまざまな機会を捉えてDR装着による事故削減・事故防止効果を説明、「ドライブレコーダーは事故防止の革命」と評価し、DR装着促進を進めています。
 星野会長は「ドライバー自身が、安全運転していると思っていても、気がつかないうちに『ヒヤリハット(危険挙動)』を生じるような運転行動をしていることを、DRの映像を見ながら確認でき、『習慣的で無意識的な悪い運転行動を直す』ことができる」ことでヒヤリハットを少なくし、事故減少の要因となると指摘しています。事故の土台となっているヒヤリハットを無くすことが、事故の芽を摘むことになり、DRはそのための有力な手段となるわけです。
 DR映像によってドライバーの意識が変わり、ヒヤリハットを無くす運転、つまり「急のつかない運転=急加速・急ハンドル・急ブレーキをしない運転」をするようになりますが、これはエコドライブと同様の運転行動にもつながり、そのため燃費向上効果を生じ、燃料経費削減と経営にも寄与しています。
 さらにトラックが関与した事故の場合、「トラック側に非がある」との先入観があります。だれも見ていないような場所ではなおさらです。こうしたとき、「事故時の状況を映像で”説明”するのがDRの映像です。事故時の責任が何処にあるのか、社員がうまく状況を説明できなくても、DRの映像が証人となることでドライバーに安心感を与えるなど、ドライバーを守るという役割も重視されています。

DRの支援体制整備

 東京都トラック協会は、2007(平成19)年度事業の重点事項に「ドライブレコーダー(DR)の装着を図り交通事故の半減を目指す」「ドライブレコーダー装着による省エネの推進」を盛り込みました。
 全会員事業者を対象に、(1)車載器1台2万円で、1事業者20台まで(2)解析ソフトは1営業所1セット2万円──とし07年度は車載器助成対象台数1万1千台、解析ソフト助成対象営業所1,200営業所、予算額2億4,400万円──を計画しました。そして装着対象機器選定を行い、07年6月27日から助成申請受付を開始しました。この時点ですでにDR装着している事業者が不利にならないよう、07年4月1日以降に装着したDRについては19年度助成事業の対象として救済策を講じました。

東ト協、DR助成を拡大・強化で装着促進

 東ト協では、DR装着促進を一層図るため、助成規模の拡大と東ト協本部事務局に装着促進のためのプロジェクトチーム(PT)を設置し、促進策の検討や実施を進めることとしました。
 助成規模の拡大は07(平成19)年12月13日の常任理事会・理事会合同会議で決定しました。助成額を(1)車載器について1台5万円、1事業者30台まで(2)解析ソフト1セット5万円──と車載器および解析ソフトについては従来の2.5倍、助成台数については従来の1.5倍と大幅に規模を拡大、事業者の負担軽減を図りました。また、すでに東ト協の助成を利用している事業者が不利にならないよう、規模拡大を07年4月1日に遡って適用することにしました。
 さらにDR助成については単年度事業とせず、07年度から09年度にかけての「通年事業」とし、その間に助成申請額が3年間の予算総額7億7,280万円に達した場合に助成申請を締め切ることとしました。

東京都がDR補助をスタート

 東京都は2007(平成19)年11月8日、エコドライブ支援機器としての「映像記録型ドライブレコーダー(DR)」の装着助成実施を決めました。申請受付は東京都トラック協会環境部が窓口となって、同日から受付をスタートしました。

 助成措置には、補助対象事業者を総保有車両(都内車籍)50台以下の中小事業者に限定し、(1)DRを装着する車両は都内車籍であり、東京都環境確保条例(都民の健康と安全を確保する環境に関する条例)で規定するディーゼル車排出ガス規制に適合していること(2)車載器等の導入により得られる諸データの活用を含め、運行管理者等によるドライバーへの継続的な教育訓練・指導等の体制が構築されていて、定期的な指導等の実施状況およびドライバーが自ら給油量等を記録し、それを集計・分析できるデータベースを構築しているという取り組み実績などを東京都に明示できること(3)機器導入前後について、機器を装着した車両の走行内容等を東京都へ報告が可能であること──という条件がつけられています。
 「諸データの活用や取り組み等実績明示や報告可能」条件について、東ト協の会員事業者は、東ト協が2006(平成18)年度から実施している「グリーン・エコプロジェクト」(別掲)に参加していることでクリアできることになっています。
 助成内容は、(1)補助率は車載器および解析ソフトの対象機器購入費の2分の1。補助限度額は車載器20万円、解析ソフト30万円(2)1事業者に対する補助台数は、車載器20台、解析ソフト1台──となっており、補助については業界では「期待以上」との声が聞かれました。
 2007(平成19)年末には、DRの装着に対する東ト協および東京都の支援制度が整ったため、星野会長は「DR装着促進で、2008(平成20)年を会員事業者の交通事故半減への実行の年」としています。

事故防止活動

 東京都トラック協会は事故防止活動を事業活動の重点施策として活動していますが、星野良三会長は2008(平成20)年の新年理事会で、あらためて事故防止を今年の重点目標に据えるとともに、「”ドライブレコーダーの装着で、3年間で会員事業者の事故を半減する”目標に向けて今年は実行の年」と位置づけています(別掲)。

トラック事故速報を送付

 東ト協は2007(平成19)年に入り、1月17日までに営業用貨物車が関与する事故が7件と多発したため、1月18日から”我々トラック業界は交通事故による犠牲者を1名たりとも出さない!”との決意で「交通死亡事故の根絶に向けた事故防止緊急対策」を実施するよう会員事業者に要請しました。これとともに警視庁交通部の情報提供協力で、都内で発生した貨物車が関与した死亡事故について、「日時・発生場所・事故概要・事故状況の図解を入れたトラック事故速報」を作成して各支部を通じて会員事業者に送付し、事故防止活動に役立ててもらうとともに、機会を捉えては事故防止への取り組みを促しています。
 「トラック事故速報」については、東ト協が開催している事故防止大会(08年2月15日に12回目の大会を開催)で、来賓として出席した警視庁交通部が「営業用貨物車関与の死亡事故が発生した場合、すぐにその情報を提供できるよう協力したい」と情報提供での協力を示しています。
 東ト協は、春・秋の全国交通安全運動をはじめ、さまざまな機会に交通事故防止のための活動を実施しています。地元とも結びつきの強い支部や会員事業者は、日常的に横断歩道などでの歩行者誘導、交通安全教室の開催など、地元密着型の事故防止活動を続けています。東ト協では、本部、支部などが行う事故防止活動が有機的に連携したものとはなっていないとの反省もあり、協会全体が事故防止活動を進めていることを広く社会にアピールし、安全意識の高まりにも貢献できる方法を検討しています。

環境問題への対応

 東京都トラック協会は、環境対策を事故防止対策とともに重要な課題としてとらえ、大気汚染問題や地球環境問題などに対応し、低公害車導入支援、PM低減装置やNOx・PM低減装置の装着支援による低公害化促進事業をはじめ、さまざまな環境改善施策を展開しています。

東京の空がきれいになった──画期的な成果

 東ト協では、これまで自動車NOx・PM法、東京環境確保条例などへの対応を進めてきました。自動車NOx・PM法への対応では、2007(平成19)年度は東ト協独自で新長期規制対応車の導入支援を実施、東京都環境確保条例への対応ではPM減少装置装着支援を行ってきています。こうしたことからNOxやPMへの対応は「峠を越えた」状況となっています。
 東京都の石原慎太郎知事は、2006(平成18)年1月の東ト協新年交歓会で「東京の空がきれいになった。東ト協の協力のお陰。”神様、仏様、トラック協会様”」と東ト協の努力に感謝の意を示しました。08年の新年交歓会でも同様のフレーズを使い、「皆さんが身を削いで(環境対策に)協力した成果。画期的なことと思う。こうした心意気というものを政府が頑張って日本全体に示してもらいたい。子孫のために範を示した」と環境対策に”身を削いで”努力したことを高く評価しています。”東京の空がきれいになった”──東京都環境局のデータ「平成18年度大気汚染状況の測定結果」(07年8月17日環境局発表) もそれを証明しています。

グリーン・エコプロジェクト展開中

 「グリーン・エコプロジェクト」は、東京都トラック協会が2006(平成18)年度からスタートさせた環境対策事業で、環境面のCSR(企業の社会的責任)を能動的に果たすことで、経営改善を図ろうというものです。NOxやPM対策が「峠を越えた」なかで、地球環境に与える影響が問題となっているCO2削減に、トラック業界として積極的に取り組むものです。全国の業界に先駆けたこの取り組みが評価され、環境省の平成19年度地球温暖化防止活動の対策活動実践部門で環境大臣表彰を受賞しました。また、各方面からも注目され、東ト協への問い合わせもきています。
 「グリーン・エコプロジェクト」には、環境改善、経営改善とともに、集積されたデータの活用が「副産物」として浮上してきています。さまざまな条件で実際に走行している車両(年式、積載量、仕様など多種多様な車両)の燃費データが大量に集積されるためです。東ト協環境部が積載量を区分指標として分析したところ、それぞれの積載量によって燃費が「ある傾向値」に収斂していく様子が示されました。こうした東ト協だけが保有しているデータに、自動車メーカーや研究者も注目しており、今後、どのように活用していくかが検討されています。

業界イメージアップに一役の本部イベント

 東京都トラック協会は、2007(平成19)年10月8日に「トラックの日」本部イベント「トラックの日 フェスタinラクーア」を、文京区春日の東京ドームシティ「ラクーア」屋外ステージで開催しました。06(平成18)年に引き続きの開催で、当日は雨天という悪条件のなか、家族連れやカップルなど4,223人(ラクーア調べ)が来場しました。本部イベントの事前告知では、TBS、ニッポン放送、文化放送のラジオ3局でのスポットCM、JR・地下鉄13駅でのポスターの掲示、JR山手線の窓上広告、毎日新聞、読売新聞での事前告知とマス媒体を活用。子供に人気のキャラクターショーや人気手品師の出演など、”人を呼べる企画”に寄せて、トラック業界が自然に耳に入ったり、目に見えたりするよう幅広くアピール。”当日は雨天との天気予報”が出ていたため、開催日前から東ト協本部にはイベント開催の問い合わせが相次ぐほどのPR効果を上げた。
 子供(家族)や若い人向け中心のイベントのなかで、トラック業界が社会に無くてはならない物流を担っている役割、事故防止、環境対策への取り組みなどを理解してもらう企画を盛り込み、全体の流れの中でトラック業界が身近なものであり、生活や産業を支えていることの理解と業界イメージアップを積極的に図っています。 東ト協は、トラック業界の理解を深めてもらいイメージアップを図るため、メディアを活用して広報活動を展開しています。「トラックの日」のイベントでは、「10月9日のトラック日」を中心に東ト協各支部が地元に密着したイベントを実施して”暮らしを運ぶ緑ナンバートラック”をアピールしていますし、本部イベントもその一環です。

中越沖地震で緊急救援物資輸送を実施

 東京都トラック協会は、災害時など緊急時での生活を支える「ライフライン」を守るため緊急救援物資輸送を行い、社会的責任を果たしています。そのため東ト協本部や各支部では自治体と協定を締結し、救援物資輸送の要請に応えています。
 2007(平成19)年7月16日午前10時13分ごろ発生した新潟県上中越沖を震源とする「新潟県中越沖地震」(マグニチュード6.8)で、新潟県柏崎市等で大きな被害が発生しました。そのため東ト協本部や各支部は各自治体の要請で、救援物資輸送を行いました。
 東ト協本部は、東京都からの要請で7月30日、10・車1台、4・車3台の計4台のトラックに約5千枚のブルーシートを積載し、柏崎市中浜に設置された救援物資受け入れ先の「柏崎市救援物資配送センター」に緊急輸送し、柏崎市に引き渡しました。
 また、▽東ト協板橋支部(板橋区・16日15時)は2・車2台▽東ト協多摩支部(東村山市・17日10時)は2・車2台▽東ト協深川支部(江東区・17日昼)は2・車1台▽東ト協台東支部(台東区・17日18時20分)は3・車1台▽東ト協文京支部(文京区・18日)は2・車1台▽東ト協墨田支部(墨田区・18日)は2・車1台▽東ト協大田支部(大田区・21日11時)は2・車1台──に救援物資(毛布・ブルーシート・簡易トイレ・テント・飲料水・ウェットティッシュ・トイレットペーパー・紙おむつ・生理用品・ガスコンロ・ガスボンベ等)を積載し、柏崎市や刈羽村へ輸送しました(カッコ内は要請自治体・時刻)。