政府、第10次交通安全基本計画を決定
政府は2016(平成28)年3月11日、中央交通安全対策会議を開き、2016年度から2020(平成32)年度までの5か年を計画期間とする第10次交通安全基本計画を決定しました。交通事故による死者数を2020年までに2,500人以下(24時間以内の死者数)とし、死傷者数を50万人以下とすることを目標に掲げ、世界一安全な道路交通を実現するとしています。
2015(平成27)年の死者数は4,117人となり、15年ぶりに増加に転じました。このため、計画ではこれまでの対策の深化を図るとともに、進歩する交通安全に資する先端技術や情報の活用を一層促進していく方針です。
特に先端技術の活用に関しては、①衝突被害軽減ブレーキなど、市場化された技術の義務化も含めた保安基準の拡充・強化、②ドライバー異常時対応システムなど、実用化間際である新技術の開発・普及促進、③開発が進められている自動走行技術などの開発・普及のための環境整備、④安全な自動走行の実現のための制度のあり方に関する調査研究、⑤事故自動通報システム(ACN)などの普及・高度化、⑥安全運転支援システム(DSSS)の導入・整備、ETC2.0サービスの普及・促進-を推進する方針です。
国交省・全ト協、貨物車の総合安全対策
国土交通省と全日本トラック協会は2015(平成27)年6月26日、貨物自動車の総合安全対策をまとめました。道路交通法の改正により、年齢18歳で取得可能な準中型自動車免許(車両総重量3.5トン以上7.5トン未満)が創設されることに伴い、さらなる安全対策の充実・強化のため策定したものです。
全国共有の目標を事業用貨物自動車1万台当たりの死亡事故件数を2.0件以下とすることとし、年度ごとに重点自治体を定めて事故率の低い自治体の対策を水平展開するなど、事故防止に取り組む方針です。
車両安全対策では、衝突被害軽減ブレーキの義務付けについては、2014(平成26)年11月以降順次適用していますが、2021(平成33)年11月までに車両総重量3.5トン超のすべての貨物自動車に適用する方針です。また、運行記録計については2017(平成29)年4月から、車両総重量7トン以上または最大積載量4トン以上の貨物自動車についても装着を義務付けます。
トラック運転者に対する指導・監督の強化および教育の充実については、国交省が運転者の指導・監督指針を改正したほか、全ト協がテキストなどの教育ツールを整備し、運転者教育の実効性の向上を図っていく方針です。
事業用貨物車の死亡事故、3年連続減少
警察庁のまとめによると、2015(平成27)年の事業用貨物自動車・第一当事者の死亡事故件数(軽貨物車を除く)は、前年比22件減(6.7%減)の308件となり、3年連続で減少しました。3年前の2012(平成24)年の死亡事故件数は372件でしたから、3年間で17%減少したことになります。
車種別に見ると、大型車が前年比9件減少の185件、中型車が7件減の106件、普通が6件減少の17件となっています。
健康起因事故防止へ協議会
国土交通省は2015(平成27)年9月17日、「事業用自動車健康起因事故対策協議会」を設置し、初会合を開きました。同省が推奨する脳ドックや人間ドック、SAS(睡眠時無呼吸症候群)検査、心疾患検査の4つのスクリーニング検査を普及させるため、産学官の関係者が最新の検査機器・新たな検査方法などについての情報を共有し、検査の普及方策を検討することが目的です。協議会では、スクリーニング検査の先進事例や事故削減効果を調査するほか、低コストで効果的なスクリーニング検査の分析や実施方法を整理することにしています。
脳MRI議連が疾病運転防止へ議員立法
超党派の「運転従事者の脳MRI健診推進議員連盟」は2016(平成28)年5月24日、自動車運送事業者に対して、運転者の疾病運転防止のための措置を義務付けることを盛り込んだ道路運送法、および貨物自動車運送事業法改正案を議員立法により通常国会に提出しました。ただ国会が会期末を控え、同年6月1日の衆議院国土交通委員会で継続審議とすることを決めました。
法案では、旅客・貨物の自動車運送事業者に対して、運転者が疾病により安全な運転ができないおそれがある状態で運転することを防止するため、必要な医学的知見に基づく措置を講じることを義務付ける、というものです。
直ちに脳MRIなどの検査受診を義務付けるものではありませんが、自民党のバス、タクシー、トラックの3議員連盟は2016年4月、脳MRI検査や心臓ドックなどのスクリーニング検査を義務付けるためには、医学的知見や職場復帰の手順などについて検討し、まずガイドラインを作成するように、国土交通・厚生労働両省に申し入れました。
山陽道の追突事故で緊急通達
国土交通省は2016(平成28)年3月18日、広島県の山陽自動車道で起きたトンネル火災事故を受け、全日本トラック協会に対して、安全確保を徹底するよう文書で注意喚起を行いました。全ト協では同日、47都道府県トラック協会と傘下の運送事業者に対して、安全運行の一層の徹底を求める文書を緊急通達しました。
山陽道の事故は、事業用トラックが渋滞中の車両に追突し、2人が死亡し負傷者が多数出た重大事故です。このため文書では、運転者の勤務時間などの基準を遵守するよう求めたほか、確実に点呼を実施し、健康状態や過労状態を把握するよう求めました。また、運転者に対して、運行指示書を作成し適切な指導を行うよう求めるとともに、車両の点検整備、制限速度遵守をはじめとした法令遵守の徹底を図るよう通達しました。
なお、同省は同年3月23日、山陽道の事故について、事故を起こしたトラック運送事業者の法令違反を確認したことや、社会的影響などを勘案し、トラックとしては初めてとなる「特別重要調査対象事故」として、事業用自動車事故調査委員会に調査を要請しました。