運転者の指導・監督指針を改正~初任運転者教育を大幅に強化
国土交通省は2017(平成29)年3月12日、トラック運送事業の運転者に対する指導・監督指針を改正し、施行しました。年齢18歳で車両総重量3.5トン以上7.5トン未満の自動車を運転できる準中型自動車免許が新設されたことに伴い、初任運転者に対する教育指導を強化するためです。
従来は、初任運転者などに対して6時間以上の特別な指導(座学)を実施することが義務付けられていましたが、座学を15時間以上(積み付けなどの実技指導を含む)に拡大するとともに、実車による安全運転指導を20時間以上実施することを義務付け、合計で35時間以上に大幅に拡大・強化しました。
実車を用いた運転指導では、実際にトラックを運転させて安全運転方法を指導するとともに、貨物の積み込みや積み付け方法などについても実車を用いた指導を行うことを求めています。座学で学んだ内容を実技で実践させることが狙いです。
一般的な指導監督の内容については、運転姿勢の基本など従来の指針で規定されていたものの、必ずしも教育が徹底されていないものを明文化し、これまで努力規定だった指差し呼称などを新たに義務規定としました。さらに、これらの指導内容について、教育計画を立てて毎年実施するよう求め、実施していない場合は「運転者への指導監督義務違反」として行政処分の対象としました。
全ト協が研修テキスト作成
全日本トラック協会は、運転者の指導・監督指針の改正に対応して、新たな教育内容を網羅した「事業用トラックドライバー研修テキスト」を作成し、日本貨物運送協同組合連合会を通じて販売しています。
テキストは1セット全10冊で、指導・監督指針を体系的にまとめて解説しているほか、若年運転者をはじめ初任運転者に対する教育や、中堅・ベテラン運転者の一層の安全意識高揚にも役立つ内容となっています。トラックを運転する心構えのほか、関係法令、日常業務、過労運転防止と緊急時の対応、トラックの構造と特性に合わせた運転などについて、イラストを多用して分かりやすく説明しており、より実践的な内容となっています。
疾病運転防止法が施行
事業用自動車の疾病運転を防止するための措置を定めた、貨物自動車運送事業法などの改正法案が2016(平成28)年12月9日の参議院本会議で可決・成立し、翌2017(平成29)年1月16日に施行されました。トラック、バス、タクシーの各自動車運送事業者に対し、運転者が疾病により安全な運転ができないおそれがある状態で運転することを防止するため、必要な措置を講じることを義務付ける内容のものです。
超党派で構成する「運転従事者の脳MRI検診推進議員連盟」が中心となり、議員立法により国会に提出され、成立したものです。
衆議院国土交通委員会は2016年12月2日、採決に当たって決議を行い、脳ドック、心臓ドックなどのスクリーニング検査について、政府に対して、疾病運転により安全な運転ができないおそれがある状態の明確化を図った上で、検査の結果に応じて事業者として取るべき対応を含んだガイドラインを作成するよう求めました。
改正法の施行を受け、国土交通省では医学的知見を踏まえてガイドラインを策定することにしています。その上で、事業者の自主的なスクリーニング検査の導入拡大に取り組む方針です。
事業用自動車の新・安全プラン策定へ
国土交通省は2017(平成29)年4月27日、「自動車運送事業に係る交通事故対策検討会」を開き、「事業用自動車総合安全プラン2009」に代わる、新たなプランの策定に向けて検討を開始しました。
現行プランでは、交通事故件数は着実に減少しているものの、死者数および飲酒運転の違反取り締まり件数については2018(平成30)年度末の目標達成が困難な見込みとなっています。また、軽井沢スキーバス事故などの発生や、自動車の先進安全技術の進展など取り巻く状況の変化を踏まえ、新たなプランを策定することにしたものです。新プランは、政府の第10次交通安全基本計画と連動させて、計画期間を2017年度から2020(平成32)年度までの4年間とする方針です。
新プランの重点施策案としては、事業者・利用者・行政の連携による安全トライアングルの構築、自動運転をはじめとする新技術の開発・利用・普及の促進、超高齢社会を踏まえた高齢者事故の防止対策、統計情報の分析などに基づく特徴的な事故などへの対応、道路交通環境の改善を柱に掲げています。
あわせて同省は同年5月11日、第1回「事業用自動車に係る総合安全対策検討委員会」を開催しました。交通事故対策検討会の検討を踏まえて、新プランの方向性について意見集約を図るため開催したものです。新プランは6月下旬頃に策定する予定です
1万台当たり死亡事故件数「2.1」件に
全日本トラック協会は2017(平成29)年4月10日、2016(平成28)年の交通事故統計分析結果(発生地別)をまとめました。それによると、2016年に事業用貨物自動車(軽車両を除く)が第一当事者となった死亡事故件数は、前年比50件減の258件でした。営業用トラック(124万5,603台)に対する1万台当たりの死亡事故件数は2.1件となり、前年の2.5件より0.4件減少しました。全ト協では、目標に掲げる2.0件以下を達成するためには、さらなる事故防止対策が急務だとしています。
発生地別に見ると、前年と比較して北海道と福岡県が6件増と増加しており、次いで埼玉県・愛知県が5件増、千葉県が4件増、福井県・三重県が3件増となっています。一方、東京都は9件の減少となっています。
事業用トラックが第一当事者の死亡事故では、交差点での事故が多く、なかでも対歩行者、対自転車の死亡事故が62件と、追突事故(44件)の1.4倍となっています。左折死亡事故は8割以上が大型車によるもので、対自転車(19件)が対歩行者(7件)の約3倍にもなります。また、右折死亡事故は9割以上が対歩行者(13件)が占めています。
デジタコ導入を支援、ASV特例も延長
政府は2016(平成28)年12月22日、2017(平成29)年度予算案を閣議決定しました。このうち、国土交通省自動車局関係予算では、エネルギー対策特別会計を活用したトラック運送事業向けの補助金として、前年度と同額の合計で約80億円が計上され、デジタル式運行記録計の導入補助に同じく40億円が計上されました。
一般会計では、自動車運送事業の安全総合対策に前年度予算比14%増の11億4,000万円が計上され、前年度に続きドライブレコーダー・デジタル式運行記録計や衝突被害軽減ブレーキなどASV(先進安全自動車)装置の導入補助、過労運転防止の取り組みに対する支援、社内安全教育に対する支援などが実施されることになりました。
税制改正では、自動車取得税について、取得価額から最大525万円を控除できるASV特例(衝突被害軽減ブレーキ装着車など)が、2年間延長されることになりました。
全ト協、安全装置助成を拡充
全日本トラック協会は2017年度から、後方視野確認を支援するバックアイカメラ、側方視野確認を支援するサイドビューカメラ、飲酒運転を防止するアルコールインターロック装置、携帯型アルコール検知器など、各種の安全装置導入に対する助成措置を拡充しました。
車両1台につき1万円を助成するもので、バックアイカメラおよびサイドビューカメラの一体型については2万円を助成します。また、運行管理連携型のドライブレコーダーに2万円、衝突被害軽減ブレーキ装置には5万円を上限として(中小企業が対象)助成します。
高速各社、車限令違反の処分措置を強化
東日本・中日本・西日本高速道路(NEXCO)と首都・阪神高速などの高速道路6社は2017(平成29)年4月1日から、車両制限令違反者に対する大口・多頻度割引の停止措置など処分措置を見直し、強化しました。
基準の2倍以上の重量超過車両に対しては即時に告発し割引停止とするほか、違反の度合いに応じて付与する点数の基準を強化し、違反点数の累積期間も2年間に延長しました。さらに、これまで指導警告にとどめていた軸重超過に対しても、新たに違反点数を付与することにしました。
こうした処分措置に対し、全日本トラック協会と日本貨物運送協同組合連合会は2016(平成28)年11月28日、国土交通省に対し、運用上の配慮を要望しました。トラック運送事業者の努力だけでは軸重超過などをなくすことが困難な状況にあるためで、軸重超過違反に関する荷主への罰則規定の創設、荷主勧告の積極的な発動などを求めました。
厚労省、荷役労災防止を要請
厚生労働省は2017(平成29)年3月16日、全日本トラック協会に対し、陸上貨物運送事業における荷役作業の安全対策を推進するよう文書で要請しました。
陸運業の労災防止対策については、2013(平成25)年度から2017年度までを計画期間とする第12次労働災害防止計画で、休業4日以上の労災発生件数を2012(平成24)年比10%以上減少させることを目標にしていますが、2016(平成28)年の発生件数は0.4%増加し、目標達成は困難な状況となっているからです。
陸運業の荷役作業における死亡労災では、①墜落・転落、②荷崩れ、③フォークリフト使用時の事故、④無人暴走、⑤トラック後退時の事故が約80%を占め、「荷役5大災害」となっています。そこで、これら労災を防止するために陸運事業者と荷主が重点的に確認・実施する事項をチェックリストとして示し、取り組みを要請したものです。
エコカー減税が延長
与党の2017(平成29)年度税制改正大綱によると、トラック関係では、自動車重量税と自動車取得税に対するエコカー減税が2年間延長されることになりました。
乗用車のエコカー減税は2017年度、2018(平成30)年度と段階的に税の軽減率が引き下げられ、対象車両も9割から7割程度に減少する見通しです。これに対して重量車(車両総重量3.5トン超のトラックまたはバス)は、引き下げられた軽減率が2年間延長されることになりました。自動車取得税の軽減率は引き下げられますが、メーカーが発売する新車の燃費性能が年々向上しているため、対象車両は現行の9割とほぼ変わらない見通しで、重量車全体の税負担額も大きくは変わらない見込みです。
ポスト・ポスト新長期規制が適用開始
国土交通省は2016(平成28)年10月1日から、ディーゼル重量車の排出ガス規制強化を順次実施しています。「ポスト・ポスト新長期規制」と呼ばれる規制で、2009(平成21)年のポスト新長期規制に比べ、排出ガス中の窒素酸化物(NOx)規制値が約4割低い水準に引き下げられます。
規制強化に併せて、排出ガス試験サイクルに関しても現行のJE05モードから、国連で策定された世界統一技術基準の試験モードに変更されます。