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経営環境

原油高で燃料高騰続く

 2007(平成19)年から08(平成20)年にかけて、原油価格が再び高騰し、国内燃料価格も急騰、トラック運送業界は大きな打撃を受けました。全日本トラック協会の中西英一郎会長は07年11月、経済産業大臣と国土交通大臣に対して業界の窮状を訴え、これを受けて冬柴鐵三国土交通大臣は同年12月、岡村正日本商工会議所会頭にトラック運賃の転嫁について協力を要請しました。
 国土交通省では、軽油高騰分の運賃への転嫁に向けた施策として、経済界に緊急協力要請を行い、運賃を据え置いた場合は「買いたたき」に該当するおそれがあると警告。さらに下請・荷主適正取引推進ガイドラインづくりを進め、当初想定していなかった社会保険未加入事業者への行政処分導入、新規参入事業者への社保加入義務づけや法令試験の実施といった貨物自動車運送事業法に基づく施策を検討し始めました。公正取引委員会との連名による緊急措置では、燃料サーチャージ制の導入を荷主とトラック事業者に強く求め、公取委も運賃値上げ交渉に際しての荷主の独禁法違反行為に対する監視の目を強めています。

全ト協、原油高騰で国交相らに要望

 米原油先物相場のWTI価格は、2007(平成19)年1月に1バレル54ドル程度だったものが、7月には74ドルへと上昇、11月には94ドルと100ドルに迫り、年明けの08(平成20)年1月2日、ついに100ドルの大台を突破。原油価格の高騰に伴い、国内軽油価格も騰勢を強め、トラック事業者の主な調達価格であるローリー価格は07年11月に1リットル当たり100円を突破しました。
 中西英一郎全日本トラック協会会長は07年11月9日、甘利明経済産業大臣に、同月14日には冬柴鐵三国土交通大臣に会い、軽油高騰に苦しむ業界の窮状を訴えるとともに、軽油引取税暫定税率7.8円の撤廃など諸税の負担軽減、燃料高騰に対応した公正な価格転嫁実現のための環境整備などを要望しました。これに対し冬柴国土交通大臣は「荷主にも適切なコスト分担をしてもらう必要がある」と答え、自らが経済界代表と会って運賃転嫁への理解を求めていく考えを示しました。

国交相、経済界に運賃転嫁への協力要請

 トラック運送業界の要請を受けて冬柴国土交通大臣は2007(平成19)年12月18日、岡村正日本商工会議所会頭を訪ね、原油価格高騰に伴うコストアップ分のトラック運賃への転嫁について、直接理解と協力を求めました。岡村会頭は業界の窮状に理解を示すとともに「十分に趣旨の徹底を図る」と加盟各社にも周知していくことを約束。日本経団連に対してはこれに先立つ同月12日、春田謙国土交通審議官が緊急協力要請に出向き、地方運輸局でも運輸局長や運輸支局長らが手分けして各地の経済団体に働きかけを行いました。

運賃据え置きなら「買いたたき」に

 国土交通省が日本経団連、日本商工会議所など経済界に提出した緊急協力要請文書(国土交通大臣、経済産業大臣の連名)では、コスト計算等に基づき、荷主、元請、下請が十分に協議して運賃を決定するよう求め、優越的地位にある荷主や元請が、運賃値上げ要求に応じず、一方的に価格を据え置く場合は、独禁法や下請法で禁じる「買いたたき」に該当する恐れがある、と注意を促しています。文書は公正取引委員会とも協議したもので、どのような行為が「買いたたき」に該当するのか、独禁法も含めて具体的な解釈を示したことは初めて。
 要請文書ではさらに、望ましい取引形態として、全日本トラック協会が2006(平成18)年2月にガイドラインを策定した燃料サーチャージ制度の導入を例示し、あらかじめ算定手法などについても合意しておくことが適切だとしています。

国土交通省、下請・荷主適正取引ガイドライン策定に着手

 国土交通省は2007(平成19)年11月21日、下請適正取引等推進ガイドライン検討委員会(委員長=野尻俊明流通経済大学学長)を設置し、荷主と元請け、元請けと下請けの取引を適正にするためのガイドライン づくりに着手しました。下請法、独禁法に照らして、適切で望ましい取引形態とその具体的事例を提示することで、関係者間の理解と信頼を共有化することが目的。当初は、経済成長力底上げのための施策として位置づけられていましたが、07年夏以降の原油価格再騰で、現在は、原油高騰対策の1メニューとされています。
 望ましい取引実例の普及促進に向けた取り組みとして、燃料サーチャージ制の導入促進、運賃の適正水準の確保、安全運行パートナーシップの普及促進をあげ、問題となる取引の防止に向けた取り組みとしては、事業者からの相談体制の充実、スポット取引に係る書面交付の促進、安全運行を阻害する行為の防止をあげています。
 さらに、適正な競争環境確保に向けた取り組みとしては、法令違反等により適正競争を阻害する事業者に対する措置、コンプライアンス推進に向けた措置などを検討中で、08(平成20)年3月にガイドラインとしてまとめる予定です。

政府が原油高騰緊急対策

 政府は2007(平成19)年12月25日、首相官邸で原油高騰・下請中小企業に関する緊急対策関係閣僚会議を開き、原油高騰の打撃が大きい中小企業への対策や運送業など業種別対策の具体案を決めました。07年度補正予算と08(平成20)年度予算を合わせて2,150億円以上の予算規模で原油高騰対策を進めるもので、会議に出席した福田康夫首相は「急激な原油高騰は、国民生活や中小企業の経営を直撃している。対策が真に実効あるものとなるよう取り組むように」と関係閣僚に指示しました。
 このうち運送業対策としては、安定的な物流コストの確保等を図るため、高速道路の通行料金について、現在3割引となっている深夜割引(午前0~4時)を4割引に拡充する方針を示し、そのための予算として、07年度補正予算で67億3,000万円、08年度予算で235億円の合計302億3,000万円を計上しました。
 業種横断的な中小企業対策としては、(1)資金繰り支援・金融円滑化(2)窓口・相談体制の整備(3)原油等の価格上昇分の転嫁に関する周知徹底(4)下請代金法・独占禁止法の厳格な運用等──の4つが柱で、下請事業者の駆け込み寺的な「下請適正取引推進センター」を全国に整備するため、来年度予算で4億6,000万円を計上しています。

高速道路深夜割引を拡充

 国土交通省は2008(平成20)年2月15日から、高速道路の深夜割引(午前0~4時:3割引)を4割引に拡充しました。ETCシステムにより、東日本、中日本、西日本各高速道路会社が管理する高速道路の割引対象路線を走行する車両が対象で、原油高騰に伴う緊急対策として、1年間実施される予定です。最大3割引の大口・多頻度割引と併用すると最大6割引、マイレージ割引との併用では最大で5割引となります。

燃料サーチャージ制導入、強く求める

 国土交通省と公正取引委員会は2008(平成20)年3月4日、軽油価格高騰に対処するためのトラック運送業に対する緊急措置をまとめました。適切な運賃転嫁が進まないと我が国の物流基盤が維持できなくなるとして、燃料サーチャージ制について政府が緊急ガイドラインを作成するほか、荷主とトラック事業者に強く導入を働きかけるとしています。具体的には、サーチャージ制を導入していない事業者に対して事情聴取・調査を行い、必要に応じて事業法に基づく立入検査を実施するとしています。
 公正取引委員会も、運賃改定交渉を巡る不当行為を含めて、荷主の独禁法違反行為に対する監視を強化する方針。物流事業者3万社を対象とした特別調査を3月中に開始するほか、物流分野の取引を専門に調査する「物流調査タスクフォース」を2月20日付で設置、荷主と元請け間の取引、下請取引の不当行為に対する調査を効率的かつ効果的に実施することにしています。
 運賃の健全性確保策としては、「買いたたき」や不当競争につながるおそれがある取引の防止を図るため、国土交通省が事業法による事業改善命令の運用拡大を行うとしています。また「正直者が損をしない」健全な競争環境を整備するため、社会保険未加入事業者や最低車両台数割れの減車に対する処分強化と併せて、最低車両台数の適正規模についても検証するとしています。

国交省がドライバー確保策検討

 国土交通省はトラックドライバーを安定的に確保するための方策に関する検討委員会(委員長=齊藤実神奈川大学教授)を設置して、トラック運送業界の労働力不足対策を検討しています。2007(平成19)年12月4日に開かれた第3回会合では、トラックドライバーの資格制度と悪質ドライバーの排除方策が議論されました。
 資格制度としては、事業用トラック専用運転免許(仮称=第3種免許)の創設、事業用トラックドライバーのランク付け(JAF認定のA級ライセンスのイメージ)などが提示されており、委員の間からは資格制度創設に前向きな意見がある一方、より現実的な制度とすべきとする意見も出されています。
 一方、悪質ドライバー排除方策としては、事故を起こした運転者やアルコールチェックで複数回チェックされた運転者について、常時選任運転者からの除外などが議論されましたが、委員からは事故履歴などを活用した業界全体での排除策を求める意見が目立ちました。
 08(平成20)年2月15日の第4回会合では、「2015年度のトラックドライバー需給予測」が提示されました。営業用トラックの輸送量が05年度比で0.7%増加すると仮定し、2015年度の必要ドライバー数を88万3,338人と試算。他産業との賃金格差が06年の水準にとどまると仮定すると、供給数は74万2,190人となり、差し引き14万1,148人が不足するとしています。

中型免許がスタート

 改正道路交通法のうち、運転免許制度に関する部分が2007(平成19)年6月2日に施行され、中型運転免許が創設されました。車両総重量5トン以上11トン未満、最大積載量3トン以上6.5トン未満の自動車を運転できる免許で、普通免許と大型免許の中間に位置づけられます。従来の普通免許保有者は、既得権として車両総重量8トンまでの自動車を運転できる限定中型免許とみなされ、限定解除には、中型免許の技能審査に合格するか、教習所で5時間以上の技能教習を受け、技能審査の例に準じた審査に合格する必要があります。
 中型免許の創設に伴い、従来より一回り大きいトラックでの技能教習が必要となった新大型免許に対応できる教習所が激減するなどの影響が広がっています。労基法改正案は継続審議に政府は2007(平成19)年の通常国会に、労働基準法改正案、労働契約法案、最低賃金法改正案のいわゆる「労働3法案」を提出しました。与野党対決法案ということもあり継続審議となりましたが、労働契約法と改正最賃法については与野党で修正のうえ11月28日に成立し、労働契約法は08(平成20)年3月から、改正最賃法は同年7月に施行される予定です。労働契約法は、労働契約に関する基本事項を明確化することで個別労使関係の安定化に資することが目的です。改正最賃法では、産業別最賃の名称を「特定最低賃金」に変更したうえで、最賃法上の罰則を廃止する一方、すべての都道府県に地域別最賃の決定を義務づけ、違反時の罰金上限を2万円から50万円に引き上げました。3法のうち、労働基準法改正案だけは07年の臨時国会でも継続審議となり、08年の通常国会では衆議院厚生労働委員会に付託されています。労働基準法改正案では、現在25%とされている時間外労働の割増賃金率を、月間80時間を超える部分については50%に引き上げることを盛り込んでいます。時間外労働の割増賃金率の引き上げについて、全日本トラック協会では、トラック運送事業を適用除外とするよう要望しています。

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