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交通安全・事故防止のために

安全対策、三位一体で強化

 国土交通省は2006(平成18)年6月16日、自動車運送事業の安全性向上に向けた総合対策をまとめました。事業用自動車の事故が高止まりの状況を続けていることに加え、これまでの規制緩和に伴う事後チェックの体制が不十分であることを反省し、現行の安全対策を総点検したもので、経営トップが運行管理者の意見を聞かなかったり、安全対策を運行管理者任せにしているなど現行の安全対策の不徹底や限界が見られるため、(1)現行の運行管理制度の徹底(2)監査の強化(3)安全マネジメントの導入を三位一体として総合的に推進することとし、その具体策を検討したものです。
 JR福知山線の脱線事故などを契機に運輸業全体の安全対策強化の流れが強まるなかで、管制などシステムとして安全を管理している航空や鉄道などと異なり、自動車運送事業の場合は運行中の安全確保が運転者1人に委ねられており、さらに99%が中小企業であるなどの特徴があるため、自動車交通局が独自の検討を行っていました。
三位一体のうち、運行管理制度については、業務範囲があやふやな運行管理者の代務者を「補助者」として位置づけを明確にして制度化する一方、点呼についてはテレビ電話などIT機器を活用し、一営業所で一括して実施することを認めることにしました。
 監査の強化については、すでに同年2月から監査強化の第1弾として予防的監査への重点化を実施し、行政処分後の改善状況をフォローアップする仕組みを導入したほか、4月からは第2弾として厚生労働省との相互通報制度の拡充などを実施に移しました。さらに8月からは、悪質違反に対する厳罰化を実施するなど、順次強化を図っています。

悪質違反を厳罰化

 国土交通省は2006年8月1日から、悪質な違反をした事業者に対する行政処分を大幅に強化しました。会社ぐるみで運転者の酒気帯び運転を黙認していたり、過労運転を命じていた事業者に対しては、直ちに7日間の事業停止処分とするとともに、車両使用停止処分も3倍に加重して科すことになりました。重大事故の未然防止とともに、「悪貨が良貨を駆逐する」ことがないよう、悪質事業者を市場から排除していくことが狙いです。
 従来は、過労運転で重大事故を起こしても240日車程度、酒気帯び運転で重大事故を起こしても180日車程度の車両停止処分にとどまるケースが多く、事業停止処分(運輸局単位で270日車)にまではなかなか至りませんでしたが、8月以降は、悪質違反を伴う重大事故を起こした事業者で、運転者に対する指導監督が不十分であった場合には3日間の事業停止処分と別途点数積み上げによる車両使用停止処分を科し、さらに、悪質な違反を会社が下命・容認していた場合には、それだけで7日間の事業停止とし、車両停止処分は別途再犯に適用される3倍の量定が科されることになりました。

運輸安全マネジメントを導入

 2006年3月29日の参院本会議で運輸の安全向上に関する一括法が成立し、鉄道、航空、自動車、海運の運輸関係全事業者に安全最優先の事業運営を義務づける安全マネジメントが同年10月1日から導入されました。安全マネジメントは、安全最優先の事業運営を経営トップから現場の運転者まで浸透させ、輸送の安全に関する計画の策定、実行、チェック、改善のサイクルで継続的に安全確保・向上を図る仕組みです。
 全事業者に導入が義務づけられますが、トラック運送事業の場合300台以上の車両を保有する事業者に対しては、安全管理規程の作成と安全統括管理者の選任が義務づけられます。300台未満規模の事業者も、安全マネジメント導入の努力義務と安全の方針および目標の公表、従業員に対する指導監督義務がかかります。
安全マネジメントでは、経営トップ、すなわち社長が安全の確保に最終的な責任を有することを明確にしたうえで、輸送の安全に関する基本的な方針を策定して従業員へ周知することと公表を義務づけます。事故件数の削減などの目標設定と公表も義務づけ、その目標を達成するための計画も作成しなければなりません。
 このほか、情報の共有や伝達を行うための経営者と現場間の双方向コミュニケーションや実施状況のチェック、業務の改善、記録の管理なども求められます。輸送の安全に関する情報の公表は、基本方針、目標のほか、自社の事故に関する統計も毎年度公表が義務づけられ、行政処分後の改善状況もその都度公表しなければなりません。毎年度の公表は、事業年度終了後100日以内、つまり3月決算企業の場合、7月上旬までに公表する必要があり、未公表事業者は行政処分の対象となります。
 公表は、会社のホームページへの掲載、営業所などへの掲示などにより行うことになります。

死者削減目標を上積み

 交通政策審議会陸上交通分科会自動車交通部会は2006年6月12日、「交通事故のない社会を目指した今後の車両安全対策のあり方について」の報告書をまとめました。車両の安全対策による交通事故死者数削減目標などを見直したもので、審議の中で「2010年までに車両安全対策で死者数を1,200人削減する」という目標が5年前倒しで概ね達成されていることが判明したため、報告書では2010年の交通事故死者数削減目標を1999年比1,200人から2,000人へと上方修正することなどを盛り込みました。衝突時の乗員保護性能が向上したためで、すでに削減した1,250人にさらに750人を上積みしたものです。また、新たに、負傷者数削減目標を掲げ、車両安全対策により2010年までに25,000人、2015年までに50,000人削減することをめざしています。
 報告書はさらに、社会的影響の大きい大型車対策、高齢社会の進展に対応した歩行者・高齢者対策、重傷者・後遺障害者対策などに重点的に取り組むべきだと指摘しており、これを受けて国土交通省では、「大型車の衝突被害軽減ブレーキの普及促進」「ドライブレコーダを活用した事故分析/効果評価の充実」について、積極的に取り組んで行く考えです。

衝突被害軽減ブレーキの普及後押し

 衝突被害軽減ブレーキは、レーダーで車両前方を検知し、追突の可能性が高いと判断した場合にブレーキを自動で作動させ、追突時の速度を低減する仕組みで、大型トラック用としては日野自動車が2006年2月にトヨタと共同で開発し、世界で初めて実用化しました。被害軽減ブレーキ装着車は、通常車両に比べて価格が55万円割高になるため、全日本トラック協会が2006年度から装着車両購入に対する助成措置を行っており、国土交通省も2007年度から補助制度を創設して装着車両の普及を後押しすることになっています。
 こうした助成や補助を行うことにより、他のメーカーの開発が促進されることも期待されています。 国土交通省による車両安全対策の死者削減目標では、2,000人削減のうち、約200人を被害軽減ブレーキなどを含むASV(先進安全自動車)普及など今後の対策で賄う計画です。

飲酒運転を厳罰化

 警察庁は2006(平成18)年12月28日、飲酒運転の罰則強化を柱とする道路交通法改正試案をまとめました。改正試案では、現在「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」とされている酒酔い運転の罰則を「5年以下の懲役または100万円以下の罰金」に、同じく「1年以下の懲役または30万円以下の罰金」となっている酒気帯び運転の罰則も「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」へとそれぞれ2倍程度に引き上げることとしています。
 さらに、いわゆる「逃げ得」を許さないため、ひき逃げ(救護義務違反)の罰則も「5年以下の懲役または50万円以下の罰金」を「10年以下の懲役または100万円以下の罰金」へ2倍に強化する内容となっています。 飲酒運転による交通事故は、2001年の罰則強化により減少を続けていましたが、2006年上半期の飲酒運転による死亡事故が増加に転じたほか、同年8月には福岡市で飲酒運転により幼児3名が死亡する悲惨な事故が起きたことで社会問題化し、撲滅に向けた気運が高まっていました。
 警察庁の改正試案ではこのほか、飲酒運転をする恐れのある者に対して車両あるいは酒類を提供した者に対しても、飲酒運転をした者と同等の罰則を設けることにしています。
 さらに、飲酒運転車両への同乗者に対しても一定の範囲内で罰則を設け、同乗者が運転免許を持つ場合には行政処分の対象にもする考えです。酒酔い運転で死亡事故を起こした場合には免許取消処分となりますが、取り消し後、新たに免許を受けられるようになるまでの欠格期間の上限も現行の5年から10年に引き上げることを盛り込みました。

自動車運転過失致死傷罪を新設へ

 法務省は2007年2月7日、飲酒運転中に死傷事故を起こした者への厳罰化に向けて、自動車運転過失致死傷罪の新設を内容とする刑法改正案を法制審議会に諮問しました。危険運転致死傷罪(懲役20年以下)と業務上過失致死傷罪(同5年以下)の刑の差を埋めるために検討されていたもので、警察庁が今国会に提出する道交法改正案による厳罰化と合わせると、飲酒運転中に死傷事故を起こした場合の罰則は現行の懲役7年6か月以下から同10年6か月以下へと引き上げられることになります。
 また、酒気帯び運転中に死傷事故を起こしたケースでは、現行の懲役6年以下から同10年以下へと厳しくなります。同省では法制審の答申を経て、今国会に刑法改正案を提出する予定です。
 自動車運転過失致死傷罪は、自動車の運転に必要な注意を怠り、人を死傷させた者を7年以下の懲役もしくは禁固または100万円以下の罰金に処するもので、業務上過失致死傷罪より罰則を厳しくしました。刑法改正案ではこのほか、危険運転致死傷罪の適用対象を自動二輪車にも拡大することを盛り込んでいます。

飲酒運転防止マニュアルを策定

 全日本トラック協会は2006年12月6日、安全対策の数値目標を盛り込んだ中期計画をまとめました。ドライバー教育の推進や適正化事業の強化などにより、2004年に656人だった営業用トラックが原因となる交通事故死者数を2010年までに490人以下にすることをめざすものです。死者数のほか、負傷者数は41,000人以下(2004年49,035人)、事故発生件数は31,000件以下(同37,206件)とする目標を掲げました。
 政府の第8次交通安全基本計画では2010年までに交通事故死者数を5,500人以下にする目標を立てており、全ト協の数値目標は政府の削減率と同率を当てはめたものです。ただ、全体の死者数に占める営業用トラックの割合が増加傾向にあることを考えると、死者数に関しては容易に達成できない厳しい目標設定といえます。
 目標達成のための重点対策としては、(1)安全運転教育の推進(2)適正化事業の強化・促進(3)悪質違反対策??をあげ、このうちとくに悪質違反対策の一環として、新たに飲酒運転防止マニュアルを策定しました。マニュアルでは、アルコール検知器を営業所ごとに導入し、出庫時、帰庫時には対面による点呼を実施して、アルコール検知器による飲酒の有無を確認することなどを促しています。

中型免許が施行

 貨物自動車による事故の防止を図るため、2007年6月2日から中型運転免許の創設を含む新しい運転免許制度が施行されます。中型免許は、車両総重量5トン以上11トン未満、最大積載量3トン以上6.5トン未満の自動車を運転できる免許です。
 従来、総重量8トン未満(最大積載量5トン未満)まで運転できた普通免許では総重量5トン未満(最大積載量3トン未満)までしか運転できなくなり、新大型免許は総重量11トン以上(最大積載量6.5トン以上)を運転できる免許になります。中型免許の取得資格は年齢20歳以上で、普通免許の経験が2年以上必要です。新大型免許は21歳以上で、免許期間が3年以上とされています。
 経過措置により、すでに普通免許を受けている人は、総重量8トン未満までの自動車を運転できる限定中型免許に移行するため、運転できる自動車の範囲は変わりません。

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