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環境改善のために

ピーク迎えるNOx・PM法対応

 自動車NOx・PM法に基づく強制的な車両代替がークを迎えています。東京都トラック協会が2005年3月末現在で推計したところによると、東京都内の営業用ディーゼルトラック約9万6,800台のうち、2005年度に代替が必要となる台数は全体の12.1%に当たる1万1,700台で、2006年度は17.4%に当たる1万6,800台が規制の適用を受けて代替を迫られることになります。
 NOx・PM法は、首都圏1都3県のディーゼル車規制と異なり、PM(粒子状物質)だけでなくNOx(窒素酸化物)も基準値を満たす必要があるため、PM減少装置の装着では対応できず、新車に買い換える必要があります。
 東京都は2005年度から、NOx・PM法買換え特別融資あっせん制度を創設し、NOx・PM法により最新規制適合車に代替する際、利子の2分の1、信用保証料の3分の2を補助しています。2005年度と2006年度の2年間で計8,000台を支援する計画で、2年間で約47億円の予算を投入する予定です。
 国土交通省と全日本トラック協会では、2005年度の低公害車補助事業でディーゼル車の新長期規制適合車も補助対象にしたところ申請が殺到し、とくに全日本トラック協会の新長期規制適合車助成は計画の2.5倍に当たる6,000台以上もの申請を受け付けました。全日本トラック協会の2005年度助成額は、当初予算の12億円を6億円上回る18億円程度となる見込みです。

流入車規制が焦点に

 中央環境審議会の自動車排出ガス総合対策小委員会(委員長=大聖泰弘早稲田大学教授)は2005年12月26日、自動車NOx・PM法の見直しを内容とする中間報告をまとめました。焦点の対策地域への流入車対策では、非適合車の走行禁止などの具体案を示して「今後引き続き検討を深めるべき」と導入の是非を先送りしたほか、法律改正を伴う見直しは盛り込まれませんでした。同小委員会は2006年3月8日に検討を再開し、年内を目途に最終とりまとめを行うこととなりました。  中環審小委員会では、いくつかの地方自治体が流入規制を求めたのに対し、日本経団連や全日本トラック協会、日本バス協会といった産業界はこぞって現行以上の規制強化に反対するなど、流入規制を巡り賛否両論が飛び交いました。
 大気汚染の状況は、全体として改善傾向が見られるものの、大都市圏を中心に環境基準未達成局が依然残ると評価されており、小委員会中間報告では、流入規制の具体案として(1)対策地域内の非適合車の走行を法律で禁止(2)車種規制等を全国に適用(3)準対策地域を設定し車種規制を適用(4)対策地域外事業者に排出抑制計画の提出義務づけ(5)対策地域内の荷主に排出抑制計画の提出義務づけ(6)対策地域内で自動車が集中する施設の設置・管理者に排出抑制計画の提出を義務づけ──という6案を示し、問題提起をしました。
 対策地域外からの流入車両が大気環境に一定の影響を与えていることは事実ですが、規制を実施するに当たっては問題点も少なくありません。対策地域内に流入する非適合車を走行禁止にした場合、規制地域内と地域外での公平性は確保されるものの、取締りのためのマンパワーや費用負担が膨大となるほか、通過交通が迂回した場合の周辺地域への悪影響や地球温暖化対策との矛盾が生じる可能性が高いなどの問題点も指摘されています。

NOx削減へ2つの触媒技術

 ディーゼル車からのNOx、PMの大幅な低減のためには、自動車メーカーの技術開発が期待されます。ディーゼル車の排出ガス規制は2005年10月から世界で最も厳しい新長期規制が実施されており、2009年からはさらに厳しいポスト新長期規制が実施されることになっています。
 NOx、PMの大幅低減のためには、エンジン本体からの排出削減だけでは限界があるため、後処理装置の開発が不可欠となります。PMのさらなる削減のためには、ディーゼル微粒子除去装置(DPF)の性能向上が求められ、NOxのさらなる低減のためには、吸蔵型NOx還元触媒や尿素添加型NOx選択還元触媒(尿素SCR)の導入が進められています。NOxを削減するための2種類の触媒については、メーカー間で採用する技術が分かれており、前者は燃費と耐久性の向上が、後者は尿素供給インフラの整備が課題とされています。

環境確保条例への対応

 東京都は2006年4月1日から、環境確保条例に基づくディーゼル車走行規制の排出ガス規制値を強化し、第2段階規制を実施します。条例による規制値は、国の最新排出ガス規制値の1段階前の規制値とすることとされていますが、国の排出ガス規制が2005年10月から新長期規制(平成17年規制)へと強化されたため、都の規制値もそれまでの長期規制(平成9~11年規制)から新短期規制(平成15~16年規制)へと強化されるものです。それまで規制に適合していた長期規制車は、初度登録からの猶予期間7年を経過した時点で都内を走行できなくなります。
 東京都をはじめとする首都圏八都県市は2005年10月にディーゼル車規制開始から2年の一斉取り締まりと周知活動を実施したほか、2006年2月には冬季におけるディーゼル車対策に係る一斉取り締まりと周知活動を実施し、物流拠点施設などで貨物自動車の取り締まりを行っています。

都内の大気汚染が改善

 東京都のディーゼル車規制は、トラック運送事業者らの協力もあって着実に効果を上げています。都が2005年8月にまとめた2004年度の大気汚染状況測定結果によると、とくに浮遊粒子状物質(SPM)は、住宅地などの一般環境大気測定局(一般局)で測定開始以来初めて全局で環境基準を達成したほか、道路沿道の自動車排出ガス測定局(自排局)でも、未達成は大田区の松原橋測定局1局のみで、それ以外の測定局ではすべて環境基準を達成しました。都では「ディーゼル車規制の効果によるもの」と分析しており、東京の大気は確実に改善されていることが裏付けられました。
 一般局の環境基準達成率は2002年度の40%から2003年度には51%に、2004年度は100%へと改善し、自排局は2002年度に0%だったものが2003年度には12%に、2004年度は97%へと改善しています。
 一方、2004年度の二酸化窒素(NO2)環境基準達成状況は、一般局で初めて全局で環境基準を達成し、達成率100%となりましたが、沿道の自排局では前年度の53%から47%へと逆に悪化しました。
 このため東京都をはじめとする八都県市では2005年11月、国に対し、自動車NOx・PM法の対策地域への流入規制を早急に行うよう要望しています。

三井物産製DPFの猶予解除

 八都県市は2006年1月19日、虚偽の排出ガス浄化性能データで東京都などの指定を取得した三井物産製DPFについて、ユーザーに与えていた使用猶予措置を2006年3月末で解除すると発表しました。八都県市はデータねつ造が明らかになった2004年12月に同社製DPFの指定を取り消すとともに、三井物産に対して他社製装置への交換などのユーザー対応を誠実かつ迅速に実施するよう強く指導してきました。この結果、三井物産のユーザー対応は2006年1月18日時点で販売総数約2万1,500台の95%について対応済みとなったため、使用猶予措置を解除することにしたものです。
 一方、三井物産では、残る5%、約1,000台の対応に全力をあげるとしていますが、これまで続けていた改良品の開発を断念し、他社製DPFへの交換や車両買換を希望する顧客への中古車斡旋などにより対応していく考えを明らかにしました。

改正省エネ法が施行

 京都議定書の発効により、地球温暖化防止のための取り組みが国民的な課題となるなか、トラック運送事業者も省エネルギーの実践が求められています。とくに、2006年4月から施行される改正省エネ法では、従来の工場などに加え、新たに貨物、旅客の輸送事業者も規制対象となり、保有車両数200台以上のトラック運送事業者も省エネ計画の策定やエネルギー使用量等の定期報告が義務づけられます。
 保有車両数200台以上の事業者は341社で、全事業者のわずか0.5%に過ぎませんが、車両数では全車両数の25%を占め、エネルギー使用量では業界全体の約4割をカバーしています。  規制対象となるトラック事業者は、エネルギー消費原単位(輸送トンキロ当たりエネルギー使用量)を中長期的に年平均1%以上低減させることが省エネ目標とされます。具体的にはハイブリッド車などの低燃費車の使用、アイドリング・ストップのための蓄熱式暖房マットや蓄冷式クーラーなどの使用を促し、省エネ運転ではエコドライブの推進や運転者教育の計画的実施が求められます。また、輸送回数の減少につながるトラックの大型化、トレーラ化、積載率の向上・帰り荷確保、営自転換のための環境醸成なども事業者の取り組みとしてあげられています。
 一方、年間3,000万トンキロ以上の貨物輸送を委託している荷主企業も新たに規制対象となります。自社に所有権のある貨物の輸送について、省エネへの取り組みとエネルギー消費量の報告が義務づけられることになり、その荷主から運送業務を受託するトラック運送事業者は保有台数の規模にかかわらず、エネルギー消費量の報告などで荷主に協力を求められることが想定されます。エネルギー消費量の算定方法は、いくつかの方法の中から選択できますが、荷主と輸送事業者双方の作業負荷に十分配慮し、一方の当事者のみの意向に基づくものとならないよう、双方が十分な意思疎通を図る必要があるとされています。
 経済産業省では2006年度1年間をかけて荷主のトンキロデータを取得し、2007年4月末までに規制対象となる特定荷主を指定、同年9月末までに初年度(2007年度)の省エネ計画および初年度(2006年度)の実績報告を提出するよう求める予定です。荷主の省エネへの取り組みとしては、モーダルシフト、トラック輸送の営自転換、共同発注等への取り組みなどが考えられています。

グリーン物流の取り組み拡充

 物流分野の地球温暖化対策として、物流事業者と荷主が協働してCO2削減に取り組むためのグリーン物流パートナーシップ会議が国土交通、経済産業両省の肝いりで2004年12月に発足しました。同会議には2006年2月現在で2,300を超える企業が会員となり、グリーン物流モデル事業の発掘・推進、CO2排出量算定手法の作成と標準化、グリーン物流の普及・広報などに取り組んでいます。
 トラック輸送の効率化、国際複合一貫輸送、複数荷主によるモーダルシフト、3PL事業による物流最適化などに物流事業者と荷主が連携して取り組み、CO2削減効果の高い事業に対して国が補助金を交付して支援しています。2005年度は、物流効率化を推進する65件の提案が同会議に寄せられ、このうち33件をモデル事業として推進決定し、うち21件に対して補助金の交付決定が行われました。2006年度からは、国の補助予算を2005年度の約8億円から約40億円へと大幅に拡充し、それまでの先進的なモデル事業に加えて、普及事業に対しても補助を行うことで裾野の拡大を図っています。

エコドライブに注目

 地球温暖化対策とともに、原油高・燃料高時代の省エネ対策として、燃料消費を抑える運転であるエコドライブが注目されています。エコドライブとは、アイドリング・ストップのほか、急加速・急発進などを抑えたり、タイヤの空気圧適正化など保守点検での工夫をすることにより燃費を向上させる走行方法です。最近では、デジタル式運行記録計(デジタコ)などを活用して燃費管理する手法が注目されており、国土交通省では2005年度からEMS(エコドライブ管理システム)の導入支援を行っています。
 トラック運送事業者などがエコドライブに取り組む際、運行状況を評価して指導する事業で、デジタコなどエコドライブ関連機器導入費用の一部を補助しています。2006年度は経済産業省と連携し、26億円程度の補助予算を確保しています。一方、全日本トラック協会では、軽油価格高騰対策の一環として、省エネ運転の本格的な事例集を10万部作成し、全事業者に直接送付するなどしてエコドライブの普及を推進しています。
 トラック輸送において燃料消費量を抑制するためには、トラックそのものの燃費を向上させることが重要です。国土交通省と経済産業省は2005年11月10日、トラック・バスなど重量車の燃費基準を新たに設定することを決めました。目標年度は2015年度で、この燃費基準が達成された場合、2015年度に出荷される重量車の平均燃費は、例えば車両総重量3.5トン超のトラックの場合、2002年度と比べて約12.2%向上すると推定されています。

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